806: 弥次郎 :2018/11/20(火) 18:25:17 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp


大陸SRW IF GATE 自衛隊(ry編 「ドラゴン・スレイヤーズ」2(改訂版)


 その生き物---炎龍は生まれて成長しきってから久しく感じたことのない感情に支配されていた。
 それは恐怖。自らの命が消えてしまいかねない事態に直面したことによる、身も縮むような恐怖に包まれていた。
 炎龍は、というよりも龍種というのは生態系においてほぼ頂点に立つ生物種だ。
 その体の小ささでありながらも集団で戦い、獣を狩ることもできる人間さえも容易く蹂躙し、町や村を戯れに焼き払える。
抵抗できるのはよほど大きなワイバーンか同じ龍種か、はたまた伝説やおとぎ話に語られるような龍殺しの英雄、ドラゴンスレイヤーと呼ばれるような英雄でなければ、到底不可能であったことだろう。
 逆に言えば、それまで炎龍は成長して以来強敵も外敵もいない安泰の日々を送っており、久しく命の危険など感じたことが無かった。
炎龍にとっては平穏すぎる、あまりにも温い生活を送ることが出来ていたのだ。襲いたいように獲物を襲い、面白半分に村や町を焼き、思うが儘に虐殺をしてきた。それが、強さゆえの特権故に。

 だが、つい先日にその平穏は砕かれた。
 気まぐれに人を襲った時、鱗で覆われていない目を弓ではない未知の武器で狙われ、さらには腕を片方何らかの方法でもぎ取られてしまったのだ。
その時、これまで安穏と過ごしていた炎龍は反動で凄まじい恐怖に襲われた。唐突に死というものが襲い掛かり、自らの体の一部を失い、炎龍はパニックに陥ってしまったのだ。今は平穏を取り戻してはいるのだが、未だに恐怖は尾を引いている。
 巣に一直線に戻ることも考えたのだが、どうやらアルヌス周辺に似たような人間がうろついていることが分かり、暫く炎龍は姿を隠すことにしたのだ。木々や森の中に身をひそめ、獲物を狩るのを一時的に控えた。

 そして、逆襲を受けてから数日が経過した。流れ出ていた腕の出血も概ね収まり、痛みもほぼ抑えられるようになったころを見計らい、炎龍は自らの巣へと移動を開始した。だが、その数日は傷がいえるまでの期間と同じように忍耐が求められた。
空に、これまで見たことのない鳥が飛んでいたのだ。たかが鳥であるならば、炎龍は恐れはしないだろう。だが、炎龍の本能が、それへの攻撃をやめさせていた。明らかに「鳥」は獲物を探す動きをしていたのだ。臆病さが恐怖から頂点に達してた炎龍は、大人しく隠れることを選んでいた。
 図らずも、その選択は正しかった。それが炎龍を創作するための無人飛行機であり、攻撃をしかけたりカメラに映った場合、炎龍は自らの居場所を大洋連合に教えることに繋がっていたのだから。そうして炎龍は炎龍らしからぬ慎重さで行動を続け、自らの巣があるエルベ藩王国を目指していた。
 だが、だがである。状況は炎龍を追い詰める方向へと動いていた。日に日に無人偵察機の数は増え、遥かに大きな鳥のようなものが、大きな音を立てて我が物顔で空を飛ぶようになったのである。炎龍は再び恐怖していた。未知の生き物が、明らかに群れで自分を追いかけているのだ。
圧倒的な個の力で群れを圧倒していた炎龍が、今は圧倒的多数の群れによって追われている。何とも皮肉な光景だった。

 やがて、炎龍はある地点から動けなくなってしまった。
 その理由は一つ、我慢の限界に達してしまったためだった。元来、炎龍とは襲う側であり、何時までも隠れることを良しとしない性分である。
そんな生物が、負傷をしたとはいえ、何時までも怯えて隠れていられるはずもないのだ。苛立ち、あるいはストレス。
それが限界に達した時、炎龍は隠れることをやめ、攻撃に移ったのだ。何時までもうろちょろと空を飛びつつけている“それ”に苛立ちはぶつけられた。

