34: yukikaze :2019/08/31(土) 18:00:21 HOST:14.228.242.49.ap.seikyou.ne.jp
そんで出来たぞ。日本海軍装甲巡洋艦。
天城型装甲巡洋艦
排水量 25,000トン(基準排水量:公称)
全長 215.14m
水線長 209.0m
最大幅 31.0m
吃水 7.3m
主缶 ロ号艦本式缶8基
主機 艦本式高中低圧タービン2基+艦本式13号10型ディーゼル6基4軸
出力 128,000馬力
最大速力 30ノット
航続距離 18ノット/10,000海里
乗員 1,400名
燃料 重油:3,200t
兵装 45口径30.5cm砲3連装2基(前部集中)
40口径12.7cm連装高角砲6基(舷側それぞれ2基。後部2基)
60口径40mm4連装機関砲12基
装甲 舷側 280mm(最厚。15度傾斜)
甲板 150mm
主砲防盾 330mm(前盾)、250mm(側盾)150mm(天蓋)
搭載機 水上機3機(艦尾)
同型艦『天城』『赤城』
(解説)
マル二計画において建造された日本海軍最後の装甲巡洋艦である。
別名『統合指揮艦』とも称されるように、本型の最大の特徴は『大規模艦隊の総指揮を可能とする能力』にあり、第二次大戦においては、遣欧派遣艦隊の旗艦として重宝されることになる。
ワシントン海軍軍縮条約において、日本海軍は空母建造枠の拡充と引き換えに、装甲巡洋艦の建造枠を譲歩している。
当時、航空機の能力が未だ低いことを考えれば、博打と言ってもいい決定ではあったのだが、代表を勤めていたのが、日本海海戦の英雄である真野元帥であり、真野が「これからの海戦は2次元ではなく3次元の戦いを前提として組み込む必要がある」と提唱(なお、この理論にもっとも意欲的に学んでいたのが、アメリカ海軍のキング提督であり、(史実のスリの一件もなかったこともあって)、真野と手紙で議論を交わしていた。(これは真野が死ぬまで続いた))していたことを考えれば、真野の先見の明を誇るべきであっただろう。
結果的に日本海軍は、扶桑型戦艦のうち『秋津島』と『八島』を装甲巡洋艦枠に移し替えることでお茶を濁している。
まあ日本海軍自身も、装甲巡洋艦や重巡洋艦をどのようにドクトリンに組み込むかで悩んでいる状況であったことから、新造艦枠があってもどう使っていいかわからないという現状ではあったのだが。
こうした状況がようやく落ち着いたのが1920年代末であり、実用的と言ってよい28式艦上攻撃機(史実96式艦攻)や27式艦上爆撃機(史実94式艦爆)が実戦配備され、29式陸上攻撃機(史実96式陸攻)の実戦配備もまじかになったことで、日本海軍は「航空戦力を主戦力とし、水上艦艇は、航空攻撃で打撃を受けた敵部隊の被害を拡大させる戦果拡大役」としての役割を担わさせることになる。
これによりようやく日本海軍は、重巡洋艦を「敵艦隊への切り込み役」としての役割を与えることになるのだが、その一方で新たな問題点が浮き彫りになることになる。
当時の航空機の航続距離はと言えば、大体1,400km程度である。
無論、実際の戦闘行動半径はと言えば、片道300kmと考えれば御の字であろうか。
当時の日本海軍の艦隊の巡航速度が14ノット程度であったことを考えれば、航空攻撃開始後から敵艦隊に向けて突っ走った場合、敵艦隊と会敵するのは、およそ12時間程度である。(無論、誤差はあるが)仮に朝一に航空攻撃を仕掛けたとして、敵艦隊とこちらの水上艦隊がかち合うのは、どんなに速くても夕方以降となる。つまり『夜戦』にもつれ込む可能性が高いという状況であった。
(これは艦載機の戦闘行動半径が伸びれば伸びる程看過しえない問題点になった。)
35: yukikaze :2019/08/31(土) 18:01:57 HOST:14.228.242.49.ap.seikyou.ne.jp
