374: 弥次郎 :2020/04/09(木) 21:25:40 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
憂鬱SRW IF マブラヴ世界編SS「Zone Of Twilight」外伝 短編集
Part.1 陸上の大蛇
イギリスの首相 アンソニー・ブレアは、陸海軍の合同で提出されてきた稟議書に目を通していた。
来るべき欧州大陸奪還作戦に向けた準備は、これまでも多くのプロジェクトが計画され、承認され、実行に移されてきた。
例えば、イギリス本土近海における海底資源の採掘。これがイギリスの、欧州連合が支援の対価として提供できる見返りであった。
出資と人員、場所の提供はこちらが行い、必要な設備は連合が用意する形だ。早くも「当たり」の報告が多数上がっており、本格的な採掘と精製が始まるのも秒読み段階である。
他にも、戦術機の改良と新型の開発。F-5Eを改良するために使われた高レベルの技術は、喉から手が出るほど欲しいものであった。
レーザー級を完全に無効化するコーティング技術、戦術機の耐久性や剛性を強化する新素材、さらに挙動を大きく向上させる新型のOS。
これまで存在していた多くの壁が取り払われたことで爆発的に開発が進んでいるそうだ。
さらには、大規模な食糧支援と、それに付随する環境改善や医療面の支援も大きい。促成栽培とはいえ、天然に近い食品がいきわたり、BETA戦の余波で生じた重金属汚染や工業への偏重に伴う環境の悪化による健康被害へのフォローが行われた。
正直なところ、連合の支援を受け入れたのは良い判断だったと思わない日はない。当初はなりふり構わず、という判断だったが、素直に支援を求めれば連合は惜しみなく手を貸してくれたのだ。その態度は
アメリカなどよりも丁寧で礼儀正しく、余計な口出しや見返りを追求して来るものが無いという、これまでから見れば信じがたいような態度であったのが逆に不振であったが、杞憂だった。
連合は大真面目に、そしてこちらの事情に合わせて本気で支援を行ってくれるのだと。政治的な打算だとか利権だとか、発言力などを求めてはいない。
(彼らが求めてるところは、おそらく全く違うところにあるのだろうな…)
ブレアは未だにそれが何処にあるかを想像すらできない。分かっているとすれば、それはBETA戦の銃後の、さらにその先を見通しているのではという予想。
つまり、BETA程度は既に眼中にない。実際、連合の有する兵器は戦術機と比較することすらおこがましいほど上をいっている。それだけの相手と戦っているのだろうか?
だが、あまりにも不確定情報が多く推測でしかない。今集中すべきは、直近の出来事だ。
375: 弥次郎 :2020/04/09(木) 21:27:10 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
そして、その稟議書の内容は、これまた常識に喧嘩を売るようなものであった。
陸上艦隊計画。
欧州奪還作戦時において運用される陸上艦艇という新種の艦艇を多数有する艦隊を編成し、以て欧州奪還の先鋒する。そういった趣旨の内容だった。
艦艇の運用は海軍からの派遣人員が行い、戦術機の運用は陸海両方が合同で行い、運用の支援は陸軍が行うという夢のような計画。
(一昔前なら笑っているところだな)
大西洋連邦が欧州連合に売り込んだ商品は、単に戦術機や戦術機を支える技術だけではない。
今後の欧州大陸を奪還するにあたり、必要になる艦艇の売り込みも行っていたのであった。そう、陸上艦艇である。
β世界においては非常識ではあるが、地球連合にとって陸上を行く艦艇などごく当たり前のように使われている艦艇なのだ。
まして、欧州大陸はBETAによって平らにならされてしまっており、起伏が少なく、邪魔なものがほとんどなくなっている状態。
地形による防御が得られないというデメリットはあるが、逆に言えばこういった陸上大型艦艇が動き回るのに最適ともいえる状況なのだ。
また、逐次拠点を設営しながら開放を進めていく過程においても、自由に展開できる母艦というのは動く基地としての機能を持たせられ、防衛戦力として強力な駒となることは間違いない。故にこそ、陸上艦艇は今後必要なのだ。そう売り込んだ連合の熱意に負け、イギリスをはじめとした欧州連合は陸上艦艇の供与に応じることになったのであった。
「プレゼンを見て判断すべきだな…まだ急ぎ過ぎてもしょうがないのだから」
ひとまずのところ、目下の課題は差し迫った戦術機をはじめとした兵器のコンペティションだ。
戦術機開発が連合やその傘下にある企業の後押しを受けて猛烈な勢いで推進し、さらに技術的なブレイクスルーがあったことは把握している。
さらには、戦術機を支援するための通常兵器や大型兵器の開発も進められており、これらもコンペティションに出展予定となっている。
