598: 弥次郎 :2022/01/11(火) 20:54:04 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
憂鬱SRW GATE 自衛隊(ry編SS 「赤くて速くて角のあるアイツ」(改訂版)
AS-12 AVES。企業連が製造・販売を手掛ける、飛行型無人偵察機でもメジャーなMTである。
飛行型、と呼ばれるようにそのMTは飛行能力を有しているのが特徴だ。
ただ、その航続距離や最高速度などを通常の航空機と比べると、どうしても劣っているのが事実だ。
しかし、市街地にも踏み込める小回りの良さ、VTOL、ホバーによる滞空、その場での旋回能力など純然たる航空機では持っていない能力を持つのが特徴。
そうなればヘリの様なものか?と言われれば、その通りと答えるべきだろう。だが、ヘリなどとは比較にならない機動力も有している。
ましてMTの一種として早々に落とされるような軟な構造ではないし、機動兵器としての要素は十分に備えている。
各国軍の一部、あるいは州軍や地方警備部隊、PMCなどに配備されているそれらは、戦闘のみならず災害対応などでも大きな働きをしている。
そしてもう一つ、この無人偵察MTが使われている意外な使い道というものが存在していた。
ずばり、アグレッサーである。
- 『特地』 アルヌスの丘 地球連合拠点 シミュレーションルーム ステージタイプ46「市街地」
日本国陸上自衛隊 特地派遣部隊第三偵察部隊所属の伊丹耀司陸尉は、仮想の都市の中を駆け抜けていた。
無論、生身などではない。機械で作られた歩兵の内側に乗って、という形だ。
大洋連合から供与され、先行配備という形で実地訓練と運用を行っているKG-6 スレイプニールに乗っているのだ。
元々の設計段階で都市での運用も考えているKG-6 スレイプニールは、伊丹の慣れぬ操縦をその優れたOSによって補いつつ、その脚部で疾走していた。
機体の揺れや体にかかる負荷までも再現する精巧なシミュレーターで、伊丹は必死に操縦を続ける。
(こう言うのでも訓練なんだよなぁ…)
今回の訓練は、機動戦闘というものを学ぶ一環として、仮想都市での「鬼ごっこ」であった。
都市部に展開しているAVES-12のバリエーションである4機のAS-12R AVES/Rを僚機と共に追いかけ、撃破するというもの。
スレイプニール側は一般的な火器を使用可能であり、数発当てれば撃墜判定が出るという条件で臨むことになった。
最初は、知らされた自衛官たちは舐めてかかっていた。何しろ、飛び道具ありの鬼ごっこだというのだから。
追いかけて包囲して、撃てばおしまい。普通に考えれば、鬼の側である自分たちが圧倒的に優位なはずだったのだ。
だが、一見遊びに見えたそれが本当の難易度をむき出しにしたのは、演習開始からすぐのことであった。
AS-12R AVES/Rというのは、攻撃力ではなく機動能力にカスタマイズを施したバリエーションである。
その機動力は馬鹿にならず、特に危険度の高い地域での偵察活動を前提とした高級機なのだ。
それ故に、ひとたび解き放たれると早々に捕まえることの難しいMTである。ほかの機動兵器などならば追従できるし、倒せるものでしかない。
だが、逆に言えばこのMTを追いかけ、撃破するというのは非常に訓練になるのだ。殊更、兵科を超えたばかりの彼らにとっては。
立ち止まってのそのそと狙い、引き金を引くというのろまな動きではない、俊敏な動きが必要になる。
それは、動き回り、敵を追尾し、的確に追い詰め、撃破するという機動兵器が機動兵器たる所以を学ぶことにつながる。
また、飛び道具ありという鬼ごっこということで油断していたが、普通の鬼ごっこではない。平面ではなく立体の鬼ごっこなのだ。
正確に言うならば、平面起動が基本となる鬼が、立体的に空を飛ぶ鳥を追いかけるという鬼ごっこだ。
市街地という世界は狭く、同時に、広い。
ビルや建物で視界は狭くなる。視界は同じような色で満たされるので、目での視認が迷うことだってある。
それでいて、建物の谷間や隙間や裏には広い空間が広がっている。機械の巨人には狭くとも、機械の鳥には十分なほどに。
その領域こそ、AS-12 AVES
シリーズにとってはそういう場を前提に設計・開発・進化してきたが故に独壇場だった。
599: 弥次郎 :2022/01/11(火) 20:54:52 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
12機という数の優位から最初こそ余裕のある状態でシミュレーションに挑んだ伊丹達であったが、すぐにそれを後悔する羽目になった。
これまで述べたような状況に解き放たれ、十分なスペックを発揮できる相手が、捕まえられないのである。
『残り時間、5分です』
通信機越しにHQから告げられる残り時間に、伊丹は焦りを隠せなかった。
最初はレーダーでとらえられても、視認することさえ難しかった。
だが、時間をかければ、ターゲットのAS-12R AVES/Rの姿をカメラにとらえることができるようになっていた。
しかし、今度はそこから攻撃を仕掛けることが難しかった。索敵機能で敵機を捕捉することはできる。FCSで追従もできる。
だが、そこまで捉えることはできても、素早く逃げ回るAS-12R AVES/Rは、信じがたい運動性を発揮してこちらの攻撃をかいくぐって逃走してしまうのだ。
『すばしっこい!』
75㎜マシンガンの弾丸がまとまって襲い掛かるが、それらを器用にAS-12R AVES/Rは潜り抜け、ビルの合間に隠れてしまう。
隠れた後は匍匐飛行ともいうべき低空飛行で逃走を続行していく。それは、圧倒的に早い。そして、巧みだった。
普通ならば激突してしまうような速度で突っ込んでおきながらも、的確にビルの合間を抜け、射線を切って飛行しているのだ。
『逃がすな、追え!』
『標的、ルート5から8へ逃走!』
『ええい、くそ。A小隊、回り込め!C小隊とこっちで追い込む!』
『了解!』
『了解です!』
相手は、今のところ一定距離のところで浮遊してこちらを待ち構えている。
AIのルーチンとして、追跡してくる相手から一定以上離れないようにプログラムされている駄目だ。
だから、相手の位置と周囲の地形と建物の配置などを勘案し、追い詰めるプランを即興でくみ上げる必要がある。
伊丹の指示の元、B小隊機が脚部の安定翼を展開してホバーでの移動を開始。
A、C小隊は主脚に走りで追いかける。それぞれが、方向と即興で割り振られた役割を担いながらの全力。
しかし、必死の追走をかける彼らをあざ笑うが如く、AS-12R AVES/Rは赤いカラーリングの角状突起で風を切って飛び回る。
『一機しか落とせないとか屈辱的すぎる!』
そう、10分間という時間を与えられた彼らは、現在のところ一機しか撃墜できてはいない。
それが決して悪いわけではない。彼らのように人型機動兵器に乗り始めて間もないパイロットたちが一機落としている時点で大金星なのだ。
このような相手をするのはかなり駆け足の教育のためで、彼等は彼らなりにかなり頑張っている部類なのである。
それだけ平成世界の日米の危機感が高いということであり、人型機動兵器導入に力を注ごうと判断した結果だ。
そして、当然のことではあるが、現場の彼らはそのために日夜訓練に明け暮れていた。
『逃がすかよぉ!』
仮想の都市に、自衛官たちの声が響いた。
600: 弥次郎 :2022/01/11(火) 20:55:44 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
何やらwikiと連動したツイッターが凍結されるという騒ぎが起こっているようで…
心配ですが、何もできずなんとも歯がゆいことです
最終更新:2023年10月10日 23:08