31: 弥次郎 :2020/05/09(土) 23:03:55 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
憂鬱SRW IF マブラヴ世界編SS「Zone Of Twilight」12
ノーラッド---北アメリカ航空宇宙防衛司令部は俄かに警戒の色を強くしていた。
無理もない。融合惑星のβ世界
アメリカ上空、大気圏外から巨大物体が、少なくとも全長400mの物体が大気圏突入を行い、アメリカ本土への降下軌道をたどる物体を捕捉していたからであった。すわ着陸ユニットか、と警戒されていたのだが、それがアラスカへとの降下軌道をたどっていると聞いて、緊急で呼び出されていた指揮官やオペレーターたちは深い深いため息をついた。
それは、事前に通告を受けていた物体であると確認が出来たことによる安どの吐息であり、あるいは、BETAを見越した監視システムが、ここまで接近されないと光学でなければ確実に探知できないほどにまで弱っていることへの嘆きでもあった。
β世界アメリカの宇宙軍とそれにかかわる組織は融合惑星転移以来、碌な目に遭っていなかった。
まず始めに、これは地上軍も含むのだが、融合惑星への転移で人工衛星のネットワークや監視の網が緩み、対宇宙と対地上の警戒網が一気に疎かになってしまい、情報収集能力が一気に落ちた。もし再びBETAの着陸ユニットが来れば、目視による視認が出来ない場合ぎりぎりまで感知できない可能性があった。
さらには、G弾をバジュラに対して使用したことにより報復の嵐を受けてしまい、宇宙軍が半ば壊滅したことが加わる。
これに関しては完全にβ世界のアメリカの自業自得なのであるのだが、ともあれ宇宙軍が痛い目を見たことは間違いない。
そして、AL5上層部にとっては最も重要なことかもしれないが、宇宙にて建造が進められていた恒星間移民船がそのシグナルを静かにロストし、欺瞞された全く別物からのものに切り替わってしまったことを、彼らはそれが発覚するまで気が付けずに、自らの計画に万進することになるのであった。
32: 弥次郎 :2020/05/09(土) 23:04:40 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
「早めに来たつもりだったがすげぇなぁ…」
ヴァレリオが感嘆の声を漏らすのも無理もない。
ライヴ会場への入り口に並び人、人、人、人。数えるのもおっくうになりそうな数だ。
事実として、連合の人員に加え、ユーコン基地の人員の多くがこのライヴへと押しかけていたのであった。
衛士、メカニック、基地スタッフ。あるいはユーコン基地に補給物資などを運ぶ定期便のクルーたち。
それらの中で時間のある人間達が大挙しているのだ。否、このシェリル・ノームのための特別シフトまで組まれて、ユーコン基地の機能を維持できる範囲で人員のライヴへの参加が認められていた。
そして、彼らをまず待ち受けたのが、先行して到着していたウロボロス・フロンティアや連合の人員であった。
ただの人員というわけではない。彼らはこの手のイベントを仕事として手掛ける精鋭スタッフたちであり、歴戦の勇士であった。
彼らは露店などでグッズの販売---記念品からライヴで使われる小物、お土産品などを売り、魅力をアピールする訓練を積んでいる。
客への対応もばっちり、例え異世界の住人であろうと、言葉が通じるならば熱意も愛情も伝えてみせる。そういうプロだった。
他にも、並んで順番待ちをするように誘導や列のコントロールを行うスタッフもおり、声を張り上げ、順番争いをしている衛士を仲裁している。
アルゴス小隊の面々はそのスタッフたちの誘導に従って列に並ぶ。続々と現れる観客は、まるでユーコンを空にする勢いであった。
まあ、無理もない。WW2の混乱が収まり音楽分野が技術発展に伴って隆盛の時期を迎えるタイミングで、丁度良くBETAの襲来があったのだ。
そうなれば、後背国でなければまともに文化の涵養や発展は行う余裕が無く、実質的に多くのアーティストが史実と異なり日の目を見ずに終わってしまう。
そんなところに、シェリル・ノームという文化の極みの一端を放り込めば、刺激や娯楽に飢えているβ世界の人間には劇的すぎる効果を発揮するのである。
故にこそ、多くの衛士やスタッフたちを虜にしてしまった。もはや中毒といってもいいかもしれない。
