623: リラックス :2019/07/01(月) 18:52:07 HOST:pw126182131228.27.panda-world.ne.jp
短いですがネタ

天の涙事件、小ネタ とある無政府地帯の話

主に間近にある覇権国家の一つである大日本帝国の意向により、中華統一は夢と消えた。

日英独をそれぞれバックに持つ軍閥や、あくまでも独自路線を維持しようとする者達、共産主義の残党や国を失い、奴隷とされながらも武器を持って独自の生存圏を確保しようとする元アメリカ人が入り乱れる無法地帯により世界有数の人口地帯となり得たポテンシャルを持つ大地は分割されていた。

アメリカや旧ソ連、そして中国軍や日本の旧式兵器が大量に流れ込む中華の大地で、それなりの武装を持つことは難しくなかったことから、北部を中心に少なくない領域が無政府状態となった。

そしてそんな地域に、天の涙事件後は新たに魔物という存在が参入する。

「畜生、バケモノが!」

魔物の大群による襲撃を受けた小さな村の住民たちは村の中に立てこもり、有りったけの武器で応戦した。

このような御時世、村の周りを囲う柵は可能な限り強化し、その周囲には空堀を掘り、更に物見櫓を建てて四六時中交代で見張りを立てたり、警鐘を用意して即座に村中に危険を知らせられる体制を取る、また食料の余剰と交換で武器を集めるなど、村人達も可能な限りの備えはしていた。

これが食い詰めた難民や軍崩れの匪賊の集まり程度の相手なら、十分に追い払うことが出来たかもしれない。

しかし、下手すると正規軍ですら壊滅させてしまう魔物相手には不足だった。

「ダメだ、数が多過ぎる!村を捨てて逃げよう!」

「馬鹿野郎! 村と畑を捨てて逃げたって飢え死にか野垂死にだ!!」

一人の男の言う通り、逃げるしかない状況なのは誰もが理解していたが、もう一人が言ったように、強力な支配者がいないこの地域において、村と畑を無くして放浪する難民に手を差し伸べる者などいない。

今、この場で魔物から逃れられたとしても、後に待ち受けているのは飢えによる緩慢な死か、同じ難民や匪賊と争って死ぬかの二択しかない。

それがわかっているからこそ、男達と女達の半分、体格の良い子供まであれば銃で、銃が無ければ弓矢や投石で、それさえも尽きれば刀剣や棍棒、農具まで持ち出して絶望的な抵抗を行った。

しかし、最終的には文字通り矢弾尽き刃折れ、疲れ果てた勇敢な村人達は等しく魔物の糧となった。

同じように、村で最も頑丈な建物である食料庫に身を隠していた女子供達もまた、ある者は首を食い千切られ、ある者は生きたままハラワタを貪り食われ、またある者は獲物の奪い合いをした魔物によって生きたまま身体を二つに割かれた。 

「ギャァァァァァァァ!!」

「助けてくれぇぇぇ!!」

「お母さぁぁぁん!!」

絶望と怨嗟の悲鳴がしばらく響き渡ったが、それもやがて収まると魔物達の食事の音だけが村の中を支配した。

それさえも収まると、一時空腹を満たした魔物達はまた新たな獲物を求めて移動を開始し、後には破壊されたかつて村だった物と、喰い散らかされた農作物、同じく喰い散らかされたかつて村人だった物だけが残された。

最終的に、このような無政府地帯でどれだけの村や人が魔物の犠牲者となったのか、それは現在に至ってもはっきりとは分からない。

しかし、それは決して珍しい光景ではなく、更に無政府地帯に限った話ですらなかったことも確かなようだ。

大陸の辺境などでは勿論のこと、覇権国家である日英独の本土ですら、こうした被害に遭う村が初期には少なくなかったという。

こうした事情から、魔物に対する警戒心と自警能力の強化、魔導技術の普及を訴える声が高まることになる。

必要性はともかく、治安維持を担当する警察などの頭を悩ませることになるのだが、それはまた別の話である。

624: リラックス :2019/07/01(月) 18:53:45 HOST:pw126182131228.27.panda-world.ne.jp
以上、何か電波が止まらない……

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最終更新:2019年07月09日 10:16