92: 弥次郎 :2020/02/22(土) 20:30:49 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
憂鬱SRW IF マブラヴ世界編SS「Zone Of Twilight」短編集4



Part.8 沈黙の巨人たち



 今度こそ、沈黙が場を支配していた。
 アルゴス小隊とその関係者、ユーコン基地の司令官であり連合との技術交流などを管轄する立場として国連から派遣されたクラウス・ハルトウィック、ボーニングからの出向者であるフランク・ハイネマン、その他大勢のスタッフたち。その誰もが、演習の途中から沈黙を作り続けていた。
一対一の異色の演習ということで最初は期待が高まっていたのだが、蓋を開けてみれば、とんでもない戦術と、あっけない幕切れに終わった。

「……ぶっ飛んでやがる」

 しばらく続いた沈黙を辛うじて破ったのは、ヴァレリオの一言だった。
 衝撃という言葉を形としたような、そんな出鱈目な演習内容---近接武器のみでの戦闘、セオリーをガン無視した戦術の展開、ヴァリアブル・イーグルを超える機動戦闘、近接格闘武器の投擲による攻撃---は、歴戦の彼らをして、目を見張るものがあった。
というか、なんじゃありゃ、である。唯一ユーコン側で、というかβ世界側で「知ってた」と諦念をあらわにしているのは、ユーコン出向前に散々訓練を共にしてその出鱈目ぶりなどを把握しているホワイト・ファング試験小隊の篁唯衣のみであった。

(もう……勝ちは確かに勝ちですけど、これを気遣いにするなんて…!)

 唯衣は辛うじて『気遣い』のことを理解したが口に出すことはなかった。
 タケミカヅチの戦術勝利ともいえるこの演習結果を鑑みる限り、ユウヤが喧嘩を売ったことを考慮したとしても、ユウヤがそれほど責められることはないだろうと判断していた。何しろ、これは誰がとられても同じように圧倒される未来が見えるからだ。
もっと簡単に言えば、初見殺しにやられたわけでユウヤの敗北は仕方がないのである。勿論タケミカヅチならば真っ向からでも勝てる。
だが、それをあえて避けることでユウヤの名誉を守った。やり方は少々普通とは違い過ぎるのだが。ともあれ、ちゃんと勝利を取ってきたし、怪我もなく終わって何より。唯衣はそこだけはほっとしていた。

「あー…篁中尉、よろしいだろうか」

 一人平然としていた唯衣の態度に何か気が付いたのか、ドーゥルはためらいがちに尋ねる。

「はい、なんでしょうかドーゥル中尉?」
「篁中尉は……ああなることを予想出来ていたのかね?」

 ああなる、即ち、2回の演習で示された、連合側の衛士の圧倒的勝利。
 衛士の能力の差、戦術機の性能差、戦闘戦術の差、そして衛士の戦術機への理解の差。あらゆる要素が絡み合い、結果となった。

「…はい、形こそこうなるとは知りませんでしたが、ブリッジス少尉とマナンダル少尉が敗北することは予測できていました」

 恐らくユーコンの衛士たちにとってはそのどれもが驚きだったのだろう。だが、唯衣はそれに対するある種の耐性があった。
だから、やや躊躇いながらも、唯衣は演習の結果について自分の意見を述べていく。

「どちらの演習においても、衛士が選択した戦術という要素はありました。特にタケミカヅチ少佐の場合は。
 ですが、根本には、戦術機の性能差と技術差による隔絶が存在しています」
「……それほどに?」
「ヴァリアブル・イーグル、蜃気楼……そのいずれも、原型機の性能を大幅に超えていることは間違いないでしょう。
 よほどの衛士でなければ、その差をひっくり返すことは不可能かと思われます」
「そんなにかよ…」
「はい。相手が悪すぎたかと思われます。今後、両機の性能については実際に体験していただいて理解していただくことになりますが、如何にF-15Eが第二世代最強と謳われていようと、正直な話、蟷螂が戦車に挑むようなものです」
「無謀、か…」
「いっそすがすがしく言い切りましたな」

