866: 弥次郎 :2019/08/30(金) 23:59:22 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp


大陸SEED支援ネタSS「南米戦線、異常なし。さして報告すべき事項無し」



        • 南アメリカ大陸上空


『予定ポイントΣを通過、ザフト制空領域に突入』

『対地・対空レーダーに反応はなし。周辺空域はクリアと判断』

『ミノフスキー粒子濃度はごく低濃度で安定。散布状況よし』

『予定通りオオトリ3はこれより直掩を展開させる。ハッチ開放、順次発艦開始』

『オオトリ1了解』

『オオトリ2了解』

 アッシマーで構成される直掩のTMS小隊の発艦を伝える声が回線に乗って聞こえてくる。
 淡々と、事務的にこなされる会話は、しかし緊張の糸がピンとはったもの。決して緩みやたわみがあるものではない。
さながら、全力で引っ張られているワイヤーのようなものだ。
 そんな彼らと比べて、自分はまるで何重にも包装された荷物だ、とダグ・シュナイド大尉は自分のMSの状況をひとりごちる。
 南米戦線での特殊任務---大型爆撃機であり輸送機である富嶽からのMSを用いたHALO降下(高高度降下低高度開傘)、そしてそこからの強行軍と敵基地の強襲---は何度か経験したことがある。南米に持ち込まれたとされるザフトの核兵器、さらに即席の兵士を仕立て上げる恐ろしい薬物、さらには謎の多いザフトの新型MSなど、この南米のカラーは極彩色の花々よりカオスだった。
そういった絵図の中での特殊任務というからには、機密性が高く、一般兵では難しいものが多い。ことさら、今回は単なる敵基地の破壊ではなく、強襲制圧という手加減の必要があり、尚且つスピードが求められる任務だった。

(だからこそ、こんな策を弄したわけなんだがな…)

 今、パイロットスーツに身を包んだシュナイドの体を納めているMSは、普段の降下に使われるパラシュートパックと射出用カーゴなどではなく、ステルス性を考慮に入れた射出ポッドに包まれている。NJで妨害されているレーダーをくぐり抜けるための特殊素材と塗料、さらにまるで棺桶の様な味気のないシンプルな形状のステルスボディを採用している。これらによって、存在しないゴースト、
死者の残留思念のように透明になり、感づかれることなく戦場へと躍り込むのだ。MSというのはかなりの高温物体であり、人間の10倍もの巨体を持ち、NJ影響下でも熱源探知に引っかかりやすいとてつもなく大きなオブジェクト。
そのために、一定高度までMSの主機出力を極限まで落としておき、人間でいえば半分死んだような状態で待機するのがMSにできる隠密行動の一つだ。
 さながら自分達という死体を捨てるためだ、と思ってしまう。MSサイズの死者。まあ、あくまでも例えではあるが、ある意味気味が悪い。
 高高度を飛行する富岳からそれによって投下された後は?
 自問し、自答する。隠密行動だ。そして、既定の高度に到達したところで、ポッドをパージ、パラシュートで速度をさらに削って着地というプロセスを経る。
 その後は基本的な戦闘協定(SOP)に基づいて展開、ザフト基地の制圧を行う。これにより、ザフトから見たら、まるで魔法か何かのように突如としてMSが出現したように思われることだろう。その奇襲効果に乗じて作戦行動を開始し、制圧する。

(しかし、無茶を少なからずしている作戦だな……いや、南米での行動自体がそうなのか)

 少なくはない南米戦線に展開されていた大洋連合の諜報網---元々は大西洋連邦の動向を探るためのそれ---が開戦後急遽対ザフトに切り替わり、こうして自分達が任務を行う際の指標(マーカー)として機能している。だが、信ぴょう性というのは高いとは言えないのだ。
南米という遠隔地であり仮想敵国の影響下にある地域で、本来は想定していない相手に諜報活動をするというのは、さぞかし苦労が多いのだろう。
だからこそ、実働部隊が積極投入され、足りない信頼性を実行に移す数でカバーするという方針に出たわけだ。

867: 弥次郎 :2019/08/31(土) 00:00:07 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

