817: 弥次郎 :2018/11/20(火) 19:00:18 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
大陸SRW IF GATE 自衛隊(ry編 「ドラゴン・スレイヤーズ」3(改訂版)
ラファエルの放った徹甲弾。
スナイパーキャノンから吐き出され、射手の望むがままに飛ぶそれは、炎龍の翼の付け根へと見事に着弾した。
そして、鱗を砕き、内部の骨も筋肉も軟骨も何もかもを貫くというよりは砕くように直進を続ける弾丸は、破裂するかのような爆発を引き起こした。そして、その一瞬の破壊を以て、炎龍は翼を失うことになった。
あたりには噴出した鮮血が華のように咲き、砕けた鱗の破片が舞い散り、もげた翼が重量感あふれる音と共に地面に落ちる。
<GYAAAAAAAAAAA!>
突如として突き刺さった一撃に、炎龍は悲鳴のような叫びをあげた。威嚇するためではない、明らかな恐怖と痛みを含んだ叫びだ。
痛みに反応してか炎龍の体が大きく跳ね、悶え、拘束しているワイヤーをこれまで以上の力で引きちぎろうとする。
もはや炎龍はなりふり構わずに逃げ出そうとしていた。もうこれ以上戦い続けていては、命にかかわるのだと、理性の前に本能で理解できた。
何としても、この拘束を振り切らなければ。もはや飛べないことは分かっているので、走っての逃走を目論んだ。
本能からの衝動は、炎龍の体にこれまで以上の力を与えた。
突如として膨れ上がる炎龍の力に驚いたのは01、03、04だった。咄嗟に近くのワイヤーをつかんで必死に引き止め、脚部をショットガンで撃つことで動きを邪魔しようとする。しかし、予想以上の力だ。被弾で暴れるかもしれない、という予測が無ければ、あるいは油断していればVACでも振り回されてしまったかもしれないほどの力だった。
『あっぶないわねぇ!』
『油断するな!まだ仕留めたわけじゃない!』
『しつこいです…!』
しかし、一度暴れることが出来ても、それ以上が続かなかった。千切れるようにしてもげた翼の付け根からはかなりの出血が見られており、激痛によるショックが紛れもなく炎龍に影響を与えている。翼が失われたことで炎龍の体のバランスは大きく崩れてしまい、よたよたと足元がおぼつかない有様だ。心なしか動きも鈍くなっており、最前ほど力を振るえるようではないようだった。
それに、翼を失ったことはもはや炎龍が強引にでもここから離脱する能力を失ったことに直結している。
懸案となるブレスも、口から途切れ途切れにしか吐き出せていない。明らかに弱っている。
その事を理解したオットーは拘束に力を入れながらも、指示を飛ばす。
『よし、少々気は早いが止めを刺すぞ。03、止めを刺せ!』
『03了解。レーザーブレードを使うわよ!』
指示された03、スターダストを操るレイ・Rはシールドを肩部のハンガーへと預けると、その武器を手に取った。
ACの手がそれを握ると、エネルギーバイパスが形成され、内部に格納された機構に電力供給がなされ、安全装置が解除。
そして、きらめくようなレーザーが出力され、収束し、刀身が成される。そんな輝きを持つレーザーブレードは、見る者を魅了するような美しさがある。
『聞いたな、04!コイツの動きの拘束を続行だ!』
『了解!03、一発で決めてください!』
やや高い位置にある首を一撃で刈り取るために助走をを付ける04を見ながらも、01と03は拘束を2機に減った状態で何とか維持する。
どうやら自分に命の危険が迫っていることを肌で感じ取ったのか、抵抗がより激しくなったのだ。04が跳躍し、高度をあわせ、レーザーブレードを振りぬくまで10秒とかかるまい。だが、その10秒が長くなる。
『!?しまった!』
炎龍の力が勝ったのか、ワイヤーをつないでいたアンカーの一つが固定箇所から外れてしまう。
運悪く、01も04もそこから遠い位置にいる。このままでは連鎖で固定が外れて行ってしまう。事実、いくつかのアンカーが限界を迎え、弾けるようにして地面から、あるいは岩から外れていく。それを見ていたラファエルは咄嗟に叫ぶ。
『しょうがない!クライアントにはすまないが、ちょっと援護射撃を入れるぞ!CP!OKだな!?』
『CPより02へ、許可する!このままじゃ二人が危険だ!』
言われずとも、とラファエルは再びトリガーに指をかけ、照準を合わせる。
万が一に備え、予め準備は済ませておいたので、トリガーを引くのに数秒とかからない。
