580: ホワイトベアー :2019/12/24(火) 19:24:38 HOST:kyosyujyo.st.wakwak.ne.jp
日米枢軸ルート 閑話 1950年代の欧州軍事情勢2


陸上戦力で欧州連合に劣性であった一方で、海軍戦力は当然ながらハワイ条約機構側が圧倒的に有利であった。

当時の大西洋と地中海はハワイ条約機構、欧州連合、そしてイギリス連邦の三大勢力がせめぎあう最善であったが、ハワイ条約機構は大西洋には世界第二位の海軍力を有しているアメリカ海軍の大西洋艦隊が、地中海にはオーストリア帝国海軍、オスマン帝国海軍、そして大日本帝国海軍地中海艦隊の三帝海軍が待機しており、これらの海の主導権を握っていたのだ。

この頃のアメリカ海軍は欧州連合が進めていた海軍軍拡に対抗し、欧州方面で劣勢な陸上戦力を補う為に《キング・プラン》と呼ばれる大規模な海軍拡大構想を掲げており、1960年代までに10個空母打撃群、8個水上戦闘群、12個遠征打撃群を整備することを目的とした大規模な軍拡に勤しんでいた。

その事もあって1950年代には戦艦8隻、空母10隻、強襲揚陸艦12隻、巡洋艦47隻、駆逐艦44隻、フリゲート52隻、潜水艦91隻と非常に多くの戦闘艦と、それを支える支援艦、各種揚陸艦、事前集積艦を多く保有しており、また、太平洋は事実上同盟国である日本のバスタブとなっていたことから、最低限の戦力を太平洋に残し、それ以外の主力を大西洋に展開させることができた。

その為、アメリカ海軍は大西洋方面に第2艦隊、第4艦隊、第7艦隊の3個艦隊からなり空母8隻、戦艦8隻を中核とする大戦力を常時常駐させ、さらにアメリカ海軍の核抑止戦力の中核たる《自由のための31隻 》と呼ばれる31隻の戦略型原子力潜水艦を全艦大西洋に配備させていた。その為数では欧州連合やイギリス連邦の海軍艦艇と対して変わらなかったが、質を考慮すれば単独で欧州連合+イギリス連邦の海軍を殲滅できるだけの戦力を抱えていた。

しかも、これらの艦艇の多くは1940年代に策定された《キング・プラン》に合わせて策定された《新艦隊法》よって予算が付けられ、建造された新鋭艦ばかりであった。その為、対潜ミサイルや対艦ミサイル、対空ミサイルと言った強力な新兵装やそれらを支える各種設備を設計段階から取り組んだ艦艇が海軍の主力であり、既存の艦艇も徹底した大改装が施され、アメリカ海軍の全ての戦闘艦はイギリス連邦や欧州連合の戦闘艦よりもはるかに長い攻撃範囲と攻撃能力を有するほどになっていた。

また、艦艇のみならず空母航空団の機体も従来の機体から日本製の最新鋭機である《四〇式艦上戦闘機(F-14C)》のライセンス機である《FJ-40C コルセア》や《四八式艦上戦闘機(F/A-18)》のライセンス機である《FA-48 アベンジャー》、《二八式早期警戒機三型(E-2C)》のライセンス機である《E-28C ホークアイ》、三《三八式電子戦機三型(EA-6)》のライセンス機である《EA-38C》などに置き換えられており、さらに、これらを搭載する空母も従来の《フランクリン》級航空母艦から、満載排水量8万トンを超える新鋭超大型航空母艦(スーパーキャリアー)である《スペリオル》級原子力空母に更新されており、アメリカ海軍自慢の空母打撃群はその攻撃力を格段に向上していたのだ。

新造艦への更新は空母打撃群のみならず水上戦闘群でも進んでいる。それまでは45口径18インチ砲を4基12門搭載する《モンタナ》級戦艦4隻と45口径18インチ砲を3基9門搭載する《アイオワ》級戦艦4隻がアメリカ海軍の水上打撃戦力の中核を担っていたものの、しかし、《アイオワ》級は1920年代から就役し始めた老朽艦と言うこともあって、1950年代中半頃には《アイオワ》級戦艦の後継艦として改モンタナ級とも言える《アーカンソー》級2隻が新規に建造されたほか、基準排水量9万7千トンと言う巨体を誇り20インチ砲4基12門を主砲として搭載す《ワシントン》級戦艦が就役しており、8個水上戦闘群全てに18インチ以上の砲を12門持つ戦艦が配備されるなど水上戦闘群も同様に戦闘能力が向上していた。