『カーゴ内、減圧完了』

『各種固定器具、スタビライザー、問題なし』

『降下、3分前』

 事務的なオペレーターたちの声が回線越しに聞こえてくる。
 富嶽の格納庫内部は既に減圧がなされ、射出に備えて準備が整えられている。
 投下されるポッドはMSを一機ずつ収めたものが4つ。加えて歩兵用のガンペリーも固定されて収容されている。
余剰スペースには回収品が載せられる予定だ。これが富嶽二機分で8個となり、MSの数で言えばシュナイド小隊とバックアップのフランク小隊合わせて8機。
隠密であり強襲を行うことなどを鑑みても、敵基地に展開あるいは存在しているであろう戦力に対してかなり少数での突入だ。
MSポッドの投下後に基地に対して富嶽から誘導爆弾が投下されることにはなっているが、陽動と奇襲効果を高めるためのものに過ぎない。
 だが、そこまで支援を行うのも今回襲撃するポイント---ザフト軍の有する物資集積所は、諜報部の引き当てたアタリの一つであるためだ。
物資中継所も兼ねており、目的に関する情報---どこからどこへ輸送されたのかの記録、あるいは現物---を手に入れる絶好の機会。
しかしながら、それだけに防備も固く、通常の潜入工作などでは内部への侵入はかなり厳しかった。
 ならば、一気にすべてを突破できる戦力をぶつけるべきだ。それはすなわち----MSである。
 作戦に至る経緯を反芻し終えて、シュナイドは改めて操縦桿を握りしめ直す。
 隠密からの強襲。危険と隣り合わせの作戦。敵防衛戦力が相応にいると思われる基地内のMS及び歩兵の敵となる戦車などを撃破。
さらに歩兵部隊への支援も行う必要がある。こちらのMSは多くはない。奇襲を行うこと、機密の多い作戦であること、さらに南米という遠隔地での戦力展開には限度があるということなどから、投入戦力は限定的だ。故にこそ、少数の精鋭部隊に対して、一般機ではなく高コストの特別機を割り当てることで展開できる数に対して発揮できる戦果を大きくしようと大洋連合は画策している。
今自分が身を納めているMS---ペイルライダー系列のMSもまたその一部だ。ハイエンドMSであるRX-78ガンダムの量産モデルの、そのまた試作モデル。
非常にややこしいのだが、ともかく、高度で手際の良さが求められる作戦には申し分が無い。あとは、自分達が如何に速やかに作戦を遂行できるのか。

(それだけが問題になる、か)

『降下、1分前。パイロットは衝撃に備えよ』

『ハッチ開放、クリア』

 吹きすさぶ風が、南米の空気を運んでくる。ロードマスターたちはそれにもまれていることだろう。ポッドに包まれたMSの、そのまた頑丈なコクピットの中に納まってるシュナイドにはわずかな振動としてのみ感じ取れる、ほんのささやかなものに過ぎない。
むしろ、このポッドに納められてから30分以上が経って、些か退屈していた中ではようやく生まれた刺激だ。
 そんな思考の海に沈む意識を引っ張り上げ、任務に戻らせる。感傷の時間は終わりだ、ただひたすらに仕事だけが待ち受けている。

『投下準備完了、オールクリア』

『投下、開始します』

868: 弥次郎 :2019/08/31(土) 00:00:59 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

 そして、ベクトル全てが下へと向いた。
 滑らかな、空力学的にも優れたMSポッドは適度に減速しながらも地表目がけた滑空を続ける。
 絶え間なく揺れ、時折滑空翼の微調整のログがコンピューターに表示されるのを見ながらも、パイロット達は暫しの空を堪能した。
 宇宙には存在しない、重力。この広大で途轍もないスケールの大地へと強引に縫い付けようと働く強力な力。宇宙暮らしの長いシュナイドは、コロニーの回転による人工的に生み出されたものではない、純粋な物理学の生み出す重力、地球の重力というものを感じた。
何と無慈悲で、容赦のないものなのだろうと思う。どれほど高く飛ぶ鳥も、飛行機も、大地を歩く人間も、なにもかもが、この重力というものに縛られ続けていたのだ。
 そして、感慨深い滑空の時間ははあっという間に終わりを告げる。コクピットに表示された高度計が、タイミングを指示したのだ。

『……今!』

 最初にポッドをパージしたのは、ステルス性の高いブラックライダー、シュナイドの乗る機体だった。
 ポッドに備え付けのドラッグシュートとポッド本体の空力ブレーキにより減速し、予め空中を滑空する間に、主機出力を十二分に上昇させたブラックライダーは南米の大地に降り立った。着地の衝撃を人間のように踏ん張って堪え、ブラックライダーは素早くメインウェポンであるソードオフショットガンを引き抜いて前進を選ぶ。

