716: 加賀 :2020/03/15(日) 18:16:32 HOST:softbank126140177031.bbtec.net
「ドイツは史実通りにフランス侵攻をしましたか」
「まぁな。ドイツを助けるにしても我々に旨味はあまり無いしな」
「と言いつつも技術力等はちゃっかり支援要請してますがね」
「言わぬが何とやらだよ橋本君」
「それと陸さんも戦線を整理しているとか……?」
「中国軍の冬季攻勢が上手い具合に決まって良かったよ。縮小したら国共合作にも亀裂が入り出したそうだ」
「ですよねー」
史実では1939年12月から行われた中国軍のほぼ全戦線に渡っての攻勢、この攻勢の波に乗ったのが志那派遣軍だった。
「奴等の攻勢を利用して戦線を縮小する」
志那派遣軍総司令官の西尾大将は三個軍司令官にそう宣言をする。第11軍司令官の岡村中将は即座に賛成を表明した。
「賛成です。この波に乗れないと志那派遣軍は大陸の泥にハマったまま脱出は益々困難になります」
「うむ。各軍は直ちに後退を開始せよ」
各軍は後退を開始する。各軍は各師団が孤立をせぬよう予備隊を上手く活用して戦線を後退し第11軍は武漢地区から完全に撤退した。
「何!? 日本軍が撤退しただと!! そいつは好機だ、直ちに武漢を占領しろ!!」
重慶に籠る蒋介石は武漢撤退に気を良くした。更には各戦区からも日本軍撤退の報が舞い込んできた。蒋介石も最初は喜んではいたが相次ぐ撤退の報告に流石の蒋介石も不審を抱えた。
「……奴等、便衣兵の置き土産をしているのかもしれないな。各部隊は便衣兵に気を付けろ」
蒋介石は慎重に各都市の占領を命令した。しかし、一部の部隊等は狼藉等を行い各都市の市民は三桁程の死傷者を出してしまうのである。
「沿岸部までの後退は出来たか。まぁ沿岸部を占領していれば良い」
報告を受けた杉山らは安堵の息を吐いた。陸軍の後退に武漢等に航空隊を進出させていた海軍は不満を言ってきたが直ぐにその声は消えた。裏で近藤らが抑えたのである。
「不要な部隊は直ちに動員解除をして帰国させろ。技術者達は特に工場を支えてもらう産業兵士となるのだ」
杉山らは戦線を縮小させた事で不要になった部隊等を廃止させて動員解除をしていた。動員解除をされた徴兵の兵士達は内地に帰国後は家族の温かい声援を受けつつ内地ーー工場等での産業兵士に生まれ変わる予定である。
なお、この動員解除により日本の生産効率は少しずつ上向きに上がり各所で恩恵を受ける事になる。
5月10日、ナチス・ドイツは遂にフランス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクに向けて侵攻を開始した。この侵攻を受けてチェンバレン内閣は総辞職をし後任であるチャーチルによる挙国一致内閣が成立する。
「向こうは史実通りだけど此方は違うかぁ」
「そんな物だよ坂井二曹」
台湾の高雄にある高雄海軍航空隊で坂井は岩本達とそう話していた。
「ですが零戦も少しですが活躍出来ましたね」
「あぁ。敵機を全滅させたのは機体も良かったが飛んだ俺たちの腕も良かったからだ」
「ハハハ、それは違いないですね」
坂井達航空隊は陸軍の大陸戦線の縮小に伴い、武漢から離れて台湾に戻り休養+新規搭乗員の育成をしていた。
717: 加賀 :2020/03/15(日) 18:17:50 HOST:softbank126140177031.bbtec.net
「しかし、新規搭乗員も増えたものだな」
「今週も更に追加して34名ですからね。やはり搭乗員の育成という事は……」
「いや、多分重慶爆撃で喪失した搭乗員の新規も兼ねているんだろう。俺達が九六式に乗っていた時、航続距離不足で陸攻だけで進撃して待ち構えていたI-15やI-16の戦闘機に陸攻隊はどれだけ食われたと思う?」
「……ですね」
「だが……(パイロットを育成するというのは喪失した戦力を回復させる意味もある……が、新たな敵を攻撃するという意味合いもある)」
岩本はタバコを吹かせながらそう思う。
(上層部……対米戦を見据えて腹は括っているわけかな)
その先に何を思うかは岩本も考えなかった。それは前世で経験している事だった。
「坂井、これからは忙しくなるぞ」
「ですね」
岩本の言葉に坂井も頷くのである。事実、内地では陸海とも多数の飛行学校や練習航空隊等が創設されており搭乗員の募集にも力を入れていた。39年度では海軍は全体で2000名弱も採用しておりその力の入れ具合は確かだった。
この採用もあり、開戦時には陸攻隊の喪失もある程度は回復し母艦飛行隊の予備戦力(雀の涙程度)が実現するのである。
7月、荻窪会談は史実通りに行われた。
(まぁ吉田さんでも無理だろうなぁ……)
吉田の補佐をしている近藤でも陸軍の勢いは止められない。後に9月5日には自殺未遂も図り心労もほぼほぼゴールしている吉田は海相を辞任し同月27日に日独伊三国同盟は締結されたのである。そして近藤は遣独潜水艦作戦を早める決断をする。
「ドイツの技術力?」
「はい、同盟となったからにはドイツの技術力を我々に提供してもらいましょう。勿論、我々も代償は必要です」
近藤は宮様に具申を行い遣独潜水艦作戦を申し立てる。
「だが今はシベリア鉄道経由での陸上連絡路があるではないか?」
「何れ独ソは戦います。その時に連絡路が途絶えては元も子もありません」
「成る程……それで潜水艦での連絡路……となるわけか」
「その通りです」
「分かった、検討してみよう。ただ、あまり期待はするなよ? 見つかれば大問題だからな」
「無論です」
結局、時期尚早となり近藤の案は消えてしまったが後々に史実より早めに遣独潜水艦作戦が行われる事になる。
718: 加賀 :2020/03/15(日) 18:19:30 HOST:softbank126140177031.bbtec.net
- 大陸戦線縮小へ
- 新規搭乗員育成
- 三国同盟締結
- 遣独潜水艦作戦の時期、史実より早まるフラグ
以上をお送りしました
最終更新:2020年03月15日 18:41