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銀河連合日本×神崎島 ネタ 民俗学者が見た神崎島その六


雑誌『民間傅承』 現代の異界、神崎島 カンノムスメ その三


皆さんは幽婚というものをご存知だろうか、冥婚或いは陰婚、鬼婚とも呼ばれ死者と生者が婚姻することを指す。
大きく分けて幽婚は二つ存在する。
一つは神話において死者と生者の立場の男女が行うもの、これは幽婚譚などと呼ばれている。

もう一つは習俗として死生観に関わり、儀式等として現実に存在するものがある。
死者を弔う際、その魂がまだこの世にあるうちに、それと見立てた異性と婚礼を挙げさせ、夫婦としたのち、死の世界に送り出すものである。

婚姻の対象が死者であるので過激なものでは生者の命が奪われ夫婦として埋葬されるものも存在する。
戦慄すべきは現代中国では幽婚のために殺害された女性もいるということだろう。
或いは若い女性の遺体が花嫁として争奪の対象となり、或いは墓が暴かれる事件もある。

しかし異性に見立てた人形を遺体共に柩に納めるなどの穏やかなものも多い。
山形県のムカサリ絵馬などがその代表だろう。
これら幽婚は婚姻としての意義、死者儀礼の意味を持ち、婚姻することで大人として祖霊としての地位を確立するために行われた。

この幽婚は神崎島にも神話や儀式として存在する。


神崎島の神話の中に島へと流された弟橘姫と亡くなり白鳥へと変じて常世へと渡った日本武尊が子を成す描写が存在する。
生者である弟橘姫と死者である日本武尊が子を成す、これが島の神話上での幽婚譚ある。

常世神宮の『常世神宮縁起』や平安時代に編纂された『神前島志』に記されたものが主な神崎島の神話である。
島の神話は失われ現存しない国記の一部が引用されていることから現在学会では記紀神話の失われた一部という説が主流であり、
他にも国記逸文と思しき文章が存在することから研究が進められている。
しかし神崎島のものも含めた記紀神話において幽婚譚と思しき話はこの島のものしか存在しない。
おそらくは常世という島の特異性がこのような神話を生み出したのだろう。


そして儀式としての幽婚、その始まりカンノムスメがまだ人の巫女を指す言葉であった頃にまで遡る。

多くの死と穢を抱えて夜海へと堕ち夜海門の封印の礎となった巫女達、その巫女達を慰め鎮める為に幽婚は行われた。
"幽ノ婚儀(かくりのこんぎ)"と呼ばれるその儀式は島外より渡ってきたマレビトの未婚の男性を婚姻の対象としていた。
生きたまま島外より神崎島、常世へと渡った者は島では生者でありながら夜海の存在に近しい存在になっていると考えられていたからだ。

儀式の内容であるがまずマレビトの男性は洩岩神社内の水籠守鎮社(みこもりまもりしずめのやしろ)、
守鎮社(まもりしずめのやしろ)もしくは巫女守社(みこもりのやしろ)とも呼ばれる社にて一年過ごす事となる。
この社には夜海へと堕ちた巫女の遺髪や生前の身の回り品と共にその似姿を写した絵が納められている。
その名の通り水籠(みこもり)すなわち水の中、夜海へと姿を隠した巫女の魂を守り鎮めるために建てられた社であり彼女達の墓である。

伝承に拠ればマレビトが一年過ごす内にこの守鎮社には夜海へと堕ちた巫女達が魂のみ夜海より帰り姿を見せずマレビトと共に生活をするという。
巫女達はマレビトの為に料理を作り、掃除をする。普通の女性であればしていたであろう日々を送っていく。
マレビトと巫女達はそんな日々の中で絆を深めていき一年後にマレビトは巫女達の似姿から絆を深めた者を自然と選び"幽ノ婚儀"は成立する。
なお記録によれば複数の巫女と結ばれたマレビトも存在するようだ。

"幽ノ婚儀"を終えた巫女は婚姻を終えた女性となり成人として扱われる。
そして葬れた成人の死者となった巫女は祖霊、神として守鎮社に祀られることとなる。
これにより巫女の力は増し夜海門の封印は強くなるとされた。

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その後、艦娘が元寇の後、棺の娘の役目を引き継いでからは"幽ノ婚儀"は島と現し世が隔てられて以降艦娘と島の人との婚儀を指す言葉へと姿を変えた。
艦娘とはかつて現世より去り常世へと渡った者、ある種の死者でもあるからだ。

愛する男性と深い絆を深め、婚姻を結んだ艦娘はかつての巫女達と同じくその力を増し島を夜海より守る大きな力となった。
そして形式的ではあるがかつての巫女達と同様に生きたままではあるが守鎮社へと祀られている。

近年では神崎博之提督と戦艦大和を始めとする艦娘達との間で行われた"幽ノ婚儀"が最も新しい。
この"幽ノ婚儀"は巫女達の時代に習い社にて婚儀が行われ、艦娘は欧米の艦娘も含め全員が白無垢を纏う。
縁あって白無垢を纏う大和やアイオワなどの写真を見せて頂いたが艦の東西を問わず幽玄な美しさがあった。
通常の婚儀のように縁者親類も列席して行われ、神崎提督の親類の他に艦娘側は親類扱いとしてかつての乗組員達が出席した。
なお、一部の艦娘の婚儀では相撲が奉納され、神崎提督が土俵に立ったという。


現在水籠守鎮社は水籠守鎮神社となっている。
水籠(みこもり)と身籠(みごもり)という音の繋がりと生前子供を産めず死後に婚姻した女性が神として祀られていることから結婚と子供の守り神とされており、
島内を始め、来島する者からも多くの信仰を集めている。
また、同じ洩岩神社内の人形神社と同様に子供を失った親が訪れ幽婚が行われていた過去から子供の伴侶として異性が描かれた絵馬が奉納されている。

またティ連諸種族、特にイゼイラ人からは人形神社と共に厚い信仰を集めている。
イゼイラ人の死生観は死後精神は他の世界の自分と同化するものというある種の輪廻転生染みたものである。
それに対し日本、神崎島のものは死後に祖霊(あるいは妖精)となり子孫を見守るというものだ。
何故これ程違う死生観の異種族の信仰を集めているのか、更に研究が必要であろう。

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以上になります。
転載はご自由にどうぞ!
神崎島版ケッコンカッコカリのお話でした。

ケッコン→婚儀
カッコカリ→幽(カクリ)

なお元ネタは某零の濡鴉の幽婚です。

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最終更新:2020年03月15日 18:24