25: 弥次郎 :2019/12/07(土) 20:22:36 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
憂鬱SRW IF マブラヴ世界編SS「Zone Of Twilight」2
- 融合枠世β世界 高高度 大西洋連邦所属サンダーバード級空中輸送機「ホークス」機内 格納庫
輸送機の格納庫というのは、輸送機が輸送機たらしめる最大のスペースだ。
分厚い装甲と衝撃吸収材や対ビームコーティング等に包まれた機体は、この空間を演出するための舞台装置に過ぎない。
今こうして目の前に広がる空間は膨大な数の物資コンテナや、キャットウォーク一体型のMSなどの機動兵器のメンテナンスベッド、あるいは巨大なカーゴ、そして立体駐車場のように詰め込まれている車両など、あらゆる物資が山積みでこちらを圧倒している。
それらは人一人分ほどの太さもあるロープやチェーンでつながれ、あるいは人を超えるサイズの固定器具でがっちりと床と固定されていた。
そんな空間は、しかし人が長く過ごすようにはできていない。主にTMSの空中母艦としても使われることがあるこのサンダーバード級だが、その格納庫は快適さとはあまり縁がない。プライオリティーはやはり人間よりも兵器や輸送する物資にあり、旅客機の様な過ごしやすさはない。
「……」
だが、それでも。クラーラ・ユノーにとってはこの空間の特異性は好むものだった。
完全な静謐ではないが、独特の静けさにエンジンの音と振動が程よく混じり、程よく耳を打つ。
それに、整然と並べられたコンテナなどを眺めていると、自然と心が落ち着いてくるのだ。それを楽しみながら、格納庫内を歩いて回る。
と、その足は格納庫にカーゴに収容されている機動兵器の前で止まった。普段彼女がのり慣れているMSとよく似てはいるが随所で外見が異なり、腰部からは特徴的なユニットが一対飛び出しており、また、地球連合とは明らかに異なる規格の武装やウェポンベイなどがみられている。
それも当然だろう。この機動兵器はMSなどではなく、アラスカに搬入される予定の戦術機なのであるから。
「XF-15V」
その戦術機の名を、ユノーは呟いた。ペットネーム「ヴァリアブル・イーグル」。
開発元であるマクダエル・ドグラム社から提供されたF-15イーグルに、大西洋連邦が独自開発した近代化キットを適用したものだ。
ヴォールクデータとこれまでの戦術機の設計図及び運用データをコンピューターの中に放り込み、議論させ、シミュレーションしたことで、β世界基準で見れば極めて短期間で設計と製造・テストまでが完了している。このことは一応マクダエル・ドグラム社にも伝えられているのだが、当然のことではあるが最初はまともに取り合ってもらえなかった。なので実機を送り付けたらひっくり返って驚かれたとかなんとか。
まあ、それはパイロット達にとっては乗機にまつわる一行雑学(トリビア)にもならないのだが。
「悪い戦術機ではない、とは思いますが…」
やはり、数世代は前の機動兵器だ、という感想をパイロットであるユノーは感じていた。今回のβ世界アラスカ出向に合わせ、ユノーも出向組の一員としてヴォ―ルクデータでのシミュレーションや実機での演習を重ねて慣熟訓練を行った。
その結果わかったのは、戦術機という兵器自体がまだまだ発展段階にあるということだ。
26: 弥次郎 :2019/12/07(土) 20:23:13 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
日夜研鑽が進められているMSと比較すれば、テスラドライブなどを意図的に省いてMSが何たるかを教えるトレーニング用のMSも良いところだ。
だが、この世界の時系列で1900年代後半から開発が始められた戦術機が短い期間で成熟したということは驚きだ。
それだけBETAとの戦いに総力を傾け続けたためか、ある種の歪さを以て技術発展が進んでいることを差し引きにしても、非常に優れていると断言できるだろう。最も、地力の弱さというか、土台となる技術の発展が要求に追いついていない点は頂けない。
連合の技術が土台からしっかりくみ上げたピラミッドだとするならば、この世界の技術はアンバランスなジェンガだ。
高さという点においては合格しているのだが、危なっかしくて外側から見ていられるものではない。