〈Guoooo!〉

 負傷していると言えども、炎龍のブレスは脅威だ。
 灼熱の伊吹は無人偵察機を包み込み、一気に破壊せしめ、その飛ぶための力を奪った。
 一気に飛び出した炎龍は飛行しながらもブレスを放ち、追いかけてくるそれを器用に撃ち落としていく。
やがて無人偵察機は、遥か彼方の指示に従って追跡を一時中断し、炎龍が移動する方向を記録し、伝え続けることに終始した。

807: 弥次郎 :2018/11/20(火) 18:26:26 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

 シュネーヴァイス・レギオンの一団の動きは俄かに騒がしくなった。
 多数放っていた無人偵察機がいくつも撃墜されたこと、また武装の代わりに搭載されていた生体センサーに俄かに反応があったことだ。
最後に送られてきた映像には明らかにブレスが映っており、生体センサーが捉えたのはどう考えても野生の獣では考えられない大きさの反応。
さらに撃墜された地域は、炎龍のいると思われる予想地点のうちの一つだった。ここまで条件が揃えば、もはやあとは語るまい。
STROK6機は速度を上げてその地点へと、そこにいるであろう炎龍にアプローチするために舵を切った。

 それを理解したのは、日米の観戦武官たちと伊丹達も同じであった。ひっきりなしに会話がなされ、アラート音が響き、巡航で緩やかに飛んでいたSTROKが明らかに増速したからだ。そして、機内に据え付けられたスピーカーから緊急連絡が入る。

『連絡します、連絡します。炎龍らしき大型生物の反応が発見されたのでこれから現場に急行します。
 場合によってはそのまま戦闘に突入するかもしれませんので各員注意のほどお願いします!」

「炎龍が見つかった?」

「いよいよ戦闘になるのか……?」

 ようやく具合が落ち着いたヤオが増速したSTROKに再び顔色を悪くし始めたのを見ながらも、伊丹達は緊張が増すのを感じ取った。
自分達が戦うのではなく、ACを操る傭兵たちが戦うのであって、自分達は安全なところからそれを観戦することになっている。
それでも緊張してしまうのは、炎龍と直接対峙し、辛うじて追い払った時の恐怖がまだ染みついているためだろうか。
生半可な銃弾を弾く鱗、圧倒的な熱量のブレスを吐き、おまけに飛行能力はヘリコプター並に旋回性に優れ、恐らくだが膂力も並ではないのだろう。
そんな怪物にジャイアントキリングを目論むなど、本当にできるのだろうか?

 そんな心配やら疑問を抱く平成世界の御客をしり目に、STROKのオペレーターたちは炎龍の進路の予想や会敵場所の地形の確認、戦場として設定可能な領域がどんなコンディションであるかなどの確認作業に追われていた。さらに、コクピット内のパイロット達は、統括オペレーターのマエストロと通信越しに戦闘開始直前のブリーフィングを開始していた。

「会敵予想地点はなだらかな平野部、あちこちに身を隠せそうな小さな丘や岩がいくつか見られているが、まあ基本は平野だな。
 このまま問題が無ければ02(シュヴァルツ・ジャベリン)による狙撃と、03および04による近接格闘戦で仕留めるぞ。
 01(ヴァイス・ホーク)は現場指揮とバックアップとして行動してくれ。場合によってはこっちに支援要請をしても構わん」

『01了解だ』

『02了解。護衛無しってのはちょっと怖いが、まあそこは前衛に任せることにするよ』

『02、そう心配するな。初撃で翼でももぎ取ればグンと楽になる』

『簡単に言ってくれるなぁ、01。相手は不規則に動く生物だぞー?』

 軽口を言い合うオットーとラファエルだが、そこに一切の油断はない。
 相手が飛行に依存して移動するというのは分かっていることなので、スナイパーキャノンによる重狙撃支援を行う02は、今回の炎龍との戦闘においてメインを張ることになる。カイジュウをアフリカで狩ってきた彼らは大型の生物をACで仕留める手法をよく心得ていた。
 即ち、相手を安全なところから可能な限り無力化し、確実に止めを刺す、というシンプルな戦術だ。
 厄介なことに、依頼主からは可能な限り損傷を抑えて仕留めてほしいという要望も届けられている。報酬にも関わる、非常に重要な案件だ。
正直なところラファエル一人でも何とでもなるのだが、そうした場合、炎龍が穴だらけになってしまい、依頼主の意向には沿わない結果となるだろう。
苦労してこの依頼を勝ち取った手前、そんな無様に終わらせることなどできない。

