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898: リラックス :2019/08/05(月) 21:10:56 HOST:pw126233218157.20.panda-world.ne.jp
さて、ネタの投下

【ネタ】魔法や魔物が発生してしまった世界ですが、今度はゲートが開いてしまったようです。【β世界に派遣された男の憂鬱】

ゲートを越えてカリフォルニア共和国へ派遣された男は、昼食をとろうと入った店で本日何度目か分からない溜息を漏らしていた。

彼がいるのはカリフォルニア共和国で有名な連鎖店である大衆食堂の一角、目の前にあるのは季節野菜のグリルとチキンソテー、皿に盛り付けられたライスである。

アメリカ人らしく手軽な昼食を求めハンバーガーショップを探して数十分、息を切らし始めて妥協して入った店がそこだった。

憂鬱世界において、アメリカが崩壊したことやオーストラリアがあれやこれやと問題を起こしたことにより、史実のような安価な牛肉の供給体制は大きな影響を受けていたのだが、更に天の涙事件の発生が打撃を与えた。

牧畜は人口密度の低い山岳部や半砂漠地帯、大草原地帯などで盛んに営まれるものであり、天の涙事件の後に発生した魔物による被害を受けやすかったということは説明するまでもないだろう。

基本的に雑食性も雑食性を極めるような個体が珍しくもない魔物達にとって、放牧地もそこにいる家畜も、魅力的な餌場以外の何物でもなく、しかも下手な村落よりも襲撃に対して無防備と来たものである。

家畜とそこに従事する人員まで悉く食い尽くされ、設備を破壊されて首を括った牧畜農家は一時期社会問題として取り沙汰される程となり、魔物の発生により大打撃を受けた分野の一つとして今なお語り継がれている。

魔物の研究が進み、対策も改善された今では魔物狩人の常駐や牧畜犬の代用として開発された合成獣(魔物と既存の動物の混血により品種改良された生物の総称)の導入でマシになっているとはいえ、やはり魔物という存在を相手に非常に脆弱な体制であるリスク、

天の涙事件直後に失われたノウハウや遺伝子資源、人材の影響も小さくはなく、これにより牛肉の質もコストも、史実側と比較になるようなものではなく、守りやすい養鶏場や、より安価でコストも安い合成獣、及び(何処ぞの島国の妄執により他の分野より二歩も三歩も先んじて養殖体制の整った)海産物の方が手軽に手に入るようになり、親しまれるようになっていた。

ついでに言うなら転生者達の本気(暴走?)により、最初は『収穫効率が非常に高い』米を浸透させるという名目で焼きおにぎりを用いたライスバーガーから始まり、焼きおにぎりと串唐揚げのセットがちょっとしたブームを巻き起こすなど、日本製ファストフードとも言える文化を徐々に根付かせることに成功していた。

(何処に赴任しても、馴染み深い飯、そうでなくともせめて美味い飯が食いたい、という一派が全力を出したらしい)

更に飲食店関係の分野にいた転生者が大衆向け食堂として家族をターゲットにした所謂ファミリーレストランのチェーン店や、労働者向けカフェバーや居酒屋を展開、そこで安価な牛肉の入手が難しくなったことで豆腐ハンバーグや鯨肉のステーキ、鳥の唐揚げや海産系の天ぷらなどを提供した。

(ついでに、MMJにも食育を進めることに肯定的な一派が存在し、給食制度に日本食のメニューを組み込む際に都合が良いと、この活動を間接的に支援する動きがあった。)

こうしたメニューは当初は目新しさからだったが、手軽に楽しめる美味しさやお手頃な価格から徐々に市民権の獲得に成功している。

また、カフェバーや居酒屋の片隅には必ずと言って良いほどボードゲームやTRPGのルールブックが置かれ、無料での貸し出しが行われ、戦後を代表する文化の一つに数えられるようになる。

欧州が黒く染まり、アメリカが崩壊したことでTRPG文化の衰退と、それに伴う将来のゲームの衰退を懸念した一派が勢力圏の国々にTRPG文化を広める為に様々な方法で市民に親しみやすくするべく手を打った成果とも言える。

ゲートが開いた頃にはカフェバーなどでは数を減らしていたものの、コミックカフェやネットカフェといった新たな場所で、未だに一定の支持を受けている様を男も実際に見ることも出来た。

「ゲームマスター、よろしく頼めるかい?」

「ええ、勿論」

そうした場所には、必ずと言って良いほど無料貸し出しのTRPGのルールブックと、ゲームマスターを担当する専門の人員が常備されていた。

こうした光景はカリフォルニアのみならず、戦後、環太平洋地域のあちこちで見ることが出来、戦後を代表する文化の一つとして後世では教科書にさえ載ることもあるが、元の世界におけるテレビゲームの有名タイトルがTRPGとして学生達に遊ばれている光景というのは違和感の強い光景だった。

899: リラックス :2019/08/05(月) 21:11:41 HOST:pw126233218157.20.panda-world.ne.jp
そもそも此処に来るまでの道でもアルファベットの中に仮名文字の混じった表記が少なくなく、昼飯を食べながら読む本を求めて本屋に入れば、そこそこお硬い文化系についてまとめた雑誌の中に、アキハバ○などで見かけるような萌え絵を描かれた雑誌が当然のように並んでいるなど、色々と精神が削られる光景を目の当たりにすることになっていたのだが。

