643: ham ◆sneo5SWWRw :2020/05/03(日) 21:51:51 HOST:sp49-98-148-215.msd.spmode.ne.jp
戦後夢幻会ネタ ham世界線 マレー沖夜戦前日譚
プリンスオブウェールズ、シンガポールに来航す!
このニュースに、マレー沖に展開する日本海軍は色めきだった。
当時新鋭の、そしてチャーチルを以て不沈戦艦と称されるプリンスオブウェールズ(POW)が相手となれば、マレー方面に配備されている金剛型戦艦でも苦戦は免れなかった。
そんな馬来(マレー)部隊を率いる史実転生者の小沢治三郎中将は、来るべき時が来たと静かに佇んだ。
この時のために彼は南遣艦隊、馬来部隊の戦力強化を図るため、山本長官に直談判をしていた。
前世の戦後の調査結果で、小沢艦隊は実は英艦隊の射撃可能圏内にまで近付いており、下手すると電探射撃を受けていたかもしれなかった。
それを知っている彼は、何かの拍子で見つかり、攻撃を受けることを強く恐れ、そのために行動していた。
同じ将来は航空が主力となると認識している両者だが、小沢は航空機の弱点である夜間や荒天を指摘し、戦力強化を求めた。
特に今の時期のマレー沖は雨季であるため、スコールが発生しやすく、そのために船団への接近を許しやすい。
小沢はそういって集められるだけの気象データ、そして現状の馬来部隊や南遣艦隊の戦力、そして来航が予想されるであろう英海軍の主力艦をデータを以て、水上戦力の増強を主張した。
「歩を以て王将を喰うことを考えるべき」と将棋に例えて戦艦の派遣に反対し、水雷戦力や航空戦力を増強させていた山本だが、さすがにこれだけの気象データを元に、航空戦力が障害を受けることを指摘されては、首を横には振れなかった。
とはいえ、艦艇とて無限にあるわけではない。しかも多方面に作戦を抱えている今ではさらに限りがある。何を増派するかで揉めた。
小沢は戦艦の派遣を強く主張し、艤装作業を全て終え、現在公試運転中の大和を求めた。
これには連合艦隊の参謀たちが猛反対した。宇垣参謀長は「竣工していない」ことを理由に強く反対した。
それに対し、小沢はこう反論した。
「POWは未竣工で、しかも工員を載せたままビスマルクと戦ったと聞きます。
師匠たる英海軍がやったのですから、弟子たる日本海軍も倣うべきではありませんかな?
それとも大砲屋自慢の大和が、たかだか38cm砲程度の戦艦に負けるとでも?」
これには鉄仮面と渾名される宇垣も顔を真っ赤にして怒ったが、結局、山本が仲裁に入り、米海軍への備えから内地に残さざるを得ないとして取り下げられた。
他の戦艦も同様であった。
だが、替わって水雷戦力の強化が図られ、重巡摩耶、第9戦隊の大井、北上、そして船団の上空直掩として竣工したばかりの瑞鳳が練度向上も兼ねて加えられることとなった。
小沢としては本音は「最初に大和を要求して、それが断られて陸奥でも」の算段であったのだが、
(砲戦力は満足とは言えないが、重雷装艦に空母も居る。総合的には充分だろう)
そう心の中で言って、自分を納得させることとした。
一方で、この小沢の横紙破りの引き抜き行為は、連合艦隊のみならず、作戦上、直属の上官たる第2艦隊の近藤中将からも「自分を無視した」と怒り心頭だった。
近藤は、「小沢は艦隊をコレクションのように集めている」と揶揄し、いつしか馬来部隊は「小沢の艦隊これくしょん」と陰口を叩かれるようになる。
12月8日、伊65は史実通りZ部隊を発見した。
事前に集結できるように備えさせていた小沢は、直ちに第7戦隊、第9戦隊、第3水雷戦隊、さらには第4、第5潜水戦隊旗艦の鬼怒、由良を集合させて迎撃に向かった。
史実では由良が集結できなかった等したが、今回は全艦が揃い、しかも陣形も素早く整った。
あとは夜戦に持ち込むだけ。そう思っていた小沢は伊65の続報で衝撃を受けることになる。
「我、敵艦載機の攻撃を受く」
史実との乖離が、発生した。
以上です。
なお、艦載機は定番のインドミタブルのものではありません。
なにが来るかはお楽しみに。
最終更新:2020年05月04日 14:25