808: 弥次郎 :2018/11/20(火) 18:27:43 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp


「真面目にやるんだぞ、お前たち。腐っても相手は大型の龍だ。並のカイジュウと一緒くたにすると痛い目にあうのは俺達なんだ」

『そうよ01、未知の世界でのミッションなんだから、不確定要素も十分考慮に入れて行動すべきよ』

『04も03に同意します。腕が欠損しているとはいえ、近接戦闘には危険が伴います。
 我々が突破される、あるいは狙撃が失敗することも考慮し、どのように行動するかも確認しておくべきです』

 気楽に言うラファエルとオットーに、サーティーンとレイは釘をさしておく。
 特にサーティーンとレイは危険度が高い前衛で、可能な限り炎龍を痛めつけることなく、一撃で仕留めることが求められる。
可能な限り反撃しない、というのがなんとも厳しい条件だ。シールドを携行しているのでダメージはあまり受けはしないだろうが、絶対に安全というわけではない。許容できないダメージを受ければシールドは壊れるし、シールドが無事でも本体にダメージが無いとは限らない。
 だからこそ、万が一の時の保険というものは欲しいところだった。勿論、歴戦の彼らがそれを怠っているなどあり得ない。

『その時は俺がカバーするんだろ?拘束用のワイヤーアンカーも装備しているんだし、ちゃんとフォローしてやるさ』

「そうだな。03と04で遅滞戦闘しつつ、01がワイヤーアンカーで拘束、動きを制限して狙撃か格闘か、どちらかで止めを刺す。
 可能な限り傷を与えることなくな。……っと、地形データが届いたようだ。各員、確認しておけ」

 無人偵察機からの情報だ。炎龍の姿が完全に補足され、戦闘エリアとして設定された領域の地形データが全員に共有される。

『結構視界はクリアだな……ここならよほど隠れられない限り射線が確保できそうだ』

「そいつはよかった。ならリリースポイントは02だけ希望のポイントの近くにして問題ないか?」

『ああ、そうしてくれ。そうだな……ここ、いや、待てよ。ここにしてもらおう。
 ここからなら、大体この位置が正確に狙い撃てる領域だ。うまいこと標的を誘導してくれ』

 ラファエルのAC側から表示されているマップにマーカーがセットされていく。
 丁度盛り上がった丘陵の部分から、作戦領域の大部分が射角として納められる位置にラファエルは陣取り、視界がクリアな狙撃支援ゾーンをいくつか候補地としてマッピングしていく。

『ここに誘導してくれればいい。空を飛んでいても、地面を走っていても仕留められるだろう』

「全員聞いたな?問題が無ければこれを第一プランとして実行に移すが」

『『『『了解』』』』

「ターゲットを如何に狙撃エリアにうまく引きずりこむかが重要だ。前衛の03,04はそこに注意してくれよ」

『もちろんです。フリストと私のコンビに任せてください』

 その後、セカンドプランについてと、お客の乗ったヘリが安全地帯から観戦できるようにすることなどを再度確認した。
 ちょうどその頃には、STROKの一団は撃墜された無人偵察機の残骸の上を飛び越え、炎龍の活動範囲に入ろうとしていた。

「マエストロ、そろそろ」

「ああ。各機に通達、これより炎龍からの探知を避けるために制音及び低空飛行に入る。
 ついでにノイズメーカー(欺瞞音響装置)を起動、こっちの動きをごまかせ。
 02は先にACをリリースし、狙撃ポイントに向かわせろ。一応、お客さんの方にもその旨を通達しておけ」

「了解です、マエストロ」

 アイザックが指示を出すと同時に、STROK各機は無遠慮な回転をしていたプロペラの回転を徐々に抑え始め、高高度の飛行から低高度での飛行へと切り替え、音を抑えての飛行に切り替えた。いよいよ、本番である。
炎龍はこれでSTROKの存在を探知しにくくなった。この間に迅速に展開し、有利な状況で戦端を開くことができるか。
傭兵団の腕前に、シュネーヴァイス・レギオンの精鋭たちの腕にそこはかかっていた。

809: 弥次郎 :2018/11/20(火) 18:29:06 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