そのほか、後方や衛士に支給される物品までも出展したいとの連合企業からのオファーが多数寄せられており、その数や分野は圧倒的なラインナップであった。
(間違いなく追い風だ。これでどこまでいけるかが勝負だな)
欧州大陸奪還。その言葉は、嘗ては夢物語であったが、今はそうではない。現実味を帯びているのだ。
376: 弥次郎 :2020/04/09(木) 21:28:00 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
Part.2 アイ・イン・ザ・スカイ
極東ロシア カムチャツカ戦線におけるエヴェンスクハイヴの消滅。その後、連合は宇宙艦隊を進出させ、同地域の監視を強めていた。
なぜか?それは連合の常識から見てこの手の異星生命体というのは適応能力が馬鹿みたいに高いのが特徴であったことに由来する。
ELSなど最たる例であろう。こちらの兵器を悉く模倣し、戦略兵器さえ無効化してきたのだ。連合はそのELS相手に何とか奇跡的な勝利を勝ち取ったのだが。
ともあれ、そのような背景からアプサラスの様な大型飛翔体への対応のために何らかの新種などを繰り出してくるのでは?と懸念し、連合はソ連軍が展開している各地の戦線の様子を観測し、情報収集にあたっていた。宇宙だけでなく、現地視で極東ロシアで活動する調査団でも行っていた。
メタ知識を持つ
夢幻会としても、TEにて出現した超光線級といった変異種やレーザー級が人工衛星を攻撃するようになるとか、原作でも登場した新種の登場だとか二次創作でもありがちな展開を警戒して、監視を続けていたのであった。
だが、だがである。待てど暮らせども、そういった兆候は全く見られなかったのである。
出現するのはこれまで確認された種類ばかりであり、その構成比や数に関しても極端な変化は見られてはいなかった。
それらを統合し、夢幻会では一つの仮説がくみ上げられた。即ち、そこまでBETAの適応能力や進化能力は高くない、と。
たしかにレーザー級は確かに航空機を悉く駆逐し、さらには低高度での機動を戦術機に対して強いる強力な駒だ。
だが、それ以上は?レーザー級出現以降、ろくな新種はいない。確認されていないだけで母艦級などもいるのだが、人類は未だに発見していないだけだ。
そもそも、超光線級にしても、反応炉を一個丸々使うというコストパフォーマンスに優れていない種であり、尚且つ誕生のきっかけは試製99型電磁投射砲がBETAに回収されたことに由来する。
つまるところ、自己進化というよりは外部刺激に応答して対応するという、非生物的な、あるいは工業品的な「適応」しかしていないのだ。
BETAは生物ではなく工作機械に過ぎない---そのような考察が一定の説得力を以てそれを支持していた。
しかして、その仮説が定着した後も、連合はある種の興味を以てエヴェンスクハイヴ跡地の監視を続けていた。
監視というよりは、単なる見学、といっても良いかもしれないのだが、ともかくはるか上空の監視艦隊はそれを追いかけ続けていた。
ソ連軍がハイヴ陥落からしばらくして行い始めた、奇妙な活動を。それは、前線の押上げというにはあまりにも動員された兵力が少なく、かと言って偵察や調査というには戦術機以外にもおまけが多数付随する出撃であった。それらの意図を各国が、そして連合が察するのはすぐの事であった。
377: 弥次郎 :2020/04/09(木) 21:28:44 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
「エヴェンスクハイヴ跡地でソ連軍が奇妙な活動?」
「うむ、見たところ、ハイヴ内部に侵入してあれこれと調査を行っているようだ。
調査というよりは……もはや採掘だな。戦術機と通常戦力で防衛ラインを作り、土やら何やらを運び出している。
「なるほど……目的はハイヴに残っているG元素か」
「恐らくは。だが、シミュレーションではアプサラスの一撃でハイヴは反応炉まで丸ごと吹き飛ばされているはずだがな…」
「だが、完全に0というわけではない……とは思うが、どれほど残っているものかな?」
「恐らく反応炉を中心にハイヴ内は蒸発しているだろう。確認が出来ているわけではないが、探すだけ徒労でしかないと思う」
「……動員されている衛士たちは気の毒だな」
「まあ、G弾のことを研究していたのはアメリカだけでなくソ連もですからねぇ。あわよくば、まとまった量のG元素を確保したいんでしょう」
「土を掘り返して持ちかえるだけの簡単なお仕事、か…ソ連の伝説がまた一つ増えたぞ、笑えよ」
「笑うに笑えんな…どうせ汚染物質だらけの土でしかないだろうに」
「ともあれ、動きに関しては注視しておきましょう。あとはソ連内部での情報収集も。
場合によっては今後のハイヴ攻略の方針を変える必要があるかもしれませんしね」
「異議なし」
378: 弥次郎 :2020/04/09(木) 21:29:24 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
