633: リラックス :2019/07/03(水) 12:05:51 HOST:pw126182075023.27.panda-world.ne.jp
よし、今のうちに
天の涙事件、小ネタ We are not demon's food!
天の涙事件以降、魔物の被害によって壊滅した村落は後を絶たなかった。
その生き残りや、親類や友人を魔物によって食い殺された者達の魔物に対する憎悪は筆舌しがたいものがあった。
涙ながらに魔物への恨みつらみを唱える彼らへの罪悪感のみが理由ではないが、日英独の三ヶ国は協力して対魔物用の兵器や技術を開発し、軍による討伐や巡回を増やすなどして出来る限りの対策をしていた。
しかし、それとて完璧ではなく、村落や集落を襲撃した魔物と村人達が交戦を行うようなケースは徐々に増えていった。
幸いにも、魔導技術の公開(主に日本の提供した擬似魔法)にある程度のGOサインが出たこと、それを組み込んだ防衛マニュアルの普及、対魔物戦を想定した緊急捕殺部隊の設立など、そうした対策は間違いなく効果を上げており、遺族の怒りや憎悪が政府の無為無策に向かうことは避けられた。
しかし、彼らの中には、「政府や軍にだけ負担を強いる訳にはいかない」と言って、立ち上がる者達もいた。
「俺たちは魔物の餌ではない!」
彼らはそう叫び、合法の範囲で武器の調達を行い、退役将校やマタギの協力の下に対魔物戦の訓練を積み、擬似魔法について習得した。
そして移動用に軍から払い下げのあったトラックや原動機付自転車を調達し、各地方を巡って魔物との終わらない戦いへと身を投じた。
あくまでも害獣駆除のボランティアとして、私費により行われていた活動は、徐々にこの活動が紙面などに取り上げられるようになるにつれて全国から寄付金が寄せられるようになり、大規模な活動となっていく。
流石にこうなると政府も放置出来ず、軍から人を派遣して訓練に協力したり、また逆に講師として招いて村落に魔物が現れた場合のマニュアルや訓練法の作成、及び村人に講演を行ったり訓練の協力をお願いするなど、可能な範囲での協力体制を整えている。
この動きは程なくして海外にも広まり、最初は各国政府も困惑したが、魔物対策という頭の痛い問題に対して有用であることは明らかであった為、最終的にそれぞれにバックアップを行うことを決定している。
「彼らこそ、愛国者の鑑である!」
とある太平洋沿岸部の国ではそう絶賛する見出しが一面を飾った。
これにより、資金面でスポンサーを得られるようになった彼らは、更に組織と活動を拡大させて行く。
誰かが叫び始めた「俺たちは魔物の餌ではない!」というスローガンの下に、魔物対策への関心は自治体から個人レベルまで広がりを見せていき、潜在的な彼らのシンパと言って良い者たちは急速に数を増やす。
一部では野放しの武力が大きくなり過ぎることに懸念が示されたことから、法人化の為の法整備や、政府からの依頼を受けて魔物退治を行って報酬を受け取るという体裁を整え、立場をグレーゾーンの沼から合法化して支援を行う代わりに、手綱を握る為に様々な対策を施している。
なお、関係者は政府も我々の働きを後押ししてくれている!と益々やる気を出すことになるのだが、関連の法整備などでちょっとしたデスマーチが担当部署で起きたというのは余談だ。
これにより、魔物による被害は戦前の野生動物による被害と同じか、少し低いくらいにまで抑えられるようになったことを考慮すれば、成果に見合わないとは言えないだろう。
「……冒険者、いや、ハンターギルド?」
「単純に魔物の駆除業者ってことでよいのではないかと」
某所でそんな声が囁かれたかどうかは定かではない。
ついでに余談だが、某国でとある亡き国家の生み出した生物兵器の生き残りが魔物化して人類に牙を剥くという特撮映画が作られるのだが、その魔物(劇中では怪獣)に立ち向かう人類側の希望として、彼らの勇姿が描かれたらしい。
634: リラックス :2019/07/03(水) 12:07:14 HOST:pw126182075023.27.panda-world.ne.jp
以上、We are not food for the demons.と悩んだが、元ネタ的にこっちにした。
最終更新:2019年07月09日 10:18