221: 635 :2020/01/29(水) 07:24:15 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
一部改定

銀河連合日本×神崎島 ネタ 戦艦コンゴウ乗艦記


冷房の効いた艦内から出ると感じるハルマ低緯度地域特有の気温の高さに辟易しながら私はヤルマルティアの簡易的な礼装、背広の上着を脱ぎ戦艦コンゴウの甲板に上がった。
コンゴウの甲板上では多くの人々が行き交っている。
その人々を見れば妖精だけでなくヤルマルティア系カンザキ島人、神崎島の軍服を着た島に帰化したイゼイラ系やパアミラ系のカンザキ島人も見て取れる。
その他にも新設されたイゼイラ・ヤルバアン州海軍や防衛総省海軍の軍服を着たティエルクマスカ軍人の姿もちらほらと、恐らくは訓練の為にコンゴウへと乗り込んでいるのだろう。

以前よりティエルクマスカのインフラ、防衛等を一手に担うトーラル技術への依存は危険視されていたがトオラルによって生きてきた我々には打つ手が見つからず。
ヤルマルティアとの接触により初めて非トオラルによる技術を入手することが出来た。
しかしヤルマルティアは本格的な防衛体制という観点から見ると非トオラル技術を入手したばかりの我々と同様に発達過程にあるようなものでありその点ではカンザキ島の存在はありがたかった。
ハルマ世界主要国家の、所謂列強の防衛作戦経験を備えているからだ。

そんなことを考えながら甲板上を見渡せば巨大な化学薬品炸裂式大重量質量弾射出砲が目に入る。
所謂戦艦の主砲である。
その主砲の方より友人であるカンザキ島人となった同郷のイゼイラ人、ここではエスとでもしておこうか、エスがこちらへと駆けてきた。
彼がいなければ此度戦艦コンゴウへ乗ることも出来なかっただろう。
並行人類文学の小説家でもある私は作品執筆の為にヤルマルティアの戦艦について調べていたので非常にありがたかった。


「おい、遅いじゃないか。」

「エス、すまない。泊めてもうらう部屋に荷物を置くのに時間が掛かってしまってね。戦艦というのはあれ程入り組んでいるものなのだな。」

「戦艦という艦はハルマでも特に巨大な水上艦だからね。ティエルクマスカの様に艦内転移装置を備えている訳でもないし。」


エスの言葉になる程と思う。
ティエルクマスカにいると忘れがちになるが発達過程文明ではこれが普通なのだ。
自分達がどれ程トオラルの恩恵の元にいたのかが良く分かる。

そしてエスと共に甲板脇の柵から海を見れば軍港を離岸したコンゴウの三万噸をゆうに超え四万噸に迫る基準排水量を誇る巨体を小さな水上船舶が押している。
エスはそれを小蒸汽と呼んだが、聞けば実際は蒸汽で動いているのではなくヂイゼルという内燃機関の一種で動いているそうである。
しかしあの小さな船体にどれだけの力があるのだろうか、発達過程文明は興味が尽きない。

そして小蒸汽の向こうにはカンザキ市の軍港と付随する軍港街が広がっている。
軍港には戦艦を始め、航空母艦や巡洋艦など多種多様な艦艇が所狭しと停泊している。
エスはその光景をハルマヒガシアジア地域有数の軍港である本土のヨコスカやクレ、サセボを抜いてトウヨウイチと称しているが、実際調べてみるとハルマ世界随一ではないかと私は思う。

しかし小蒸汽が懸命にコンゴウの巨体を押しているが進行方向の変更にえらい時間の掛かるものである、トラクタアビヰムでも使えば良いのではないか。
私がそんな事に少々苛ついているとエスはここにそんな便利なものはなく戦艦などの巨大な艦艇は小回りが効かないからしょうがないと苦笑いをする。
同じイゼイラ人が不便を不便とも感じない、その事実に私は自分の心がとても小さく感じ恥ずかしくなった。

恥ずかしくなり別の方向を向けば私と一緒にコンゴウへと乗り込んだ島で物書きを生業としている友人のヤルマルティア系デルンがコンゴウ乗員と親しげに会話をしていた。
友人同士であろうか。