金属音のような炸裂音が轟き、二発目の弾丸が炎龍を襲う。
発射された徹甲弾は張り巡らせたワイヤーの隙間を抜け、空間を切り裂き、“そこ”をピンポイントで破壊すべく飛ぶ。
818: 弥次郎 :2018/11/20(火) 19:03:08 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
そして、丁度良くかすめるようにして着弾した。炎龍の左膝を、完全に砕かない程度に調整して破壊したのだ。
支点となるべき足を片方砕かれ、炎龍は大きくバランスを失う。文字通り足の力を失った炎龍は、がくりと姿勢を崩してしまう。
この重要な場面で足が不意に攻撃を受けたことに、炎龍も驚いていた。その驚きと、次の瞬間に迸った興奮による痛覚の抑制を超える痛み。
その二つが合わさって、炎龍の動きに一瞬間の、そして致命的な硬直を生んでしまった。
『ナイスショット、02』
その硬直があれば、十分すぎた。加速し、逆関節特有の跳躍力を発揮したスターダストは、無防備にさらけ出された炎龍のその首を目がけ、レーザーブレードの刃を一気に振りぬいていた。
空中でのハイブーストと自由落下をうまく利用したブレードの一撃は、一瞬で炎龍の鱗の防御を食い破り、骨もまとめて切断した。
高熱のレーザーで切り裂いたためか、出血はなく、ただ肉が焦げたような特有の臭いが漂う。1000℃を軽く超える熱だ、さぞよく焼けたことだろう。
これが神話にでてくるような--例えば、ヒュドラのような怪物であれば即座に次の首が生えてくることだろう。
だが、これは単なる龍だ。そんな不死身の肉体を持つわけでもないし、切ったら生えてくるわけもない。これがアフリカに出るカイジュウなどなら、ひょっとすると高い再生能力で首を生やしてくるかもしれないが、そんなことはない。
ドサリと炎龍の首が地面に落ち、それまで暴れていた炎龍の胴体も急速に力を失い、地面に倒れ込む。
もはやピクリとも動くことはない。片翼を失う程度ならばなんとかなったかもしれないが、もはやこれは致命傷だ。
シュネーヴァイス・レギオンの面々は誰からとでもなく、静かに息を吐き出す。
『CPより各員。いい仕事だった、ミッションコンプリートだ!
ターゲットの損傷もほとんどないし、クライアントも文句を付けられんだろうな!』
『やりましたね、マエストロ!』
通信回線越しにCPのオペレーターたちの声がのり、ようやくACパイロット達も人心地ついた。
ようやく緊張がゆるんだ。戦闘時間は20分に満たないが、出撃してから適度に休んでいたとはいえ集中し続けていたのだ。
おまけに炎龍との命のやり取りをやるというのは、何度やったところで完全に慣れきることなどできはしない。
CPのいつもの声が、彼らを現実へと、非日常から日常へと引き戻してくれたのだ。
『01より02、ナイスフォローだ』
『そりゃどうも、01』
『まさかあそこまで暴れるなんてねぇ…過小評価しちゃってたかもしれない』
『だな。油断大敵、と理解はしていても、いつの間にか侮ってたみたいだ」
口々に感想を言い合いながらも、彼らは戦場の後始末に取り掛かる。
意外と多く必要となったワイヤーアンカーを回収し、持ち帰る用意をする。また、動かなくなった炎龍の傷口を03がレーザーブレードで焼き、先程から続いていた出血を止めておく。この血液も貴重なサンプルらしいので、血抜きするよりもこうした方がいい。
『しかし、こんなのが普通に生息しているってのは、この土地は案外危険がいっぱいなのかもしれんな』
『01に同意します。気まぐれに襲い掛かる脅威ほど、対処が難しいものはいません。
日本国自衛隊の近現代的な装備でさえも対処が難しい炎龍を、この文明レベルの土地の人間に対処せよというのは難しすぎるかと』
『単なる生き物っていうより、生きている災害みたいなもんですね』
『違いないな。ま、俺達にかかればこのようにってな。ハハハ」
ジョークを言い合う余裕もできた彼らに、マエストロは注意を促した。
『おいおい、各機。ミッションはコンプリートだがまだやることが残っているぞ。
炎龍の死体を回収するから、その作業の手伝いを頼む。お客さんの乗ってきたヘリ二台で運搬するからな、
02に以外の各機で取りこぼしが無いように回収をしてくれ』
『01、03、04了解』
『それと、一応お客さんたちが炎龍を直接見たいと言っているんでな、念のため周辺警戒を頼む。
