698: 弥次郎 :2020/03/23(月) 00:28:31 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

憂鬱SRW IF マブラヴ世界編SS「Zone Of Twilight」11





 ユノーから解放されたユウヤであったが、アルゴス小隊に合流するのは少し憚られた。
 というのも、本来の任務について知らされて大きくショックを受けたユウヤは、正直なところ感情を持て余していたのだ。
 自分にまかされることになった、実質的な新型戦術機の評価と試験。それも米国が導入しようと検討しているというのだから、必然的に自分には米国戦術機の未来がかかっているということになる。ユウヤとて、XF-15Vが高い性能を持つことは理解し、体験している。
これが単なる試験というだけでなく、技術吸収に目的があることもわかる。F-15を如何にしてあそこまで進化させたのか、その技術はどのようなものか?
ボーニング社がわざわざ顧問として人を送ってきたことも理解できる。

(いきなりハードだぞ……)

 ここに来てのいきなりのカミングアウト。そして開示された情報から現在の状況を改めて見直せば、見えてくるものが違って来る。
 自分がここに配属になったのは、決して左遷などではなく、むしろ選び抜かれてのものであり、米国の将来の戦術機を見据えた決定だったのだと。
自慢になるのだろうが、ユウヤとて開発衛士としてF-22を動かしていた衛士の一人だという自負がある。それを買ってのことなのだろう。
 だが、それをいざ理解すると、これまでの自分の態度や意識が如何に相応しくないものだったかを認識してしまう。
後悔先に立たずとは言うが、まさにそれ。協力相手であるハンターをはじめとした大西洋連邦の派遣組に態度が悪いまま接し、さらには大洋連合の傭兵にも、傭兵だからと侮ったままに喧嘩を売って、叩きのめされてしまった。

(あぁー!俺のバカヤロウ!)

 それらが結局特にお咎めもなく終わったのは、演習でのこちらの敗北が火を見るよりも明らかであり、この程度で一々目くじらを立てるほどでもないと判断したためだろう。何より士気にかかわりかねないのだし。
ドーゥルにこそ「修正」を喰らったが、連合からのアクションは特になしだったこともそれを補強している。
 が、ユウヤからしてみれば、それはエレメンタリースクールの子供がかんしゃくを起こした時の対処のようであり、いい年こいた大人になった自分がそれをされた事実に羞恥と動揺を隠せずにいたのであった。
 とまれ、こういった事情でユウヤはアルゴス小隊に戻ることが出来ずにいたのであった。今さらどの顔を見せればいいというのか。
それに、これからユウヤは軍機を抱えて任務にあたる必要があるのだ。今の状況では、うっかりでも口に出してしまいそうだった。
正直、これは一個人がいきなり抱え込むには大きすぎる問題であり、課題であった。

(どうする……)

 一息入れて、絡まる頭の中をリセットしようと試みるが、重たい泥の様な感覚はずっと引きずったままだ。

700: 弥次郎 :2020/03/23(月) 00:29:09 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

 会場に戻ってくると、まだ各国の衛士たちは集団で各展示スペースを回っているようである。
 だが、その集団から外れた自分はまるで違う世界を体験してきた異邦人のようで、落ち着きが持てない。

「……」

 どうしたものだろうか、と何度目かの疑問を浮かべた時、視界に場に似つかわしくな二人組が現れた。
 一人はソ連の制服を、一人は見慣れない白主体の制服を着ていて、どちらもユウヤと同い年か、年下だと思われる少女たちだった。
まるで戦いとは無縁と思えるような、そんな可憐さ、儚さを体現している彼女らは、何やら楽しげに話しながら、きょろきょろと周囲を見渡している。

(衛士…なのか?)

 ここは連合が借受けている区画だ。衛士や基地のスタッフの家族かと思われたが、この場に立ち入ることが出来るとは思えない。
だとするならば、彼女らもタリサと同様に衛士で、この場に入ることを許されている人間だということだろうか?
別に女性の衛士がいることがおかしいというわけではないのだが、戦いに似つかわしくない彼女たちがそうなのか少し疑わしく思ってしまう。
 じっと観察していたユウヤに二人組も気が付いたのか、こちらを見て笑みを浮かべた。特に小柄な方の少女は嬉しそうにこちらを見た。
そして白い制服の少女になにやらささやくと、手を引いてこちらに近づいてきた。

「こんにちわ!ええっと、ユウヤ・ブリッジス少尉であっていますか?」
「こんにちわ!」
「あ、ああ。ユウヤ・ブリッジス少尉だ…」

 まるで、散歩の途中で友人とあったかのような、そんな軽い挨拶を交わす。
 不思議な感覚にユウヤはとらわれていた。まるで警戒心が湧いてこない。平常とは言えない心境なのに、ふんわりと触られて心地よく感じているのだ。

「えっと、私は地球連合の大洋連合ユーコン出向群、モノケロス小隊のアナ・マキサカ少尉です。よろしくお願いしますね」
「連合の…!?」
「それと、こっちが…」
「いーだるしけんしょうたいの、イーニァ・シェスチナです!」