 加えて、と唯衣はもう一つの要素を、決定的に違う要素を告げた。


94: 弥次郎 :2020/02/22(土) 20:32:41 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

「今回演習に出場した連合の3名の衛士は、間違いなくこのユーコン基地にいる衛士の中でもトップクラスの実力者であり、その経験は連合の人員を除けば誰よりも多いと断言できます。例えば…そうですね」

 ちらりと唯衣はハンターの方へと視線を送り、頷きを返されて断言をした。

「大西洋連邦より出向していただいているハンター中佐は連合の運用する機動兵器の黎明期からの古参であり、常に最前線で戦い続けた衛士であります。
 分かりやすく例えるならば、世界初の戦術機であるF-4 ファントムの開発と初期の運用に関わり、その後、対BETA戦線の最前線で戦い続け、軍の教導および戦技研究を行うアグレッサー部隊に現在属しているようなものです」
「ハァ!?なんじゃそりゃ…!」
「……!?」
「マジのトップガンかよ…」

 ほぼ全員の視線が話題となったハンターへと向けられるが、そのハンターは笑って唯衣をたしなめた。

「話を盛りすぎだぞ、篁中尉。軍に命じられたことをやっただけだ」
「いえ、事実を言ったまでです、ハンター中佐殿。それほどの歴戦の勇士なことは間違いないです。
 また、ユノー中尉は、若くしてそのアグレッサー部隊に属する才媛……戦歴は短いですが、登用されるだけの実力者です。
 同じ階級の中尉を拝命していますが……正直、ユノー中尉には同じ戦術機を使っても勝てる自信がありません」

 その説明で、ようやくアルゴス小隊もユノーの異常さに気が付いた。最前線のアグレッサー部隊に唯衣とそう変わらない外観年齢で配属、それが単なる優秀な成績を収めたエリートだからという理由ではないはずだ。少なくとも、最前線でハンターらに追従ができるということである。
実際、ハンターはツーマンセルを組む際に迷いなくユノーをエレメントに指定したわけであるし、タリサとの一対一はほぼ彼女がリードし、想定通りに動きを組み立てられたのが窺えた。これだけの証拠があって疑う余地はほぼないだろう。

「最後になりますが、タケミカヅチ少佐は……傭兵というカテゴリーに属する衛士です。
 傭兵と言われますと正規軍に実力や社会的信用に劣ると思われがちですが、連合においてはそうではありません。
 その実力と過去の戦歴、信頼性などが正規軍並に高いと評価されるからこそ、軍へ出向した際に少佐の階級を与えられるのです。
 少佐の経歴については長くなるので省きますが…もし正規軍に入ればハンター中佐のような厚遇を以て迎えるべき逸材です。
 事実、大日本帝国においては連合からスカウトできないかという話が真面目に検討されるほどです。ご本人としては、自分の思うように自由にやりたいとのことで傭兵業を営まれているのだとか…」

 全員の目がモニター越しに蜃気楼へと、コクピット内部のタケミカヅチに集中するのを見ながらも、唯衣は何とか説明を終える。
正直なところ、説明しきるのがどうしても難しいのだ。自分とて、トヨアシハラにおけるレクチャーや訓練が無ければ理解もできなかっただろう。
この場にいる人間に納得ができるような説明をたった一人でやろうというのは、あまりにも無謀が過ぎる話というもの。
だから、唯衣は説明をここで区切ることにした。予想外の演習があったにせよ、顔合わせや実力の紹介などは出来ただろう。

「正直なところ、ここでは説明しきれないのです。
 そも、我々の主任務は戦術機の開発およびその試験……連合そのものと連合の衛士については、また続きを別の機会としたいのですが、よろしいでしょうか?」
「そうだな…ありがとう、篁中尉」

