257: 635 :2020/02/01(土) 21:34:27 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
注!このネタは架空の艦娘が出ます
銀河連合日本×神崎島 ネタ 結局南極大冒険
南氷洋 砕氷船『オーロラ・オーストラリス』
「くそ!なんとか動けないか!?」
「ダメです!氷が厚すぎます!」
『こちら機関室!流氷によりスクリューが損傷した模様!』
「悪いことは重なるものだな!!」
オーストラリアの砕氷船オーロラ・オーストラリスは厚い氷に阻まれて身動きが取れなくなっていた。
大規模なブリザードにより視界を遮られたオーロラ・オーストラリスは自己の位置を喪失、さらには風で流されて厚い氷の間に入ってしまったのだ。
さらに脱出しようとしている内にスクリューが損傷し動けなくなってしまった。
周囲の氷からの圧力に船齢20歳を超えるオーロラ・オーストラリスがどこまで耐えきれるのかも分からなかった。
さてこのオーロラ・オーストラリス、日本とも縁の深い砕氷船で以前スクリューが故障し流氷に閉じ込められた時には先代しらせに救助されている。
また、先代しらせが退役、二代目しらせの就役がまだだった平成二十年には日本がチャーターし南極観測に使用されている。
「近くに砕氷船はいないのか!?このままでは状況が悪化するだけだぞ!?」
「一番近いのは日本のしらせですが、それでも一日以上かかります。」
「クソっ!!」
公表情報と照らし合わせ南極観測に来ていた日本のしらせが一番近かったがそれでは間に合わないかもしれない。
しかし彼らは運が良かった。
通信員が喜色を浮かべた表情で船長の方を向いた。
「船長、吉報です!すぐ近く、数時間も掛からない所に神崎島の砕氷船、いえ砕氷"艦"がいます!」
「本当か!?」
「はい!」
船長は顔を綻ばせた。
幸運にも現代化改修が完了し神崎島連合艦隊へと復帰、急遽日本と神崎島の合同南極観測へと派遣された"彼女"が一番近くを航行していたのだ。
「その艦の名前は?」
「砕氷艦"宗谷"、あの"宗谷"です!!」
そして艦橋に駆け込んでくる人影。
「船長!宗谷艦載機と思われる水上機を確認しました!」
258: 635 :2020/02/01(土) 21:35:21 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
南氷洋 神崎島鎮守府海軍連合艦隊 砕氷艦『宗谷』
救援要請を受け宗谷は流氷の漂う海を掻き分けオーロラ・オーストラリスの元へと急行していた。
その速力はなんとかつての最高速力12.3ノットを遥かに超える20ノット超、これも比叡やふじ型にも搭載された大出力機関と最新鋭の艦体設計のおかげである。
そしてその艦体はかつての姿と大きさを一変させていた。
艦形は概ね後継となっている二代目しらせとほぼ同じだが、近代化した空母艦娘と同様にサイズはかつてより大きく二代目しらせより一回り以上大きく、ロシアの原子力砕氷船にすら匹敵するサイズとなっている。
その艦体はティ連科学知識と地球の最新技術から誕生した超耐摩耗腐食超硬傾斜素材合金製であり、砕氷能力は二代目しらせを上回る。
またその大型化した艦体から居住スペースも二代目しらせを上回り、最新の医療技術を導入した手術室も完備、入院設備も有していることから病院船としての使用も期待されている。
平時は輸送艦としても使用されることから強力な荷役能力が与えられており、大型コンテナ対応の大型クレーンにトラクタービーム、機動揚陸艇を装備、強力な航空機運用能力も与えられておる。
航空機運用は大型ヘリコプターだけではなく、オスプレイなどのティルトローター機や航空戦艦日向にも装備された航空甲板直結の電磁カタパルトによる水上機運用能力も与えられ強力な航空機運用能力を保有している。
ちなみに水上機運用能力はティ連系艤装委員の熱意により実現した。
搭載している水上機は勿論我らが瑞雲、非武装だがティ連の瑞雲バカ共による改造がされておりターボプロップ化、地球製最新の観測を搭載し、唯一ティ連製装備としてトラクタービームまで載せて救難機としても使用可能な機体である。
その他には研究、救難目的でヴァルメも搭載されている。
また宗谷には廃棄物処理、物資造成用にハイクァーンまで装備され南極の自然保護の為にその活躍が期待されていた。
そして宗谷の艦橋では妖精、日本人だけでなく多くのティ連系神崎島国民達が働いている。
宗谷が調査艦としての側面を持っているのでのティ連系は高水準のエリート揃いであり、軍属でしかも今回は救援任務ということもあり士気も高かった。
「艦長、瑞雲がオーロラ・オーストラリスと思しき船舶と接触しました―以上。」
「瑞雲に該当船舶かの確認を即時行うよう通達しなさい。」
「了解しましました―以上。」
淡々と報告を読み上げる通信員の報告を聞きながら艦橋の艦長席では二匹の樺太犬を側に従えた艦娘が指揮を取っていた。
尋常ではないボリュームの縦ロールの銀髪を持つ女性"宗谷"が艦長席に座っている。
銀髪なのはかつて旧ソ連向けに建造されていた名残で縦ロールなのは『燈台の白姫』と呼ばれていたからであろうか。
服装は宗谷の語源がアイヌ語という説があるためであろうかアイヌ文様の描かれた足元までのアットゥシを着ているが神威程ではないがスリットが入ったりしてしかも前開きに着ている。
