350: 加賀 :2020/02/29(土) 16:59:08 HOST:softbank126209026144.bbtec.net



8月13日、上海にて海軍陸戦隊と中国軍が戦闘を開始した。『第二次上海事変』と言われる戦いである。その4日前には大山事件も発生しており上海は一触即発の状態となっていた。

「早期に五個師団は必要だ」

 上海に停泊していた第三艦隊司令長官の長谷川中将は内地に増援を要請するも政府は華北の収拾に気を取られてしまい僅か一個師団の増援に留まる。

「上海の三艦隊と邦人は救助する必要があります。直ちに増援を」

 だが海軍内でも動く者がいた。軍令部第一部長の近藤と同じく同志として見つかった第三部長の野村直邦である。この時、軍令部総長は伏見宮であったが二人は粘り強い説得により更に陸戦隊1500名と装甲車が派遣される。
 なお、15日には第二航空戦隊の『加賀』が上海沖に進出して航空攻撃を仕掛けるも12.7ミリ機銃を搭載するカーチス・ホーク3戦闘機との交戦で攻撃隊が壊滅状態となり戦闘機無用論を払拭させる要因もあった。
 この戦闘機無用論にも近藤と野村が出っ張り、戦闘機無用論者を猛烈に批判してパイロット育成の変更に一躍している。

「同志も段々と増えてきましたな」

 12月も20を越えた歳末頃、橋本らは神楽坂の小さな料亭に集まっていた。

「今回は陸さんと民間からも集まったようですね」
「ハハハ、また御世話になります」

 橋本の言葉に堀越二郎が頭を下げた。堀越に憑依した転生者は前回(戦後夢幻)を経験しておらず、どうやら最初の世界(憂鬱世界)を経験していた人物だった。

「零戦は間に合いそうですか?」
「間に合わせます。いや、開戦までに零戦は史実五三型を揃えます。これは私の……堀越二郎がやり残した唯一無二の課題と言っていいでしょう」

 橋本の言葉に堀越はそう告げる。

「期待しています」
「お任せください」
「ところで近藤さん!! 何で瑞雲計画を握り潰したんですか!?」

 そう叫ぶのは酒をたらふく飲んで泥酔状態に近い松田である。松田も憑依直後は直ぐに航本に自身が思案した瑞雲の設計図を手に駆け込んだが近藤が握り潰したのである。

「まぁ待て、まだ瑞雲は早いだろう。瑞雲は秘密兵器何じゃないのか?」
「しかし……」
「それに要となる発動機はまだまだ未完成だ。此処は熟成させてから出すべきだろう?」
「……分かりました。ならば次に期待しましょう」

 そう引き下がる松田であった。

「近藤さん、大丈夫ですか?」
「あぁ大丈夫大丈夫。瑞雲は必要なのは私も承知しているよ。ただ今は発動機の力が弱いからね」
「まぁそれは確かに……」

 橋本の中では松田が暴走したら近藤を盾にしたら良いやと思いはじめたりする。

「それで西住中尉は暫くは内地勤務で?」
「えぇ。上海で負傷したので細見大佐と共に戦車学校の方に……」
「あぁ……史実チニ車がやっぱり採用されたんですね」
「和製T-34を諦めきれなかった技術者の独断でチハ車は負けましたので突チハ車を改良して出すつもりです」

 橋本の言葉に西住はそう答えた。第二次上海事変に参戦した西住だったが戦闘中に負傷しその時に憑依したらしい。その後は同じく憑依した細見大佐と共に内地の戦車学校に赴任して戦後チハ車採用のために奮闘するとの事だ。

「何せよ……お頼みします」
「お任せください」

 斯くして1937年の幕は降り1938年の幕が開けたのである。

352: 加賀 :2020/02/29(土) 17:00:13 HOST:softbank126209026144.bbtec.net
1938年1月16日、近衛首相は「国民政府を対手とせず」の第一次近衛声明を発表する。
 5月19日、徐州会戦が勃発し史実通りに日本軍が徐州を占領する。そして7月11日、満州国東南端の張鼓峰にてソ連との国境紛争である張鼓峰事件が勃発した。
 事件は史実通りの展開となったが戦車学校に赴任していた細見大佐等らはチニ車の対戦車能力を疑問視を主張。陸軍上層部は採用されたばかりのチニ車をどうするか連日の議論にまで発展するのである。
 10月は陸軍が広東、武漢三鎮を占領する。11月、近衛首相が「東亜新秩序」の第二次近衛声明を発表する。
 そして12月12日、中島飛行機が開発中の試作戦闘機が尾島飛行場にて初飛行を行った。

「何とかこいつが間に合いそうだな……」

 上空を飛行する試作一号機を地上から見ていた中島飛行機の技師長小山悌は安堵の息を吐いた。自身が手掛けたキ43は上手くいくと信じている。転生者である彼は倉崎や堀越らからの支援を受けつつ、キ43の大幅な改装をしていた。まず、発動機は新しく開発されたハ115を搭載し推力式単排気管仕様にされていた。武装は現時点では八九式固定機関銃が機首に二挺と主翼にも二挺が搭載されている。主翼は最初から機関銃が搭載出来るように設計されており史実のような機首だけで戦闘する事は避けられていた。
 本来であれば一式固定機関砲(ホ103)を四門搭載予定だが、一式はまだ開発段階であるために今は八九式固定機関銃で代用しているのである。なお、ホ103の生産に目処が付けば順次施す予定である。

「開戦までに時間は無い……慌てず急いで正確に……だな」

 ヤ◯トファンでもあった彼は名言を言うのも忘れなかったのである。


357: 加賀 :2020/02/29(土) 19:22:51 HOST:softbank126209026144.bbtec.net
  • 堀越の決意
  • 松田、瑞雲計画に動き出す
  • 西住の生存フラグ
  • 隼、二型へ


隼は単排気管の後期型になる予定です(史実速度548km/h)

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最終更新:2020年03月05日 15:08