 ドーゥルは礼を言うと深い吐息を吐き出す。ユウヤについてはもう責めるに責められないと判断していた。まあ、一言いうくらいで納めてやろう。
 まだまだ連合についてはまだ未知のところが大きい。唯衣がこういっているのだから、また明日以降、時間を見つけて聞き出していかなければならない。
衛士としてだけでなく、個人としてもドーゥルの興味は尽きることはなかった。意外な経歴を持つ彼らの事は、もっともっと知りたいのだ。

「本日のカリキュラムはここまでとする。各員、配布された資料の閲覧を十分に済ませておくように。解散!」

 その言葉をアルゴス小隊関係者は当然のこととして受け入れた。
 ドーゥルだけではなく、彼等もまた、興味を持ったのだ。惰性で、命令で組む相手以上の興味を連合に対して。

95: 弥次郎 :2020/02/22(土) 20:33:18 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

Part.10 技師の本懐


「厳重なことですな」

 幾度目かのセキュリティーゲートを通り抜けた車の中で、ハイネマンは呟かざるを得なかった。
 解散が命じられた後、ハイネマンは大西洋連邦のハンターに呼ばれ、ともに連合の区画へと足を踏み入れることになった。
それは元々の計画にあったことであったことで不思議はなかったし、ハイネマンとしても興味があったことだ。
殊更、今回のユーコンでの開発において首席開発衛士を務めることになるユウヤ・ブリッジスを圧倒した連合の戦術機やその技術には。
 だが、ハイネマンとしてはここまで厳重な警備を連合がしているとは思わなかった。二足歩行の兵器や重武装の兵士が固めるゲートはいくつもあり、それらを通過するたびに本人確認や情報の照らし合わせなどを行っていて、ついでに手荷物検査などを受ける羽目になった。
 それだけ警戒されているのか、と思うと少し残念ではある。まあ、アメリカという国家は頼りにされる一方で嫌われてもいる。
それは仕方がないことで、実際同盟国であったはずの日本で起こしたアメリカ軍の行動は非難されても仕方がないものであった。
そのアメリカの国民で、尚且つ戦術機というものを軍に卸す会社の技術者ともなれば、どうしても警戒している体をとらなければならないのだろうと予測する。

「申し訳ない、ハイネマン技師。連合は正直なところ国連やアメリカをあまり信用できていないのです」
「いえ、ハンター中佐は悪くはありません。我々がそれだけのことをしてしまったのもまた事実でありますから…」

 同席しているハンターの謝罪に、ハイネマンは鷹揚に応える。

「それに、私としては門外漢なのですが、各地でテロリストが出没しているとのうわさもありますから、これくらいは当然かと」
「は、理解を頂けるのはありがたいことです。実際、機密を盗まれては契約に響いてしまいますので」

 そう、契約だ。大西洋連邦はXF-15Vの開発にあたって、アメリカ政府と軍、それに開発元のマグダエル・ドグラム社と契約を交わしているのだ。
大西洋連邦に対してF-15の素体とその派生機のデータなどを提供する見返りに、大西洋連邦は開発した戦術機を納入し、また開発や改修時において用いた技術を開示して技術を供与するという契約。アルゴス小隊で試験してもらうことになるが、ここには国連に影響力を持つアメリカの意思も大きく絡んでいる。そも、アルゴス小隊にユウヤが派遣されたこともそれに付随することなのだ。

「しかし、ハンター中佐。あそこまでブリッジス少尉を打ち負かしまうとは思いもよりませんでしたよ」
「いえ、あのくらいは……正直なところ、もっとできる衛士と戦ったこともありますので、正直、ブリッジス少尉には落胆しました」
「……米軍のエリートを凌ぐ衛士とお会いになったことが?」
「ええ、アラスカに来る前の、大日本帝国で。大西洋連邦に対してヴァリアブル・イーグルのライセンス契約を大日本帝国が求めてきましたので、そのスペックを示すための演習を行いました。あの操縦は、おそらく戦術機の限界ギリギリまで迫ったものでしょうな。
 あれくらいはやって来るのだと思っていましたが……」
「……ぜひお会いしたいものですな、その衛士に。戦術機の限界に迫る猛者に」
「機会があることを祈っております」