まあ、生き返ることはないだろうが、討伐が完了したことを依頼主に確認してもらう必要もあるから、給料の内と思ってやってくれ』
『むぅ、残業かよ』
『しょうがないわねぇ…そういえば、マエストロ。私たちのACにも興味津々みたいだけど、そこら辺大丈夫なのかしら?』
『そこについては大洋連合の方から注意を行ってもらってはいるが…まあ、多少は目をつぶってやるべきだな。
取り立てて隠すようなものでもないだろう』
『そうね。じゃ、お仕事の続きと参りますか』
シュネーヴァイス・レギオンの傭兵たちは最後の仕事に取り掛かるべく、それぞれが動き出した。
819: 弥次郎 :2018/11/20(火) 19:03:49 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
戦闘終了から10分余りがたったころ、平成世界の日米の観戦武官と依頼主であるダークエルフの代表であるヤオを乗せたSTROKが到着した。
ヤオは伊丹に支えてもらいながら、そして日米の観戦武官たちははやる気持ちを抑えながらヘリを降りると、討伐された炎龍の元へと向かう。
特に依頼主であるヤオはいまだに信じられなかった。あの炎龍が、暴虐の塊、いや、生ける自然災害が本当に人の手によって倒されたのか。
戦闘の映像をヘリの中で見ることは出来ていたが、それでも、なお信じられなかった。
乗り物酔いとか言うもので覚束ない足元を支えてもらいながら、歩くこと数分。巨人---ACたちが炎龍の体の部品を一カ所に集め、輸送のための準備をしているところまで近づくことが出来て、ようやく炎龍の姿を直接見ることが出来た。
「これは……」
間違いなく、死んでいる。
翼の片方が根元から千切れ、片足も小さくはない怪我を負い、止めとばかりに首が落とされている。炎龍の瞳は虚ろで、生気はない。
巨人たちによって動かされるまま、されるがままになっており、動く気配など微塵も感じられなかった。本当に、殺されたのだ。
(ああ……)
「ヤ、ヤオさん!?」
それを認識した時、胸からこみ上げる感情が、どうにも止められなかった。
視界が歪み、身体の力が抜けて行ってしまう。どうしようもなく、感情が収まらない。
伊丹が慌ててヤオの体を支えるが、それもどこか遠くに感じている。あの、炎龍が。一族を苦しめた元凶が倒されている。
溢れ出る涙を流れるままに、ヤオは嗚咽を漏らすしかできなかった。どうしようもないほどの安堵と、喜びと、炎龍に襲われ、命を落とした故人を思う感情とが、綯交ぜになっていてどうにもならない。
「大丈夫ですか!?」
「す、すまない、イタミ殿…ただ、ただな…!」
そこから先が、言葉が出てこない。ただ、ただ、溢れ出る感情が止まらない。
「いいんです、いいんですよ…!」
ただ、傍らに寄り添い、声をかけてくれる伊丹の存在が、とてもありがたかった。今は、それで十分だったのだ。
■
『なんか見せつけられているな…俺達』
『ちょっと02、今良いところなんだから黙ってなさい!』
『やれやれ、若いってのはいいもんだね』
『これがロマンスというものですか、あまり興味がりませんでしたが、いいものですね』
『なんか、こうまで喜ばれるとはねぇ……』
『なんだ?報酬を受け取りにくくなったか?』
『では02は報酬無しの自腹ということで、我々で報酬を上納分を差し引きして山分けしましょう』
『ちょっ!それは流石にやめてくれよ!一番の功労者俺だろ!?なんで報酬無しなんだよ!?』
『…冗談ですよ、02』
『03、冗談を言うような性格じゃないだろ?』
『失礼な、これでもユーモアを介する人間です』
『冗談に聞こえねぇ…』
伊丹とヤオの様子を見ながら、傭兵たちの間でそんな会話がなされていたが、まあ些細なことであった。
820: 弥次郎 :2018/11/20(火) 19:05:40 HOST:p2729046-ipngn201308tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はこちらをお願いします。
多分OKなはずです。これで心置きなく第4話の執筆を再開できます…ほんと、失礼をいたしました。
読み返していたら「あれ?」となって確認してみたら…いやはや、書き手にあるまじきミスでしたね、本当に。
それでは改めて第四話をお待ちくださいませー
最終更新:2023年10月10日 23:05