677: 弥次郎 :2018/09/26(水) 00:01:18

大陸SEED支援ネタSS 「B-Day」6



Main Staring:
<Nikaya,L1 Atack Fleet,2th Special Squadron,Pasific Union,O.M.N.I.Enforcer>
Sakon・Mizuhaya(Captain)
Akito・Sasahara(Ensign)
Mizuki・Sakagawa(Ensign)
Rachel・Ransome(Ensign)
Io・Fleming (Ensign)

<Lagrange 1 Defense Forces,Z.A.F.T.,PLANT>
Ross・Frois
Iris
Kate

Staring Mobile Suit:
RXZ-07 Z Gundam
RXZ-10 ZZ Gundam
MS-14 Hi-ZACK
MS-15 Marasai
MA-05R BYG-RUF

Original:Mobile Suit Gundam SEED
Arranged by:ナイ神父Mk-2氏
Special Thanks:時風氏
Written by:弥次郎

678: 弥次郎 :2018/09/26(水) 00:01:56

    • 月・地球間ラグランジュポイント1 中枢宙域 ウルド3周辺
    • グリニッジ標準時 C.E.71 8月13日 午前11時21分



不気味なほどに、宙域は静寂に満ちていた。
宙域を静かに進む大洋連合宇宙軍の突入艦隊は、ウルド3まであとわずかという距離にまで接近していた。
ウルド1の戦力が予想以上に多く見られること、こちらを完全に待ち受ける体制であるなど、いくつかの不安要素がある。
ザフトが運用しているという大型戦闘モジュールの所在も不明であり、何処から仕掛けてくるかも不明だ。

だが、ニカーヤ艦長である水早左近は敢えて攻略の実施を選択した。
うかうかしたところで情勢は変化しないと判断したのだ。
多少の罠や情勢の不利があろうとなかろうと、それを突破してやればよい。
そのように判断していた。相手も決戦が避け得ないのはもはや承知の上であろうし、元より決戦で決着をつける算段であったので、どちらにせよ、であった。

「艦長、間もなく敵警戒宙域に突入します」

ブリッジ要員の報告に一つ頷くと水早は艦内放送のスイッチを入れる。

「各員及び各艦に通達」

その声は、戦闘開始直前で張り詰めた空気の満ちるニカーヤに、そしてニカーヤを取り巻く艦艇の艦内に静かに響く。
厳めしい指揮官の声には、一方で落ち着きがあった。

「これより我が艦隊は敵警戒宙域に突入。
 ザフト要塞に対してアウトレンジからのミサイル攻撃及び砲撃を開始する」

それは、これから実施される戦闘において、自分達が勝利をとれるだろうという自信があるための落ち着きだ。
多少のトラブルはあろうとも、最終的に勝つことができる。その確信がある。だからこそ、水早の言葉は揺らがない。

「敵艦隊及び敵要塞の戦力数は我が方の上を行く。
 少なくとも、総数では上を行くだろう」

それは偵察で明らかになったこと。
明らかに突入艦隊の戦力に対して数的な優位を確保していた。
また、要塞という一種の巨大な艦艇を有しているというアドバンテージがザフト側の優位を補強している。
要塞の攻略は簡単ではない。ウルド1は優位に終わらせることが出来たが、相手はウルド1に対してとられた方法を警戒している。
艦隊を相手にして、さらに要塞の相手までするのは労力としてはかなりのものとなる。

「だが、小細工を一々弄する必要はないと私は判断した。
 増援を呼ぶ必要もない。我々は現状の戦力で以てウルド3を攻略、制圧下に置く」

断言。自信と、断定に満ちた言葉。

「今回の作戦の成功の是非は諸君らの働きにかかっている。出しうる最善を尽くし、貢献することを期待する」

以上だ、と告げると、通信を切る。
既にノーマルスーツを着用し、持ち場についているスタッフやパイロット、整備士たちは、通信越しに指揮官である水早の闘志を感じ取り、彼等もまた静かに闘志を燃やし始めた。
否応なく、決戦の時が迫る。もう間もなく、L1宙域をめぐる争いに終止符が打たれる。
そういう予感を、誰もが感じ取っていた。