96: 弥次郎 :2020/02/22(土) 20:35:44 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

 やがて、ハンターたちを乗せた車は大きくハッチを解放したサンダーバード級空中輸送機の格納庫内へと滑り込んでいく。
中に入れば、そこに並ぶ多くの人型兵器を拝むことが出来た。外側からは見えない、大西洋連邦が持ち込んだ幾多の巨人たちの姿を。
全高は戦術機とそう変わらない。パッと見たところの外見も、人のような四肢を持っていることも変わっていない。
 だが、印象はだいぶ違う。戦術機が航空機の様な空力学的な面に基づいた外見設計をしているならば、こちらはより人型らしく、より人間をそのままスケールアップしたような設計が窺える。集約されたスラスターや飛行翼らしきものがついているのは戦術機に近いのだが、それはあくまでも外側から足したような印象だ。戦術機のように組み込んだようには見えない。

「あれが……」

 ハイネマンの視線に気が付いたのか、ハンターは並んでいる巨人たちの紹介を行った。

「大西洋連邦をはじめとした地球連合の主力人型機動兵器……我々はモビルスーツと呼称していますが、その一つです。
 今回こちらの基地での任務において我々はウィンダム・パルサーを持ち込んでおります」
「モビル、スーツ…」
「形式番号GAT-04RP。大西洋連邦においてはかつて主力MSとして配備され、その後主力の座を譲ったMSであります。
 とはいえ、数的にはまだ多く、改修を繰り返しながらも運用を続けております」
「モビルスーツというのを、連合では主力しているのですか?やはり戦術機というのは新しく導入されたものだと?」
「はい、戦術機とはカテゴリーが違う兵器です。残念ながら、現行の戦術機と我々のMSの性能差は著しいものがあります。
 正直なところ、戦術機というのはこの惑星のこの世界において初めて見ることになりまして、まだ日が浅いのです。
 実際、我々は開発段階のテスト操縦において戦術機を壊してしまいましてな…機体が追いつかない無茶な操縦をしてしまったくらいで…」
「なんとまぁ…」

 それは初耳だ、とハイネマンは目を丸くするしかない。
 アルゴス小隊の衛士たちの反応から見るに、XF-15Vはこれまでの戦術機を、素体のF-15を凌駕する機動性や運動性を見せていたので、てっきりあれが彼らの実力なのだと思っていたが、実際のところは「戦術機が耐えられる操縦」まで手加減していたのにこちらの常識を超えていた、ということなのだ。
それだけ彼等の操縦の技術や反応能力は優れており、MSの性能はそんな無茶苦茶な反応や操縦に追従できるほど優秀ということ。
それはつまり、彼等との技術を含めたすべての面における差が絶望的なまでにひらけているということだ。

(彼我の差は、想像以上に隔絶している……)

 少し気が遠くなりそうな話だった。30年近く続く対BETA戦のなかで戦術機というのは磨かれてきたものだと自負しているが、どうやらその歩みは彼等からすれば牛歩の如く鈍い物だったようだ。でなければ、この短期間で戦術機を模倣し、習熟してしまうことなどできはしない。
自分もどこか彼らを侮っていたのかもしれない、とハイネマンは自嘲するしかなかった。あの演習の動きを見てわかったつもりだったとは。
 自分はその立場などから早くに知ることが出来たが、アルゴス小隊をはじめとしたこの基地の衛士たちが知るのはいつのことになるのだろう。

97: 弥次郎 :2020/02/22(土) 20:36:51 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
 だが、同時にそれはこちらが彼等から学ぶことが多いということである。
 自分はもともとそのために、XF-15Vを通じて連合の技術やノウハウを吸収するために派遣されてきたのだから、本懐と言える。
 それに、今回、連合からの出向群は戦技研究や指導も兼ねているのだ。恐らく、今は簡単にあしらわれてしまうレベルのユウヤも化けることだろう。
というか、だ。