 急に静けさが増した、と炎龍は感じ取っていた。
 無遠慮な羽音を立てて飛ぶ鳥が自分のいる場所に近づいていることは空気や地面の揺れで何となく把握していたし、嗅いだことのないにおいが自身の血のにおいに混じって、風に乗って自分の鼻孔で感じ取ることが出来ていた。
 だが、それが急に変化した。羽音が聞こえにくくなり、地面の揺れも空気の揺れも小さくなった。それこそ、自然な状態に紛れてしまいそうなほどに。
いや、本当に動いているのかどうかさえ曖昧だ。臭いがあるのでいることは間違いないのだが、動きが追えなくなった。
自分が追いかけられているという感覚は今もあるのだが、その追いかけてくる相手が分からなくなってしまった。
 相手が追跡を諦めたという可能性もあり得たのだが、炎龍とて馬鹿ではない。ここまで追いかけてきた相手が、そう簡単にあきらめるとは思えない。
だが、実際に妙な鳥などが自分の周りを飛ぶことが無くなったし、空を飛んでいる時にあたりを見渡してもそれらしい敵の姿は見えなかった。

<…………>

 自身の感覚と野生の勘の剥離が著しい。
 状況がよく把握できずにいて、迷っている状態だ。
 このまま逃げに徹するべきなのか、それとも負傷した状態ではあるが戦うのか。

<---!?>

 さらに、耳に届いたのは嫌に体に響く不快な音響だった。あちこちの岩や丘で反響しているためか、何処が発生原か分からない。
辛うじて近くの風の音や自分の動きに伴う音は聞き取れるのだが、それ以外があまり聞こえなくなってしまった。
耳をこらそうとすればするほど、その音はまるで生きているかのように体の中に轟いてくる。不快だ、あまりにも不快だ。
辛うじて嗅覚は無事であるが、どうやら風の向きが悪いのか追跡して来る嫌な臭いの塊の方角が辛うじてわかる程度で、あまりにもあてにならない。
つまり残る死角に頼らなければならない。その事を理解できないほど、炎龍の理性は衰えてなどいない。
 姿勢を伏せにちかい状態から大きく持ち上げ、首を伸ばして周囲を見渡す。
 周囲に他の生き物の姿は見えない。音もない。だが、あの嫌な臭いだけは何処からか漂って来る。人間を焼いた後のような、あるいはものが焦げたような、なんとも言えない不快なにおい。微妙に鉄臭さも混じっている。これが自分を狙う何者かの臭いなのだろうか。
こんな臭いを発する生き物など、これまで炎龍は邂逅したことはなかった。一体どんな生き物なのだ。なぜ自分を追いかけてくるのだ。
 湧き上がる恐怖に、身が縮むかのような錯覚を覚えながらも、炎龍は改めて周囲を警戒する。
 言うまでもないことだが、分からないとはすなわち恐怖に直結する。姿を見せぬ敵、大きく制限された聴覚、鍵慣れない未知の臭い。
そして、つい先日から何度も目撃している「自分の知らない何者か」。人間が未知の方法で自分に負傷を負わせた瞬間の恐怖がまだ忘れられない。

<………!>

 誰に、何処に向かってでもなく、威嚇する。
 しかし、それに驚いて鳥が飛び立って逃げていくほかは、何も動きが無い。
 恐怖、苛立ち、そして人間の言葉でいうならば気持ち悪さ---それらが炎龍を苛む。
 だからだろう、炎龍は迂闊にも聞き逃してしまった。静音モードで静かに接近し、自らに一撃を入れるために近づいていた、人間が自らの英知を束ねて作り上げた巨人---ACがシールドと特殊なショットガンを構えて飛び出し、自らに接近してくる音を。

<!?>

 気が付いた時にはすでに遅かった。胸部に何かがぶつかって激痛が走り、さらにその巨人のシールドバッシュを受け、炎龍は吹っ飛ばされていた。
 吹っ飛ばされながらも、炎龍は気が付いた。この生き物こそ、この人間より大きな何者かが、自分を狙っていたのだと。
これまで溜まっていた鬱憤と怒りと苛立ちとが混ざり合い、炎龍の頭の中で爆発し、理性のタガをはずしていく。
そしてそれらは、強烈な咆哮となって炎龍の口から迸った。
 それにたいして、AC---コード「03」の「スターダスト」は武器を改めて構え、炎龍と対峙する。
 これよりは神代---人と龍の争いの再現、龍殺しのための戦いが始まった。

810: 弥次郎 :2018/11/20(火) 18:31:35 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