679: 弥次郎 :2018/09/26(水) 00:02:40

    • 月・地球間ラグランジュポイント1 中枢宙域 ウルド3 ザフト哨戒圏
    • グリニッジ標準時 C.E.71 8月13日 午前11時40分

大洋連合は、ついにウルド3攻略の火ぶたを切った。

「第一波ミサイル装填完了!各砲座、スタンバイ!」

「アンチビーム爆雷、投下完了!ビーム減衰率92%!」

「各艦載機、カタパルトデッキへ!」

「ポイント到達と同時にミサイル投射開始!
 その後巡航しつつ主砲及びメガ粒子砲による砲撃及びミサイル攻撃を開始せよ!」

「直掩MS隊発艦開始!艦隊運動に取り残されないように注意せよ!」

叫び声となって飛び交う報告の中で、ブリッジ要員たちはそれぞれの仕事をこなす。
戦局は刻一刻と変わる。その報告が少し遅れれば、最悪の場合自分や自分の乗る艦艇ごと死ぬ羽目になる。
訓練を重ね、修羅場を抜けてきた彼らはだからこそ真剣に取り組んでいた。

「ザフト側、ミサイル迎撃率86%!一部は要塞に着弾するも被害は軽微の模様!」

「第二派ミサイル発射!出し惜しみなしだ!まだこっちに近寄らせるなよ!」

「第二派発射!」

居並ぶ艦艇が、ガトルが、長距離ミサイルを次々と吐き出していく。
勿論ザフトはこれを迎撃せざるを得ない。要塞砲や要塞の迎撃機銃、MS、艦艇の砲などを動員して、必死に撃ち落とす。
だが、いつまでも迎撃しきれるわけでもない。時限信管ミサイルの爆発に巻き込まれたり、迎撃しそこなったりと、被害が出る。
国力任せにミサイルの嵐を叩きつけたのだ、迎撃し切れる方がどうかしている。

「第二派ミサイル、迎撃率およそ78%!艦艇やMSの一部に被害が出ている模様です!」

「ザフト艦隊、MSと思われる戦力を追加で投入!さらに高熱源を多数射出、ミサイルによる反撃です!」

モニター上に複数の熱源が表示される。
それらはこちらには劣るものの、かなりの数であり、一直線にこちら目がけて推進して来る。

「相手のミサイルは落ち着いて対処だ。想定の範囲内に過ぎない。
 悪いが優位を譲る気はないからな、第三派ミサイルの斉射と同時に攻撃隊を出せ!
 敵の陣形は乱れている!食い破ってやれ!」

「対空MS隊、ミサイルへの対処開始!各艦も対空戦闘開始しました!」

対空を担当するのは、サブアームも含めて銃火器を多数構えたMSによる防空隊と、サンダーボルト師団から編成されてきたスナイパーたちだ。防空隊が艦艇と共に弾幕を張り、スナイパーたちは遠距離のミサイルを的確に撃ち落とし、接近をゆるさない。

「迎撃はどうだ?」

「今のところ目立った被害なしです!」

「敵艦隊!主砲射程圏に納まりました!」

「デコイ射出!回避運動開始します!」

「よーし、ミサイルの後に砲撃開始!射程の優位って奴を教えてやれ!
 射線に注意するようにMS隊に再通達!」

「了解!ブリッジよりMS隊へ、これより艦砲射撃を実施する。射線上より退避せよ!繰り返す…」

「第四派ミサイル装填完了!斉射!」

圧倒するという水早の意思の通り、大洋連合の攻撃は一切緩みがなかった。

680: 弥次郎 :2018/09/26(水) 00:03:26

対するザフト側は大慌てであった。
ミサイルによる飽和攻撃はまだ予測できていたが、予想以上にミサイルをこれでもかとぶつけられ、混乱が起きていた。
NJによって誘導が効かないも同然であるために、撃ちっぱなしのロケット弾にも等しいのだが、その分だけコストは安くなり、また搭載数が増えている。だから、馬鹿のように連打が出来た。

