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銀河連合日本×神崎島 ネタ 熊野艦娘異界語り



科学技術が発達し、ヤルバーンという超科学を持つ異星人達が訪れてもなお語られる"異界"の存在。
日本人にとっては山や海、峠などは古来より様々なそんな"異界"との境目があります。世界でもの"異界"の話は尽きません。
常世という"異界"より来たとされる艦娘、"異界"を通して見れば彼女たちがなんなのか分かるのかもしれません。
これは艦娘と接し、"異界"を見た人々のお話です。



近畿地方 紀伊山地



「さぁーんげさんげぇー!ろっこんしょうじょうぉー!」



山深い集落の中心を修験者の先導を受けた壺装束の三人の女性が歩き、集落の中心を貫く通りには集落の人々が沿道に立っち。
信心深い集落の老人達などは三人の女性が目に入ると手を合わせ念仏を唱えている。

一人は見事な陽の光を受けて艷やかに光る濡鴉の黒髪、
一人は陽光を受けて山藍摺から花緑青、金春色へと鮮やかに色を変えるこの世に非ざる髪色を持ち、秘色の瞳をしている。
そして、最後の一人は琥珀色の髪に翡翠の瞳を持ち天女に似た御仏に瓜二つと言われる女性。

那智、鈴谷、そして熊野の熊野観音勧請のために熊野の地へと来た三人の艦娘である。




Case.1 那智勝浦町職員


私が艦娘さんと初めて会ったのは神崎島の両熊野に祀られている熊野観音を熊野三山へ勧請するために補陀洛山寺にいらっしゃた時です。
私はその時艦娘さんを熊野三山へと案内する役目を仰せつかっており、艦娘さん達に同行して熊野古道を徒歩で歩くことになってました。
最初はバスで行けばいいじゃないかと思っていて正直貧乏くじ引いたかなと感じていました(笑)。
しかし初めて艦娘さんを見た時にそんな思いは吹き飛びました。
だってあんな綺麗な女の人を見たことはありませんでしたからね。
特に鈴谷さんの髪の色なんて現実にはありえない色でしたから、日の光を浴びて色を変える薄い青緑色の髪はそれはそれは綺麗でしたよ。


そうそう、"異界"でしたっけ?そのお話でしたね。
私が体験したのは熊野三山、熊野詣道中の山の中での体験でした。

最初に体験したのはどこまでも続く道でした。
その時私は運動不足な上に山歩きに慣れてなくて山道に四苦八苦しながら修験者や艦娘さん達に必死で付いていってました。
そんな中艦娘さんは動きにくい壺装束でしかも草履なのにスイスイと山道を登っていくのに驚きました。
そうしている内に私は疲労によって座り込んでしまい、一行は止まってしまいました。
そこへ艦娘さんの那智さんがスポーツドリンクを渡してくれて、他の方たちに回復するまで自分が付いているのでこの先の休憩所に先に行っていて欲しいと言って下さいました。
私は恥ずかしいやら情けないやらで顔も上げられませんでした。

他の方が先に行って10分程でしょうか、回復した私と那智さんは出発したんですが行けども行けども休憩所に辿りつかないんです。
本来なら私の足でも30分も掛からない場所だと聞いてましたので何かがおかしいと感じました。
周囲の景色に目をやればさっきも見たような景色が何度も浮かび、心なしか周囲の色が時間が経ったセピア色の写真のようになりなにも音が聞こえませんでした。
怖くなった私は先を歩く那智さんに声を掛けようとしましたが声が出ませんでした。
出そうと思っても出ないんです。しかも足も動かなくなり、私ではない誰かが体を動かしているようで声が出ないこのまま私は帰れないんじゃないかと恐ろしくなりました。
その時何故か分かりませんがすぐに那智さんはこちらを向き駆け寄ってきました。
そして、那智さんが拍手を一つすると私の体は急に自由になりました。

334: 635 :2019/12/04(水) 22:51:59 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

「全く、私がいるのに悪さするとは…。」


那智さんはそう溢すと声を出そうとした私の口を塞ぎました。那智さんの手、柔らかかったなあ…。
!、と、とにかく私の言葉を止めた那智さんは懐から取り出した御守を私に渡すと私に良いと言うまで声を出さず那智さんの後ろ姿だけを見て歩くこと、
何か聞こえても決して耳を傾けない事を指示しました。
破れば帰れないぞという悪い顔をした脅し付きでね(苦笑)。
そうそう御守は那智さんお手製で艦内神社の神様の力を持っているそうです。
私は全力で首を立てに振ると那智さんの後ろについて歩き始めました。
歩く途中視界の隅に動く何かが目に入ったり、今回同行している同僚の声が聞こえましたが那智さんの言葉を思い出し懸命に思い留まりました。
そしてどれくらい歩いたでしょうか、那智さんは急に立ち止まると腰に差していた刃物、あれは短刀ですかね?刃物には詳しくないのですがあの刃物にはなにか凄みを感じましたね。
それを抜いて一振りすると急に色と音が戻り、那智さんはこちらを向くと喋っても大丈夫だと言いました。