特に《ワシントン》級は2隻しか建造されなかったが、超モンタナ級とも言える高い砲撃能力を誇り、さらに新規に1から設計された事から各ミサイルシステムを無理なく搭載できたため、ミサイル巡洋艦に2隻分に匹敵する防空能力を有し、日本海軍も有しない20インチ砲搭載艦と言う事もあって「世界最強の戦艦」と言う代名詞と共に長年アメリカ海軍の顔として活躍していくことができたほどの高性能艦であった。

581: ホワイトベアー :2019/12/24(火) 19:25:17 HOST:kyosyujyo.st.wakwak.ne.jp
また、ハワイ条約機構の大西洋方面の戦力としてはアメリカ海軍以外にも、1950年前半から中半にかけてハワイ条約機構に加盟したブラジル連邦、メキシコ合衆国、アルゼンチン共和国(1949年におきた中央情報局(OSSより改編)の支援の下におきた軍事クーデターで親独政権打倒後に加盟)などの海軍も数えることができ

これらの国々は正規空母こそ保有していなかったが、史実の制海艦に相当する軽空母を1隻から2隻、空母を護衛する艦艇を多数有しており、列強海軍ほどではないが一定の航空支援能力を有していた。その為、これらの国々の海軍も有事の際には一定の戦力としてハワイ条約機構側からは期待され、欧州連合側からは頭を悩ませる存在として一定のパフォーマンスを発揮していく。

もうひとつの最前線である地中海でのハワイ条約機構の海上戦力の主力を務めているのはオスマン帝国海軍であった。

オスマン帝国海軍はハワイ条約機構の誕生前からの日本の同盟国であり、日本からの支援もあってアメリカやイギリス、日本など海軍国家よりかは規模は小いさいものの、日本製の16インチ砲搭載戦艦である《スルタン・メフメト・レシャド》級戦艦3隻、国産の16インチ砲搭載戦艦である《レシャディイェ》級戦艦3隻からなる有力な水上打撃戦力を有しており、地中海最強の海軍として欧州列強に圧力を加えていた。しかし、現在では欧州連合陸軍、欧州連合空軍の戦力増強で陸軍や空軍にも予算を投じていることや、海軍内でも航空戦力を増強するべしという意見が出てきた事によって、一時期よりかは水上打撃戦力の規模は小さくなっていたが、それでも水上打撃戦力として3万5千トン(基準)級の《レシャディイェ》級戦艦を3隻を有するなど無視できない戦力を抱えていた。また、戦艦を減らした事によって調達された4万5千トン(基準)級の中型正規空母である《ヤウズ・スルタン・セリム》級航空母艦を3隻有してしており、地中海有数の海軍として欧州連合、特に半島国家であるイタリアやフランスに睨みを効かせていた。

オスマン海軍の水上打撃戦力の中核を担っている《レシャディイェ》級戦艦はオスマン帝国国内で建造された国産戦艦であり、上記した様に基準排水量3万5千トンを誇る巨艦であり、主砲は16インチ砲4基8門を搭載、さらに近代化改装によってミサイル巡洋艦2隻分に匹敵する防空能力を獲得しており、空母機動部隊の盾として活躍する事も可能であった。

582: ホワイトベアー :2019/12/24(火) 19:29:05 HOST:kyosyujyo.st.wakwak.ne.jp
そして、新たなるオスマン海軍の主力艦として誕生した《ヤウズ・スルタン・セリム》級航空母艦は、一番艦を日本の長崎造船所で、二番艦からオスマン帝国国内のドックで建造された航空母艦であり、日米の超大型航空母艦(スーパーキャリアー)ほどではないがそれでも基準排水量4万6千トンと言う巨体に水蒸気式カタパルトやアングルド・デッキなど現代空母に必要な要素を全て搭載した現代的な正規空母であった。その為、戦闘機や攻撃機、早期警戒機などの固定翼機と対潜哨戒ヘリコプターなどの回転翼機を合わせて50機近く運用する事が可能と高い航空機運用能力を有している。

当然ながらこれらの主力艦が客船の様に単独で運用される筈もなく、これら主力艦を守る護衛艦として日本の秋月型をモデルとした独自の防空艦(システムや一部艦装、兵装は日本から輸入もしくはライセンス)や国内設計の対潜艦を建造するなど補助艦艇の調達も積極的に行っている。その事もあって1950年代にはミサイル巡洋艦14隻、汎用駆逐艦21隻、フリゲート28隻、コルベット18隻、揚陸ヘリコプター母艦3隻、ドック型輸送揚陸艦6隻、ドック型揚陸艦6隻、攻撃型原子力潜水艦9隻を有しており、バランスのとれた艦隊構成が可能であった。

オスマン海軍はアメリカ海軍や日本海軍、イギリス海軍などの世界最大規模の列強海軍と同様に航空海軍としての面を持っており、海軍内で少なくない数の航空部隊を抱えていた。