 ユウヤはかわいらしく自己紹介をした相手に混乱を隠せなかった。
 何があって連合の小隊の人員とソ連の人間が一緒に行動していて、明らかに自分を探して声をかけてきたのだろうか。
理解しがたいことばかりで、ユウヤの混乱は加速するばかりだ。思わず身構えてしまうが、それを見て取ったアナは笑って言う。

「警戒しなくても大丈夫ですよ。私とイーニァはただの友達ですし、ブリッジス少尉の事を探ろうとかしませんからぁ」
「と、友達…?」
「うん、アナはわたしのともだち!」

 正直、拍子抜けした。単なる友達と言っていいのかどうかはおいておくが、どうやらユウヤが恐れていたようなことでもないらしい。
見るからに仲がよさそうに手をつないでいるし、どうやら嘘はない様であった。

「そ、そうなのか…安心した…」
「うーん、でも…」

701: 弥次郎 :2020/03/23(月) 00:29:43 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp

 ずいっと顔を二人から覗き込まれ思わずユウヤは一歩下がる。が、さらに一歩踏み出されて距離が縮まり、二人の整った顔と澄んだ瞳がこちらを捉える。

「ブリッジス少尉、なんだか怯えてません?困っているようにも見えますよ?」
「うん、なんだかさむそうに見えるね、アナ」
「寒い……?」

 確かにアラスカの気候は基本的に寒いものだ。だが、正装をしているし、屋外とはいえ風よけなども立てられているこの会場で極端に寒いということはない。
困っているというのは、機密として打ち明けられたF-15Vについての計画についての感情などを持て余していて実際正しいのだが、それは決して寒いというものにはつながらないはずだ。

「い、いや、俺は別に寒くはない…」
「そうなの?」

 だが、アナの瞳はユウヤの瞳を逃さない。
 たじろいてしまうが、そんなユウヤの怯えを優しく包むようにアナの声が耳を叩く。

「……困ったら、誰かに助けを求めるのが一番ですよ。抱えこみすぎると、大変ですから」
「お、俺は……」

 正直、ユウヤは戸惑いを隠せない。何故初対面の相手に、ここまで心情を見抜かれて、優しい言葉を掛けられているのか。
何故、自分はそれで安心を覚えてしまうのか。何故、相手は自分のことをここまで見通せているのか。分からない、分からないのだ。

「……だいじょうぶだよ?」

 その迷いを肯定するように、イーニァに声をかけられた。幼さの残る声に、不思議と心の波が静まっていくのを感じる。

「うん……もうだいじょうぶみたい」
「よかったぁ。それじゃあ、機会があったらイーニァとも仲良くしてくださいねぇ」
「俺が…?」
「……はい。イーニァはブリッジス少尉にとっても興味を持っているみたいだから。
 普通の人とも、普通に仲良くした方がいいと思うの」
「ユウヤ、わたしとともだちになってくれる?またあえるかな?」

 彼女の言う普通とはいったい何なのか、興味を持ったというのはどういうことなのか。
聞きたいところだが、彼女達は自分達ですでに納得しているようだった。分からないことが分かっただけで、何も解決していない。
とりあえず、目先の、イーニァのかわいらしいリクエストに応えてやることにした。背丈の低い彼女と視線の高さをあわせ、言ってやった。

「ああ、俺でいいならなってやるよ」
「ホント!?やった!」

 嬉しそうに頬を染めたイーニァはユウヤに抱き着いた。外見年齢に似つかわしい小柄な体躯は、しかし、嬉しさと喜びに満ちて、ユウヤの体にぶつかる。それが不思議と安心感を加速させていくのをユウヤは感じていた。そして素早くはなれたイーニァは、再びアナと手をつなぐと手を振って別れを告げた。

「じゃあ、クリスカに怒られる前にもどろっか」
「うん、そうしよう!じゃあね、ユウヤ!」

 現れた時と同様に唐突に去っていく二人組を、ユウヤは茫然と見送ることしかできずにいた。
 彼女達との語らいはほんのわずかな間の事。それでも、濃密な時間を過ごしたかのようであった。
 それに、不思議と心が落ち着いている。

(なんだったんだろうな…)

 不思議なことばかりだ。だが、悪くはないような感じがする。
 とりあえず、気分も晴れたことだし、アルゴス小隊に戻ることにしよう。
 丁度良く昼の休憩を告げる鐘が鳴り響くのを聞きながら、ユウヤは一歩を踏み出すことにした。

702: 弥次郎 :2020/03/23(月) 00:30:38 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はご自由に。

NTやESP能力者の達観した見方をうまくかけているといいんですがねぇ…
ともあれ、スケジュールはだいぶ消化が進んだので、いよいよSMSの出番でしょうかね。
マクロスFの曲でも聞いてテンション上げていきますかねー
まあ、その前にいくつか短編を挟むことになりそうです。

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最終更新:2020年03月25日 18:35