少なくとも序盤戦ならばこの程度はたやすく迎撃できていたことだろう。
だが、練度の不足や若年化の影響はここでも響いた。対艦・対要塞の大型ミサイルや長距離ミサイルの迎撃はたやすくはない。
MSでは優位なポジショニングをとりやすいとはいえ、相対速度が違い過ぎれば、その迎撃は難しくなる。

〈一体どれだけ撃って来るんだ!〉

〈要塞に被害が出る!撃ち落とせ!〉

〈弾が!弾が!誰かくれよぉ!〉

〈くそぉ、頭部機銃じゃ射程が短すぎる…!〉

MS隊は既に苦戦していた。
実弾系の突撃機銃はもちろんの事、ビームライフルを装備しているMSであってもバッテリーを消費してしまう。
それ以外にも推進剤を消費するし、パイロットも次から次へと飛んでくるミサイルを目で追いかけるので手一杯だ。

〈各隊に告げる!ミサイルは無理に全部迎撃するな!艦艇へ向かうものを優先しろ!〉

〈ミサイルとの距離は一定以上とっておけ!誘爆に巻き込まれるぞ!〉

〈敵艦発砲!ビーム減衰率が…ウソ、なんでこんなに下がるんだ!?〉

〈アンチビーム爆雷を再投下!出し惜しみするな!〉

要塞の司令部からの指示で、再度アンチビーム爆雷が投下されていく。
もはや当初の統制は乱れ切っていた。どこもかしこも、飽和状態に近いのだ。
艦隊の艦砲や要塞砲は先程から連合の艦隊を狙ってはいるが、射程の差があるのかあまり効果が窺えず、また、巡航しつつ砲撃する敵艦隊がデブリに紛れていることで狙いをつけにくい状態だった。
相手が接近しつつあることは若手いるので落ち着いて射程に納まるまで待てばよいのだが、それまで一方的に攻撃を受けるというのは精神衛生上悪すぎる。

〈くっそー、出撃早々大変な状況だな〉

〈無駄口を叩いてないで、迎撃!〉

そんな中でザフトが繰り出したのは、虎の子であるゲイツを主力としたMS隊だった。
ウルド3駐留部隊の中でも特に練度の高いパイロットに割り当てられたゲイツを主力に、シグーやジン・ハイマニューバで構成された18機。ウルド3防衛の要とされた部隊の出撃は、少なからず友軍を鼓舞し、また迎撃率の向上をもたらした。

〈迂闊に固まるなよ、まだ敵戦力は艦砲射撃の距離にいるんだ。直撃喰らったら恥だぞ!〉

〈分かってます!〉

〈そら、来るぞ!〉

遥か彼方からの艦砲射撃。分かり切っているそれに引っかかるパイロットはいない。
展開している艦艇も回避運動や艦隊運動によって回避を続ける。

〈相手の方が射程が上か!こっちから距離を詰められないか!?〉

〈迂闊に近づくとMSに取りつかれやすくなる!相手もこの距離だと命中率は落ちているはずだ!〉

〈MAも出し惜しみするな!固まって弾幕を張れ!MSの抜けた穴を埋めろ!〉

数の優位を埋めるかのような飽和攻撃に、ザフトは必死に抗っていた。

681: 弥次郎 :2018/09/26(水) 00:05:12

「案外抵抗するものだな…」

ミサイル攻撃の後に定石どおりにMS隊を発艦させ、交戦が始まった。
ザフトのMSの数は多いが、バッテリーMS主体であり、性能差も優位なこちらが押している状態だ。
第二陣としてZガンダムを操る笹原少尉やドーベンウルフのペアであるランサム少尉と坂川少尉たちを送り出した。
まもなく艦隊に取りついて突破口を開いてくれることだろう。そうすれば、次は切り札の出番となる。
それを一度切れば、おそらく要塞も無力化できると自信があった。いや、下手をすれば崩壊寸前にまで追い込めるかもしれない。

(だが…)

だが、妙な悪寒がする。
経験則というわけではないが、何かが来るという確信のようなものがある。
MSとMAでこちらのMSの突破を受け止めているのは分かるが、ザフトがいつまでもこれに甘えるはずがないという直感があった。
具体的になんであるかまでは言えないが、ともかく、そういう予感がしていた。
それに対応するためのカードは複数枚用意してあるので、不安はない。
だが、それでももやもやした感覚は抜けずにいた。