空母航空団や各基地の哨戒機部隊は海軍航空隊の中心的存在であり水上艦隊に匹敵する規模となっていた。それゆえに空母に搭載される航空戦力も強力であった。この頃のオスマン海軍空母航空団は1個あたり《FA-48C/D》艦上戦闘攻撃機30機、《EA-38C》電子戦機4機、《E-28C》早期警戒機4機、四二式艦上対潜哨戒機のライセンス機である《S-42B(S-3B)》対潜哨戒機2機、四九式艦上回転翼哨戒機のライセンス機である《SH-49B(SH-60B)》対潜哨戒ヘリコプター6機が配備されており、この規模の空母航空団が常時6個も編成されていたのだ。

また、基地航空隊にはアメリカ海軍が正式採用している《P-38 オライオン(Il-38)》が62機配備されており、その高い対潜水艦探知能力を活かして東地中海での対潜哨戒任務を行っている。

これだけでも欧州連合側の海軍にとっては頭を悩ませる戦力差であるが、地中海におけるハワイ条約機構にて有力な海軍戦力を有する国家はオスマン帝国のみではなくオーストリア帝国も存在していた。

オーストリア帝国は欧州連合1、2を争う陸軍大国であるドイツやソ連と地続きで国境を接していることから陸空軍を重視していたが、アドレア海を挟んで地中海有数の海軍を有するイタリアとも接していた事から海軍にも一定の戦力を抱えていた。

オーストリア海軍は想定される主戦場がアドリア海と言う狭い海域であった事から沿岸海軍オスマン海軍とは違い沿岸海軍としての性質が強かったが、それでも《プリンツ・オイゲン》級戦艦2隻、《ザーラ》級装甲巡洋艦(大型巡洋艦)4隻、巡洋艦4隻、駆逐艦6隻、フリゲート18隻、ミサイル艇27隻など少なくない数の戦闘艦を保有していた。

特に《プリンツ・オイゲン》級戦艦は16インチ砲8門を有する有力な戦艦であり、日本海軍の大型巡洋艦であった秩父型大型巡洋艦を改装した《ザーラ》級装甲巡洋艦と共に地中海有数の水上打撃戦力であり、イタリア海軍に与えるプレッシャーは極めて大きかった。その為、イタリア海軍は常に戦艦を2隻から3隻ほどを中核とした艦隊(イタリア海軍の戦艦総数は6隻)をアドリア海に張り付けさせる事に成功していた。

また、これら両国海軍の他にオスマン帝国には空母1隻、戦艦2隻を中核とする日本海軍地中海艦隊と(基準)6,500トン級巡視船5隻からなる日本沿岸警備隊スエズ警備船隊が待機しているなど地中海でも圧倒的な海上戦力を展開させていた。

583: ホワイトベアー :2019/12/24(火) 19:30:06 HOST:kyosyujyo.st.wakwak.ne.jp
一方でこうしたハワイ条約機構の圧倒的な海軍力を前にイギリス連邦や欧州連合がただ指を加えているだけな筈がなかく、欧州連合やイギリス連邦もまた海軍戦力の拡大を行っていた。

欧州連合は《欧州防衛軍構想》の一環として欧州連合全体での海軍力の増強を勢力的に行っており、1950年代には欧州連合全体で24隻もの主力艦(戦艦・空母)を有するなど急速にその脅威を拡大させていた。

特に航空戦力面での戦力の発展は目を見張るものがあり、1940年代前半にはレシプロ機の運用を前提とした旧型航空母艦しか有していなかったものの、わずか20年未満で形だけでも日米の空母に近い性能を持つ近代的な航空母艦を建造し、艦載機として史実第2世代ジェット戦闘機に近い機体を配備するなど、急速にかつ格段にその戦力を拡大させていた。

そして、航空戦力の発展と共に水上戦力の近代化も行われており、1952年には欧州連合初の対空ミサイル艦として《ローン》級防空巡洋艦や《Z119》型防空駆逐艦が登場するなど砲や魚雷を主兵装とした旧来式の艦艇ではなく、ミサイルを主兵装とした近代的な艦艇も次々と就役させていくなど、形だけなら日米の海軍に匹敵する近代海軍へと成長を続けていた。

以外かも知れないが、欧州連合海軍の総戦力上では欧州連合の盟主の一角であるドイツ帝国が占める割合は欧州連合に加盟している列強で最低であった。

これは前大戦での敗戦とその後のドイツ帝国の国防方針がその原因である。

前大戦での敗戦後、ドイツは極めて厳しい軍事制限が掛けられてしまい、かつては世界第4位(※1)を誇った海軍はその規模を列強最小にまで縮小してしまっていた。幸いロンドン密約でこうした軍備制限は大幅に緩和される。しかし、その時に政権を握っていたヒトラー内閣としては膨大な予算が必要でありながら効果があまり期待できない海軍よりも、大戦での直接的な敗因であった日米の戦略爆撃機への対策としての空軍と、オーストリア帝国やフランスに対する備えとしての陸軍を重視する方針を取った方が国民からの賛同も得やすいとして陸空に優先的に予算を与えていた。