これを受けて日本海軍は、大規模艦隊による夜戦を図上演習や実際の演習で試してみたのだが、結果は散々であった。
まあ当たり前と言えば当たり前で、そもそも日本海海戦よりも規模が拡大している状況で、昼間の海戦ですら指揮運用に限界が生じている状況で、更に視界が悪い夜での大規模艦隊運用など、混乱するなというのが無理な話であった。
特に、実際の演習において、夜戦部隊を統括していた第二艦隊の『北海』(指揮運用の為に臨時編入)が、相手方艦隊に突入して司令部もろとも爆沈判定を喫した時は、大混乱のまま各個撃破を受ける事になり、統括官であった海軍幕僚長が、堪らず演習中止を宣言した程であった。
(この時、海軍幕僚長は「史上最低の演習」と酷評し、同席していた伏見宮軍事参議官が「演習とは、問題点を洗い出し、後に繋げるための物でもありましょう」と、やんわりと窘めている。)
この時の一件は『海軍甲事件』と呼ばれ、徹底的な分析をされることになるのだが、最大の理由は「夜戦において大艦隊を指揮統括するだけの能力がどの艦にもなく、更に統括艦が、戦法に基づき突撃してしまうため、自戦隊の指揮だけで手いっぱいになりどうにもならない」という、指揮官の能力云々ではどうにもならない問題であった。
報告書を見た件の海軍幕僚長が「本職の不明であった」と、開口一番自らの発言を謝罪し、その後解決策を指示した後に、自らの不明を理由に職を辞す(一説には、伏見宮の苦言を相当気にしていたとされる。この世界では、皇族軍人は、慣例で、大臣や幕僚長、司令長官にはなれないことになっていたが、だからといって無視してよい存在でもなかった。)ことにもなったのだが、海軍としても指揮能力を強めた艦を新規に建造する必要が生じたのである。
そうした中で、装甲巡洋艦枠というのは、海軍にとって誠に都合の良い代物であった。
指揮統括艦である以上、この艦の役割は、敵艦との殴り合いではなく、あくまで自艦隊の指揮運用であり、戦艦を当てるとすると、貴重な砲撃戦力が減少し、かといって重巡洋艦では指揮能力が限定的であることを考えれば、「何に使っていいかわからない」装甲巡洋艦は、適度な大きさでもあった。
無論、一部には「指揮統括に徹するのならば、揚陸艦をベースにした艦にした方が維持費用的に良いのでは」という意見もあったのだが、艦隊側からは「敵水上部隊が殴り込みに来た時、ある程度の自衛能力は必要であり、揚陸艦ベースであると継戦能力に問題がある」という理由で、装甲巡洋艦枠が利用されることになる。
以下、本級について解説する。
主砲については、扶桑型で利用された45口径30.5cm砲を新規設計した3連装砲に搭載して、2基備えている。
一部には、扶桑型の連装砲塔を結合させて4連装砲にすればという意見もあったのだが、自衛用としては過剰であるとして、3連装砲2基6門に抑えこんでいる。
これは列強の装甲巡洋艦としては一番火力が低く、海外の一部評価では、その点で低評価にされたりもしているのだが、これはもう「そもそもの運用が違う」で切り捨てられる類であろう。
副砲については、両用砲として、40口径12.7㎝連装高角砲を、砲塔形式として6基備えている。
海軍としては、本艦を「艦隊防空指揮艦」としても活用したいと考えていることと、指揮統括艦が敵航空攻撃によって打撃を受ける訳にはいかないという点から、防空火力については一切手を抜いていない。
なお、後部の連装高角砲については、第二次大戦中の改装によって、41式艦対空誘導弾に換装され、40mm4連装機関砲についても、50口径76mm単装速射砲に換装されるなど、防空火力の強化は推し進められており、独仏軍の空対艦攻撃に対し、完封勝利を挙げている。