私はアレは何だったのかと鈴谷さんに問いましたら「良くないモノ」とのこと昔はオカルトを齧ってましたので朧気ながらアレはこの世のもではないと理解しました。
その後私達は無事に先に行っていた方々と合流したのですが驚いたことに別れてから30分も経ってなかったんです。
あれが"異界"というものだったのでしょうかねえ?
まあどちらにしてもあれ以来私は那智さんの御守が毎日手放せなくなりましたよ。
これがないとあんな目に合うと思うとね?



Case.2 宿の女将


艦娘さんの話?
ああ、あれは本当に不思議な体験だったねえ。
長年宿をやってるけどあれだけ一日に何度も出たのは初めてだったよ。
ん?何が出たって?決まってるじゃないか、座敷童子だよ、座敷童子。
そそ、家に幸福を運ぶという家の守り神さね。

家の宿に艦娘さんが熊野詣の途中に泊まること決まってて家中大騒ぎになってねえ、それに驚いたのか座敷童子が暫く出なくなちゃったのよ。
多い時には週に3、4回は誰かが走り回ったり、誰もいない部屋で気配を感じたりしたんだけどそれ以降プッツリと出なくなったんだよ。
これには私も主人も頭を抱えたねえ、この座敷童子目当てで来るお客さんもいるからどうしたもんかってねえ。

そうこうしている内に艦娘さんが宿泊する日になって艦娘さんが宿にやってきたんだけど、あれは本当に別嬪さんだねえ、あれだけ綺麗な人達を私は見たことなかったよ。
家の男共も皆鼻の下を伸ばしていてねえ、風呂なんかの覗きをするのが出ないかが一番心配だったわ。
そこで私が艦娘さん達の案内をすることになったんだけど、部屋に案内すると薄い青緑の髪をした鈴谷さんだっけ?部屋を見渡すといい宿ねと言ってくれたのよ。
どこが気に入ったのかを鈴谷さんに尋ねたんだけど、座敷童子がいるのは良い宿の証拠だと答えたのよ。座敷童子の話なんて知らない筈なのにね。
本当に驚いたわ、艦娘さんには座敷童子が見えていたのかしら?

そしてそこから座敷童子が何度も出たのよ。
子供のキャッキャという声がある部屋から聞こえたと思えばそこには鈴谷さん一人だけで、聞けば座敷童子相手に遊んでいたそうで、
夜に鈴谷さんが外を見ながら晩酌している時にはその直ぐ側に一瞬子供が座ってるように見えて、
真夜中なんて興奮した子供の笑い声と走る音が天井裏や誰もいない部屋から途切れることがなかったのよねえ。
そして明くる日には艦娘さん達を送り出したんだけど、そしたらピタッと座敷童子の気配が消えたのよ。
でも翌日以降には以前のように座敷童子が出るようになって安堵したんだけどね。

それで主人とも話しの、艦娘さんて座敷童子みたいな存在なんじゃないかって。
だってそうじゃない?どこからともなく軍艦をだしたり、豆鉄砲みたいな手持ちの大砲がとんでもない威力持ってたりなんて普通の人には出来ないことよ?
しかも一部の人が言う悪い存在ではないことは確かよ、だって悪人だったら座敷童子が姿を現すことなんて絶対にないんだから。

335: 635 :2019/12/04(水) 22:53:15 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

Case.3 修験者


始めまして、私が体験したのは熊野詣の道中で先導中に大雨に遭遇した時の話ですね。
その時私は上からの指示とはいえ女人を先導するということに抵抗を覚えてましたのであまり良い感情を艦娘さんに持ってなかったんですよ。
紀伊山地の修験道には今でも女人禁制の山もありますからいくら御仏をお連れするためとはいえ修行の道に女人を僧が連れて歩くのは如何なものかとね。
今では艦娘さんを先導出来て良かったと思っています。あのような体験はそうそう出来るものではありませんしね。