「ブリッジス少尉の技量はまだ不足がありましたか…」
「ええ、ですが、鍛えがいがありますよ」

 ハンターは愉快そうに笑う。ああいう跳ねっ返りは歓迎だ。空軍パイロットだったハンターからすれば、航空パイロットがそういう人間なのはある種当たり前。
自分から喰らいついてくるような、そんなタフネスや反骨心のある人間でなければ、早々に脱落してしまう厳しい世界。
だから、ああいう態度は大歓迎だ。だが、ハイネマンは笑うハンターの姿に獰猛な獣をイメージしてしまった。
ハイネマンがこれまで接したことの少ないタイプ---ある種の戦争狂、あるいは戦闘狂---だから無理もない。

「ともあれ、ブリッジス少尉のことはお任せください。本人としてはプライドを圧し折られてへこんでいるでしょうが、引っ張り出してやりますので」
「お手柔らかに…彼は首席開発衛士ですので」
「大丈夫ですよ、はっはっはっは」

 ハンターの笑いが、少し怖い。ハイネマンは正直にそう思った。
 ともあれ、とハンターは停車した車から降りるようにハイネマンに促しながら、

「ハイネマン技師としては、こちらの方がより重要でありましょう」
「そうですな…」

 示された先、そこには先程まで演習場を縦横無尽に動き回っていたヴァリアブル・イーグルが並んでいる。それだけでなく、分解状態にあり、内部構造をあらわにしている状態のXF-15Vもあり、あるいは、一部部位だけを取り外して見やすくしている状態のものもある。
それらすべてが、今日ここに招かれたハイネマンのために用意されたものだった。

「では、有意義な時間といたしましょう」
「ええ、よろしくお願いいたします」

 その日から、ハイネマンの宿舎への帰還は夜間まで遅れることとなった。

98: 弥次郎 :2020/02/22(土) 20:38:45 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

《メカニック紹介》

XF-15V ヴァリアブル・イーグル

《諸元》
設計・開発:マグダエル・ドグラム 大西洋連邦
世代:第2.5世代戦術機
生産体制:試作量産型機
装甲材:スーパーカーボン材(バイタルパート及び一部に強化スーパーカーボン材)
防御塗装:半透臨界膜
OS:大西洋連邦製XM-3亜種型OS
搭乗員:1名

《固定武装》
頭部12.7mm重機関銃×2
腕部グレネードランチャー/GAU-90A腕部20mmガトリングガン
MZ-06 ASM(対小型種榴散弾地雷)発射管×3(胸部3連装×1 腰部3連装×2 膝部2連装×2)

《基本武装》
AMWS-21 戦闘システム×2(兵装担架に2門搭載可能)
GR-F15 60mmグレネードランチャー
Type-201 バトルブレード
Type-200 ショートブレード
MR-1 ハンドグレネード

《オプション》
バッテリーパック
プロペラントタンク

《概要》
 大西洋連邦が開発したF-15イーグル系列をターゲットとした近代化改装キットの初期型で改装した姿。
 大洋連合が蜃気楼という次世代機を開発する一方で、大西洋連邦はマブラヴ世界の技術の更新の速度が、その国力や情勢故に遅くなってしまうだろうということを予見していた。確かに質的な面では蜃気楼は優れてはいたのだが、
その質の高さ故に導入のハードルは非常に高かったのである。
 そこで、既に地球で出回って久しく、生産数的にも非常に多いF-15をターゲットとした大西洋連邦はアメリカ合衆国と、というよりも開発元であったマクダエル・ドグラム社を吸収合併したボーニング社と交渉し、近代化改修のキットの開発を引き受けた。
同じアメリカということもあって、交渉は比較的スムーズに進行し、F-15及びその系統の運用データの提供を受けた。
 改装にあたり、まずマブラヴ世界の最前線国家でも導入がたやすい、というハードルの低さが定められた。
一方で、技術的な限界からマブラヴ世界では不可能な部分を実現するという目標も同時に定められ、これの導入によって、マブラヴ世界の技術の発達を促すという趣旨があった。