アットゥシの中も肌色ではないが着ているのは体に密着するようなタイプの装いだ。
上半身は艦橋の如く平面で構成されているが下半身は砕氷艦の如くボリュームのある安産型である。
そしてその背中にはクレーンや航空甲板を模した艤装が背負われている。
なお日本人乗組員の中には宗谷の容姿にエライ驚いた者もおり、その人物達のパーソナルスペースの艦内ベッドには緊急時には鈍器としての使用も想定されている書籍が常備されてるそうな。
「クゥーン…。」
「タロもジロも心配する必要ありませんわ。置いていくなど致しません。」
心配そうに宗谷を見つめる樺太犬を宗谷は微笑みながら撫でた。
かつて『燈台の白姫』とも呼ばれた影響であろうかその口調は世間で言うお嬢様口調であったがかつて軍に在籍していた影響か実直かつ正義感溢れる性格をしている。
「瑞雲より入電、対象船舶をオーロラ・オーストラリスと確認、流氷に挟まれ損傷している模様。―以上。」
「必ず船も乗組員も助け出しますわ…!」
かつての大戦で多くの艦船との別離を経験し残される者の悲しみを知る宗谷は知らずの内に拳を握りしめていた。
259: 635 :2020/02/01(土) 21:36:36 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
砕氷船『オーロラ・オーストラリス』
「おーい!こっちだ!」
「助かった!」
オーロラ・オーストラリスの甲板には乗組員達が上がり近づく宗谷へと手を振っていた。
助かるのが分かったので皆明るい表情だ。
「あれが"宗谷"か、デカイな…。」
「排水量はかつての四倍は超えるという話ですからね。空母鳳翔は六倍近く違うという話ですし。」
「はあ、つくづく艦娘ってのは不思議なものだな。」
「船長、その艦娘も最近じゃ我が国出身の艦娘もいるじゃないですか。」
「ハア!?本当か!?」
「知らなかったんですか!?」
オーロラ・オーストラリスの船長と副長がそんな会話をしていると宗谷から光が流氷に放たれた。
ティ連技術のトラクタービームだ。
「っ!なんだ!?」
「光を浴びた氷が勝手に離れていくぞ!」
「Oh、まるでSFだな…。」
「おいおい、神崎島の艦がSFなのは当たり前だろ?」
「ハハ、そうだったな。」
甲板の人間がそんな話をしていると宗谷から水上を滑る人影が船へと近づいてきた。
その人影が何者かを察した船長はタラップを降ろさせた。
乗組員達もその人影に少し興奮気味だ。
そしてタラップを登ってきた人物は乗組員の前で『燈台の白姫』の名に恥じぬ優雅な一礼をする。
「始めまして艦娘"宗谷"ですわ。皆様お怪我はありませんか?」
「始めまして"宗谷"、私がこの船の船長、そして全員無事だ。救助に感謝する。」
「それは良かった…。」
宗谷はほっとした様子で胸を撫で下ろした。
しかし、オーロラ・オーストラリスの船長は残念そうな顔をする。
「折角あの"宗谷"に会えて嬉しいが、我々の南極観測はここで終了のようだ。船がこの有様ではな…。」
船長が見下ろした先の船体には大きな損傷があった。
スクリューも損傷し自力での航行は不可能、乗組員達も少し悔しそうだ。
「安心して下さいな。私がなんとか致しましょう。」
「それは一体?……!あ、あれは!!」
「ベビーヘキサ!!」
宗谷が手を上げると砕氷艦宗谷から二つの何かが飛来した。
ベビーヘキサことヴァルメだ。
二機のヴァルメはオーロラ・オーストラリスの周囲を周り始めると光を放ち始めた。
その光を浴びみるみる内に船体の損傷が直っていく。
そして船内からの通信が甲板上に流れる。
『こちら機関室どうなってんだ!?スクリューが直ったようだぞ!?』
『こちらダメコンチーム、船体の損傷が無くなったぞ!』
「ふふ、これで大丈夫ですわね。」
オーロラ・オーストラリスの船長はしてやられたという顔をして宗谷を見つめた。
「これでは南極観測を諦める必要はなさそうだな…。」
「それでは、共に参りましょうか。」
宗谷はにっこりと笑った。
「宇宙よりも遠い場所へ。」
260: 635 :2020/02/01(土) 21:39:14 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
以上になります。
転載はご自由にどうぞ。
以前書いた作品でお蔵入りだったのですが先月の29日が昭和基地の日と知って一部改めた上で出すこととなりました。
269: 635 :2020/02/02(日) 09:29:06 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
皆様レスありがとうございます。
宗谷の服装は某極東の教導院の制服の上をアットゥシにしたものだと思って下さい。
タロとジロの犬種である樺太犬ですが、現実において樺太犬は日本では秋田犬などとの交雑が進み、野犬化したものもほぼ駆逐され1970年代には純血種は絶滅、
現在のサハリン、樺太を領有するロシアでも大食い維持が難しいためにかつて大量に殺処分が行われロシアでもほぼ絶滅しているようです。
この世界においては神崎島に残る樺太犬達が最後の純血種なのかもしれません。
最終更新:2020年02月04日 23:46