ああ?私の体験の話でしたっけ。
あの時は急に雨が降り出しましてね、事前の天気予報じゃ晴れだったんですが、時間が経つ毎に雨脚も強くなったので道中の避難小屋に急いで移動したんですわ。
そうして避難小屋に入りほっと一息、しかし雨風は強くなる一方でしたので今日はその小屋で一晩明かすこととなりました。
もうじき夕暮れでしたししかたなかったんですよ。
小屋の中は何部屋かありましたので男性と艦娘さんで別れて部屋を使うことになったのですが、小屋の壁は薄かったので艦娘さんが濡れた服を脱ぐ音が聞こえましてね、
若い衆は「煩悩退散、煩悩退散」「色即是空、色即是空」とブツブツと唱えてましたよ(苦笑)。まあ、あれだけの美人さんじゃしょうが無いですがね。

そうして皆が寝静まったのですが夜中に雨が上がり若い衆が目を覚ますと何処からともなく『シャラン…シャラン…』という音が聞こえてきたそうです。
恐ろしくなった若い衆は私達を起こしたのですが、聞こえている音はどう聞いても仏具の錫杖の音、こんな夜中に山中を歩く僧がいるとは到底思えなかったので私は先達から聞いた話を思い出しました。
修行中に命を落とした僧が自分が死んでいることに気づかす未だに修験道を彷徨い続けているという内容でした。
何か悪さをするという話は聞いていなかったのですが、この世のものでないというものは恐ろしいもので艦娘さん達も起こして小屋の広間に集まりました。
お恥ずかしながら若い衆は広間の隅で震え、私達も恐ろしさで青い顔をしていたと思います。

錫杖の音は段々と小屋に近づき小屋の入り口で音が止まり、『ドン…、ドン…』という戸を叩く音。
私達は息を飲みましたが、その時室内からフゥという音、向けば艦娘の熊野さんの溜息でした。
「私(わたくし)、こういうキャラではないのですが…」と呟き熊野さんは戸の方へ歩いて行く私達が止める間もなく戸をガラッと開けました。
外には誰もいませんでした。しかし熊野さんは誰もいない戸の外を向きそこに"誰か"がいるように話し始めました。
いや"誰か"がいたのは間違いないでしょう、私達も姿が見れなくてもなんとなくそこに何かいると感じましまから。

熊野さん曰く「もうすでに死んでる自覚はあるのか」「このような所で彷徨ってないでさっさと浄土に渡りさない」だのと説法を聞いている気分になりましたよ(笑)。
そうしてふと「渡り方が分からないのですわね…」と零しました。
すると熊野さん達艦娘さん達、それに周囲の雰囲気は一変しました。なんといいますか鎮まった寺社や清浄な霊地を訪れた時のような感覚とでも言えばいいのでしょうか?
上手く説明できませんね、こればかりは体験しなければ分からない感覚だと思います。

336: 635 :2019/12/04(水) 22:53:57 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp


「フゥ…、私(わたくし)達は救世や楽土へと導くものではありません。むしろ殺生を行う側、しかしこのままではあまりにも不憫…。」

「貴方"達"が仏の元へと辿り着けるかは私には分からぬが、そのための道は示めそう。」

「まあ、どうなるかは貴方"達"次第だから頑張るんだよ?」

『一緒に、行き(生き、逝き)ましょう。』


その言葉共に厳かな空気は終わりを告げ"誰か"の気配は姿を消し、周りの雰囲気は元に戻りました。
そして混乱する私達を他所に熊野さん達は寝床へと戻ろうとしていました。
熊野さんは欠伸を一つすると私達にもう終わったから眠るように言いました。
若い衆はあれは何だと声を荒げましたが熊野さんは気にしない様子で悪いものではない、ただ修行に明け暮れ彷徨っていたただの修行僧だと諭しました。
しかしそれでは余りに不憫過ぎるので一緒に連れていくつもりだと話しました。
死者を連れていくという言葉に戦慄した私達でしたが、熊野さんは一人や二人程度大したことはない戦中はもっと多くの人を連れて行った(逝った)と寂しそうに微笑んでいました。

これが私の見てきたものです。
今回感じましたが彼女達、艦娘さんがあの凄惨な戦争中に人の業と咎を見てきたその心中を推し量ることは我々にはおそらく出来ないでしょう。
それだけの業と咎を見てもなおこの日本という国とそこに住む人々を守り続けようとし、死者の魂をも救おうとするその姿は我々常人では未だ届かぬ御仏の教えにも通づるものがあるのではないでしょうか?
艦娘さんが何者であるかの前に彼女達が何を成そうとしているのか、その方が余程大事ではないかと私は今回のことを通して考えられずにはいられません。

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以上になります。
転載はご自由にどうぞ。

怪談、怖い系の話が話題の上がってるのかと思ったら南極系でござったか。
南極と言えばドラえもん創世日記で地球内部の大空洞の入口が南極でしたな。
後、南極と言えば宗谷かな?(宗谷ネタで艦娘宗谷の容姿が水戸平になってしまったのでどうしたものか)

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最終更新:2019年12月06日 18:01