「艦長」

「どうした?」

「ランサム少尉と笹原少尉が、誰かに見られているような気配がする、と通信が」

「見られている、だと?」

はい、とうなずくオペレーターも半信半疑のようだ。
二人そろって何の話なのか。見られている、ということはこの戦場の状況では当たり前の筈。

「どういうことだ?」

「詳細は不明です。ただ、両名とも、不快感を感じるとも…」

「不快感…?」

ニカーヤの艦長として、水早はランサム少尉の出自を知っている。
村雨研究所上がりのパイロット。曰く村雨研究所では超能力を研究している、
曰くその研究所には年齢や性別に関係のない素質ある人間が集められている、
曰くエスパーが多くいる、曰く曰く…根も葉もないうわさばかりだが、そういう噂が立つということは、何らかの事実があるということになる。火の気のないところに煙は立たない。

軍人としては跳ね除けるべき憶測を含んだ曖昧な具申であるが、それを全く顧みないということはしないのが水早だった。
つまり、彼らが見張られているような、それでいて嫌な感じを覚えるような存在がザフト以外にいるということになる。
姿を見せず、敵意だけがある。敵意というより、こちらへの害意というべきだ。
エスパーか超能力者かどうかは問題ない。ただ、そういう情報として受け止めるのみだ。

理屈や理論を抜きに、そこから導き出される答えは何であるのか。
彼等が決して適当に言っているという感じはない。
つまり、自分達はここまでくるにあたって何かを見過ごしていたのだ。
そしてその何かは、何者かは、虎視眈々と待っていたのだ、最良のタイミングを。

一体最良のタイミングとは何のことなのだ?
自問して、一瞬で自答する。
こちらの隙を突き、攻撃を仕掛けるタイミングだ。

682: 弥次郎 :2018/09/26(水) 00:06:42

導き出される回答は、一つしかない。

「つまり、隠れている敵戦力がいるってことだな…!各艦に通達!
 周辺への警戒を強めろ!特に死角になっている範囲をな!急げ!」

その直後だった、後方から急接近する機動兵器を後方に控える艦艇のMS隊が捉えたのは。
アラートが鳴り響き、水早は遅かったかと舌打ちをする。

『おい、何だアイツら!』

『ジンと…ミストラルか?それに…!おいおい、あれはオーブ軍のMSじゃないか!?』

『直掩隊を回せ!奴ら、どっかから仕掛けてきたぞ!』

直掩隊が必死に止めようとするが、勢いの差というものがあった。
さらに、MSの後方からは艦艇が数隻、砲撃やミサイルをばら撒きながらも突っ込んでくる。
アストレイS型を戦闘とした機動兵器群は、明らかに所属がオーブであると示していた。
どうやら、地上での戦線で大人しく降伏しなかった連中がいたようだ。
ともかく、と水早は指示を飛ばす。

「防空隊を艦隊後方下部に回せ!やはり伏兵がいたか…!」

迎撃が間に合うか、という懸念が頭をよぎる。
正直、彼我の距離が近すぎる。ピケットMSで先んじて補足できたのは良いが、相手の戦艦が突撃も同然の速力で迫って来るのが問題だ。認識外からの攻撃は戦法としてはあっているが、まさかこのタイミングで切って来るとは思いもよらなかった。笹原少尉とランサム少尉の忠告は間違っていなかったのだ。

「艦影及び熱源照合……データベースに該当艦艇ありません!?」

「なんだと!?何処の艦艇だ!」

モニターには『NO MATCH』の表示。
だが、変わらずに砲撃が飛んでくるし、ミサイルも襲い掛かって来ることは確か。
最大船速で飛ばしてきたそれは、何機ものMAやMSを引き連れ攻撃を仕掛けてきている。

「強いて言うならば大西洋連邦系の艦艇に類似していますが…あ、後続にザフト艦艇を捕捉!」

「御託はいらん!攻撃してきたならば、敵ということだ!」

「は、ハッ!」

「操舵手、回避運動任せる!こっちが的にならないようにしておけ!」

「了解!」

「オペレーター!ビーハイヴに通信をつなげ!」

この中枢突入にあたり、サンダーボルト師団から一時的に麾下に加わった輸送艦には、奴がいる。
単独で艦隊を蹴散らせるような、そんな怪物だと聞かされていた。本来の予定とは違うが、仕方がない。