99: 弥次郎 :2020/02/22(土) 20:39:58 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

 設計は大西洋連邦のGAをはじめとした企業の協力の元で実行に移された。
 まず提供を受けた図面及び運用データなどをコンピューターで議論させ、設計の意図や問題点・改修点の洗い出しとその対応策の候補を絞った。
そしてその候補を技術的ハードルなどを考慮に入れて篩にかけ、仮の設計案などとあわせて再び議論させ、全自動CAD/CAMシステムによって設計を行った。
この結果、設計と開発は1カ月もかからずに終了し、初期ロット分が速やかにアメリカ軍およびボーニング社へと納入されることとなり、連合の技術や力その吸収速度の速さから大きな驚きを与えることとなり、また発揮できるスペックからも関係者の度肝を抜くこととなった。

 まず稼働時間や出力を強化するためにMSで培われたバッテリー技術が導入された。とにもかくにも高出力化をしなければ、動きが鈍いままにBETAに取り囲まれてしまうと判断されたためであった。しかし、内部骨格のMSなどと異なり、セミモノコック構造の戦術機では内装関連のパーツがかなり機体内部に押しこまれているため、大胆な改装を抜きに組み込むことは難しく、背部にバックパックとして外付けすることで解決としている。これにより通常の戦闘で発揮できる馬力と活動時間の大幅な向上を実現している。
 また、機体の機動力を担う跳躍ユニットなどのエンジン部はC.E.側の技術指導によって高性能化を実現した。
高出力化に合わせ、バランスを維持しやすくするために推進翼及びスタビライザーの大型化やセンサー系統の強化が施され、機体制御の難しさを下げている。
 他にも、駆動系やバイタルパートにはスーパーカーボンの剛性などを強化した強化スーパーカーボンが採用されており、機体の剛性や耐久性を高めた。

 武装は基本的にF-15イーグルに準じている。これもまた各国が生産して抱えている在庫に配慮したものであり、主兵装は変化がない。
 一方で、対小型種の跳躍地雷(榴散弾地雷)や頭部の12.7mm重機関銃を利用した近接機関砲の導入による自衛力の強化が図られており、
戦術機の被害でも割と大きな割合を占める小型種対策にリソースを割いているのも特徴である。そのほか、一般的な戦術機の武装やグレネードランチャーなどを採用。ここら辺は大洋連合と歩調を合わせているようである。

 F-15とその発展形の戦術機ならば比較的低コストで導入がたやすいということから、試作段階ながらも各国で運用されるF-15シリーズに急速に導入され、同じく大西洋連邦が開発・配給を開始したF-4およびF-5をはじめとしたFシリーズ向けの近代化改修キット共に普及、前線での死亡率の低減とBETAの撃破数の増加に貢献した。ファーストロットの自社でのテストや各地からのデータを見たマグダエル及ぶ軍の一部は、アラスカ ユーコン基地での試験運用や同基地で開発が進むF-15/ACTVとの比較検証を指示。連合技術の吸収も合わせ、開発衛士の派遣を決定した。
アメリカの最新鋭機であるF-22の開発に関わった衛士によってお墨付きを与え、制式化つまりXナンバーを取り払うことで箔を付けるつもりいる。
 また、このXF-15Vをアップデートキットによる改修ではなく、全面的な技術導入によって完全体とする計画も同時に進んでおり、ここにはボーニングから出向しているフランク・ハイネマン技師を中心とした開発チームが関わっているとされている。
 しかし、これが指示された一方で米軍や政府および議会においてはカタログスペックの点でF-22に劣っていることや連合の持つ技術に懐疑的であったこと、マーキンベルカーをはじめとした企業のロビー活動の影響、そして、最前線国家と後方国家の戦術機需要の違いからあまり肯定的に受け入れられはしなかった。
最も大きい理由としては、合衆国の影にいるAL5委員会にギャラクシー船団残党が提供した(という体をとった)F-22改のスペックと甘言に乗ったことが影響している。

