569: 加賀 :2019/11/30(土) 17:51:47 HOST:p2761248-ipngn200907osakachuo.osaka.ocn.ne.jp
「………皆、逝ったわね……」
1945年8月15日、広島県呉鎮守府の呉軍港の桟橋にて未だ大破して修理がされていない空母『瑞鶴』、その『瑞鶴』の艦娘でもある『瑞鶴』は包帯で巻かれた身体(原作のレイテ決戦仕様の服装)を見つつそう呟いた。
出撃前、『瑞鶴』の他にも『加賀』『大和』等の主力艦艇は勢揃いしていた。だが沖縄沖海戦で『瑞鶴』が属していた第二艦隊は損傷艦艇を除いて沈没若しくは宜野湾にて擱座している。それは佐世保から出撃した第三艦隊も同様でありほぼ勢揃いしているのは長駆カムラン湾から駆けつけた『伊勢』『日向』を主力とする橋本中将の第五艦隊だけだった。
「『伊勢』達は悪くないのにずっと謝っていたな……」
『瑞鶴』は痛む身体に顔を歪めつつも飛行甲板に寝転がる。第五艦隊が呉に帰還した時、『伊勢』達五艦隊所属の艦娘は生き残った艦娘一人一人を訪れて頭を下げた。
「我々だけ生き残ってしまって申し訳ない」
普段、瑞雲瑞雲と叫んでいる『日向』も眼に涙を浮かべていた。聞けば、橋本中将自身も病院等訪れて一人一人謝罪しているのだとか。
「……どうなるのかな私達……」
とりあえずは日米の戦いは終わりを告げているのは『瑞鶴』も記者係とも言える『青葉』を通して知っていた。
『後は任せたわ瑞鶴。貴女だけの一航戦を見せつけなさい』
あの時、伊江島沖で波間に没しようとした『加賀』は最期に『瑞鶴』へそう告げて波間に消えた。『瑞鶴』に一つの贈り物を渡して……。
「うーん………」
「あややや、『瑞鶴』さんじゃないですか!」
「あれ『青葉』?」
そう思っていた矢先、これも負傷して身体中が包帯だらけの『青葉』が『瑞鶴』の飛行甲板に現れた。その手にはメモ帳が握られていた。
「どうしたの?」
「何と何とビッグニュースですよ『瑞鶴』さん!」
「あんたのビッグニュースは大抵偽造じゃないの……」
「失敬な!これは正真正銘のビッグニュースですよ!」
「はいはい……それでビッグニュースって何なの?」
「それが何と、私達は一時的に米海軍に保管管理されるみたいなんですよ!」
「保管管理?」
まぁ私は旧式だから解体なんですがねーと笑う『青葉』。なお、『青葉』は南洋方面所属だったが戦争の停止で内地帰還が命じられて帰還をして豊後水道を航行中に味方が敷設した機雷が艦尾に接触、艦尾は吹き飛び『衣笠』に曳航されつつ呉工廠付近で着低して力尽きていたのだ。
「『瑞鶴』さんや『妙高』さんらも保管管理されるみたいですからね。良かったんじゃないですかね」
「良かった……のかな……」
「良かったんですよ」
『瑞鶴』の呟きに『青葉』はそう答えて不意に『軍艦行進曲』を謡だした。
「『青葉』……?」
『皇国の四方を守るべし』
『青葉』は謡いきると『瑞鶴』に視線を向けた。
「実はさっき、『青葉』に乗艦していた主計少佐と視察に来た橋本中将と話していたんです。『我々はやり直す機会を与えられた。今度こそ皇国の四方を守るべし』と……」
『後は任せたわ瑞鶴』
不意に『加賀』の言葉が脳裏に浮かび上がった。
「あぁ……そっか……」
「『瑞鶴』さん……?」
急に微笑んだ『瑞鶴』に『青葉』はキョトンとした。
「任されたのなら仕方ないっかー……ま、やるからには全力を尽くすかな」
『瑞鶴』はニヒヒと笑いながらポケットから『加賀』から最期に託された物を取り出す。それは『加賀』が使用していた青いヘアバンドだった。それを『瑞鶴』は『加賀』と同じ髪型に纏めた。
「『瑞鶴』さん、それって……」
「さーて頑張るわよ『青葉』!」
「あいた!?痛いですよ……」
「ほんでその主計少佐って『青葉』のコレ?」(小指を建てる)
「ち、違いますよー!な、なかそ……じゃなかった主計少佐はそんな人じゃなくてですねー!」
やんやと騒ぐ二人だった。1945年の8月、この月から日本海軍艦艇は米海軍での保管管理状態へ移行しそして1950年、彼女達は再び戦いの道に赴くのである。
今度こそ、皇国の四方を守るために……。
570: 加賀 :2019/11/30(土) 17:56:33 HOST:p2761248-ipngn200907osakachuo.osaka.ocn.ne.jp
てなわけでふと受信した艦娘版の戦後世界でした。
最後に出てきた主計少佐?
勿論、大勲位でございます
謹んで哀悼の意を表します
最終更新:2019年12月01日 14:49