「ZZを出すように要請だ!蹴散らせ、遠慮はいらん!艦艇さえ潰せばどうとでもなる!」

683: 弥次郎 :2018/09/26(水) 00:07:24

ひときわ密集するデブリの中。
息をひそめるようにして、オーブ同胞団の旗艦イズモ級タカミツハとローラシア級、マルセイユⅢ世級輸送艦などが隠れていた。
大洋連合の艦隊が奇襲可能な範囲を通る、という保証はあまりなかったのだが、幸か不幸か彼らは監視網をくぐり抜けた。
ザフトとしては、頭に血が上りやすく、尚且つ大洋憎しで固まるオーブ同胞団が勝ち目のない突撃をしようと、発見されて一方的に叩かれようとも、一向にかまわなかった。威力偵察もしくは敵を消耗させる捨て駒、そのどちらかしか期待されていない。

そもオーブ同胞団はザフトにとっては政治的にも軍事的にも、ついでに言えば根本的に付き合いに困る相手だった。
なにかにつけてオーブの理念やウズミ・ナラ・アスハの言動・行動を崇め、如何に素晴らしいかを語る。
また、大洋連合が如何に卑劣で邪悪であるかなどを口汚くののしり、仲間内で頷きあう。
それに、オーブ本島の奪還やウズミ・ナラ・アスハの娘であるカガリ・ユラ・アスハの奪還し、大洋連合に報復するのだと息巻いている。
別段何を考えていようと結構なのだが、彼等がどうにも波長というか、話が合わない。近寄りがたいし、そんな連中が大洋連合から一本取りそうというのは、まあザフトにとっては幸運だったな程度の話にしかならない。

一方で、オーブ同胞団はまさに絶頂期にあった。
大洋連合の艦隊に突撃し、一矢報いる絶好の機会を得たのだから。
M1アストレイやザフトから譲渡されたジン最終生産型(F型)、さらにM1アストレイS型と、多数のMA。
同胞団の中で戦闘に参加できる人員をかき集め編成されたMS隊は、被撃墜を恐れずに突撃していく。
そう、もはや歓喜の叫びをあげ、死を恐れることなく特攻同然の攻撃を仕掛けているのだ。
全ては、オーブの、ウズミ・ナラ・アスハのために。

だが、すべては幻のようなもの。
彼等は反射と散々刷り込まれた思想のもとで判断している。
たかだか一個艦隊にも満たないような同胞団で、地球に比べて圧倒的に国力差のあるプラントに協力したところで、彼等の願うオーブの復興など、夢のまた夢に過ぎない。ここで仮に勝てたとしても、それは局地的勝利に過ぎない。
オーブ本島を連合から奪還し、拘束されているカガリ・ユラ・アスハをはじめとしたアスハ家を奪還し、その後再度押し寄せる連合からオーブを守り切ることなどできるはずもないのだ。
それだったら、大人しく降伏したふりをして、いつかの決起に備えた方がよほど生産的というもの。
ある意味で、彼らの願いの結末など、絶望以外の何物でもなかった。

〈!?〉

そして、彼らの前に暴虐がMSの形をとって現われる。
RXZ-10 ZZガンダム。
恐竜的進化を遂げた大洋連合のMSの中でもトップクラスの怪物。
その最大火力であるハイメガキャノンが、今まさにフルチャージを終えて、標的へと向けられていた。

『ぶっ飛べぇぇぇえぇえええ!』

イオの咆哮と共に、コロニーレーザーの20%にも達する威力のメガ粒子砲が解き放たれる。
その光景は、いっそ神話的ですらあった。MSから放たれた極太のビームが、先頭に立って吶喊して来るイズモ級を消し飛ばし、さらに余波だけで周囲のMSやMAを溶かすように破壊していく。その一撃、ZZの最大火力はいかんなく発揮された。

