14: yukikaze :2019/08/30(金) 16:57:46 HOST:57.228.242.49.ap.seikyou.ne.jp
装甲巡洋艦ネタ。今度は
アメリカ。
レキシントン級装甲巡洋艦
排水量 25,000トン(基準排水量)
全長 246.4m
水線長 241.25m
最大幅 28.5m
吃水 9.2m
主缶 バブコック&ウィルコックス重油専焼水管缶12基
主機 ウェスチングハウス製ターボ電気推進システム4基4軸
出力 150,000hp
最大速力 33.0ノット
航続距離 15ノット/12,000海里
乗員 1,200名
燃料 重油:3,600t
兵装 Mk 7 50口径30.5cm3連装砲3基(前部2基 後部1基)
Mk 12 53口径15.2cm単装砲16基(片舷8基づつ)
Mk 13 25口径12.7cm単装高角砲6基(片舷3基づつ)
装甲 舷側 152mm
甲板 60mm
主砲防盾 305mm(前盾)、203mm(側盾)76mm(天蓋)
搭載機 水上機2機(艦尾)
同型艦 『レキシントン』『サラトガ』『ヨークタウン』
(解説)
ワシントン海軍軍縮条約により、アメリカ海軍は、英仏と同率の保有量を認められ、技術的アドバンテージを突きつけられていた日本に対しても、建造機関の縛りをかけることで、その差を詰める目途が立っていた。
故に、ワシントン海軍軍縮条約の勝者は
アメリカと見なされることも多いのだが、当のアメリカ海軍にしてみれば「そんな訳ねえだろ。真野にいいようにやられているじゃねえか」と、言う声が圧倒的であった。
何故か? 答えはアメリカ海軍の現有戦力の状況にあった。
この時期のアメリカ海軍は、ニューメキシコ級6隻を主力とし、これにネヴァダ級とニューヨーク級が補完戦力としているという代物であった。
ニューメキシコ級は、史実テネシー級をベースとしている艦ではあるが、山城型が27ノット、QE級が25ノット出ていたことを受けて、史実よりも機関出力を増大させ(同時に史実よりも全長を増やした。)非防御区画は増えたものの、23ノット強出すことに成功した艦であった。
アメリカ海軍も、完成した当初はその性能に満足していたのだが、厄介なのは、日本海軍は山城型をイギリス海軍はアドミラル級を偵察艦隊として利用できるのに対し、ニューメキシコ級では、速度の問題から、偵察艦隊として活用するのは困難であった。
では、残りの排水量で作ればいいじゃないかと思われるだろうが、これはなかなかに困難であった。
最大の理由は、アメリカ海軍がこの時期、タービン機関の開発に手間取っており、代わってターボ発電機推進を重視していたことであった。
この形式の利点はタービン機関を簡素化が可能で、直結タービンの欠点である低速時の燃費の悪化が少ない利点があった。また防御上の利点ではボイラー室と推進機関の構成に自由度が高かった。
ただし、万能と言う訳ではなく、動力の伝達ロスがタービン機関の約5倍であり、高馬力を目指せば目指すほどロスが酷くなるという問題を抱えていたことや、発電機と電動モーターの小型化が難しく、機関重量が増すというデメリットもあった。
実際、アメリカ海軍が計画していた巡洋戦艦案では、35ノットの高速力を出すために、ボイラーが24基必要(しかも12基を防御甲板の上に置かざるを得ないという正気を疑う配置である)と計算されておりこの高馬力機関の取得問題が、アメリカ海軍にとって悩みの種であった。
15: yukikaze :2019/08/30(金) 16:58:35 HOST:57.228.242.49.ap.seikyou.ne.jp
更に言えば、この高速戦艦の主砲をどうするのかという問題があった。
山城型にしろアドミラル級にしろ、主砲口径は15インチクラスである。
ならばアメリカ海軍としても、最低でもニューメキシコ級で採用した50口径14インチ砲12門か、16インチ以上の主砲を8門程度は必要なのだが、30ノット以上の艦で同種主砲を積んだ場合、4万トンクラスは確定であり、しかも防御に難がでるのも明らかであった。
更に言えば、16インチ以上の艦については6隻までと決まっていることから、防御力に問題がでるであろう高速戦艦に、16インチ以上の主砲を持たせることには、アメリカ海軍は消極的であった。
