169: 加賀 :2019/09/06(金) 11:08:24 HOST:softbank126242215213.bbtec.net
「呉の沢本大将より連絡です。宇垣中将の二艦隊が出撃しました。呉市民の見送りによって……」
「同じく佐世保の三艦隊も佐世保市民に見送られながら出撃しました」
「全ての舞台は整ったか。阿部大佐は?」
「空母『信濃』を陽動に使って今は伊豆諸島沖でしょう」
「食いつくかな? いや超大型と言っても大型艦は『信濃』一隻だけだから食いつかないか」
「それと五航艦の部隊にも『丸太』を配備させました」
「後は祈りましょう」




 1945年4月15日、沖縄は鉄の暴風を受けた。アメリカ軍は守備が薄い沖縄本島南西部に四個師団が艦隊の援護射撃の下で上陸を開始した。南西部には北と中の二つの飛行場がありその確保を目的としていた。しかし両飛行場は初めから放棄が決定されており、あっという間に占領された。

「船が七分に海が三分だ!! 繰り返す船が七分に海が三分だ!!」

 しかし、アメリカ軍の進撃を遅滞させる目的で第62師団の賀谷支隊(約2000名)が配置されており賀谷支隊は大いに遅滞戦闘を行い5日間もアメリカ軍の進撃を遅れさせる事に成功する。だが、アメリカ軍襲来の報を受けた台湾に駐屯する第八飛行師団が米艦隊を攻撃するも濃密な対空砲火と大量に上空飛行をする米戦闘機隊に阻まれ攻撃は失敗、その戦力の大半を喪失してしまい残った機体が散発的な攻撃をするのみになってしまう。
 その点、寺岡中将の第一連合航空艦隊はロケット弾等を使用して米艦隊のピケット艦を攻撃、ピケット艦を撃破する事で本土ーー九州に展開している塚原大将の第五航空艦隊の突入を援護する事に終始していた。このピケット艦攻撃により米艦隊は19隻を撃沈され39隻が損傷し後退している。

「来ます、ジャップの艦隊が出撃したようです」

 決死の覚悟で侵入した米潜水艦隊は呉と佐世保から出撃した二個艦隊を発見して直ちに打電した。報告を受けたマケインは一個機動群を残して10隻の正規空母群を率いて出撃する。また、ローリングス大将の英太平洋艦隊は残置された。それはカムラン湾に展開していた一個艦隊が4月10日から所在不明であり万が一を考えて残置する事にしたのである。
 この時、英太平洋艦隊は英東洋艦隊にも戦力を振り分ける必要があったが、シンガポールに展開していた五藤艦隊の戦力を見て主に最新艦での構成だった。


正規空母
『イラストリアス』『ヴィクトリアス』『インプラカブル』
計3隻
軽空母
『コロッサス』『グローリー』『パイオニア』
計3隻
戦艦
『ネルソン』『ロドニー』『キングジョージ五世』『デューク・オブ・ヨーク』『アンソン』『ハウ』
計6隻

 旧式のネルソン型以外は速度もそれなりに有能であり空母への随伴も可能だった。またネルソン型は主に対地を想定していた。ローリングス大将は北上するハルゼー艦隊を見つつ罵倒していた。

「奴等め、我々を下働きのみさせるつもりか。レイテでやられてようが我々は精鋭だ」

 アキャブ沖でも大打撃を受けてはいるがアメリカの支援で何とか此処までやってこれたのだ。英太平洋艦隊の扱いに英太平洋艦隊の将兵は憤怒を増加させていたがアメリカ軍にしてみれば「負けっぱなしの奴等を入れても勝てるか分からんだろう」という軽蔑だった。英太平洋艦隊を楯にしてその側面から叩くという手腕もあったがキングの「決着は我々が付ける」という命令を実行していたのだ。
 しかし、米英はまだ日本の本気を理解していなかった。

170: 加賀 :2019/09/06(金) 11:08:59 HOST:softbank126242215213.bbtec.net
「『長門』、反転を確認しました。護衛艦艇と共に呉へ向かいます」

 一方、宇垣中将の第二艦隊では戦艦『長門』と乙巡『酒匂』が機関故障を発生させてしまい護衛艦艇と共に呉へ帰還する事になった。この時、宇垣中将は若年の士官候補生や水兵を退艦させ『長門』に移乗させた。

「これで良い。此処からは大人だけの宴会だ」
「ですな。宴会なら大いに騒ぎましょう」

 宇垣中将と森下参謀長は笑いながらそう話していた。艦隊は再び前進を開始、この時に宇垣中将は面白い物のを発案した。

「南雲長官に打電してくれ」

 そして横須賀の南雲聨合艦隊司令長官の下に電文が届いたのである。

『敵艦沖縄襲来トノ警報ニ接シ聨合艦隊ハ直チニ出動、コレヲ撃滅セントス。本日天気晴朗ナレドモ波高シ』

 『大和』から届いた電文だが、この電文は第二艦隊の艦艇は元より第三艦隊、第五艦隊の各艦艇からも同様の電文が発信され南雲長官の下に届けられた。

「惜別……か」

 大量に届いた電文に南雲長官は全てを察した。そして『大和』では『Z旗』と『非理法権天』の幟を掲げた。なお、『Z旗』に関しては三個艦隊全ての艦艇が掲げている。
 また、この電文は米艦隊でも受信しており何度も同じ電文に通信兵が「いい加減にしてくれ!!」とノイローゼになる程だった。だがそれでも三個艦隊の場所を特定出来たのでマケイン等も目を瞑るのである。
 それは兎も角、内地から二個艦隊が出撃する中、橋本中将の第五艦隊もカムラン湾から出撃して沖縄戦が始まった頃には台湾海峡を通過する付近だった。

「対潜活動も抜かりはないな?」
「無論です。対潜警戒には『伊勢』『日向』の634空ですので」

 五艦隊の上空には絶えず『瑞雲』が飛行している。何せ五艦隊には空母が無いので『瑞雲』だけが頼りだった。口の悪い水兵等は「神様仏様瑞雲様」と拝んでいる程である。

「兎も角、我々も遅れるわけにはいかん」

 そう言う橋本だった。

171: 加賀 :2019/09/06(金) 11:16:58 HOST:softbank126242215213.bbtec.net
  • 二個艦隊、呉と佐世保の市民に見送られる
  • 五航艦、『丸太』配備
  • 全艦艇から電文発信
  • 『長門』『酒匂』機関故障につき帰還
  • 瑞雲!瑞雲!瑞雲!

電文についてはどうしてもやりたかった……。当初は『大和』のみにしようかなと思いましたが全艦艇のが米軍の度肝を抜きそうだったので。
『丸太』はまぁあれです

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最終更新:2019年09月07日 10:33