748 :名無しさん:2012/01/26(木) 20:58:10
憂鬱日本対馬要塞。
ここは日本のある意味最前線である。
大型の艦船は少ない。
この海域で求められるのは長時間活動可能な航空機であり、機動性と高速性を持つ小型艦艇なのである。
その理由は……。
「海鳥八号より入電!北東海域にて数三!高速艇です!」
「了解した。先回り可能な艦艇はいるか?」
急ぎ確認が行われるが、どの艦艇も該当海域に回りこむには時間が足りない。
担当は舌打ちし掛けて、急ぎ命令を下す。
「ただちに航空機を発進!艦艇が回り込む時間を稼げ!それと本土にも連絡を」
最悪、本土側で抑えてもらうしかない。
そう判断しての事であったが、結果から言えば日本軍の大型機が旋回を始めた事から失敗を悟ったのだろう。
漁船改造の高速艇は警告を受けて素直に引き返していった。
「毎回こう上手く行けばいいんだがな」
それでも引き下がらずに撃沈の手段を選ばざるをえない時もある。
そもそも漂流状態でやむをえず曳航せねばならない時もある。
今回の場合は……。
「犯罪組織の連中でしょうね。ああもあっさり引いた所を見ると密輸ですか」
「だろうな」
荷物が何かは余り考えたくない。
大方、麻薬とか銃器とかその辺だろう。
これが人を運んでいる場合はそう簡単にはいかない。
何しろ、組織の人員自体が最小限な上(乗っていない事も多い)、帰国してもろくな事にならないのは分かっているから密入国を図る連中が戻る事に反対するのだ。
結果、強硬突破を図り、最後は強制拿捕か撃沈になる。
拿捕にした所で衰弱して抵抗の余地がない時は楽だが、場合によっては角材などで抵抗する為に最悪武器の使用で射殺という事態に発展する事もある。
魚も資源の一つとして、保護や育成、養殖も進めてきた日本と違い、あちらは貧しい故だろう、根こそぎ獲り続けた結果、昨今では不漁も相次ぎ、豊漁の日本側へと密漁を図る連中も多い。
最も日本はまだ海に隔てられているからまだマシだ。
これが福建共和国などだと、国境線に未だ地雷原が設けられているという。
まあ、あちらの場合は個人レベル犯罪組織レベルどころか分裂し、内戦状態にある中国国内の軍閥という名の地方国家からその富を狙われての侵攻すらあるというから仕方のない事なのだろうが……。
「……密入国しても、仕事なんてないのにな」
そう、朝鮮半島を日本帝国は併合しなかった。
結果、密入国しても日本語が喋れる訳でもない朝鮮人はすぐばれ、強制送還だ。
「仕方ないですよ。すぐ近くに豊かな所があるって聞けば、行きたいのが人ってもんです」
苦笑しながら部下の一人が言う。
彼は東北の出身で、かつては貧しかった地方の悲哀をよく知っている。
「そうだな、だがだからといってそれを許す訳にはいかん。全員交代まで頑張ってくれ」
部下達に声をかけつつ、今日も対馬要塞は日本を守る要塞として君臨し続けている……。
最終更新:2012年01月27日 19:36