106: 弥次郎 :2018/11/15(木) 18:41:39 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
大陸SRW IF GATE 自衛隊(ry編 「ドラゴン・スレイヤーズ」1
戦場とは程遠い、のどかな景色。
地平の彼方まで視線を遮るものは殆どなく、草原がひろがり、空気は澄み渡っていた。
とある世界からやってきた人々から『特地』と呼ばれるその地域、アルヌス周辺の天候は今日も晴れやかであった。
ここには空気を汚すような車や工場などが無い、それどころかまともに重工業というものが形を成さず、中世そのものの生活が営まれ、それ故によほどのことが無ければ汚れた空気など発生することもない極めて綺麗な空が広がっていた。
だが、ここ最近のアルヌスは非常に騒がしかった。炎龍の目覚めとその暴虐の嵐はいくつもの村々を焼き払い、破壊し、人々を苦しめていた。さらに、発生した二つのゲートとそのゲート周辺を舞台に行われた激戦--というには些か一方的すぎる戦--が起こった。
さらにはゲートの片方には巨大な城と巨人が現れ、アルヌス周辺ににらみを利かせているのであった。
平穏そのものであったはずのアルヌスは、この特地の中でも最もホットな場所と言えた。
そして、その炎龍が『緑の人』---避難民を護送していた日本国陸上自衛隊の偵察部隊によって撃退されてから数日後、負傷をしながらもなおも活動を続けている炎龍に対して、新たな戦力が差し向けられることとなった。
それはダークエルフと呼ばれる種族の一族が、日本国自衛隊のとある隊員の提案で、もう一つのゲート付近を根城とする勢力、大洋連合と大洋連合の指揮下に納まっている傭兵たちに依頼を出したのである。どうか、炎龍を討伐してほしいと。
仲介をした伊丹にとってはほんのちょっとした親切心であり、傭兵たちにとっては無聊を囲っている中での依頼は丁度良いものであった。
まして、報酬がダークエルフの秘蔵のダイヤ原石と大洋連合からの上乗せ報酬であり、標的の戦闘能力などが多くが未知であっても、それは傭兵たちにとっては十分すぎるどころか、奪い合ってでも得たい破格の依頼であった。その為応募が殺到し、選抜に暫し時間を要したのであったが、討伐を行う傭兵が決定し、後はいざ実行というところまで話は進んだ。
しかし、ことはそれだけに納まらなかった。
日本国自衛隊が炎龍討伐の依頼を一介の隊員の判断で大洋連合の側に流したというのは、すぐに上司の、そして自衛隊上層部と日本政府、さらにはGATE発生に伴う事態に日本政府と共に対応に乗り出していた米国政府にも届いていた。確かに空飛ぶMBTといっても差し支えない、ファンタジーではあるが強力な生物である炎龍を自衛隊や米軍がまともに相手にしたところで現地の装備で勝てるかと言われると微妙であるし、GATEの実態調査と特地の情報を集め、今後の方針を定めることが第一義となっている日米両政府にとって炎龍など二の次と言って差し支えない事項だ。
そして、日米両政府は大洋連合がその麾下にある傭兵たち、所謂PMCに討伐を任せることを決定したことを知り、また、大洋連合が多数持ち込んでいた人型機動兵器--AC(アーマードコア)を実践に投入するという不確定情報が届き、炎龍と同じく未知の存在である人型機動兵器の脅威度査定(アセスメント)をする絶好の機会であると知って俄かにあわただしく、そして自体は非常にややこしくなっていく。今のところは穏当な交流が続いている状態とはいえ、大洋連合や傭兵たちが有する兵器に興味が尽きることはなく、大洋連合に対して観戦武官の派遣を要請するに至ったのである。これには日米だけでなく、事態を朧ながらに掴んでいた各国も絡もうとしたが、
アメリカは日米同盟などを持ち出してシャットアウト、水面下での暗闘を経て、これが派遣されることになった。
大洋連合にしても、傭兵たちにしても、別段隠すものでもないだろうという考えのもとこれを許可した。
そも、大洋連合にとってはこちらの抱える戦力が如何に優れているか、脅威であるかを伝える良い機会であり、相手が迂闊な軍事オプションを選択することを抑止できるだろうと踏んでいた。第一、特地に派遣しているのは大洋連合の戦力のごく一部である。
この程度のゲートの発生でわざわざ国軍を動かすなど割に合わないし、そもそも元の世界の方では融合惑星などの問題が多発しており、正規軍はそちらに注力しているのである。つまり、探られて痛い腹など最初から持ち合わせてなどいない。
わざわざその事を教えてやる義理もないのであるし、精々警戒してくれればそれでいい。大洋はその程度の問題と認識していた。
ともあれ、斯くして炎龍討伐は実行されることになったのである。
神話やおとぎ話の再現、ジャイアントキリングの最たる例、巨竜殺しの始まりである。