(この防空火力を見たハルゼー提督が「あの艦を我が軍にも欲しい」と、熱望し、遣欧艦隊にレンタルを希望する程であった。)
防御については、巡洋艦や装甲巡洋艦はもとより、戦艦クラスであっても、ある程度は耐えるように固めている。
防御装甲の配置は、長門型に準じた配置とされ、特に水中防御に関して注意が払われている。
これは、同艦の交戦の想定が、敵戦艦による砲撃よりも、敵の水雷戦隊による魚雷攻撃の方が多いと見なされており、衝撃吸収層の間隔を広げる為に、速度面の水中抵抗のデメリットを理解した上で、長門型と同じ装甲配置を採用している。(なお、水中防御用として、50mm防御用装甲が張られている。)
もっとも、垂直装甲は、傾斜装甲としたことによって、実質340mm近い性能を有しており、水平装甲も主要部全体に150mm備え、更に最上部甲板や下部甲板にも断片防御として20mm近い装甲があるなど、徹底的に防御に気を使っている。
36: yukikaze :2019/08/31(土) 18:02:43 HOST:14.228.242.49.ap.seikyou.ne.jp
機関については、日本海軍の水上戦闘艦として唯一と言っていい、タービンとディーゼルの混合艦となっている。
これは、指揮統括艦である以上、膨大な電力が利用されると判断されたが故であり、発電用の小型ディーゼルだけでは不足するという判断から、日本海軍が漸く実用化できた大馬力2サイクルディーゼルエンジンを採用し、それにも発電機を直結させるということをしている。
これにより、同級の発電量は、16,000kwという(当時としては破格の)能力を発揮している。
ただし、2サイクルディーゼルエンジンについては、未だ排気ターボ過給機構が完成しておらず、高馬力を狙ったことにより不具合が頻発し、何とか安定して使えるようになっても、維持費用が馬鹿にならず、機関課員からは「妖怪食っちゃ寝」と長らく言われていた。
本級では外側2軸をディーゼル機関とし、それぞれディーゼル3基をフルカン継手で連結し、内側2軸をタービン機関とし、巡航時はディーゼル推進を利用することになる。
なお、ディーゼルエンジンについては、6基合計58,000馬力であったが、快調に動いている時は非情に燃費が良い機関でもあり、同機関の改良型である15号10型ディーゼルは、排気ターボ過給器を搭載し、難燃性で粘度が高いためにそれまで利用できなかった低質油(C重油)でも使えるようになったことから、補助艦艇用エンジンとして採用されることになる。
なお、機関配置についても、長門型と同様の配置であるが、第一砲塔と第二砲塔の間には、補機室として、ディーゼル発電機が4基積まれることになる。
本級の特出する点は、何度も言及するように指揮統制能力であり、艦橋と後檣の間の空間は、指揮通信及び索敵用に用いられている。
1930年代後半には実用化された対空及び対水上レーダーが、ラティスマスト上に備えられることになり、乗組員からは『花魁の簪』とあだ名されることになる。
ちなみに、タービン用の煙突については、前述したように、中央部の空間を指揮通信及び索敵用の機器に利用されることから、後檣と一体化されるMACK構造を採用している。
もっとも、その特性上、南洋海域における夏場の後檣勤務は最悪の一言であり、「冷房を今すぐつけろ。蒸し焼きにするつもりか」と、副長が怒鳴り込むレベルであった。
(一方で、冬場の北大西洋では一番人気であった。)
また、船体中央部の最も装甲の厚い箇所には、戦闘指揮所が設けられており、自艦及び他艦から得られた情報を統括・運用する機能が付与されていた。
この戦闘指揮所については、大艦隊の運用を求められていたことから、その専属オペレーターが数十人近く配備されており、統括指揮官は、自艦を中心にして目標情報をプロットするためのクリアボードを見つつ、戦況を判断することになる。