『ライダー1、タッチダウン』

 ツインアイセンサーを周囲に走らせれば、地雷、設置式のセンサーなどは見受けられない。
 だが、MSの空挺投入が露見する、あるいは露見している可能性は0ではない。となれば、迅速に目標の基地を攻撃する必要がある。

『神速で進むぞ、続け!』

 続けて着陸したホワイト、ペイル、レッドらも着地後速やかにブラックライダーの後に続き、メインウェポンを引き抜いて前進する。
それに続く形で、夜間迷彩を施した先行量産型のドライセンが合計4機---いずれも精鋭パイロットの操る---フランク小隊が前進する。
闇夜とジャングルをかき分け、MSたちは疾走を開始した。

 ザフト、そして基地を利用している南アフリカの対応は、非常に遅れたものとなってしまった。
 そも、この作戦において大洋連合は慎重に慎重を重ね、且つ奇襲効果を最大限発揮するためにミノフスキー粒子の散布を少量だが行っていた。
これはほんのわずかではあるが、NJ以上の隠匿効果をもたらし、大洋連合のMSの存在を隠匿することにつながっている。
 ザフト側も電子機器の不調やレーダーの精度の低下などでミノフスキー粒子の存在を知らないにしても、逆に察知できたのかもしれない。
だが、悲しいかなザフトの物資状況の悪さは夜間の目となるレーダー機器の不調や性能低下を引き起こしており、加えて、本国での製造ラインに若年工を動員したことによる著しい質の低下がここにきて影響を及ぼしていた。
これはこの物資集積所でさえも起こっていたことで、敵対勢力による電子的な攻撃であると判断するにはあまりにも条件が悪かったのであった。
 彼等を酷く攻めることはできないだろう。アフリカからの撤退より少し前から、兵站という面でザフトは苦労を重ね続けていたのだ。
どうしようもない国力の無さが、兵站を十全に維持できない状況を生み出し、ここに問題として噴き出している。

869: 弥次郎 :2019/08/31(土) 00:01:54 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
 よって、彼らが異常に気が付いたのは、基地目がけて落下して来る誘導物体の存在がレーダーにかかってからであった。

「ん、コイツは…?」
「どうした?」
「!?基地直上より落下物の反応!これh…」

 咄嗟に基地内部の緊急放送回線に流せたのは、そこまでだった。対地攻撃用のクラスター爆弾の群れが解き放たれ、ばら撒かれて炸裂したからだった。
一瞬で広範囲が爆炎に飲まれ、さらに広い範囲が一気に爆圧に押され、爆炎の光に焼かれる。どうやっても地上に出さざるを得ない構造物、例えば、MSハンガーや監視塔、滑走路、格納庫、レーダー設備、あるいは侵入を拒むための防壁やフェンス等々が被害を受ける。
また、建物も大きく揺れ動き、衝撃とあわせて内部の人間を大きく揺さぶった。

「敵襲だ!アラームを!」

 当直の指揮官の指示で基地内に警告が満ちる。だが、それは既に遅きに失した警告だった。
 投下された誘導爆弾に引き続き、着陸し、前進を開始したMS隊から放たれた弾道軌道を描くミサイルが追い打ちをかけたのだ。
堂々とこの攻撃を仕掛けたのは、すでに隠密行動をする必要が無いと判断したことと、既に十分な距離を詰めることに成功したことを示す。
何しろハイエンド機たるガンダムに順ずる性能を持つ試作MSと、最新鋭の量産型機だ。ザフト側の予想を上回る機動力を発揮していた。

「くっ、状況を報告しろ!」
「位置は不明確ですが敵襲!」
「当直のMS隊を迎撃に出せ!それと出せるMSは準備ができ次第出せ!」
「し、しかし格納庫に被害が出ており、どれほどMSがあるか…!」
「構わん!奇襲を喰らっているが、奇襲効果が発揮されるのは短い!数を展開して迎撃しろ!
 ここは物資が多く集められているんだ、ここが無抵抗にやられれば兵站にも影響が出る!急げ!」
「りょ、了解!うわ!?」

 ザフトの指揮系統がようやく対応の伝達を始めた時、ついに基地外縁部にシュナイド小隊が到達し、攻撃を開始した。
彼等の目的は敵の防衛戦力の殲滅、とりわけ、MSや通常兵器の排除だ。止まらずに疾走する彼らはあらかじめ決められたとおりに展開する。
優先的に狙うのは、MSを納める格納庫だ。動き出す前に潰す。火力を発揮するのはペイルライダーのFA化モデルであるペイルライダーキャバルリー。
シェキナーに内蔵されたジャイアントガトリング、ビームキャノン、マイクロミサイルを解き放ち、圧倒的な火力で蹂躙を始める。
その様は、まるでポップコーンがはじけるような、非現実的な破壊だった。対空砲や対空レーダー、あるいは陸路を阻む防壁などが順番に消し飛ぶ。