『くっ、なんて頑丈さ…!』

 スターダストのコクピットで03ことレイ・Rは炎龍の予想以上の頑丈さ、タフネスに思わず舌打ちしていた。
 今手にあるのは殺傷目的の本物のショットガンよりは威力が劣っているモノ。人間の銃火器で例えれば、暴徒鎮圧用のゴム弾を打つショットガンといったところか。とはいえ、それを至近距離から浴びてはじき返し活動し続けるとは、予想以上に頑丈で痛みに強いらしい。だが、この程度は予測の範囲内だ。シールドバッシュとあわせ、攻撃を受けた相手は完全にこちらをターゲットとして認識したはずだ。
ショットガンの方も全く効果が無かった、というわけではないようで、着弾時に一瞬だが炎龍の動きが鈍ったのを確認できた。

『CP!こちら03!ターゲットはこちらに食らい付いた!』

『CP了解。うまく引き付けてくれよ!すぐに04も合流する、ヤバくなったらフォローしてもらえ!』

『言われなくても!』

 返事をしつつ、炎龍の口が大きく開いたのを見てハイブーストで後退しながらシールドを構えた。
 直後、膨大な熱量の嵐が視界を満たす。炎龍のブレスだ。機外の温度はあっという間に3桁後半を超えていく。
もはや単なる炎というよりは洪水のようなものだ。人では到底防ぎようのない、力の奔流。だが、それも耐熱加工済みのシールドには通用しない。
相手がファンタジーな力であろうとも、それが確固たる現象であるならば、科学の力は効力を発揮する。

『ふぅ……あんまりダメージは通らないみたいね』

 とはいえ、推進剤などに延焼するとまずいことになる、とレイ・Rは集中を高める。
 ハイブーストで機体を左右に振り、ブレスをシールドでいなしながら、こちらについてこさせる。03、ラファエルの指定したポイントまで、おおよそ200mといったところだろうか。先にACが投下され、狙撃態勢に入っていることは既に確認済みである。
ならばあとは自分とサーティーンの仕事だ。

『ほら、かかってきなさい!』

 挑発するようにブザーを鳴らし、誘うようにステップ。
 炎龍の方もブレスが防がれ、あまり効果が出ないことにいらだったのか、肉弾戦に切り替えてきた。
 報告にあった通り片腕がもげてはいるのだが、もう一方の腕と尻尾、さらにその体躯を活かした突進など、豪快に襲ってくる。
 だがそれらを、レイ・Rは機体をうまく操って躱す。岩を足場にしたブーストドライブとハイブーストを組み合わせ、時にはグライドブーストで逃げる。
 一瞬たりとも気は抜けない。

『!?やっば!』

 次の瞬間、炎龍はブレスを吐きながら翼を羽ばたかせ、軽くジャンプした。
 軽くと言ってもVACを軽く見下ろす鷹まで余裕で飛翔している。こちらはシールドで防いでいる最中。
ハイブーストで上空からの襲撃は回避することが出来そうが、上空に飛び上がって得た勢いのままに突っ込まれると流石にヤバイ。
運悪く足場になりそうなものが無く、ハイブーストしか頼れない。最悪シールドを囮にしてでも躱すしかない。
炎龍の重さは不明だが、ぺしゃんこにされるなど溜まったものではない。

『…!?来た!』

 小ジャンプからの急降下は、吐き出されるブレスと一体となって襲い掛かってきた。
 咄嗟にショットガンで反撃するが、その程度で止まるようなレベルではなかった。二発連射して効果が無かったので、ハイブーストをしようとペダルを踏みかえ、操縦桿に手をかけ---

『がら空きですよ、ドラゴンさん』

 その瞬間に、横殴りで炎龍をACがブーストチャージが襲った。
 軽量二脚という、ACとしては軽いながらも、速度の乗った一撃は見事に炎龍の胴体に重たいブローを浴びせ、吹っ飛ばしていた。
急に推進のベクトルを変更させられた炎龍は見事に吹き飛ばされ、無様に地面に転がって岩と激突する。

『無事ですか、03』

『04!ありがと!今のはちょっと危なかったわ!』

 それなりの高度からうまくブーストをふかしながら着地したのは04「サーティーン」のフリストだ。
 どうやら炎龍が飛び上がって両足でブレーキが掛けられないタイミングを狙ってブーストチャージを放ったらしい。
それをもろに受けた炎龍は呻きながら姿勢を立て直そうとしていた。最初のシールドばっしょと異なり衝撃を受け流せなかったためか、炎龍自体の動きはやや鈍い。やはり機械ではなく生き物らしい。