西欧戦争後も陸空重視の姿勢は変わらず、結果としてドイツ海軍の戦力は欧州連合の列強で最小の規模しかなかったのだ。

それでも1950年代後半には水上打撃戦力として《ビスマルク》級の後継艦として建造された《フリードリヒ・デア・グロッセ》級戦艦を2隻保有し、航空戦力としては欧州連合初の本格的現代空母である《ドッチェランド》級航空母艦を2隻保有するなど世界的に見れば有力な海軍へと成長していた。

ドイツ海軍は主力艦を補助する艦艇も一定の水準を有しており、フランスとドイツが共同で行った新型防空艦開発計画であるホライズン計画によって建造された欧州連合初の防空ミサイル巡洋艦である《ローン》級防空巡洋艦や同時期に開発された《Z119》級防空駆逐艦を合わせて18隻を運用または建造していた。

《ローン》級防空巡洋艦や《Z119》級防空駆逐艦に搭載されている防空ミサイルシステムは
AVL(Abschnitt Verteidigung Lenkflugkörper)-01と呼称され、史実マズルカレベルの性能を有している欧州連合初の長距離対空ミサイルであった。

このミサイルの発射装置を《ローン》級防空巡洋艦が連装で前後に1基づつの計2基、《Z119》級防空駆逐艦は単装で船体前部に1基搭載しており、その高い防空能力から空母や戦艦などの主力艦を有する艦隊に優先的に配備されていった。

584: ホワイトベアー :2019/12/24(火) 19:31:44 HOST:kyosyujyo.st.wakwak.ne.jp
また、これらの2艦種以外にも水上戦闘艦として、対潜ロケット砲や対潜ミサイルを搭載し、対艦能力や防空能力を減じてまで対潜水艦能力に重点をおいた《G219》級フリゲート8隻、その改良型である《G228》級フリゲート14隻の合わせて22隻のフリゲートと沿岸防衛および沿岸哨戒用の小型高速戦闘艦である《S140》級コルベットを20隻を運用しているなど少なくない数の水上戦闘艦を抱えており、さらに従来の潜水艦よりかも早い水中速力を発揮できる発展型ヴァルター機関を搭載する《XXⅤ》型潜水艦を18隻、その発展型である《ⅩⅩⅥ》型潜水艦を6隻を運用し、その他に補給艦や揚陸艦、海洋調査船などの支援艦も多数運用しているんど地域海軍としては無視できない戦力を有する海軍ではあった。

一方でソ連はスターリンの意向もあってドイツ帝国とは違い欧州連合創設前から海軍の拡張に勢力的に取り込んでおり、1930年代から戦艦8隻、空母8隻、装甲巡洋艦8隻を中心とした艦隊を整備することを目的とした《大きな艦隊計画(日本呼称八八八艦隊計画)》と呼ばれる海軍拡張計画を進めていた。

縮小こそされるものの欧州連合創設後もこの計画は継続されており、1950年代末期には大型艦だけでも18インチ砲搭載艦《ウラジーミル・イリイチ・レーニン》級戦艦2隻、16インチ砲搭載艦である《ソビエツキー・ソユーズ》級を4隻、《ドッチェランド》級航空母艦の準同型艦である《モスクワ》級航空母艦3隻、その前級であり《ザイドリッツ》級装甲空母の準同型艦に当たる《ノヴォロシースク》級装甲空母3隻の合わせて12隻の大型艦を保有するほどまでに成長していた。

また、ソ連はこうした主力艦とは別に巡洋艦や駆逐艦、潜水艦などの戦闘艦や各種補給艦や各種揚陸艦、海洋調査艦などの支援艦の建造にも莫大な予算と労働力を割いており、その事もあってソ連海軍は1950年代末期にはAVL-01システムを連装で2基搭載する《ジェレズニャコフ》級大型対潜巡洋艦や同システムを単装で1基搭載する《48型》防空駆逐艦などの艦隊防空艦を合わせて28隻運用していた。

