486: 弥次郎 :2022/01/08(土) 23:32:31 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

大陸SRW GATE 自衛隊(ry編SS 「ワイルドハントの目覚め」(改訂版)



  • 特地 大日本企業連合陣地 ネクスト専用大型ガレージ


 大日本企業連合が特地に建造したガレージは俄かに大きな荷物が、というか兵器が届けられ、作業員たちが総出で搬入作業に取り掛かっていた。
 それは、人型兵器というよりは飛行機に近い形状を持っていた。
 大きく、重く、そして重圧感漂う巨躯。それは、戦いのためのものだった。
 その搬入作業を愛機を囲むキャットウォークから眺める大空流星は、それが何であるか察しがついていた。
ヴォルクルス戦が直近に迫っている状況で、ネクスト関連の大型航空機のようなものといえば、該当するものは一つしかない。

「V.O.B.Ⅱまで投入とは…上も真剣になっているってことかな」

 やがて、その巨体の鳥---V.O.B.Ⅱはハンガー内の専用スペースへと誘導され、固定される。
 ガレージで保護用の外装が徐々に解かれていくと、果たしてその威容が現れた。
 まるで武骨な鳥だ。航空機としては空力学を考慮したとは言い難い形状に、取り付けられた多数のブースターユニット。
機体各所には武装を設置するためのハードポイントや武装を搭載するための空白が存在している。
 そして、やや前方よりにある空白。そここそが、ネクストを格納し、固定するためのスペースだった。 
 そう、V.O.B.の発展形である以上、それはネクストを搭載して使われる兵器なのだ。

 単純な火力量と作戦行動半径などから、これ単独で小国なら丸ごと焼却出来るだけの力がある代物。
 攻撃面だけでなく、防御面でも追加のPA展開装置にテスラドライブによる機体負荷の軽減などで、前世において使った物とは比較にならない一物と化している。
 しかも、持ち込まれてきたのはこの一機だけでない。
 後方を見れば、十機以上は確認できる。余裕を持って作られているはずのガレージも些か狭く感じるほどだ。
これらが本気で攻撃を行えば、小国どころか、大国でさえも致命的な打撃を受けることは明らかだ。
 だから、そこまで集中運用されることもないこれがわざわざ送り込まれてきたのも、ヴォルクルスを見越しての事だろう。

「お疲れさまです、流星さん」
「桜子ちゃんか」

 流星は納入作業を見守るのを一時中断して、キャットウォークから桜子のいる階層まで下りる。
 彼女も愛機の調整に来たのだろうか、パイロットスーツに身を包んでいる。最も今の関心は搬入されてきた大型兵器の方へと向けられているが。
その視線の先にはV.O.B.Ⅱ。前世を含めて考えればV.O.B.Ⅲと呼ぶのが正しいだろうか?
ともあれ、人の技術が生み出した現代のワイルドハントはこうして集い始めたのだ。

「V.O.B.Ⅱ……ここまで大戦力を投じるのは久しぶりですね」
「そうだね、相手が数十万単位だからこそ、これを投入してまとめて焼き払おうって考えているんだろう」
「相手の数が圧倒的ですからね……ELS戦役の方がまだ楽ですけど、地上は地上で苦労するかもです」
「そういうことになる。私たち精鋭はヴォルクルス本体を目指してのISA戦術を行うことになる。
 変異しているとはいえ、ヴォルクルスは大軍を引き連れていて、尚且つ厄介な相手。
 とは言え、殺せない道理もない」
「ですね」

 指折り数えてみれば、主任、ハスラーワン、さらに駆けつけた各企業リンクス達とかなりの戦力が揃っている。
 鋼龍戦隊がおらず、大洋連合正規軍が各地へと分散していることを考慮すると、いくらかは劣る。
 だが、それでもトップクラスだろう。黒い鳥候補者である自分達がまとまっている時点で、並大抵の相手は倒せるだろうという自負もある。
 また、今回共同戦線を張ることになるグランゾンをはじめとした魔装機神組もいるのだ。負ける要素が少ない。