『このまま囮役をお願いします。もう少し先で01が待機しています、そこまで連れ込めば、一時的にですが拘束して動きを止められます』

『了解!CP、こちら03!04と合流、このまま炎龍を引き付けるわ!01と02に通達よろしく!』

『CP了解だ。もう少しだ、気張れよ』

811: 弥次郎 :2018/11/20(火) 18:32:54 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

 目標が2機に増えたことで、さらに炎龍は焦りを加速させることとなった。
 単純に攻撃するにしてもどちらか片方がフリーになるし、ブレスを浴びせたところで両機が片腕に装備しているシールドでうまく防がれてしまう。
格闘戦も仕掛けてはいるが、どちらも俊敏に逃げ回り、あるいは回避されてしまう。いらだって攻撃を加速させても、
逆に隙を生む結果となり、仕留められない。レイもサーティーンも、炎龍の動きに慣れつつあることも手伝っての事だろう。


      • 炎龍から数百メートル 狙撃ポイント

 スナイパーキャノンを備えた状態で、02ことラファエルはひたすらに待ち続けていた。
 炎龍との接触と戦闘開始が告げられたのがほんの10分ほど前。先程から炎龍のブレスによると思われる炎と、炎龍の暴れる音と振動が届いてくる。
 03と04の姿はまだ見えない。戦闘が行われていることとおおよその位置は分かっても、どのような状態かはわからない。
だが、ラファエルに焦りなどない。彼女達の腕前は良く知っているし、炎龍程度の可愛げのあるカイジュウなら何度も相手にしてきたからだ。

『さて、と。そろそろ……』

 風向きや気温などをセンサーで確認しながらも、ラファエルはアップで表示される狙撃地点を確認する。
 遮蔽物が少なく開けたそこには、01ことオットーの「ヴァイス・ホーク」が拘束用のワイヤーアンカーを装備して待機している。
手持ちの他にも、設置式のワイヤートラップも複数用意された、まさに鉄の蜘蛛の巣といっても良い場所。
出来れば一撃で、ヘッドショットか、相手の移動力を奪える翼か足を狙いたいところだ。そうすれば前衛たちが上手くやってくれることだろう。
ラファエルに余計な緊張はない。ただ、いつものように狙い、引き金を引き、仕留めればよいのだから。

『……来るか!』

『CPより02。そろそろターゲットが狙撃エリアに入るぞ。準備は良いな?』

『もちろんだ』

 既に脚部に備え付けられたアンカーが地面へとしっかりと撃ち込まれており、調整がされたスナイパーキャノンは狙撃エリアに向けられている。
風向きなどのコンディションは概ね把握しており、この分ならほとんど狂いなく狙撃できる自信があった。機体の方もコンディションは万全。
ならば、あとは引き金を引き、結果を生むのみだ。

『頼んだぜ、01、03、04……』

 スナイパーは祈らない。技術と経験とACと、それを支えるコンピューターやセンサーなどを信じて撃つのだ。
 そして、前線で必死の足止めを行う仲間たちと、その結果を信じて、ひたすらにスナイパーは待った。



『01、戦線に加わるぞ!』

『CP了解!』

 そしてついに、炎龍は狙撃エリアに足を踏み入れた。
 これを受けて待ち受けていた01、オットーも参戦する。
 彼の持つ武器は例によってシールドと、拘束用のワイヤーアンカーを発射するワイヤーガンだ。
また、この周辺に張り巡らせたワイヤートラップのスイッチをオットーは握っており、必要に応じて起動させる手筈だ。
 標的が増えたことにいら立ちを強めた炎龍は再び咆哮するが、そんな程度で彼らは怯みもしない。拘束用のワイヤーが射出され、次々と炎龍の体に巻き付いていく。それを剥ぎ取ろうとするのを、03と04の射撃が邪魔し、さらにワイヤーが巻き付けられる。

『おらおら、どうした!カイジュウはもっと骨があったぞぉ!』

 炎龍の片腕が何とか一本ワイヤーをちぎろうとするが、超硬スチールのそれが簡単に壊れるなどあり得ない。
逆にどんどんワイヤーに絡められて、飛び上がることも移動することもあまりうまくできなくなりつつあった。