また、それ以外にも独ソが共同で開発した対艦巡航ミサイルを単装で2基12発搭載する対艦能力向上型の《48-bis》ミサイル駆逐艦を21隻、ソ連がドイツの技術支援を受けて開発した12連装212mm口径対潜迫撃砲やP-23対潜ミサイルを搭載するなど対潜能力を強化した《48-PLO》型対潜駆逐艦を23隻、対潜水艦戦を主軸において設計された《159》型警備艦や《35》型警備艦などのフリゲートを68隻、2,500トン近くの巨体を有し、発展型ヴァルター機関を搭載させた新鋭潜水艦である《641》型攻撃潜水艦を60隻、対艦ミサイルを主兵装としたミサイル艇を100隻近くを就役もしくは建造中と補助戦闘艦艇の拡張にも余念がなかった。

さらに、これらを後方から支える潜水艦母艦や各種補給艦、各種揚陸艦などの支援艦艇の建造や海軍工廠の拡張や増築にもしっかりと予算を投じており、1950年代中半からはこれらの艦艇が次々と就役または稼働させていく。

また、新造艦の建造と平行して既存の艦艇に対する近代化改修を順次行っており、補助戦力も当初の日米の推測を上回る速度で拡大、1950年代後半には欧州連合最大規模の海軍へと成長していた。

無論、この様な大軍拡は史実よりも国力が低いソ連にとって重い負担をかける事になるが、それでも史実とは違い第二次世界大戦での国力の浪費が避けられたことやドイツなどからの支援を受けれた事、さらには偉大なる祖国、ソビエト連邦の同志達(国民)1人1人が日米帝国主義に対抗し、世界革命の灯火を守るためにに自ら自主的にその負担を背負うことでこの大軍拡を成し遂げ様としたのだ。

585: ホワイトベアー :2019/12/24(火) 19:37:37 HOST:kyosyujyo.st.wakwak.ne.jp
独ソ以外にも《欧州連合》内にて大西洋方面や地中海方面での主力と位置付けられたフランスやイタリアも海軍の拡張を進めており、フランスは自国の陸軍を縮小させて16インチ砲搭載戦艦である《アルザス》級戦艦4隻、15インチ砲搭載戦艦である《ガスコーニュ》級戦艦3隻を中核とした水上打撃部隊と中型空母である《ガリニエ》級航空母艦2隻、小型空母である《ジョフル》級対潜空母4隻を中核とした機動艦隊を編成、イタリアは空軍と海軍による共同での艦隊決戦をドクトリンとして《ヴィットリオ・ヴェネト》級戦艦4隻、改ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦にあたる《インペロ》級戦艦2隻を中核とした水上打撃部隊を編成していた。

当然、これらの海軍にもミサイル艦が配備されており、ようやく欧州列強諸国の海軍も日米海軍と同じ土俵に立てたのであった。

また、オランダやスペイン、ポルトガル、ポーランド、北欧諸国(フィンランドは除く)など列強以外の欧州連合加盟国家でもそれぞれ海軍の増強を行っていた。これらの国家では戦艦や正規空母と言った艦艇はあまり見ず、駆逐艦やフリゲート、コルベットなどの中型艦や小型艦を主力としていたが、それでもスペインなどはヘリコプター空母や装甲巡洋艦などを有しており、これらを合わせれば規模だけならイタリア海軍に匹敵、もしくは多少超える程度の戦力を有していた。

また、ドイツやフランス、ソ連と言った欧州連合の中でも空母を保有する各国では搭載機の開発も熱心に行われており、1940年代後半までには《Ta186》の艦上戦闘機型である《Ta186K》を戦闘機として、《Me210》の海軍仕様機である《Me210S》を艦上爆撃機として運用しているなど、早いペースで艦載機のジェット機化が進んでいた。しかし、これらの機体は亜音速機であり、史実では第一世代に分類される機体であった。

当然ながら冬戦争で投入された日米の艦載機を仮想敵とすると性能不足であり、後継機の開発が即座に決定されていた。また、当時の欧州連合は1956年にようやく待望の原子力爆弾の実用化に成功し、これを運用可能な艦上爆撃機の搭載も決定された。

しかし、当時のドイツ帝国の主要航空機メーカーは日米の新型陸上戦闘機(和製F-15と米製Su-27)に対抗可能な新型戦闘機の開発に全力を注いでおり、新規に全ての艦載機を開発する余裕は存在していなかった。その為、空母艦載機の開発は戦闘機はドイツ、フランスが攻撃機と分担して行う事が1953年に欧州理事会にて決定される。

そして、実際にドイツで艦上戦闘機の開発を担当する事になったのは空軍新型主力戦闘機のコンペにおいて政治的な理由から真っ先に敗北し、言い方は悪いが暇をしていたメッサーシュミット社であった。メッサーシュミット社は当時のドイツ海軍で運用されていたジェット艦載機を開発した会社であり、他の企業よりも優れた開発ノウハウを持っていた事もこの決定の背景にはあった。