222: 635 :2020/01/29(水) 07:24:46 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

夜になり夕食と相成った訳であるが本日は金曜日、帝政ヤルマルティア海軍時代からの伝統とされているカレヱライスの日である。
少々ハイカラなイゼイラ人はライスカレヱなる言葉を使用しているがそれは如何なものか、やはりカレヱライスはカレヱライスなのである。
そしてコンゴウでの本日のカレヱは一味違う、ブリテン式のスウプカレヱに故郷イゼイラのパン、トゥルトの組み合わせだ。
エス曰く神崎島も宇宙国際化の時代であるのでティエルクマスカ各国の料理を積極的に導入しているらしい。
しかもこのスウプカレヱは艦長自らがトゥルトに合うように香辛料の調合から始めたという逸品であった。

そして満腹になる程に食べた後になんでも見せたいものがあるとエスに連れられ甲板へと上がった。
夜空を見上げれば見慣れた主星ボダアルのない満天の星空が広がっていた。
薄明かりもない黒い空に星だけが瞬いているのは見慣れていないので酷く驚いた。
しかし全く知らない訳でもない、ネットワアクで調べれば載っている程度のものだ。


「これが見せたいものかい?」

「違う、違うもっと幻想的で物悲しいものさ。さあ後方甲板へ行こう。」


訝しげに思いながらもエスについていく、その途中甲板より夜の海を見下ろしたが飲み込まれそうで恐ろしかった。
そんな話をエスにすればその感覚は間違いではないという。
先任の上官より酒の席で聞いた話だと前置きした上であるがカンザキ島の周辺の海は海底で別の世界へ繋がっているという話であった。
そんな馬鹿なと笑うがエスは真剣な表情で言った。
海底とはトコヨにあったカンザキ島と戦争をしていた半知性体のような状態であった深海棲艦の発生元であり、島はもとより本土でもヨミという世界と繋がっているという。
そんな話をしながら後方甲板の末端へと辿り着いた。

そこで私が見たものは淡く青く光るコンゴウの航跡だった。


「どうだい、驚いたかい?」

「これは一体…?」


エス曰く夜光虫と呼ばれる現象であった。
しかし本来夜光虫とは生物発光を行う小型の海洋性浮遊生物が衝撃を受けて光る現象だそうであるがこの夜光虫は謎が多いらしい。
本来いるはずの海洋生物が存在しないのである。
ティエルクマスカの科学を以てしても原因は判明せず、匙を投げているそうだ。

エス曰くこの淡く青い光はヤルマルティアへと帰りたいと願いコンゴウに乗り込むかつての戦争で亡くなったヤルマルティア人の死者の精神ではないかと言う。
ヤルマルティアの一部では水上船舶は死者の精神を次の因果への途中にあるヨミへと運ぶと信じられており、艦娘もそれを担っているという説を主張するヤルマルティアの民俗学者もいるそうだ。

非科学的なと思ったが、自分が乗るコンゴウの方が余程非科学な存在であることを思い出して閉口した。
エスは私の思考をお見通しだったようで笑いながら宇宙にはどれ程の科学力でも推し量れないものがあり、そういうものだと無理やり納得した方がが良いと言った。
特にティエルクマスカの人間はこのような状況に陥ると科学的思考が出来ず心が不安定になってしまうそうだ。
エスはどうなのかと問えば自分はもう心はカンザキ島人であり創造主ヒルコを信奉して自分なりの認識を持っているという答えが返ってきた。
自分なりに非科学的な存在に対する考えた結果であろうか。


数日が過ぎ、この度の遠洋練習航海最初の寄港地亜米利加は布哇の真珠湾にコンゴウは入った。
私は必要最低限の荷物を持ち布哇の地を踏まんとタラップへ向かう。
人生初のティエルクマスカ連合外の国である気分も良くなる。
タラップを降りる途中一緒にハワイを見て回ろうと約束した例の物書きデルンが遅いといった表情で待っていた。


「リュウノスケ!ちょっと待っててくれ!」


私は待つ人物の元へと走り出した。

223: 635 :2020/01/29(水) 07:25:20 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
以上です。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2020年01月30日 14:16