100: 弥次郎 :2020/02/22(土) 20:40:35 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

《武装解説》

  • 頭部12.7mm重機関銃×2
 頭部に内蔵された近接防御機関砲。至近距離もしくは機体に張り付いたBETAの排除に使われる防御メインの火器。
威力はそこまで高くはないが、戦車級までのBETAならば簡単に撃破可能である。

  • 腕部グレネードランチャー/GAU-90A腕部20mmガトリングガン
 前腕部に搭載される選択式の火器。
 メインウェポンのロストあるいは弾切れの際のフェイルセーフとしての意味合いが強い。どちらも口径は小さいが、その分装弾数などは多い。

  • MZ-06 ASM(対小型種榴散弾地雷)発射管
 機体各所に搭載された跳躍地雷を発射するユニット。元々はMSに搭載されていた対人・対兵器装備であったが、小型種のBETAに対しても有効であると判断され、防御用装備として採用されている。

  • AMWS-21 戦闘システム×2(兵装担架に2門搭載可能)
 米軍の一般的な戦術機用火器。特に変更はない。

  • GR-F15 60mmグレネードランチャー
 戦術機用に開発された手持ちのグレネードランチャー。
 空中炸裂弾やBETAの表面に突き刺さって爆発する徹甲炸裂弾など各種バリエーションを揃えている。
 120mm滑腔砲と比べれば威力は低いのだが、取り回しは良く、携行段数も多いという利点を持っている他にも、手持ち火器としてだけでなく、肩部追加懸架ユニットに搭載して疑似的な固定火器として運用することもできる。

  • Type-201 バトルブレード
  • Type-200 ショートブレード
 連合系の戦術機で共通して採用されている近接格闘武器。
 米軍のドクトリンには合致していないのだが、開発に携わった大西洋連邦は、米軍の戦術機の持つ近接格闘武器が貧弱というのはいつ起こるか分からないBETAの進化を警戒すれば無警戒にもほどがあると判断され、これを補うべく採用されている。
大日本帝国や統一中華の用いるそれらほど扱いは難しくはないバランス重視な武装であるため、短期間で扱いを習得できると判断された。


  • MR-1 ハンドグレネード
 リアスカート部やサイドスカート、膝部などに収納されているグレネード。
 単なる爆発による破壊を行う手榴弾というよりは、散弾をばら撒くことによって破片効果を高めたもので、集団で迫って来るBETAに対して使用することを前提に設計していることが窺える。手に取って投げる以外にも、
固定部位から直接落としてから素早く回避運動を行うことで自機周辺のBETAの一掃など応用が利く。
ただし、使いどころや効果が跳躍地雷などと被っていて、比較すると携行数で劣るという難点も。


101: 弥次郎 :2020/02/22(土) 20:42:12 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はご自由に。
めっちゃ投稿に時間がかかりました、すいません…
板がとても重いですな…

これで演習までは終わり。次からは原作イベントをこなしながらもSMSの合流とか描いていきます。
というか、ようやくここまでたどり着いたのにまだまだ先は長いですなぁ…ユーコン襲撃までどれほどかかるやら。
ともあれ頑張っていきますのでお付き合いくだされば…

188: 弥次郎 :2020/02/25(火) 11:48:18 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
転載時、憂鬱SRW IF マブラヴ世界編SS「Zone Of Twilight」短編集4の修正をお願いします

98
×開発元であったマクダエル・ドグラム社と交渉し、
〇開発元であったマクダエル・ドグラム社を吸収合併したボーニング社と交渉し、 

99
×マグダエル・ドグラム社へと納入
〇ボーニング社へと納入

以上の通りお願いします

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最終更新:2020年02月29日 16:01