こうして艦上戦闘機の開発に取り組んだメッサーシュミット社であるが、当初彼らが構想していた《Ta186K》の性能向上型機開発は推定スペックが軍の要求を下回っていたことから早々に白紙化され、1から設計・開発を行うことになってしまい、当初の予定よりも開発が長期化してしまった。しかし、開発された艦上戦闘機である《Me260 ヴァンデルファルケン》は史実のF-11に良く似た機体で離着艦性能、操縦性、運動性においては非常に優れてたいたことから多少の期間の超過などは対して問題とならなかった。

余談であるが本機が史実F-11にあまりに似すぎていた事から夢幻会ではドイツ国内に転生者がいるのではないかと言う疑いが生まれたが、結果としてそれを裏付ける事はできなかった。

閑話休符

一方でフランスではダッソー社が空軍向けの新型戦闘機の開発と平行して攻撃機の開発を担当する事になったが、こちらは軽戦術戦闘攻撃機計画でダッソー社がコンペに出して敗北した《ミステール》を艦上戦闘攻撃機に転用したことから問題なく開発に着手できた。

しかし、艦上爆撃機は核兵器の小型化に手間取った事から凍結される事になる。

上記の通り欧州連合加盟国各国がそれぞれ海軍戦力の拡大を行う一方で、欧州連合はこれらの部隊の統合運用をより効率的に行うためにドイツ帝国海軍・ソビエト連邦海軍・フランス国海軍、イタリア王国海軍など欧州連合加盟国海軍の部隊を統合した《欧州連合海軍》を《欧州防衛軍》の下部組織として新設、《欧州連合海軍》が統括する《欧州連合海軍大西洋艦隊》、《欧州連合海軍地中海艦隊》・《欧州連合海軍アジア艦隊(※2)》と言う3つの艦隊がいわゆる「フォース・ユーザー」として誕生するなど日米海軍に追い付く為に組織面での改革も進めていた。

586: ホワイトベアー :2019/12/24(火) 19:38:38 HOST:kyosyujyo.st.wakwak.ne.jp
また、イギリス連邦もハワイ条約機構や欧州連合の海軍軍拡に付き合う形で海軍の拡張を実行していた。

もともと、イギリス海軍は1930年代後半までに18インチ三連装砲を3基搭載した《パトローナス(守護聖人)》級戦艦を5隻、16インチ三連装砲を3基搭載している《キング・ジョージ5世》級戦艦を4隻、16インチ連装砲4基を搭載する《アドミラル》級巡洋戦艦4隻、《ロイヤル・オーク級戦艦》6隻と数だけなら日米を凌ぐ世界第1位の水上打撃戦力を抱えており、空母に関しても戦中に実戦配備された《フューリアス》級航空母艦4隻以外に、比較的新しい装甲空母である《ハーミズ》とその改良型である《アーク・ロイヤル》級航空母艦6隻を有しているなど欧州最強の海軍国として圧倒的な海軍戦力を有していた。

しかし、アークロイヤル級はレシプロ機の運用を前提としていたことから就役時から世界的に見れば旧式空母であり、欧州各国を相手にするならともかく、アメリカ合衆国海軍や大日本帝国海軍を相手にするとなると些か以上に性能が不足していた。また、巡洋艦やその他の艦艇も日米の艦艇に対して装備的に時代遅れであった。しかし、当時のイギリスはインドやマレー半島のドミニオン化によって財政的にかなり厳しい状況に置かれており、これらの低性能艦を新しい艦艇に更新することは難しかった。そうした事情からイギリス海軍は1940年代にはいると新規艦の建造と平行して、15インチ連装砲3基搭載する《ロイヤル・オーク》級戦艦を初めとする旧式艦の退役によって予算を捻り出し、既存の艦艇の性能を上げるべく近代化改修を実施していく。

この改修では戦艦や巡洋艦、駆逐艦などには最新の各種レーダーが搭載され、さらに一部の艦にはミサイル防空艦建造までの繋ぎとして高角砲や機関砲、機関銃など従来の砲熕兵器などが増設され、限定的ではあったが防空能力の向上がはかられた。また、防空能力の向上が行われなかった駆逐艦にはソナーや対潜ロケット砲を搭載するなどして対潜能力の向上を目的とした改装が施される艦艇もあった。

こうした既存の艦艇の近代化改修は1940年代中半までに一応ではあるが一段落つき、イギリス海軍は新規に独自開発した艦隊防空ミサイルであるシースラグ艦対空ミサイルとシーキャット短距離艦対空ミサイルを運用可能な大型ミサイル防空艦である《デアリング》級嚮導駆逐艦や、コスト削減の為に船体を小型化し、一部の性能を削った《カウンティ》級ミサイル駆逐艦、日本に頭を下げて導入する事に成功したウェセックス哨戒ヘリコプターを搭載する《ダイドー》級ヘリコプター巡洋艦、輸送船団や艦隊にて対潜護衛艦としての役割を期待されて各種ソナーや対潜ロケット砲を搭載して設計・建造された《12》型フリゲートとその発展型である《81》型フリゲート、ヴァルター機関搭載潜水艦である《オベロン》級潜水艦などの新造艦の建造に着手していく。