107: 弥次郎 :2018/11/15(木) 18:45:28 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
無遠慮なローターの回転音が、いくつも重なって草原に響いていた。
PMCのエンブレムを目立つ位置にペイントした輸送ヘリのSTROKが6機、編隊を組んで飛行しているのである。
その機体には今回炎龍討伐の依頼を勝ち取った『シュネーヴァイス・レギオン』の戦乙女(ワルキューレ)を模した白い乙女が描かれており、側面に描かれた模様も相まって、まるで特地の空を戦乙女たちが駆け抜けているかのような、一つの絵画のような光景となっていた。
一見してふざけた迷彩にも見えるが、これはこれである種のダズル迷彩として効果を発揮しており、ある種の芸術性を感じさせるものでもあった。
そして、先頭を行く4機がVACと呼ばれるACを懸架しており、それぞれが役割ごとの武装を既にアセンブリしていた。
今回の炎龍討伐に参加する傭兵は、いずれも北アフリカでのカイジュウ討伐やテロリスト鎮圧などをいくつもくぐり抜けた歴戦のPMC所属であり、チームでの戦闘にも慣れた、ワルキューレが導くにふさわしい戦士たちばかりであった。
1番機 中量二脚 ACネーム「ヴァイス・ホーク」 パイロット「オットー・J・ヴァルテンブルク」
2番機 重量四脚 ACネーム「シュヴァルツ・ジャベリン」 パイロット「ラファエル」
3番機 軽量逆関節 ACネーム「スターダスト」 パイロット「レイ・R」
4番機 軽量二脚 ACネーム「フリスト」 パイロット「13(サーティーン)」
統括オペレーター 「マエストロ」
サブオペレーター 「アイザック」
以上が、『シュネーヴァイス・レギオン』の派遣した戦力であった。
一方で後続の二機のSTROKには依頼主であるダークエルフの代表であるヤオ、そして仲介者の伊丹と第三偵察部隊が乗り込み、もう一方には日米の観戦武官たちが乗り込んでおり、間もなく始まるであろう炎龍退治を前に興奮を隠せずにいた。
特に観戦武官たちはつりさげられて輸送されているACにさっそく興味がわいているのか、それぞれがアセンブリ下装備や特異な形状のACを前に、既に活発な議論を交わし、どの程度のものであるかなどを話し合っていた。なにしろ、人型の機動兵器である。
未だに実用にたるロボットが一般的な重機あるいは研究室レベルの域から出ておらず、また投影面積や被弾面積などの観点から、人型機動兵器は非現実的だとされる理論が展開されることもあるGATE原作世界では、正しくSFの塊のような存在だ。
そしてそんなSFの塊がぶつかるのが、その対極にあるともいえるファンタジーの塊である龍である。観戦武官たちの興味は尽きなかった。
一方で、観戦武官たちとは別のヘリに乗り込んでいる伊丹は気楽というか、観戦武官たちと比べれば力の抜けた雰囲気でヘリに揺られていた。
初めて空を飛ぶ乗り物に乗ったためか若干の混乱と揺れによって酔いが出てきたヤオを気遣いながらも、
「うう…すまない、イタミ殿」
背中をさすられながら、ヤオは揺れと振動から生まれる初めての感覚---乗り物酔いに苦しんでいた。
STROKは痛みの感覚では一般的なヘリと比較しても揺れはたいしてひどくもないのだが、初めての彼女にはきつすぎた。
伊丹は念のためにエチケット袋を用意してもらい、気遣うように言葉をかけるしかなかった。
「このような鋼鉄の鳥に乗るとは…うぷ…!」
「あー、無理しないで」
酔い止めの類は残念ながらないため、痛みにできることはパイロットに頼んでできるだけ揺れないように飛行するように頼むことだけ。
依頼主として、また見届け人としてヤオはこの後の戦いを見なければならない。仲介した手前、伊丹はそこが心配だった。
「しかし、伊丹隊長なんだか緊張感が無いっすね。
なんというか、不安じゃないんですか?」
部下の言わんとすることもわかる。未知の、あれだけ自分達が辛酸をなめさせられた炎龍を、人型機動兵器で狩ろうというのだから。
人型兵器が存在していないのはその技術がまだ確立されていないこと、そして、仮に実現しても既存兵器にとっていい的でしかないという予測からだ。
だからこそ、ACに今一信頼がおけないのも間違ってはいない。だが、伊丹は少し違っていた。
「でも、人型兵器が普及している未来なんだろ?俺達の視点で考えたところで、それが正しいなんて保証はないしな。
向こうは技術的なブレイクスルーが起きているって考えるのが普通なんじゃないか?」
「そりゃあ、そうですけど…」
「それに、パイロット達はこの手の怪物を退治した経験が豊富だっていうし、多分俺達より場数踏んでると思う」
「え、ってことは連合の世界には炎龍みたいな生物がいるんですか?」
「突然変異っていうか、人為的な物質のせいというか…ともかく、そういうのがアフリカにうじゃうじゃいるって話だってさ」