「というのが、ハンター大尉の評価でしたか……」
大西洋連邦におけるMS黎明期からのパイロットであり、自分の上司でもあるウィリアム・“オールド”・ハンターはそう評価しており、ユノーはそれを又聞きしている。個人的にも同じ意見だ。上司の意見だからというより、MS歴の長いハンターだからこそ信頼のおける評価だ。
「俺の評価が気になるのか、中尉?」
声に振り替えれば、そこにはユノーの上司であり、アラスカ出向部隊の一部隊を率いる人物の姿があった。
「ハンター大尉」
「今の階級は中佐だぞ、ユノー中尉」
「失礼しました。ですが、随分と長くハンター大尉とお呼びしていたのでどうにも」
「ふ、気をつけておけ」
気心の知れた仲だからこその会話。上司と部下の関係となって長く、戦場での切った張ったも、命がけの場面も共にくぐり抜けた仲。
ハンターの注意も半ば形式的なものであり、その証拠に軽くウィンクをしている。実際、実験舞台や実働部隊での過ごした期間が長く、ハンターとユノーは元々の階級である大尉と少尉で長らく過ごしていたのだ。昇格の話が無かったわけではないのだが、
二人がともにMSパイロットであり続けることを望み、あるいは佐官教育をおちおちと受けられる状況になかったことが大きく関与している。
それだけ戦乱が地球を襲い、地球連合がその対処に追われ、ハンターたち現場の人間が何度か死ぬような思いをしたということ。
その結果として、ハンターとハンターの率いる部隊はネームド(二つ名付き)と呼ばれる有数の部隊となり、ハンターとユノーは昇格したというわけだ。
「こんなところで暇をつぶしているとはな。やはりこういうところが落ち着くのか?」
「はい。人が少ないこともそうですが、程よい音と振動がリラックスできます」
変わっているな……とハンターは苦笑いするしかない。比較的一般人というかまともな部類のハンターであるが、その部下たちは一癖も二癖もあるパイロット達ばかり。腕は確かであるし、激戦を鼻歌交じりにくぐり抜けるような猛者が揃っている。
ユノーもその例にもれず、どこか人とは違うところがある曲者だった。
とはいえ、そんな曲者でありながらも猛者を束ねるある種のカリスマや指揮能力を持つことは、長らくハンターが部隊長を務めていたことから間違いない。
ところで、とユノーは上司を見上げて尋ねる。
「中佐は何故こちらに?」
「ん、そうだな……少し、静かなところを探していてな」
「でしたら私室で過ごされればよかったのでは?」
「いや、そうしたいところなんだがな……アラスカに到着してすぐに統合政府から派遣されてくるアイドル…シェリル・ノームのライブがあると盛り上がっていてな。
俺があまり詳しくはないと知った連中が布教しようと押しかけてくるもんだからおちおちゆっくりできないんだ…」
そういえば、とユノーはアラスカ到着後のタイムスケジュールを思い返す。
統合政府から依頼を受けた民間軍事企業のSMSの派遣艦が、そのSMSの出資者にして銀河に名をとどろかせるアイドルのシェリル・ノームを乗せ、β世界のアラスカにやってきて慰問ライブを行うことになっているのは知っていた。これには統合および地球連合の出向組から歓迎の声が上がっており、既にアラスカに向かう途中からすでに盛り上がり始めているということらしい。そして、そのファンたちの熱狂はほどほどに好むハンターを飲み込んだ、というわけだ。
ハンターとて統合政府圏において著名な歌姫であるシェリル・ノームとランカ・リーのことは知っているし、曲もきいたことがある。
だが、そこまで熱烈なファンというよりは、他の趣味の合間にちょっと聞くくらい、ライブにはいかなくともCDを買うくらいはする一般的なファンだ。
27: 弥次郎 :2019/12/07(土) 20:23:56 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
「歌姫については別段嫌いではないが、何事もほどほどが一番だ。風紀にも影響しそうで怖くてなぁ…」
「弁えるくらいは当たり前なのですから、問題ないのでは?」
「いや、俺の仕事はそのまさかを想定することだからな。熱狂的なのは良いが、タガまで外れてもらっては困る」
ハァ、とため息をつく上司に同情を禁じ得なかった。大方、大西洋連邦の出向組の中でも将官クラスから釘を刺されているのだろう。