この時のイギリス海軍は新造艦の早急なる戦力化のために、艦艇の一部(各ドミニオン海軍で運用される艦艇)をインドやマレヤ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカと言った各ドミニオンの造船所で建造させると言う方針をとった事から、これらの艦艇は欧州連合海軍よりも早いペースで就役していいき、いまだにイギリスが侮れない国力を有する列強である事を世界に知らしめた。

一方で主力艦である航空母艦に対しては予算の問題もあって新規に実験艦を建造すると言う贅沢ができない為、旧式でありながらいまだにイギリス海軍の第一線の正規空母である《ハーミズ》を実験艦として1940年から各種技術テストが実施していった。その為、1945年までに《ハーミズ》にはジェット機の運用にも耐えれる様に飛行甲板とエレベータの構造を強化するとともに、カタパルトを換装、アレスティング・ギアも一括して能力向上型に更新させる。また、甲板をアングルド・デッキ化し、干渉する後部エレベーターが右舷側に移設されてデッキサイド式とされるとともに、艦首がエンクローズド・バウとされるなど大規模な改修が行われていき、実戦での活躍こそついぞ残せなかったものの、イギリス海軍に近代的な空母の各種ノウハウを獲得するのに多大なる貢献をする。

587: ホワイトベアー :2019/12/24(火) 19:40:38 HOST:kyosyujyo.st.wakwak.ne.jp
この《ハーミズ》で得られたノウハウは1943年より開始された《アークロイヤル》級航空母艦の段階的な近代化改修やジェット機の運用を前提とする4万7000トン級航空母艦の建造などに活かされていった。

幸いな事に《アークロイヤル》級航空母艦は基準排水量3万3000トンとスーパーキャリアーとは比べられないものの、イギリス海軍の空母としては巨艦であり、レシプロ機ではなくジェット機を運用する事も不可能ではなく、《ハーミズ》と同様の改修が順次施されていった。

こうした装備や人員の増強や近代化をはかるのと同時に、イギリスは組織のスリム化の為に抜本的な組織改革を行っていく。

その一環として、インドとマラヤのドミニオン(自治領)化と同時にインド海軍とマラヤ海軍が新たにイギリス連邦海軍(※3)を構成する自治領海軍が創設された。これらの海軍創設は兼ねてからイギリス本国が自国の予算を費やさずに海軍の規模を拡張しようと考えていた方策のひとつであり、当初の両海軍は設立当初はイギリス海軍で退役する予定であった艦艇群が近代化改修を施されて配備されていたが、上記した新造艦が就役していくとそれらに入れ換えられていった(インド海軍は規模が大きく、旧式艦を完全に入れ換えることはできなかったが)。

1950年代に入るとジェット艦載機の運用を前提とした《ジブラルタル》級航空母艦が7隻も艦隊に配備され、さらに《アークロイヤル》級が各自治領海軍に譲渡され、その後継艦として5万7500トン(基準排水量)級航空母艦4隻の建造も開始されるなど空母の増強もよりいっそう行われていき、水上打撃戦力でも16インチ砲を搭載する《キング・ジョージ5世》級戦艦を4隻、《アドミラル》級巡洋戦艦4隻は予算の都合上退役したものの、18インチ砲を主砲とする《守護聖人》級戦艦5隻は搭載レーダーを新開発された900砲射撃指揮用レーダーや史実992Q型目標補足レーダーや965P型早期警戒レーダー相当のものに換装し、史実904型短SAM用レーダー相当のものを増設、副砲を撤去してそこにシーキャット短SAM 4連装発射機を設置、連装高角砲の数を削った上で史実4.5インチ艦砲Mk.8相当の単装砲に換装するなどの徹底的な近代化改修を施された上で現役艦として運用されていた。

また、新造での護衛艦もイギリス本国海軍のみだけで《ダイドー》級ヘリコプター巡洋艦6隻、《デアリング》級ミサイル教導駆逐艦12隻、《カウンティ》級ミサイル駆逐艦28隻、《81》型フリゲート26隻、《12》型フリゲート30隻、《オベロン》級潜水艦27隻を有しており、近代化改修が施された旧式艦も加えれば単独で欧州連合に対抗できうる戦力を抱えていた。さらに、カナダにはイギリス本国から供与された《アークロイヤル》級航空母艦1隻、《キング・ジョージ5世》級戦艦1隻を中核として《デアリング》級ミサイル嚮導駆逐艦3隻、カナダが独自に設計した《サン・ローラン》級ヘリコプター搭載駆逐艦18隻、《トライバル》級駆逐艦を改造した《イロコイ》級フリゲート8隻、《オベロン》級潜水艦3隻を抱えるカナダ海軍とイギリスが(カナダの予算で)大金をかけて整備した海軍工廠や軍港が存在しており、仮に本国が陥落してもイギリス主力艦隊は戦える状況を維持している。