結果的に、アメリカ海軍は、イギリスの我儘で出来た装甲巡洋艦と、20センチ砲巡洋艦による偵察艦隊を編制することによって、現状の対応を行うことに決定した。
無論、アドミラル級などとまともに戦えば、蹴散らされること確定であるが、アドミラル級よりも優速であれば、早期離脱も簡単であるし、また相手の20センチ砲巡洋艦や装甲巡洋艦相手に対応できる攻防能力さえあれば、偵察艦隊としての役目を果たされるものと判断されたのである。
ある意味
アメリカらしい合理的な割り切り方と言えるであろう。(だからこそロンドン軍縮条約で、重巡洋艦の規制について猛反発することになるのだが。)
以下、同級について解説する。
主砲については、ワイオミング級で使用したMk 7 50口径30.5cmを、新設計された3連装砲で3基搭載している。
砲塔の設計については、ニューメキシコ級(史実テネシー級)と同様の機構となっている。
なお、使用する砲弾については、従来の砲弾よりも25%増加した新型砲弾にする予定もあったが、予算の問題で取り止められている。
また、ニューメキシコ級と同様、砲塔を小型化する為に、砲と砲の間隔を狭めたことで、砲弾の干渉が発生し、遠距離の命中率は『極めて劣悪』と評されており、何とかマシなレベルにまで落ち着いたのは第二次大戦直前になってからであった。
副砲については、軽量化の為に、42センチ砲戦艦『コロラド級』で採用した53口径15.2cm単装砲をケースメイト式で採用している。
海軍としては、砲塔化したかったのだが、こちらについては軽量化の為に諦めている。
なお、第二次大戦時には、対空能力強化の為、全て取り外されることになる。
防御については『20センチ砲巡洋艦相手に主要区画が貫かれないこと』『装甲巡洋艦相手に砲塔が貫かれないこと』と割り切られており、同種艦船である『聖人級』『天城級』『ノルマンディー級』『ジュリオ・チェザーレ』と比べると、垂直・水平装甲共に劣勢であった。
高馬力機関の問題に足を引っ張られた部分であるといえるのだが、それでも重巡洋艦相手には確実に完封できる(魚雷を喰らわなければ)防御能力ではあった。
16: yukikaze :2019/08/30(金) 17:07:16 HOST:57.228.242.49.ap.seikyou.ne.jp
また、水雷防御においては、同艦ではシフト配置を採用することによって効堪性を高めてはいたものの、艦内部には衝撃吸収層が1層しかなく、これより後に建造された『エンタープライズ級』空母よりも劣っていた。
3番艦のヨークタウンが、Uボートの雷撃を3発受けて沈没したのも、水雷防御区画の幅が足りずに、魚雷の威力に耐え切れずに、多量の浸水を抑えきれなかったからである。
機関については、バブコック&ウィルコックス重油専焼水管缶12基を備え、ターボ電気推進システムを採用している。
これにより、同艦は33ノットという高速力を有することになったのだが、その代償として、船体にかかる機関重量の割合が大きくなり、結果的に防御力の低さを受け入れざるを得ない羽目になっている。
なお、同艦の発電量は、エンタープライズ級と並んで、アメリカ海軍でも随一であり、災害時の発電供給で、州知事から感謝状が贈られたり、戦時改装でもその発電量から、最新の電探を装備することが可能となっている。
余談ではあるが、その機関の特質上、後進で30ノット近く出せるという特技を持っており、演習時にこれを見せつけられた相手方艦隊の指揮官は『酔っぱらっているのか? あのレディ達は』と、呆然と呟いたとされる。(以降、あだ名に『酔いどれ〇〇』が加わったのは言うまでもない。)なお運動性については、それほど悪くはなく、巡洋艦ほど無理はできないが、及第点とされていた。
本級は、1927年から順次就役しており、籠マストを廃止し、塔型艦橋を初めて採用した艦艇であったことから『レディレックス』『レディサラ』『レディヨーク』と、親しみを込めて呼ばれることになる。
(もっとも機関に予算がかかったことから、『金のかかる女優』扱いする者もいたのだが)