まあその将官たちにもファンはばっちりいるわけで、お前が言うな状態であることもまた確かであるが、ともあれ、直接大多数の兵士たちと接するハンターはそういう仕事を押し付けられたのであろう。大西洋連邦としての面子を保ちつつ、兵士達が不満を抱かない程度に注意喚起をして風紀を維持する、なかなかに骨の折れる仕事だ。
「…もちろん、息抜きが必要なのはわかっているし、ライブがあるとわかれば士気も上がる。間違いなくプラスだ。
だから、その、なんというかな……」
言葉を濁すハンターに、しかし、ユノーは追撃した。
「中佐もあまり硬くならずに楽しめばよろしいのでは?ここ最近は働きづめでしたから、その分はお休みをとられた方がいいかと」
「だが……」
「お言葉ですが中佐、少しワーカーホリック気味かと思われます。
真面目な中佐の事ですから、出向の前からかなりあちらこちらに気を配っていたと思われます。ですが、私たちMS隊のトップである中佐は、どっしりと構えていただいて、私たちに命を下していただければそれで済む話です」
一気に言い切ったユノーは、強い口調を緩め、上司に問いかける。
「そんなに私たちは頼りないですか…?」
そういわれては、ハンターも返す言葉が無い。参ったというように両手を上げ、ふっと息を吐いた。
「わかったわかった。ほどほどに緊張する、お前たちにも頼る、時には騒ぐ…それでいいか?」
「はい、それでよろしいかと」
その回答を引き出し、ユノーもまた笑みを浮かべた。
ハンターは部下たちを大切に思ってくれているが、その逆もまたしかりなのだ。単なる上司部下の関係だけではない、戦場で命を共にかけて戦った戦友であり、深い絆で結ばれている仲だ。荒波にもまれてもそれが決して揺らがなかったのは、ハンターがそれだけ心を砕き、真剣に向き合っていることを部下たちの誰もが知っているからこそ。
「では中佐、戻りましょうか」
「ああ、そうだな」
そうして、上司と部下は連れ立って格納庫を出る。
β世界のアラスカ ユーコン基地まで、あと数時間と迫ったころであった。
28: 弥次郎 :2019/12/07(土) 20:24:38 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
メカニック紹介:
ウィンダム・パルサー
形式番号:GAT-04RP
全高:19.77m
基本重量:61.22t
装甲材:ナノマシン装甲
動力源:Pジェネレーター
特殊機関:テスラドライブ ストライカーパック
標準装備:
M2M5 トーデスシュレッケン12.5mm自動近接防御火器×2
GAU-82F 胸部30mmガトリング砲×2
M9423F ビームライフル(グレネードランチャー付き)
M118 腰部ビームカノン×2
ES04C ビームサーベル×2
アンチビームシールド
Mk231 膝部4連装マイクロミサイルポッド×2
その他大西洋連邦系列の武装を使用可能
概要:
大西洋連邦が開発したMS「GAT-04 ウィンダム」の近代化改修モデル。
量産型ストライクを目指して開発が進められていたウィンダムは、その後の技術発展、特殊機関であるテスラドライブ、核分裂炉に変わる動力源であるPジェネレーター、ナノマシン装甲の採用によって、大幅なカタログスペック向上が見込まれていた。
ウィンダムの後を受ける次期主力機開発において更なる飛躍を目論んでいた大西洋連邦は、大々的に配備していたウィンダムの安価な強化と、新技術の慣熟も兼ねたほぼ新規設計に近い改装プランを策定し、これを実行に移した。その結果誕生したのが本機である。
ウィンダムと比較して全高の延長や各部の肥大化が見受けられている。これは機体の出力および反応性などの向上に伴って従来よりも機体制御のためのバランサーやセンサー系統の拡大が必要になったためであり、肥大化した分の機動性や運動性を補うため、腰部には二対四枚のフレキシブルスラスターユニットが取り付けられている。これによって、空戦型のストライカーであるジェットストライカーやエールストライカー無しでも、十分な跳躍及びホバー機動・空中機動が可能となっており、ストライカーパックに依存した性能からの脱却を図っていたこともうかがえる設計となっている。