『ぞろぞろおいでなすったな!』

 破壊の嵐の中心であるペイルライダーキャバルリーは、当然だがヘイトを稼ぐ。だが、それをガードするのがホワイトライダーだった。
腕部のガトリングガンとビームライフルの射撃が、展開された戦車や雑多な対MS戦闘車両を駆逐する。二機の射撃の嵐は、基地の中を縦横に動きながらも続けられ、ザフトの基地はなすすべなくそれを浴び、その柔らかな内側を食い破られるしかなかった。

870: 弥次郎 :2019/08/31(土) 00:02:29 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

 猛威を振るうのはペイルライダーとホワイトライダーだけではない。駆けつけてきたMSを迎撃するドライセン、
そしてブラックライダーとレッドライダーがいる。対MS戦に特化した特機が二機、エースパイロットが乗り込んで連携を取り合っている。
それは、一つの殺戮機構となってザフトの防衛隊を処理していく。戦闘ではあるが、もはや処理の領域だ。
 ジンやシグーとその改良機が迎撃に出てくるのだが、二機の相手にはならない。反応性の違い、性能の違い、パイロットの違い。
残酷なほど積み重なった差異が、決定的な戦力差を生み出していた。

『おらよっと!』
<ち、ちくしょ…!>

 アクロバットなサマーソルトキックとそれから続く二丁マシンガンの嵐が、ジンをまた一機撃破する。と思った次の瞬間には、自分を狙って飛んできた無反動砲を回避しており、カウンターのように無反動砲を放ったジンの懐へと飛び込んでいた。
レッドライダーの赤い塗装は良い暗闇での迷彩となっていることに加え、低い姿勢でスラスターの推力に任せた疾走は、慌てているザフト側のパイロットには捕らえられない。次の瞬間には、ビームダガーが的確に腕をもぎ取り、回し蹴りを放ち、止めとばかりにコクピットを抉る。
 ブラックライダーの動きは、レッドライダーの様なアクロバティックな動きはない。だが、ヒートランサーを豪快に振り回し、シールドや追加装甲ごと機体を切り裂き、ねじ伏せていく光景はザフトのMSパイロット達をしても、信じがたい光景だった。

(ブリーフィングでの想定は過剰過ぎたか…?)

 ザフトの重要拠点を少数戦力で襲撃する。そのリスクは言うまでもない。MSの数・質ともに優れていることは間違いないだろうし、それ以外の迎撃態勢---対MSも想定した防衛設備や通常戦力---も充実しているだろうという想定の元、今回の作戦は策定され、実行された。
 だが、それもこうにもうまく進んでいくと、慎重にやりすぎたのではという思いが去来する。慢心というわけではないのだが、この程度ならばもっと大雑把に取り掛かってもいいのではと思った。

(いや……)

 重突撃銃で必死の反撃を放つジンたちの射線から飛び上がって回避しつつ、シュナイドは、上層部が警戒しているのがザフトだけではないと思いいたる。
ここは南米、大西洋連邦の裏庭と言える地域だ。当然、ここで大洋連合が大っぴらに行動することをあまり快くは思わないだろう。
戦後のことを考えれば、自分達の領域の喉元に仮想敵国が戦力をこうまで展開させているという事実は、ザフト以上に警戒し、危険視するものだ。
また、今のところは紳士協定が結ばれている状態ではあるが、やはり仮想敵のMSの運用や能力についての情報は気になるところなのだろう。

(だが、今は目の前の敵だ!)