《艦艇紹介》
HMS リヴァイアサン級陸上戦術機母艦リヴァイアサン
《諸元》
設計・開発:イギリス 大西洋連邦 オーメル・サイエンス・テクノロジー
建造:アヴァロン級群体式AF3番艦「ラピュータ」内建造ドック
生産体制:試作建造
装甲材:汎用艦艇装甲材
防御塗装:臨界半透膜
動力源:熱核融合炉
排水量(艦艇換算):8万6千トン
全長:322m
全幅:74m
地面から甲板までの高さ:69m
推進方式:ホバークラフト
設備:汎用カタパルト×2 汎用エレベーター2基 艦側面出撃ハッチ×4 後部大型ハッチ 大型クレーンアーム
《武装》
VLS
CIWS
艦側部対地連装速射砲×10
《艦載機》
戦術機:36機(最大)
FB-1 フライトベース
ヘリ
指揮連絡機
他
《概要》
大洋連合及びオーメル・サイエンス・テクノロジーからEUに対して提唱された陸上母艦建造計画に基づいて建造された戦術機母艦。
欧州奪還においてやはり動く前線基地となる陸上艦艇の配備は必要と判断した大洋連合および大西洋連邦は、その訓練とノウハウ蓄積のための艦艇の建造を決定し、英国をはじめとした欧州連合に供与を打診。
既に戦術機の改良や開発の援助で信頼を得ていたため、将来的に必要になる兵器の供与は渡りに船であり、これを受け入れた。
船体はクイーン・エリザベス級改装空母を土台にサイズと機能を拡張することで設計がされ、連合の陸上艦艇を参考に各所を設計し直し、技術的な問題については連合が手伝うことでカバーし、あくまでも陸上空母のノウハウを積み上げることを目的として開発されている。
建造はラピュータ内ドッグで行われ、完成後に英国本土へ曳航されて陸上戦術機母艦の訓練のために使用される予定となっている。
379: 弥次郎 :2020/04/09(木) 21:34:01 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
艦載機として戦術機を一個大隊+α、さらに指揮連絡機やヘリなども搭載可能で、同時期に欧州連合に引き渡されていたジウーク1型などにも対応している。
ただし、格納庫のスペースの問題から大型兵器の艦載を行った場合には戦術機の数が削減されてしまう。
本体の設備としてはアンクルドデッキに据え付けられた汎用カタパルトと、戦術機にも対応しているエレベーター、格納庫と直結した艦側面の出撃ハッチなどが用意されており、陸上での戦術機運用の訓練に必要なものが大凡揃えられている。
一転、武装はCIWSと多少のVLSのみであり、後は近接防御用の速射砲などに限られている。これは本艦があくまでも母艦、即ち戦術機を運搬するためのキャリアーに過ぎないということが窺える。よって、砲火力による前線支援に関しては、随伴艦である陸上巡洋艦や陸上駆逐艦などに任せる形であると推測されている。事実リヴァイアサンの建造と同時期に、同じくラピュータの建造ドックにて複数の陸上艦艇が起工していることが確認されている。
《人物紹介》
アンソニー・ブレア
役職:イギリス首相
概要:
アントニー・ブレアの同位体。β世界主観の1999年時点で英国の首相を務めている。
連合からの支援の受け入れに積極的に賛成し、各分野で確実な功績を上げている。
本来は長く続く戦時の影響による厭戦気分の蔓延に由来する支持率の低下に焦りを覚えて連合の支援に飛びついた結果なのであるが、それが本当にうまくいってしまい、文字通りVの字で支持率を急速に回復させた。それに驚きながらもかじ取りができる程度には有能。
連合の後押しを受けての欧州大陸奪還と、アメリカの影響力のそぎ落としを目論む。
380: 弥次郎 :2020/04/09(木) 21:35:23 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はご自由に…
アメリカ視点を書くといったな、あれは嘘だ(大佐並感
どうにも説明文だけになりそうで、ちょっと没にしました…申し訳ない。
史実の人物の同位体を登場させましたが、現実の人物とは何ら関係ありませんのであしからず。
あくまでもβ世界、マブラヴ世界における人物と思ってください。何ら政治的な意図などはありません。
992: 弥次郎@スマホ :2020/04/30(木) 01:09:08 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
確認してきました
これはミスですね
以下のとおり修正お願いします
×そのほか、後方や衛士に支給される物品までも出展したいとの連合企業からのオファーが多数寄せられており、
○そのほか、後方や衛士に支給される物品までも出展したいとの連合企業からのオファーが多数寄せられており、
その数や分野は圧倒的なラインナップであった。
いつも修正などありがとうございます
最終更新:2024年06月01日 18:49