また、ここには所謂第四世代MS的な火力や装備を詰め込むことによる機体性能の向上と汎用性を超えた万能性を与える、というコンセプトが窺え、実際にハードポイントや武装の追加のための余剰出力の確保など、汎用性や運用上の利便性を損なわない程度にまで、それらの追及の痕跡がみられる。
本機は大西洋連邦の主力MSであるドートレス開発以降は他のバリエーション共々徐々に二線級へ下げられていたのであったが、β世界アラスカ出向に際して大西洋連邦が派遣軍のMSとして採用することが決定し、派遣され運用されている。
この際にはβ世界の一般的な武装---突撃砲や長刀など---へのOSおよび機体コネクター等の調整が行われた他、実弾系に固められたβ世界仕様の装備類の調達と適合が行われている。
タクティカル・ストライカー
- サブアーム
- 兵装担架システム(BE02A ロングソード/Type-101複合兵装突撃銃など)
- プロペラントタンク×2
- 予備マガジン
概要:
β世界出向に際し戦術機との武装の互換性を持たせるために開発されたストライカーパック。
基本的にはプロペラントタンクや予備兵装などの運搬による継戦可能時間の延長に重きが置かれているほか、β世界の一般的な武装を問題なく使用できるサポートを実行するための機能が集約して搭載されている。
戦闘力の直接的な向上には寄与していないのだが、これはβ世界への余計な技術的な影響を与えるのを避けるためと、アラスカにおけるメンテナンスの都合、またストライカーパックに依存していない設計のウィンダム・パルサーに搭載することを前提としているためである。
29: 弥次郎 :2019/12/07(土) 20:25:22 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
フォレグ・スタンダム
形式番号:FT-04
全高:16.27m
基本重量:53.32t
装甲材:ナノマシン装甲
動力源:Pジェネレーター
特殊機関:テスラドライブ
標準装備:
M2M5 トーデスシュレッケン12.5mm自動近接防御火器×2
GAU-82F 胸部30mmガトリング砲×2
E-M23 2連装ビームキャノン×2/E-M23G 130mmレールキャノン×2
M9423F ビームライフル
M909GF 大型ビームランチャー
肩部多連装ミサイルポッド×2
胸部580mm複列位相エネルギー砲 スキュラ改
腕部ショートシールド(ビームサーベル内蔵)
概要:
大西洋連邦がウィンダムを元に開発した火力支援機。
ウィンダム以前から大西洋連邦では二線級MSに長距離火力を持たせることによって火力支援機を安価に製造・開発してきたが、その系譜に属するMSである。しかし、本機が他の火力支援機と比較して特異的なのは四脚を採用している点であり、長距離での戦闘を前提とした設計であることである。
大西洋連邦においては火力支援機というのはこれまでストライカーパックによる火力の搭載という形で行われていたが、一方で研究や試作レベルにおいては大洋連合のガンタンクやガンキャノンの様な砲撃戦を主とする通常のMSとは異なるMSの開発も進められていた。
そんな中で試作されたのがこの四脚型MSであった。タンク型MSでは機動性や展開能力に限界があり、かといって、二脚MSでは持たせることが出来て機動力を維持できる火力に限度がある。ならば四脚はどうかと試しに採用された。
結果としては両者の中間位を維持したMSとなり、咄嗟の近距離戦闘での対応力や戦略的・戦術的な展開力も申し分ないと判断された。
とはいえ、本採用となるにはまだ検証が不足しており、メンテナンスや既存の整備とのかみ合わせの悪さなど運用上の支障が見受けられ、試作段階に置かれている。
今回のアラスカ出向に際しては、技術的な検証を行うという目的もあって派遣されることとなった。
30: 弥次郎 :2019/12/07(土) 20:25:57 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はご自由に。
大西洋連邦組の様子でした。次はSMS組か原作アラスカ組となりそうですね。
原作組というよりはユウヤとヴィンセントの二人がメインカメラで描写でしょうかねー…
TEの漫画版が届いたら速攻で復習&キャラ掴みをしなくてはいけませんし、仕事もあるのでゆっくりになりそうです。
ではでは、次をお楽しみに。
最終更新:2024年07月30日 23:16