当然、それだけでは終わらない。
次の瞬間には、ZZは手持ちのビームライフルとビームガトリングガン、さらにバックパックに背負うビームキャノンの火力を解放し、突撃を開始した。
その巨体に見合わない加速を見せたZZは、ハイメガキャノンの影響を逃れた残党を容赦なく蹴散らす。
ビームライフルが咆哮するたびにMSやMAが消滅し、逃げ回る敵はビームガトリングガンにからめとられ、果敢にとびかかるMSはビームキャノンに消し飛ばされる。

『おらぁ!』

3分も経たず、機動戦力を粗方掃討したイオは、その勢いのままビームサーベルを抜き放つ。
標的とされたのは奇跡的に生き残っていたローラシア級とその取り巻きだ。
自棄になったか重突撃機銃を乱射してして来るジンが迫るが、ZZは頭部バルカンであっけなくバランスを失わせると、そのまま一刀のもとに切り捨てる。放たれた弾丸などに全く意は貸さず、ただただ無造作に突破した。
かすり傷がようやくつく程度の被害しか与えられず、次のジンが胴体をぶち抜かれ、そのままサーベルの出力で消滅する。

『堕ちろぉ!』

そして、虚しい抵抗を続けたローラシア級はビームキャノンで文字通り消し飛ばされる。
それが、このウルド3の周辺宙域に展開していたオーブ同胞団の、あっけの無い最期であった。

684: 弥次郎 :2018/09/26(水) 00:08:05

〈そんな…あれだけの戦力が一気に……!〉

〈連合のGがたった一機で……!?〉

そして、オーブ同胞団の壊滅はそれに乗じて対艦攻撃を仕掛けようとしたダイナミック・ホーク2機と、それをエスコートするジン・ボマーによる攻撃隊にも見えていた。捨て駒同然のオーブ同胞団が奇襲し、さらにその上で対艦攻撃を実施する。だが、そのオーブ同胞団があっけなく壊滅してしまったのだ。
たった一機のMSの、とんでもない暴虐によって。

〈ぼさっとしているな!〉

ケイト、イーリスの二人はフロイスの叫びにハッと正気に戻る。
戦場で我を忘れて呆然とするなど、殺してくれというも同然。
二人は慌てて前方を行くフロイスのジン・ボマーに後れを取るまいと機体を加速させた。
果たしてその判断は正しく、鋭いビームの光条が機体をかすめて行った。
動いていなければ、まともに直撃を喰らっていただろうことは間違いない。

〈ね、狙われている!?〉

〈敵艦隊の防空を担うスナイパーだ!止まるな、突っ込め!〉

スナイパーは複数いるのか、接近するにしたがってそのビームの数は増え、光条の包囲が狭まる。
フロイスもわかっている。もはや逃げ場は前にしかない、前へと逃げだすしかないのだと。

〈攻撃するしかないぞ、撃て!撃て!〉

〈う、うわっぁああああ!〉

ミサイルポッドから大量のミサイルが発射され、対艦攻撃モジュール3機は加速する。
止まったり迂闊な直進をすればいい的に過ぎない。それが分かっているから、必死に回避をし、弾幕を張り、進路を遮ろうとするMSにビーム砲で反撃を喰らわせていく。
被弾もあり、すでに複数方向から攻撃を受けているのが分かる。
だが、止まれない。止まってはならない。この程度では追われない。

〈キャッ…!〉

〈イーリスゥー!〉

そして、耐久性に難ありとされたダイナミック・ホークの一機がついに脱落する。その爆発を置き去りに、2機はそれでも進む。
ジン・ボマーは既に対艦ミサイルをありったけ吐き出しており、残るはバルカン砲とバルスス改のみ。
ターゲットの艦艇は目視でとらえているが、数値上の距離以上に、遠い。絶望的ですらある。
一体どうすればそこにたどり着けるのか、考えもつかない。只、手足は必死に操縦を続け、目は必死に情報をモニターから拾い上げ、操縦へと反映する。

