560: ナハト :2018/06/14(木) 22:40:41
若本は死の床にあった。


扶桑海事変で能力を行使し、両腕損失、下半身不全、寿命が普通の人よりも短くなったことを
告げられた時はこの世を恨みたくなったが、残された時間はめい一杯自分の為に使おうと決意する。

そのために、義足を使いこなし、魔導椅子を使いこなせるようになると
外にあちこち駆け巡った。自分が駆け巡った思い出を残すために
加東さんに頼んでカメラを一つ譲ってもらった。

そこで、出会いもあり、恋愛し、結婚もした。
勿論、結婚する際には私のような不自由な女よりもいい女性がいると
一度断ったのだが、相手の男に押し切られる形で結ばれた。

それから、子宝にも恵まれたが、体が徐々に痺れだし、体の機能が一つずつ無くしていった。
まず味が徐々に分からなくなったので、完全に無くなるまで愛する人たちに美味しい料理を作った。
視界が少しずつ霞だし、最後の目に焼き付く光景を若本が好きだったサクラの満開を見に行った。
耳も少しずつ聞こえなくなったので、最後に私の為にと作ってくれた音楽を聴いた。

体も動かなくなり、寝たきり生活を過ごし、完全な暗闇の中で生活したが
常に誰かが側にいてくれるのは分かってた。



「この感覚は坂本か。久しぶりだな。指文字で最近聞いたぞ。
お前も結婚したってな。そして道場を開くと。長年の夢だったんだろ。
おめでとう!お前の道場市販体験談を今度聞かせてくれよ」


「やあ、竹井。海軍大将に昇進し、お爺ちゃんの跡を継いだんだって?
で、紅海へ海賊に狩りに行ったんだって?冗談だよ冗談。
でも、ネウロイが輸送船を攻撃するなら海賊で間違いないだろ?
今度聞かせてくれよ」


「よお、委員長。なに、いい加減凛と呼べだって?
すまんなあ、俺はどうしてもずっと委員長なんだよなあ
こんど、総理大臣になるんだって?頑張れよ」


「おいおい、チビども泣くな。
お前は俺の子供だ。強いんだぞ。
だから、泣くな。笑え!笑って母さんを見送ってくれ」





「俺は全力で生きた。悔いは有るが後悔はしない。」
若本徹子享年37歳

561: ナハト :2018/06/14(木) 22:41:50
終わり

短いssですが若本の生きざまを見せてくれたかと思います。
後、最後のほうにジブリみたいな感じにミチルとの会話を増やそうと思いましたが
蛇足的に感じて入れませんでした。

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最終更新:2018年07月30日 13:37