 至近距離で放たれたショットガンの一撃が、身を守るすべをヒートランサーではぎ取られたジンを穴だらけにする。
止めの一撃で切り飛ばしてやれば、上半身と下半身が泣き別れになり、そのまま倒れ伏した。ブラックライダーにおびえ、逃げを選ぼうとしたMS達は、しかしそのブラックライダーの補佐に入っているドライセン達に囲まれる。

<畜生め…!>
『残念だったな』

 重厚な装甲をまといながらも、ペイルライダーに劣らない素早さを発揮したドライセンはそのビームキャノンとジャイアントバズーカで攻撃を始める。
ザフト側パイロットの予想以上に、ドライセンというのは素早いMSなのだ。それこそ、これまでのザク系列とは一線を画すほどに。
 基地内のMSなどが駆逐されるまで、さほどの時間はかからず、1時間と経たずに大洋連合軍は基地の制圧を完了してのけたのも、当然であった。

871: 弥次郎 :2019/08/31(土) 00:03:20 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp


      • ザフト南米戦線司令部基地




 ザフトの南米戦線を統括する総司令部基地は、夜間にもかかわらず多くの人員が行き交い、話し合い、連絡を取り、おのれに課せられた仕事をこなし続けているため、非常に賑やかであった。賑やかとは言うが、位置が露見しないように工夫がされた基地で、尚且つ、軍務を行うという緊張感を保ちながらのにぎやかさではあった。
 ここに集まるのは、単なる物資や兵力ではない。いくつかの中継点(カットアウト)や情報集結点(ノード)を介して集まる情報だ。
情報とは生き物であり、軍事行動の今後を決定するための判断材料となるものであり、言うなれば情報領域という一つの戦場における戦力だった。
如何に分析し、流れを読み、現実の情報とリンクさせ、判断を下す。南米戦線のブレインである既知の面目躍如といったところだろう。

「第76補給基地への物資配給は予定通り…」
「……第13哨戒基地の戦力配備依頼は今週に入って3度目か」
「第7管区の戦闘の被害情報の報告はまだかな…」

 巨大なモニターがいくつも並び、それを超える数のコンピューター端末が並ぶ指揮所は、オペレーターたちが各地の情報を確認し、情報を送り返したり、情報を要求したり、整理したりと忙しく働いている。彼らの仕事に昼と夜の際など存在しない。
情報のやり取りというのは昼も夜も関係のないものなのだし、連続的で、流動的なものだ。途切れることなく砂漠には、一定の人員を常に配置し続ける必要がある。とはいえ、人間というのは疲れるものだし、休みを欲するものだ。
ことさらに、基地の司令官ともなれば、四六時中基地の内外に気を配らなければならないポストで、激務の象徴のようなものだ。

「司令官、交代の時間です」
「おお、もうそんな時間か」

 他のオペレーターたちのシートよりも一段高くなった席で忙しく仕事をこなしていた司令官は、夜間の担当になっている副指令の声に振り返る。
疲労というものを形にしたような顔の司令官は、やっと訪れた交代の時間にほっとしていた。

「今日の動きはいかがでしたか?」
「そうだな、何カ所か、連合の襲撃があったようだ。それに、物資の回収にも妨害が入っている」
「連合の抵抗も激しさを増しておりますな…」

うむ、と頷いた司令官は、しかし、今日一日の南米戦線の様子を端的に引き継ぐ。

「さしたる問題はなく、南米戦線に異常はなしといったところだ」
「はっ、かしこまりました」

 それは、適応として感覚がマスキングされた言葉だった。
 南米戦線という地獄の消耗戦の中で、麻痺してしまった感性を端的に表す言葉だった。
 わずか二千万というプラントが地球連合に喧嘩を売った際の国力比を鑑みれば、今日の分だけの消耗でも卒倒すべき数値になっていただろう。
 しかし、そんな事実など、さしたる問題ではなかった。今日が終わり、また明日が来る。それだけが事実であり、他のことは匙なのだ。
国家の総力をぶつけ合う戦争という狂気は、まだ幼すぎる国家であるプラントを、確実にむしばんでいた。
 さながら、パッと見には分からないうちに穴を穿ってしまい、船をダメにしてしまうフナクイムシのように。
 プラントという国家を自称する集団は、すでに穴だらけの様相を示していた。覆いを済ませた彼らの感性はそれを平然と受け入れていたのだ。

872: 弥次郎 :2019/08/31(土) 00:04:21 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はご自由に。
MS戦が書きたかった!それと色々と書きたかった!なので書いた!
そんな感じのSSとなりました。
今さら大陸SEEDのSSを書くのもあれなんですがね…まあ、書きたかったので好きなように書くのがやはり楽しいです(小並

881: 弥次郎 :2019/08/31(土) 09:43:06 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
メインシステム、したらばモードを起動します…


誤字修正などを

868
×感慨深くも短い滑空の時間は
〇感慨深い滑空の時間は

869
×既知の中を縦横に動きながらも
〇基地の中を縦横に動きながらも

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最終更新:2019年09月02日 09:22