一体、なぜこんなことをしているのかと、そんなとりとめもない疑問が浮かんでくる。
なぜ自分は戦争などしているのだろうか、こうして命がけて相手の命を奪いに行こうとしているのだろうか。
普通なら嫌というはずだろうに。どうしてなのか。フロイスは自分に問いを投げかけていた。
ジン・ボマーが被弾し、バルスス改が脱落し、誘爆が走る。衝撃はコクピットを襲い、バランスを危うくした。

「ああ、俺は……」

後方でもう一つ巨大な爆発が起こったのを、どこか遠くの事のように思いながらも、ようやく悟る。
長い長い、本当に長い戦争。次々と仲間が消え、死んでしまい、自分だけが生き残っていた。
だからだ、だからなのだ、こんな逃げ場のないL1という宙域に向かったのも。

「やっと、やっと終われる……」

眼前、避け得ないビームの光が見える。
呟くように言葉だけを残し、ジン・ボマーは消滅した。

685: 弥次郎 :2018/09/26(水) 00:08:45

「攻撃隊が、全滅…!?」

オーブ同胞団についてはまだいい。元より戦力として期待はしていないのだし。
だが、対艦攻撃隊までがあっけなくやられるとは想定外も良いところだった。
同時に攻撃を仕掛けることで相手を飽和状態に追い込もうとしたのに、簡単に対処されてしまった。
だが、いつまでも感傷に浸ってはいられない。ウルド3に取りつこうとするMS隊の侵攻阻止に忙しいのだ。

〈くっそー、Gが止められないぞ!〉

〈奴が強すぎる、もう何機やられているんだ!〉

〈青い奴だ…!青い奴が来る…!助けてくれぇ!〉

叫びが、悲鳴が、通信回線で木霊する。
明人のZガンダムが、その機動力を生かして前線を切り裂いていた。
MS形態とWR形態を使い分け、あっちで艦艇を撃沈したかと思えば、こちらでMSを数機まとめて相手取る。
その素早さに、多くのパイロットが追従さえできていなかった。だが、明人の方も明人で、しぶとく回避や反撃を続けるゲイツ達の対応に追われていた。
ツーマンセル若しくはスリーマンセルで、常に死角を補い合い、真っ向から攻撃を仕掛けても回避や防御で対応してくるのだ。
ごり押しても良いが、かと言って油断はならない。
本来ならば、MS隊を拘束している間にイオのZZをドーベンウルフの砲撃支援の下で突っ込ませ、ウルド3の戦闘力を奪う手はずだったのだ。

『しぶとい…!』

ようやくゲイツの一機を撃墜し、即座にWR形態で離脱。
次の瞬間にはビームライフルの反撃がZの機体が存在した空間を貫いている。
距離が取れたらとれたで今度はレールガンによる牽制射撃が襲って来るので、一向に油断ならない。
なるほど、重要拠点といえど、ウルド1ほど簡単にはいかないということか。虎の子の錬度の高いMS隊を繰り出しているのが窺える。

だが、時間は大洋連合に与した。
虎の子と言うことは替えが効きにくいということであり、辛うじて拮抗に持ち込めるゲイツ隊には負担がかかっていた。
パイロットの疲労、弾薬の消費、バッテリーの消耗、推進剤の枯渇。それらは両者に等しく生じるのだが、一般兵レベルでもザフトのベテランと最新鋭機の組み合わせと戦える大洋連合は、容易に交代と補給を行える。
さらにはエースの投入によるベテランパイロットの拘束は、戦局を徐々に大洋連合有利へと傾けて行った。

そして、その時は訪れる。
ビグロとビグ・ルフ、そしてビグロがけん引していたマラサイ4機による左翼側の艦艇への強襲が突き刺さり、ウルド3を守る防御陣形の一角が崩れたのだ。そのままビグロは艦艇の横っ腹をミサイルやメガ粒子砲で吹き飛ばしつつ攪乱、ビグ・ルフはその大型の対艦ミサイルをウルド3へと容赦なくたたき込んだのだ。
ビグ・ルフの倍の大きさはあろうかというそのミサイルの一撃は、ウルド3を大きく揺さぶり、爆発はどうしようもないほどの被害をもたらした。

