812: 第三帝国 :2019/09/08(日) 00:56:05 HOST:70.244.32.202.bf.2iij.net
銀河連合日本×神崎島ネタSS――——――「抜錨、戦略機動演習」
――――――神崎島、神崎市鎮守府軍港
いつものように最初に動き始めたのは駆逐艦であった。
4隻の駆逐艦で編成された駆逐隊の旗艦は「萩風」である。
しかし対空兵装としてボフォースの40ミリ機関砲。
さらに主砲は使い勝手が良い10cm連装高角砲を搭載しているので、
全体的なデザインこそ陽炎系列の駆逐艦的特徴を受け継いでいるが微妙に違う印象を受ける。
加えてオリジナルの陽炎系列の駆逐艦と比較すれば電子装備は遥かに超越している上に、
排水量、というより艦自体が改二や改で巨大化しているので殆ど別物と言ってもよい。
もっとも駆逐艦はまだましで、
例えば航空重巡洋艦「利根」の排水量は2万トンまで巨大化し、
戦艦「Iowa」に至っては6~7万トンとモンタナ級と言うべき水準になっている。
過去の事例から考えるならば、兵器とは常に巨大化する傾向にあるので不自然なことではない。
だが、大規模な海戦が歴史の出来事となって久しい世界において、
神崎島が所有する巨大艦艇群の登場はドレットノート革命に匹敵する衝撃を受けつつあった。
たしかに今どきの駆逐艦。
例えばアーレイ・バーク級の排水量は約8千トンと昔の重巡洋艦程度まで巨大化している上に、
各種ミサイル兵装は装備が第二次世界大戦レベルに留まっている神崎島の艦艇に対して極めて有利である。
しかし「ミサイルで装甲防御が施された巨大な軍艦を撃沈可能か否か?」という問いかけには議論が発生している。
何せこれまで艦艇同士がミサイルを打ち合っての海戦、という例も非常に少ない上にそんな相手を想定してこなかった。
強気な者は例え撃沈できなくとも撃破、すなわち無力化は可能である。
例え相手がイージスシステムを筆頭に自分たちと同じような技術を習得したとしても、
そもそも過去の事例からミサイルより遥かに遅い無誘導の爆弾と魚雷であのヤマトも撃沈できたと意見する。
対して慎重的な者はそもそも既存のミサイル兵装はそうした相手を想定していない点を強調。
ヤマトを撃沈できたといっても制空権を完全に喪失した状態な上に撃沈するまで至った魚雷と爆弾の数を考慮すべきである。
加えて技術面で言えば「霧の艦隊」由来の技術を既に所有している可能性が非常に高く、
既存の物理法則を半ば無視した「艦娘」という種族に対して物理的な攻撃が通用すること自体が疑問を覚える。
などなどと往年の航空機で戦艦を撃沈できるか否か、
と議論していたように世界中の海軍軍人たちが現在進行形で今後の海軍の在り方について考え始めている。
「艦長、準備完了です」
「お疲れ様です」
813: 第三帝国 :2019/09/08(日) 00:57:06 HOST:70.244.32.202.bf.2iij.net
そんな話題の渦中にある戦艦「大和」。
あるいは神崎大和は昼戦艦橋で副長から出航用意完了の報告。
アングロサクソン的表現で言うところの熱病的多忙を済ませていよいよ出航しようとしていた。
彼女もまた改によりとうとう12万トンクラスへと巨大化を果たした。
主砲こそ今回は普段装備する51cm連装砲ではなく46cm三連装砲に換装しているとはいえそれが4基あるので砲は合計12門ある。
そして対空装備は10cm連装高角砲に噴進砲。
さらに無数のボフォース40mmなどなどと凶悪極まりない火力を誇っている。
この大艦巨砲主義の申し子、存在そのものであり化身である艦娘大和を観戦武官として同じ昼戦艦橋にいる藤堂定道一佐は内心思わず、
(見た目はお嬢さんだが、態度に仕草は本物の海軍軍人そのもの・・・大したものだ)
と、高く評価した。
短い時間とはいえ自然体に振る舞う大和の姿を見て感心するのは当然であった。
特に自身も艦長という職務を経験したのでなおさらであった。
加えて今回どういうわけかブレザー型でなく、詰襟型の制服。
かつて第一種軍装と呼ばれた制服を着用していた、無論腰には短剣を吊るしている。
そのせいか普段知られている「艦娘」ではなく「古の海軍軍人」を連想させ、見た目の麗しさも相まって独自の空気を纏っていた。
なお彼女が態々鎮守府でも旧型となった詰襟式のを持ち出したのは副長より「そちらの方が艦長らしく見える」と助言されたからである。
「では、参りましょう――――――機関、両舷前進微速」
大和の言葉に「ヨーソロ!」と答えが来る。
足元から響く力強い振動と共にゆっくりと戦艦大和が動き出す。
大和が動き出したのを見て軍港に停泊する艦船から信号旗がかかげられる。
内容は大抵「頑張れ」「幸運を祈る」といった真面目な内容であったが・・・。
「航空母艦「アークロイヤル」より『貴艦ノ愉快ナル航海ヲ祈ル』」
「なんとまあ・・・」
改修のため停泊中のアークロイヤルが示した信号旗の内容に、
見た感じ真面目そうな娘だけどやっぱ英国人だったか、と思いつつ藤堂一佐は呆れる。
「洒落と悪趣味の境界線上にある英国人らしい挨拶というか・・・」
思わず口にした藤堂一佐の言葉に艦橋は一瞬静まるが、
常日頃から英国人の趣味に付き合わされている神崎島鎮守府の面々のツボに嵌り思わず爆笑する。
「まあ、気持ちは分かりますけど」
大和が苦笑しつつ答える。
「ですが、艦長。
愉快な航海ならば例え訓練でも楽しいじゃないですか・・・」
同じ藤堂の苗字を持つ副長の言葉にこれから訓練とはいえ、
実戦と殆ど変わらぬため緊迫していた空気が吹き飛び、ほどよく緊張感がほぐれた空気に包まれた。
おわり
最終更新:2019年09月12日 08:38