「隊長、いつの間にそんな話を仕入れてたんですか…?」
「…ま、まあな、同好のよしみって奴で…」
108: 弥次郎 :2018/11/15(木) 18:46:13 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
そんな会話がなされる後続のSTROKとは異なり、シュネーヴァイス・レギオンのSTROKでは既に準戦闘態勢に入っていた。
ゲート付近に設営された基地から出発して既に1時間。先行して展開している偵察機の情報によれば、おおよその炎龍の配置は絞り込めつつある。
各地にある観測所やはるか上空を飛行して撮影を行う無人偵察機などの情報は一度本拠点で統合され、その上でこちらに回って来る。
だが、今のところ炎龍そのものが補足されてはいないのだ。絞り込んだ範囲に入ってはいるがここからどのようにアプローチするかが問題となる。
さらに問題となるのが、炎龍の探知能力(アウェアネス)がどれほどの範囲か、というものである。
ヘリの飛行音、ACの移動音、地面を揺らすヘリの駆動音、火薬やACの纏う臭い、目視その他もろもろの手段で、炎龍はこちらを探知するだろう。
今回の討伐での全体的な指揮を執るマエストロは、そこが気がかりだった。既に『緑の人』---自衛隊との戦闘で負傷した炎龍は、その傷がいえるまでは最大限周辺を警戒するのが道理であるし、これまで狩ってきたカイジュウ達に共通する行動だった。
可能であるならば、完全な不意打ちで反撃も何も許すことなく倒してしまいたい。周囲を警戒しているならば厳しいかもしれないが、真っ向から対峙するよりも、圧倒して倒した方が楽であるし、余計な費用が掛かることなく、こちらへの実入りも大きくなるからだ。
(まあ、採算を度外すれば楽なんだがな……)
だが、傭兵は傭兵だ。ボランティアでやっているわけでもないし、未知の相手を倒すという危険を冒す以上、相応の配当を得なければやってられない。
自分達の出発に先駆けて偵察部隊を送り出してからそろそろいい時間が経つ頃。せめて目撃情報だけでも欲しいところだ。
「アイザック、偵察用UAVからの情報はどうだ?」
「未だ反応なしです」
「そうか……派手に暴れるくせして、かくれんぼもうまいか…厄介だな」
「無理もありませんって、片腕を吹っ飛ばされているんですから、いくら生態系上位の生物でも大人しくするでしょう。
せめて痕跡くらいは見つかってほしいですけど」
「まあ、そうだな。こっちの装備なら真っ向から狩ることはできるだろうが、依頼主の要望もある。
できれば、俺達にとっても、依頼主にとっても良い方向で決着を付けたいところだ」
「評価にも関わりますしね。この依頼、奪い合いになったって聞きましたし」
「ああ。だから、下手を打つと評判がおちてしまう。まったく、楽な依頼とはいきそうにないぜ。
お客さんのこともあるしな」
ちらりとマエストロの視線は後続のSTROKへと向けられる。
この世界、ファンタジーな中世の世界である『特地』を介して繋がっている地球からの観戦武官たちの存在は、当然のことであるがマエストロをはじめとしたシュネーヴァイス・レギオンの知るところとなっていた。
まだあちらの世界においては人型兵器というものが発明されていないためなのか、かなりこちらに興味を抱いていた。
どれほどの戦力となるのかが非常に気になるのだろう。こちらの、自分達の元の世界では人型兵器が導入されて幾多の戦争をくぐり抜けているので、
今さらといったところであるが、やはり世界が違えば事情が違うということらしい。
「ま、『お行儀』がいいのはありがたいことだな。大洋連合の目がやはり気になるらしい」
「ですね。まあ、こっちもある意味サービスしているんですから、その分こっちの指示には従ってくれないと」
少なくとも、妨害やこちらの仕事に首を突っ込んだり、必要以上の情報を集めようとする気はないらしいのがありがたい限りだ。
大洋連合には限らないが、国家のような大きなクライアントのバックアップがある仕事というのはこういうのがあるから楽だ。
だからこそ、手が抜けない、という面もあるのだが。
「とにかく、だ。お前ら。気ぃー抜くなよ!」
「「「了解!」」」
マエストロの声に、STROKのパイロット、そしてACパイロット達が一斉に返答する。
まもなく、炎龍の展開予想地域に突入するのだ。決戦は紛れもなく近い。
109: 弥次郎 :2018/11/15(木) 18:47:10 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はご自由に。
とりあえず序破急の序の部分が出来上がったので。
次の話で炎龍と本格的に戦闘に突入になりますね。
まあ、マイペースに書くので早いかもしれませんし遅いかもしれませんので、悪しからず。
最終更新:2023年10月10日 23:04