『よし、そろそろいいわね……02!こっちはいい感じよ!あとは任せるわ!』

『02了解、射線は確保できている。どこを狙えばいい?』

『任せるわ、飛ばれると厄介だから翼を吹っ飛ばしてもらえると嬉しいわね』

 そう、炎龍は未だに諦めていなかった。地面に穿たれたアンカーを引きちぎり、空に飛び上がろうと翼に力を入れようともがいている。
そうはさせまいと3機のACがそれぞれ動いて動きを必死に阻害しているが、何がきっかけで均衡が崩れるか分からない。
 だから、ここで一撃を入れる必要がある。強烈な、炎龍の抵抗力を一気に奪い取る一撃を。

『02、これより攻撃を開始する。3秒でいい、動きを止めてくれ』

『聞いたな、03、04!』

『もちろんよ!』

『了解、これよりドラゴンの拘束を行う!』

 炎龍狩りもいよいよ終盤。それを感じ取った彼らは、力強い返答を返した。

812: 弥次郎 :2018/11/20(火) 18:34:41 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

 炎龍を拘束するワイヤーは徐々にそれにかかる力を強くしていた。
 ACがワイヤー同士を絡め、あるいは引っ張って固定することで、より炎龍に密着させ、動きを制限していくのだ。
02が必要とすると明言した3秒は、短いようで案外長い。負傷らしい負傷が片腕の欠損とこれまでの戦いの疲労だけで、炎龍はまだまだ戦うつもりだからだ。
 だが、それをモニター越しに眺め、照準を合わせて狙撃態勢に入っているラファエルには関係の無いこと。
 来るべきその一瞬を逃さずに、炎龍を捉えて離さないことが肝要だ。

(まだ……まだだ……)

 炎龍がブレスを吐く。シールドをハンガーに預けている01はまともに喰らうが、大したダメージではないだろう。
逆に01がワイヤーを引き絞ることで、炎龍の体がさらに締め付けられた。おまけとばかりにブーストチャージが炎龍の腹に刺さり、炎龍はのけぞりながら悲鳴染みた咆哮を上げる。

(もう少し……)

 ラファエルは狙撃で狙う場所を右の翼と定めていた。
 こちらから見て右を向いている状態で少し斜めにのけぞっていては、射線はクリアとは言えない。
 だが、焦りは禁物だ。駄目だと思った次の瞬間に、ドンピシャの状態に入るかもしれないのだから。だからこそ、ひたすらにスナイパーとしてラファエルは待ち受けるのだ。最高のその一瞬を。
 ズーム機能で予想着弾点を翼の付け根付近に合わせ、ロックオン。これで機体もOSも、狙う場所を理解したはず。あとは、タイミング。
そのタイミングは一体いつなのか。どのような弾道で飛んで行けばいいかは概ねタイミングでも制御される。
いつ、どのように狙いを定め、引き金を絞り、弾丸を送り出すのか。

『----!』

 その答えを、ラファエルは技術を持って示す。
 一度のけぞった炎龍が、背中からの、人間でいえば肩甲骨の間に04の蹴りを受けて一時的に前かがみになる。
 それを認識した瞬間に、ラファエルの指は既に動いていた。一瞬の遅れも先走りもない、ベストのタイミングで引き金が引かれた。
 瞬間、ACの操縦桿のトリガーはAC内部の回線を伝って腕部に、そして手に信号を伝え、引き金を引き絞らせた。
そして、構えていたスナイパーキャノンの内部機構はトリガーが引かれて発生した連鎖反応に命じられるがままに弾丸の雷管を刺激し、スナイパーキャノンの内部で炸裂を発生させ、そのガス圧で以て弾頭を押し出し、音速を超える速度まで加速し、銃口から吐き出す。
銃口に据え付けられらた、戦車砲を思わせるマズルブレーキがガスを逃がし、弾丸を遅滞なく吐き出して----








そして、結果が生まれた。

813: 弥次郎 :2018/11/20(火) 18:36:05 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はこちらの改訂版をお願いします。
いやぁ…これは情けないミスです…

クールタイム挟んだら改訂版3の投下を行います。
まあ、内容とかは変わっておりはしませんので感想とかは最低限で構いません。
それでは、次をお待ちください。

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