206: ナハト :2018/08/14(火) 06:50:07
ハインリーケ・プリンツェシン・ツー・ザイン・ウィトゲンシュタは不機嫌だった。
それは那佳がいないことだった。
最初の二、三日はお調子者と会わなくて良かったと思っていたのだが
だんだんと、イラつき始めたのだった。音も沙汰もないのだ。
那佳と会えないことがこれほどにも辛かったのだろうか
ハインリーケはイラつきながらトランプをシャッフルして、ソリティアしようとしてたが
カードが弾かれ、床に落ちていくのを見たら、うがーーー!!と残りも投げ出したのである。
その様子を見ていた、イザベルとアドリアーナが声をかける
「なになにー」
「どうしたんだ?姫様」
「む・・・おぬしらには関係ない事じゃ」
とプイと顔を向けるも
「黒田さんのことでしょ」
「んなっ!わ・・・分かるのか!?」
「分からいでか。黒田さんがいなくて寂しいんでしょ?」
「ああ!あやつめは突然休暇を取る!と告げてわらわの前から消したのじゃ!!
数日たつのに連絡もない!あやつめはわらわの婚約者であるという自覚がないのか!?」
咆えるハインリーケにアドリアーナが冷静な一言
「その婚約をいつも認めておらぬ!と言ったのはハインリーケだよね」
「うぐっ」
「那佳はお調子者だのとか貴族の自覚が足りないだのとかいつも言ってたよねー」
「ぐぬぬぬ」
ハインリーケは睨みつけるも二人はどことなく吹く風である
「でもさー、こんなに長期間いなくなるってことはさー外で男を作って旅行でもしてんだろうなー」
「んなっ!」
イザベルの言葉にハインリーケが思わず声を上げる
「はははっ・・・・あ・・・あやつに・・・お・・・男が・・・で・・・できるわけなかろうって・・」
ハインリーケは平常心を保ちながら紅茶を飲もうとしていたが、カップがガチャガチャ震えていた
「まあ、冗談だけどさ」
「冗談じゃったのか!全く心臓に悪い冗談はやめよ!」
そういって、ホッと息をついたハインリーケは紅茶を飲む
「さておき、那佳が長期間隊を離れるってよっぽどだよね」
「うむ、ネウロイが現れていないとはいえウィッチの自覚が足らぬ!」
そういって、胸を張るハインリーケだったが次の言葉に崩れる
「もしかしたらさー、転属手続きに行ってるかもしれないね」
「なぬっ!」
崩れたハインリーケは立て直すと同時に激昂したかのようにイザベルにつめよる
「なぜじゃ!!なぜ!転属とかになるんじゃ!!」
「えー、だって姫様、いつも小言をしてるじゃないか。貴族がどうこうとか、態度がどうこうとか
ネウロイも撃墜した時もやれこの動きが悪いだのと褒めること一切なかったじゃないか」
「う・・・ぬ・・・・じゃが・・・それは・・・那佳の事を思って・・・・じゃ・・・・が・・・・」
「僕なら嫌になって転属届出したくなるねー。ここでは姫様が却下されるから、もっと上の人に行って掛け合ってると思うんだよー」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
207: ナハト :2018/08/14(火) 06:50:39
イザベルは意地悪しすぎたかなーと思い、冗談だよと口開こうとしたが
ブワっと泣き出したハインリーケにビビってしまう
「そ・・・そうか・・・那佳はわらわの事が嫌いになったのか・・・・」
「じょ・・・冗談だから、本気にしないでくれ!姫様!!悪かったから!!」
「そうだぞ!気にする必要ないぞ!黒田がハインリーケを嫌うはずが無かろう!!」
二人は必死に慰めるも泣き止まない
と、入り口から明るい声が響く
「ただいまー、皆さんげん「那佳ーーーーー!!」うわ、急に抱き付いてきて、どうしたんですか!?」
「わらわの事・・・・嫌いにならないでくれ!今までの小言とか謝るから、わらわからいなくならないでくれー!!
那佳がいなくなるとどうしようもなく駄目になるんじゃ!!いつまでも傍らにいてくれ!!
だから、転属届もやめてくれ!!お願いじゃ!!」
色々と言い出したハインリーケに那佳がナデナデしながらいう
「えーと・・・嫌いにならないですし、転属届も出しませんよ?」
「ホントか?」
「ホント、ホント」
「じゃが・・・なぜ!長期間いてくれなかったんじゃ!?」
「それはですねー」
ちょうど、手に持っていた籠から中身を取り出す
その中身は・・・
「これは・・・シュトレンか?」
「そうだよー。いつもハインリーケが食べたいと言ってたシュトレンだよ
ハンナ婆ちゃんのが食べたいと言ったから作り方学んで来たんだよー」
「な・・・なぜじゃ!どうして、態々学びに行ったんじゃ!?」
「えー、だってハインリーケは好きな物をあんまり言わないから
数少ないこのお菓子にしたんだよ。それに、今日、ハインリーケの誕生日じゃないですか」
「あ・・・・。」
その言葉にすっかり忘れていたハインリーケだった
那佳や隊長の業務に追われて忘れていたのだ
「そ・・・そのためにか・・・・お主はやはり大バカモノじゃ・・・」
「えー、そりゃ無いですよー」
那佳は口を尖らせつつシュトレンをお皿に置きナイフを入れて切り分ける
「はい、ハインリーケのだよ」
「う・・・む・・・頂こうか」
一口食べるなりポロポロ泣き出したハインリーケに
那佳は慌てだす
「ど・・・どうしたんですか!?不味かったんですか?」
「い・・・いや・・・嬉しさと美味しさが色々と混じってんのじゃ
このケーキ美味しいぞ。今まで食べたもので一番じゃ・・・」
「そうでしたかー。まだ沢山ありますからどんどん食べてくださいねー」
「うむ」
いつの間にかイザベルとアドリアーナがいなくなった二人きりの部屋でシュトレンの食べ愛をしたのであった・・・・・
「私も食べたい」
「お邪魔は良くないっすよ。剛己さん」
208: ナハト :2018/08/14(火) 06:51:09
終わり
プリン姫様お誕生日おめでとう
最終更新:2018年12月22日 13:19