「状況報告!」

「要塞左翼側に大型の対艦ミサイルが直撃!連結シャフト部にまで影響が出ています!
 また、左翼側の砲台の一部が損壊!電力供給ラインにも被害が及んでいます」

「何だと!?」

実質、左半身が麻痺したに等しい被害だ。
さらにビグ・ルフは要塞表面にある要塞砲をターゲットとして攻撃を継続し、その火力を解き放った。
ウルド3の司令部にあるモニターには、その被害が一気に拡大していくのが表示されていく。

「直掩のMSはどうした!?」

「まだ簡易の補修と整備中です!余剰戦力も殆どありません!」

「くっ!抜けた穴をMSと艦艇で埋めろ!各艦に通達、急げ!」

「了解!」

686: 弥次郎 :2018/09/26(水) 00:09:51

「ふ、まだだ。まだまだ手を緩めてはやらんよ」

焦るウルド3のザフト司令官と対照的に、ニカーヤのブリッジ水早は不敵な笑みを浮かべている。
後方からの奇襲という予想外の攻撃があったものの、それは無事に払いのけることが出来た。
対艦攻撃を目論んだモジュールも撃墜し、再度周辺への警戒を強めた。
こちらは既に乱されたものを正し、盤石な状態。
対して、ザフトは切るカードが無くなりつつある状態であり、残る戦力もすり減りつつある。

「さあ、どうするザフト諸君。悪いが圧倒勝利を譲る気はないぞ、私は」

眼前のモニターの情報を油断なく拾い上げ、思考を進める水早。
あとは時間が解決するか、相手が根を上げるかだ。

同時に思う。幾多のエースやベテランたちを指揮して自分は今回の戦いに赴いた。
彼等に相応しい活躍の場をあつらえ、指揮し、戦場をコントロールできただろうかと。
自分は、他者から見て十分な働きが出来たのだろうか。

(まあ、それは後でくっついてくる話だな)

余計な思考だ。
まだ勝利が確定したわけではない。
ウルド3はともかくとして、もう一方、大西洋連邦が担当している宙域がどうなるかも、今作戦の最終的な結果に大きくかかわることになる。
最後の最後まで、いや、終わっても自分は油断してはならない。
そう自戒しつつ、水早は指示を送りだし続けた。











そして、グリニッジ標準午後1時9分。
ウルド3司令部は戦闘継続を断念し、大洋連合に対して降伏を宣言し、受諾された。
必死に粘り、あらゆる策を打ったが、最終的な勝利は勝ち得なかったのであった。
斯くして、L1宙域をめぐる争いの一角は、ここに終結を迎えたのだった。

687: 弥次郎 :2018/09/26(水) 00:12:04

以上、wiki転載はご自由に。
なんとか、なんとか1話に納まりました…(青息吐息
めっちゃ駆け足になりましたね…おまけに二番煎じ的なところが多いな、という自己反省が…

ともあれ、これにて大洋連合サイドは終了。
次は大西洋連邦サイドをうまいところ書きたいですね。

機動兵器のアイディアを出してくださったナイ神父Mk-2氏、
および笹原明人君をはじめ魅力的なキャラの登場を許可してくださった時風氏に厚くお礼申し上げます。
ではお楽しみに。

695: 弥次郎 :2018/09/26(水) 13:33:38
修正など

678
×ザフトが運用しているという大型戦闘モジュールの所在も不明であり、

〇ザフトが運用しているという大型戦闘モジュールの所在も不明であり、何処から仕掛けてくるかも不明だ。

681
×下手をすれば崩壊寸前かもしれない。

〇下手をすれば崩壊寸前にまで追い込めるかもしれない。

×虎視眈々と待っていたのだ、攻撃に出る最良のタイミングを。

〇虎視眈々と待っていたのだ、最良のタイミングを。

転載時の修正のほどよろしくお願いします

348: 弥次郎 :2018/10/03(水) 13:02:10
347
これはまた失礼を…
毎度ありがとうございます…

×スナイパーは複数いるのか、接近するにしたがってそのビームの数は増え、
 フロイスもわかっている。

〇スナイパーは複数いるのか、接近するにしたがってそのビームの数は増え、光条の包囲が狭まる。
 フロイスもわかっている。

修正お願いします

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最終更新:2018年10月03日 18:56