このように既存の艦艇の近代化改修や新造艦の建造とする一方で航空機の研究・調達にも力を入れていた。

もともと1940年代当時後半のイギリス海軍の主力艦上戦闘機はスーパーマリン社が開発し、イギリス海軍が初めて採用した本格的な艦上ジェット戦闘機である《アタッカー》の戦闘攻撃機型である《アタッカーFB.2》と空軍で運用されている戦闘爆撃機である《ヴァンパイア》の艦載機仕様である《シーヴァンパイアFAW.20》であり、およそ540近くのアタッカーと、260機近い《シーヴァンパイアFAW.22》を運用しているなど、欧州水準では規模、質ともに高い水準を誇る海軍航空隊であった。

《アタッカー》は単発機であったものの最高速度964km/hと言う欧州水準では高水準な速力と航続距離776kmと言う航続距離を誇る機体で、《シーヴァンパイア》にいたっては最大速度961km/h、航続距離約1,100kmを誇る高性能機であった。これは当時の欧州連合の空軍主力戦闘機がドイツやソ連などの一部の国家でも最大速度1,060km/h、航続距離920kmを誇る《Ta186》が、その他の大半の加盟国ではいまだに史実《He162 サラマンダー》と瓜二つなHe180であった事から、欧州における本機のスペックの高さを推し量れるだろう。しかし、当時の日米の主力艦上戦闘機は史実では第三世代ジェット戦闘機に当たる性能を誇る《三〇式艦上戦闘機》とその派生型にあたる《F-30》であり、日米を相手にするとなるとはっきり言ってしまえば的以外の何者でもなかった。

588: ホワイトベアー :2019/12/24(火) 19:41:09 HOST:kyosyujyo.st.wakwak.ne.jp
こうした状況を打開するべく、イギリス海軍は1949年、《シーヴァンパイア》の後継機として同機の性能向上型である《シーベノム》を、《アタッカー》の後継機として新規に開発された核兵器搭載能力を有する新型艦上戦闘攻撃機である《シミター》を採用するなど新型機の調達を積極的に進めていき、また、開発終了から間髪入れずに超音速艦上戦闘機の開発と《シミター》艦上戦闘攻撃機の後継機の開発を開始するなどイギリスは空母に搭載する艦上航空機の開発も急ピッチで進めていた。

また、日本から導入した哨戒ヘリコプターによってヘリコプターの有用性を政府に示せた事によって国内でも哨戒ヘリコプターの研究と開発が開始されるなど固定翼機以外の機体の開発や調達も行われていく。

1950年代のイギリス海軍は地中海に2個空母機動艦隊と1個水上打撃部隊を主力とする地中海艦隊を、インド洋と西シナ海に1個空母機動艦隊と1個水上打撃部隊からなる東洋艦隊を配置し、それ以外の艦艇は全て大西洋方面に配備されていた。

その為、イギリス海軍は地中海にも一定の航空戦力を即座に動員可能であり、この事実は1950年代末期にはイギリスが核兵器の実用化と小型化に成功した事実と合わさり、欧州連合の大西洋沿岸国はもちろん地中海に面する沿岸国にも大きなプレッシャーをあたえていく。

589: ホワイトベアー :2019/12/24(火) 19:42:09 HOST:kyosyujyo.st.wakwak.ne.jp
(※1)
20世紀初頭の世界の海軍ランキング上位3位は

1位 大日本帝国
2位 アメリカ合衆国
3位 大英帝国

である。

(※2)
主に東南アジアの植民地防衛を目的とした艦隊で、インドシナに司令部を置き、フランス東洋戦隊(対潜空母1隻、重巡洋艦1隻、駆逐艦4隻)とオランダ東洋艦隊(フリゲート8隻、コルベット12隻)をその主力としている。

(※3)
イギリス連邦内の全ての海軍(王立海軍、王立カナダ海軍、王立オーストラリア海軍、王立ニュージーランド海軍、王立インド海軍、王立マレヤ海軍、王立南アフリカ海軍)に所属する部隊や艦艇を統合的に運用するために設立された新しい枠組み。

590: ホワイトベアー :2019/12/24(火) 19:43:33 HOST:kyosyujyo.st.wakwak.ne.jp
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最終更新:2019年12月26日 12:50