第二次大戦時は、防御火力の低さから、対空火力増強の改装が施され、空母機動艦隊の護衛役として重宝がられることになる。
改装後は、38口径12.7cm連装高角砲を8基備え、日本海軍からライセンス生産した50口径76mm単装速射砲8基とともに濃密な対空火力を発揮するし、76mm砲はその発射速度から「海のトミーガン」とまで呼ばれ、給弾手以外からは絶賛されることになる。
(給弾手にとっては「弾入れる俺達の体力考えやがれ」と悪評散々であったが)
特に『サラトガ』は、艦隊司令部機能も有していたことから、智将スプルーアンズ中将が、空母機動艦隊の旗艦として使用しており、後にアイオワ級戦艦が配属されても、頑として『サラトガ』から将旗を移そうとしなかった程、愛着を覚えられていた。(スプルーアンス自身が、『サラトガ』の副長になっていたのが一番の理由)
同級は、戦没した『ヨークタウン』以外は、戦争終了後に予備役に編入され、武勲艦である『サラトガ』だけは記念艦として残してくれと運動されるも、結果的に解体されることになる。
17: yukikaze :2019/08/30(金) 17:29:50 HOST:57.228.242.49.ap.seikyou.ne.jp
投下終了。
巡洋戦艦ではなく装甲巡洋艦になったレキシントン級のお話。
史実でもアメリカ海軍は、高速戦艦群と低速戦艦群に分けて整備しようとしていた訳ですがネックとなったのが高馬力タービンの開発に遅れを取っていたことで、結果的に高速戦艦の整備に後れを取ることになります。
1920年代のあの時期に、42センチ砲搭載して高速戦艦出来るかというと、技術的に無理とは言いませんが相当歪みが発生することになり、一方でアメリカ海軍としても、長門型と互角に戦える艦を欲していたことから最終的に『高速戦艦』は諦めるだろうなあと。(なおこれはこれで『コロラド級』の次の艦どうするかで、アメリカ海軍死ぬほど悩むと思います。1934年にはニューヨーク級代艦できるんで、42センチ砲戦艦の最後の2枠が建造できるのですが、『コロラド級』4隻が23ノットクラスなので、こいつらと同レベルにするかどうかの問題ありますし)
でも偵察艦隊がないと食い荒らされるの必至なので、装甲巡洋艦までとは戦うことができ、アドミラル級と会えば逃げれる性能を持つレキシントン級が作られる余地があると。
勿論、こいつだけでは重巡に囲まれれば万が一もあるので、護衛役の重巡も必要と。
そりゃあ、アメリカ海軍は重巡の制限なんて飲めませんわな。
しかしこの艦、よく言えば「任務に割り切った艦」で、悪く言えば「機能特化しすぎていないか?」
ただ、発電量やらに余裕があるお蔭で、時代に見合った改装も出来たのは幸運だったなあと。
26: 銑鉄 :2019/08/31(土) 00:42:37 HOST:p482107-ipngn200410kanazawa.ishikawa.ocn.ne.jp
yukikaze氏、乙です。
史実のレキシントン級は6~12インチの主砲を持ち35ノット出せる大型戦闘艦から始まって紆余曲折の末ああなった訳ですが、この世界では条約の縛りがかえって良好に働いて良い艦になった感じですね。
フランスの同種艦船で『ブルターニュ級』とありますが、前スレのノルマンディー級とは別に存在するのですか?
27: yukikaze :2019/08/31(土) 00:47:20 HOST:57.228.242.49.ap.seikyou.ne.jp
26
ゴメン。それ単に書き間違え。ノルマンディー級が正しいです。
ブルターニュ級は別で使う予定の艦名だわ。
31: 700 :2019/08/31(土) 06:27:12 HOST:KD119105029058.ppp-bb.dion.ne.jp
パブリック&ウィルコックス重油専焼水管缶
とあるけど
バブコック&ウィルコックスでは?
#名前が違う理由付きエピソードは前スレにはなかったと思うんですが。
33: yukikaze :2019/08/31(土) 12:39:39 HOST:14.228.242.49.ap.seikyou.ne.jp
31
ゴメン。それも打ち間違いだわ・・・
最終更新:2019年09月02日 10:28