無論、情報伝達が人を介してのものであったので、限界があったことは事実であるが(何しろ他艦から得た情報が必ずしも正しい訳ではない。)、それでも依然と比べるとはるかにマシであったとは言える。(結果的にこれが、情報の処理の自動化に、日本海軍が本腰を入れる理由になる。)
37: yukikaze :2019/08/31(土) 18:03:31 HOST:14.228.242.49.ap.seikyou.ne.jp
最後に、公称25,000tであるが、実際には28,000t近い状況ではあったものの、大抵の艦が1割はサバを読んでいたため、特に問題視はされていなかった。(列強の装甲巡洋艦でも一番攻撃力が低いのも大きかったのだが)
本級は、1934年に、三菱長崎造船所と川崎神戸造船所で起工され、1938年にそれぞれ竣工し、第一及び第二艦隊の独立旗艦として、それぞれの艦隊司令長官の将旗を掲げることになる。
第二次大戦中は、『天城』が遣欧派遣艦隊の旗艦として出撃し、1944年には、戦時改装された『赤城』が、遣欧派遣艦隊旗艦として活躍することになる。
同艦の最大の見せ場は、ノルマンディー上陸作戦に呼応して発動した、マルセイユ近郊に対しての上陸作戦『アイアン・フィスト』の総指揮艦を務めたことであり、艦隊の総責任者であった古賀元帥は、この一戦の指揮ぶりから『魔術師』の異名をとることになる。
本級は、戦後も誘導弾運用能力を持っていたことから、日本海軍の現役を務めることになるのだが、運用コストが高く、戦後、海軍予算が減らされたこともあって、1960年代前半には惜しまれつつ退役することになる。
なお、『赤城』については、知名度が高かったことから、当時、民政党の実力者として頭角を表していた福田赳夫が「『赤城』は群馬県の誇りであり、何卒、錨と主砲だけでも、博物館に置いていただけないだろうか」と、海軍に切望し、高崎に建設中だった「高崎軍事記念館」の目玉として、『アイアン・フィスト』作戦時に掲げられた戦闘旗やジオラマ(同作戦には高崎連隊も参加していた。)とともに展示されることになる。
38: yukikaze :2019/08/31(土) 18:16:36 HOST:14.228.242.49.ap.seikyou.ne.jp
投下終了。
日本海軍の「突き詰めた回答」は「大規模夜戦を指揮統括する艦」でした。
まあ大多数の列強海軍はここまで行かんよな・・・
前に「妙高型とか設定替えるだろうなあ」と言ったのがこれ。
要するに「航空戦力が打撃戦力として活用できるのが見えた以上、重巡は追撃戦力として整備されるわなあ」という代物。(当初、史実96式を31式としたが、29式に前倒ししたのも技術革新の速度見直したため)
以前だした高雄型の前倒しとも言える訳ですけど。
じゃあ妙高型の代替はどうなるのかと言えば、これは史実大淀型の前倒しになるだろうなあと。
こっちの方がコスト的にマシですからねえ・・・
で・・・この時代の航空機の能力考えるならば、追撃戦やるために驀進しても、補足できるのは夕方から夜じゃあ「夜戦」のために必要なのは何かというと、「指揮統括艦」になると。
だって、数十隻近い艦隊が殴り込みかけるんだもの。指揮に専念した艦は必要だよねえと。
おかげで対空火力と防御力を高め、速度と対艦攻撃力は一定レベルで抑え、何よりも指揮能力を高めた艦がここに出来ることに。
コスパめっちゃ悪いよなあ・・・
ちなみにこのディーゼル。史実では日進に使われた代物。
この世界では、基本的に4サイクルディーゼルしか潜水艦使っていないので、2サイクルディーゼルの蓄積ができておらず、初期故障に悩まされると。
うん。某ゲームだと、どんな扱いされんだろうねえ。(機嫌よければ巡航速度の燃費はいいんだけど)
最終更新:2019年09月02日 10:39