「グランゾンがいますし、ぶっちゃけあの機体だけでもよくないですか?」
「それでも大洋連合としても協力を惜しまない姿勢を示さないといけないからね。
 元々は大洋連合の問題であって、シュウ・シラカワ博士たちの協力が得られたのは本当に偶然に過ぎないわけだ。
 それなのに彼らに丸投げするなんて、失礼にもほどがある」
「確かに…」

 面子の問題はやっかいだ、と流星はため息をつく。
 彼とて、グランゾンが最強の機体、少なくとも地球圏ではトップクラスであることはよく知っている。
自分が全力で挑んでも、絶対に勝てないだろうというのは言うまでもなく、体験するまでもなく理解している。
 だが、それでも大洋連合としては動かねばならないし、所属している大日本企業連合としても動かなければならない。
特地に介入せざるを得ないとはいえ、そこに不誠実な態度を出してしまうのはよろしくないだろう。

487: 弥次郎 :2022/01/08(土) 23:34:21 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

「まあ、これも前世の事と同じようなことだと思えば、何ということもないけどね」
「企業の面子、ですかー…」
「あんまりいい思い出はないのかい?」

 まあ、と曖昧に桜子はうなずくしかない。
 有澤重工の次期後継ぎ、という肩書は意外と重い。前回、日企連世界では稀少なAMS適性の持ち主ということもあって何とかなった。
 だが、今回、このC.E.世界においてはAMS適性だけで片が付くほど簡単ではなかったのだ。それにふさわしい教養と実力を身に着けざるを得なかった。
その過程においては、かなりの苦労が付きまとった。主に、自分のことを快く思わない有象無象からの嫌がらせや妨害が相次いだのだ。
 義理の娘ということや、一般家庭出身から成り上がったというのは、社交界などでは時としてやり玉にあがるような要素だ。
それを笑って受け流せるくらいの仮面をかぶることはできるが、かと言って、それが不快ではないとは限らない。
企業の思惑や面子のために戦うというのがリンクスの宿命であるが、桜子はそこまで喜んで人殺しができるほど堕ちた人間にはなっていない。
まあ、殺した人間を数としか捉えていないので、歪ではないわけではないが、少なくとも一般的な感性も持ち合わせていると思ってはいる。

「私だって同じさ。でも、特地に思い入れが無いわけでもないしね」

 流星は、姿勢を入れ替え、天井を見上げながら言う。

「既視感(デジャヴ)と戦いばかりの人生かと思っていたけど、こういうファンタジーな世界に来ることが出来た。
 融合惑星で他の世界の文化なんかと触れ合う機会も得られている。とても充実しているよ」

 一つの世界、一つの器。閉じ込められている世界が他の世界とつながったことで、既視感は大きく打ち破られた。
これまでとやることが大きく変わるわけではないのだが、それぞれに歴史があり、人々の思いがあり、努力と積み重ねがあり、戦いがあった。
 それを読み取り、現場を知ることで、言いようのない興奮を流星は感じていた。ロマン主義すぎるかもしれないが、それが事実だった。

「なるほど、流星さんはそう思っていたんですね」
「桜子ちゃんは違うかい?」

 いえ、と少し口ごもり、桜子は答えを自分の中に探す。
 正直、深く考えすぎないようにしていた。自分が熱中できることに全力投球していれば、それでストレスやら諸々は解消できていた。
 脳筋だ、と他のリンクスには笑われてしまいそうだが、実際そうだったのだから仕方がない。
 それを正直に伝えるしか、桜子に選択肢はなかった。それ以外が、少し無粋に感じたのだ。

