601: 第三帝国 :2019/12/21(土) 23:26:23 HOST:70.244.32.202.bf.2iij.net
銀河連合日本×神崎島ネタSS――——――「幕間、戦略機動演習」


外見こそ「黒塗りの車」であるが、
車を構成する一つ一つの部品は分厚く見るからに頑丈そうでまるで装甲車のようであった。

車の左右前後には護衛の車、
さらに周囲にはサイドカーと現住極まる警備で囲んで車に後部座席に座る主、神崎提督を守護していた。
もっとも神崎提督はこうした物々しい警備は市民の日常を乱す異物、と思っているのではっきり言って好きではない。

しかし信任状捧呈式でのテロ未遂。
という前例があるがゆえに周囲の人間。
妻達からも含めて身の安全を第一とするように「強く要請」されたため甘んじて現在の環境を受け入れていた。

「今週は5隻か、相変わらずのぞき見に来るな」

移動中に報告書の確認作業は「前の」神崎の時から習慣で、
どんなに転生しようが仕事熱心であることにまったく変わりはなかった。

「先週は8隻です。
 内潜水艦は3隻で海防艦のみんなが頑張って追い払いました」

隣に座る今日の秘書艦「Gotlamd」が清楚さを漂わせる音色と共に答えた。
ゲーム的な制服姿でなく誰が見ても海軍士官、と一目でわかるブレザー型の軍服で身を固めているせいか凛々しさが引き立っている。

「中華、アメリカ、ロシア、日本、アジアの諸国に欧州の各国。
 誰もがこの島と周辺海域の特性に注目し、こちらの出方を観察している」

領海侵犯の傾向と頻度に関する報告書から目を離さず神崎提督が呟く。

「常世の世界とはずいぶんと違うわね」

Gotlamdが呟く。

「そうだな。
 あのころはただ目先の深海棲艦と戦争するだけで済んだ。
 ソロモン海での死闘、凍てつくアリューシャン、遥かなる大西洋。
 七つの大洋を舞台に戦い続けて、戦い尽くすことだけ考えればよかった。
 今では政治、外交という概念を念頭に置きつつ行動しなくてはならない」

神崎提督がかつて常世で過ごした戦争の過去を回想する。
あの時は文字通り常在戦場の日々を過ごしていたが極めて単純であったと内心で思った。

「そのために」

Gotlamdがいつもの凛々しい音色と共に言葉を綴る。

602: 第三帝国 :2019/12/21(土) 23:27:22 HOST:70.244.32.202.bf.2iij.net
「『第一次鎮守府軍備補充計画』に従ってイージスシステムをの搭載を前提とした私達艦娘の現代化改修。
 陸上ではタイプ10戦車6000両の調達に地対艦ミサイル『軍団』の創設、空ではF2支援戦闘機にヴァズラーの導入するのでしょ?」

冷戦時代のような頭のネジが外れた軍備拡張計画をであるが、
Gotlamdは故郷スウェーデンのコーヒータイムの習慣フィーカで雑談するかのように口にした。

「ハイクァーン造成制御システムソフトウェア。
 異星人の量産システムがなければ到底無理な計画だった。
 ・・・あの時もそれがあればもっと楽ができたかもしれないな」

「嶋田」であった時、予算ではあの辻とどつき会い、様々な妥協や根回しに奔走した経験を持つ神崎が懐かしみを込めた感想を口にする。

色々な点で問題児だらけで頭を痛めた夢幻会の愉快な仲間たち。
だが、今神崎の周囲には何故かいる嶋田としてすごした世界線出身のチャーチル氏。

それと深海提督。
あるいは深海磨鎖鬼と呼ばれた深海側の自分。
何故か黒セイバーな上に平成世界でゲートで繋がった世界線所属。
と色々突っ込みどころが追い付かいないが辻に近衛、伏見宮、といった夢幻会の仲間たちは―――――。

「・・・んん!?」

と内心の深みへと意識が落ちた時。
何の前触れなく口が塞がれ神崎提督は目を白黒させる。

「提督」

舌を使って口内の液体を互いに混じらわせ、
絡まさせて発生した液体を口元から僅かに垂らしつつGotlamdが言う。

「Got達がいるでしょ?」

たった一言であるがその一言に万の思い。
重い想いを帯びているのを神崎提督は知っていた。

「・・・そうだなGot。
 例え過去がどうであれ君たちを愛しているし今後も君たちを頼り続けるつもりだ」

「私とあなたの仲で今更そんな形式的なの重要?
 なんて思うけど―――――Tack、私たちの運命はあなたと共に、提督」

黄色い桃の缶詰に白砂糖をキロ単位で煮込んだような甘い空気が車内に漂う。

「・・・・・・それと続きは今晩、ね?」

さらに耳元に優しく空気を吹きかけるように囁かれた意味ありげな台詞を言葉にするGotlamd。
神崎、嶋田と二度目の人生を過ごして再び神崎と三度目の人生を現在進行形で過ごしているので精神年齢は青年をとっくに通り越したといえる。

とはいえ、肉体は色んな意味で興味津々な20代ゆえに理性と情欲の間でラグナロクが勃発。
かろうじて理性が勝ったのは海軍軍人として躾けられた紳士教育と大和魂のお陰であり何とか照れくさそうに微笑を浮かべる。

と、ここで車載電話のフォンが鳴り響く。
移動後ではなく移動中かつ提督へ直接来た連絡。
すなわち極めて重大な事態が発生したことを意味しており秘書艦としてGotlamdがやや乱暴に受話器を取って対応する。

折角のムードを壊れて機嫌が悪かったが、
受話器から発せられた言語を理解した瞬間理性が感情を制した。

「提督、吹雪さん達が」

Gotlamdは吹雪達がイゼイラに到着したと同時に道中で「ガーグデーラ」と称される勢力からの攻撃を受けた。
と、宇宙規模の安全保障問題に巻き込まれたことを報告した。



おわり

603: 第三帝国 :2019/12/21(土) 23:32:02 HOST:70.244.32.202.bf.2iij.net
以上です。

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最終更新:2019年12月22日 11:11