ちなみにこの世界において、日本軍の文化祭に端を発すると言われる同人誌作成というのは環太平洋において一種の文化的活動として相応の地位を築いており、萌え(MOE)というのも美術の一ジャンルとして根付いていた。

余談だが、その文化活動の一大イベントであるコミケは大規模な経済効果をもたらすとしてガチの利権闘争すら発生する重大案件となっており、大企業が専門のプロサークルを抱えたり、当落選に関して冗談でなく血が流れる事態になることは『普通』ということになっていたりするのだが、ここは置いておこう。

そういう訳で、ヘルシー志向なメニューが仮名交じり文で解説されたメニューに辟易しながら注文した目の前の料理を口に運びつつ、美味くはあるが親しみのある食事が中々にお目にかかれないという事実を突きつけられるのは、思いの外ストレスになるものだということを男は実感した。

他にも、先日足を運んだサンディエゴ海軍基地で体験したことを思い返す。

史実においてサンディエゴ海軍基地は2018年12月に、ミサイル巡洋艦8隻、ミサイル駆逐艦14隻、揚陸艦15隻、沿海域戦闘艦11隻、その他8隻の艦艇が所属し、太平洋艦隊の主要な母港であり、β世界におけるカリフォルニア共和国海軍にとっても同様に主要な母港である。

しかし、カリフォルニア共和国海軍というのは独立直後こそ空母3隻と戦艦2隻を擁し、腐っても世界第2位の大海軍の流れを汲む組織として、往時の姿を偲ばせる規模を(少なくとも額面上は)誇っており、

日本の口の悪い雑誌などで「没落した名家が長屋に移った」などと旧合衆国諸州から独立した国家を表現していた所から言葉を借りれば、「しかし、引っ越し先の長屋は一戸建てで小さいが庭もついていた」くらいの格好はついたのだが、

実態は独立直後に勃発した対墨戦争のように、仮想敵国としてメキシコや欧州枢軸に帰属した旧南部諸州を抱え、陸空軍に力を入れなければならない状況で、この規模の海軍を維持する余裕がある程、カリフォルニア共和国の経済規模は大きくなく、カリフォルニア共和国海軍はかなり早い段階で軽巡2隻と駆逐艦数隻を主力とする小規模海軍にスリムアップしている。

ここまで急速に軍縮が進んだ理由として、上記の主力艦は外貨獲得の為に主力艦不足に喘ぐ英国にレンタルされ、更に巡洋艦以下の艦艇に関しても、β世界のアメリカは

  • 欧州戦に参戦していない
  • イギリスとの共闘もない
  • 開戦早々に東海岸が壊滅

といった事情から、史実であった大西洋におけるUボートとの死闘も無ければイギリスとの技術提携も無し、関連の戦訓のフィードバックも無ければドクトリンの改善も無く、

対潜能力も対空能力も微妙、電探など新装備の導入も遅れ、それを運用するシステムも人材も育成出来ていないという有様で、対日戦争を生き延びた旧アメリカ製の艦艇は一部駆逐艦や巡洋艦が日本製の機材を搭載して使用された以外は早々に退役、解体された為だ。

対日戦争中ですら教育体制レベルでガタガタになっていたこともあり、日本から中古装備を導入したり、教官を派遣してもらわなければそもそも実用的な海軍としての能力は持てないという声すらあったというから、どれだけ深刻だったかという話である。

その後も日本のお下がりの駆逐艦を導入することはあったが、新型艦艇は60年代に入ってから3000トン級のミサイル駆逐艦ロングビーチの建造が認められ、カリフォルニア共和国初の国産かつ(当時として)最大の軍艦として取り沙汰されるという体たらくだ。

現在も3000トン級のミサイルフリゲートがカリフォルニア共和国海軍最大の軍艦であると説明されたことや、大型艦がいると思ったら旭日旗を掲げた在伽日本軍の艦艇だったりしたこともショックだったが、それ以上に衝撃的だったのは、このやり取りを通訳を介さなければならなかったという事実であった。

カリフォルニア共和国で使われている英語は古き良きアメリカ英語が日本勢力圏で用いられるイギリス英語や日本語の発音や文法の影響を受けて変化していった代物であり、史実アメリカ英語に慣れ親しんだ男の耳にはカリフォルニア英語というべき現地語が理解出来ないし、男の話す史実アメリカ英語はカリフォルニア人に通じなかったのだ。

ここはアメリカではない。

カリフォルニア人に向けて言えば喧嘩売ってんのか、と解釈されるであろう一言に、男がこの地において過ごした一週間の感想は要約することが出来た。

900: リラックス :2019/08/05(月) 21:12:13 HOST:pw126233218157.20.panda-world.ne.jp
以上、この後、カリフォルニア国立図書館に足を運んで歴史を調べた結果、アメリカ復活の為に有色人種が運動を起こし、それを各国が共同で弾圧・粛清したという事件について知ってしまった男のSAN値が音を立てて削られることになるが、それは別の話。

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最終更新:2025年03月15日 19:28