「私は……正直言えば関心がなかったですね。愛国心とか、忠誠心とか、あんまり考えたことも…ただ、好きなことをしただけですし」
「そうか…君らしいよ」

 次のV.O.B.Ⅱが搬入されてきて、整備士たちが群がって整備を開始した。
 間もなく武装の積み込みとネクストとの同期試験が始まるだろう。端末で更新されたスケジュールに依ればおよそ5時間後になる。
 それを確認し、流星は足を自室に向ける。起動試験と実機を飛ばしての慣らしもするとするならば、胃腸を空にしておく必要がある。
その為に代謝促進剤や消化促進剤などを飲み、しばらくの間水も食べ物も絶って絶食を強いられることになるだろう。

(あんまりあれの感覚は良いとは言えないんだけど……仕方がないかな)

 確かに優れた効果を発揮する薬品などがあるが、余り使い心地は良くない。
 空腹感は沸いてくるし、胃腸までも空にしてしまうのでそのアフターケアも行わなくてはならないのだし。
つまり、余り楽ではない。だが、それを厭うほど子供ではない。少なくとも、流星は割り切りができる人間だった。
 そして、桜子の方を振り返って言っておくことにした。

「意外と、そういうのもアリだと思う」
「そうですか?」

 歩きながら、桜子にそう投げかける。
 そう、別にそんな理由や動機でもいいのだ。
 人により、千差万別。ひとくくりにしようという方がおかしい。
 それに、自分達はリンクスであり、自由に戦う傭兵だ。ただ、企業に雇われていて、所属する集団のために戦っているに過ぎない。
それが無かったとしても、変わらずに戦い続けることができるだろう。何しろ、自分達はそういうものだからだ。

「好きなように生きて、好きなように死ぬ。誰の為でもなく」
「それが、私たちのやり方。でしたよね」
「そうだな」

 いつか、遠い記憶の中でも鮮明に覚えている言葉を交わし、二人は笑う。
 ヴォルクルスとの戦いが、もう間もなくと迫った時の事であった。

488: 弥次郎 :2022/01/08(土) 23:35:03 HOST:softbank126066071234.bbtec.net


【機体解説】

V.O.B.Ⅱ

全長:32m
全幅:34m
動力:コジマジェネレーター
防御機構:プライマルアーマー
特殊機関:テスラドライブ
搭乗員:-(ネクスト側から制御され、切り離した後はAIもしくは後方からの遠隔操縦に切り替わる)

武装:
大型連装ガトリングキャノン
対地ロケットコンテナ
レーザーキャノン
スプレットミサイルコンテナ
機首大型レールキャノン

概要:
 ネクストに装備可能な大型モジュールユニット。デンドロビウムやGNアームズなどと同じような物。
 元々日企連の世界においてはV.O.B.の発展形として開発されており、固定武装による火力増強も望めたユニットであった。
本世界ではその再現だけでなく、更なる発展と技術的な革新も含めて行われており、スペック向上を果たした。

 武装は機首に大型レールキャノン。胴体にはレーザーキャノンを2門とガトリングキャノンを搭載。
翼部や胴体のハードポイントにはミサイルやロケット弾などを搭載可能となっている。
いずれもネクストが搭載するものよりも大型化・高威力化がされており、その火力は馬鹿にならない。
また、それら以外にも必要に応じて武装を追加・携行することも可能であり、汎用性という面でも非常に優れている。

 本機を装着することによって、ネクストはそれまで以上の行動半径と火力と作戦行動時間、さらに増強された速度を発揮可能となる。
その為もあって、下手な小国であれば一機でも焼け野原とすることが可能となっている。
 しかし、その戦闘力の高さは逆に投入できる環境の制限を招くこととなった。
 即ち、攻撃能力が高くなりすぎたことで、周辺に与える影響が大きくなってしまったのである。
 逆に言えば、それらに目をつむっても良い環境においては遠慮なく投入されるということである。
そういう背景もあり、圧倒的多数の敵を効率的に排除する必要なる戦線ではネクストと共に多数が投入されることとなった。

489: 弥次郎 :2022/01/08(土) 23:35:39 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
黎明期に書いた奴なので、色々とぬけがあったりキャラがぶれたりとしていましたな…
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最終更新:2023年10月10日 23:07