「しかし、ステージが設置されるかと思ったんだが、そういうのが見えないな…」
「……まさかステージごとやってくるとかあるんじゃないかしら?」
「そりゃあないだろ、ははは」
遠目に見える会場は広く確保されている。だが、観客が入るためのスタンド席はともかくとして、肝心のステージが見当たらないのだ。
そんな冗談を口にしたステラは、ヴァレリオの笑いに静かに同意した。しかし、それは残念ながら確証バイアスのかかった見識だった。
昼間に見た機動兵器などを見た時点で察するべきであり、常識を更新しておくべきだった。彼らに、連合や統合に常識は通用しないのだと。
33: 弥次郎 :2020/05/09(土) 23:05:20 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
さて、ユーコン基地でβ世界の衛士やスタッフが会場入りした頃、既にクォーターは大気圏に突入していた。
4分の1のサイズとはいえマクロスの名を冠する艦艇だ、この程度は朝飯前。ついでに言えば、艦載機であるVFもまたOTMの技術の粋を集めたもの。
だから、ライヴを支援するための特殊装備を詰め込んだ状態でマクロス・クォーターと並んで大気圏突入をするなど余裕なのであった。
「融合惑星熱圏を突破。クォーター、姿勢制御に入ります」
「突入角度、速度、問題なし。アラスカ ユーコン基地への降下軌道からのずれは許容範囲内に収まっています」
「スカル小隊、メルロー小隊、アンタレス小隊、いずれも問題なくクォーターに追従。支障ないと報告が」
「結構。我らが歌姫兼スポンサーの様子は?」
「クォーターの甲板上、特設ステージにて問題なく待機しています。クォーター各所のフォールドアンプも待機状態。何時でも起動できます」
クォーターの艦橋はもはや戦闘時と同じような空気に満ちていた。
まあ無理もない。この手のことをやったことが無いわけではないのだが、図らずもこれは一種の業務なのだ。真剣になろうというもの。
ましてこれはギャラクシー船団の絡んだ大事件を通じてS.M.S.の大口スポンサーの一人ともなった銀河の歌姫「シェリル・ノーム」の依頼なのだ、顧客であり出資者の依頼ともあれば、S.M.S.としては断ることもできない。
ともあれ、懸案となっていた大気圏突入は無事に成功し、アラスカのユーコン基地は目前に迫っている。基地の方からはまだ点にしか見えないだろうが、既にクォータークルーたちにとっては間近の距離だ。各所からの報告---1G影響下の惑星に突入した艦内各所からの報告を受けながらも、艦長であるジェフリー・ワイルダーは操舵を任せるボビー・マルゴに声をかける。
「ボビー、状況は?」
「順調です、ボス。優しく降ろせます」
ボビーに焦りはない。確かにこの融合惑星というのはその大きさに見合った大気圏を持ち、それ故に突入というのは案外長いものになった。
唐突な突風や気流にさらわれてしまった場合、いくら巨体のマクロス・クォーターといえども無事では済まないだろう。
だが、その操艦は見事の一言に尽きる。吹き荒れる風を見事に読み切り、微妙に船体を傾け、調整を入れ、巨体をコントロールする。
一つ頷いたジェフリーは、さあ、と声を張り上げる。
「歌姫であるミンメイに倣い……始めよう、我々のミンメイアタックを!」
その声と共に、クォーターはユーコン基地の特設ライヴ会場への落着コース、最終段階に突入した。
34: 弥次郎 :2020/05/09(土) 23:06:06 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
果たして、それに最初に気が付いたのは誰だったか。
少なくともβ世界の人員は気が付きはしなかった。連合の人員は薄々感づいていたのだろう、上空を見上げていたので、真っ先に気が付いて声を上げていた。
「来たぞ!」
大気圏突入をする物体は嫌でも目立つ。まして、クォーターは400mクラスの艦艇であり、そんなものが突入して来ればさらに目立つ。
一般的な流星がみられる高度よりも低い位置に、一般的な大気圏突入物体よりも大きなものがあれば、まして燃え尽きないのであればなおさらだ。
やがてその声と驚きはライヴ会場に詰め掛けたβ世界の人員にも伝播し、どよめきが広がっていく。
β世界においても、この手の大気圏突入を行う艦艇が無いわけではない。再突入殻やHSSTなど、歪ながらもそういった技術が発展している。
だが、サイズが違い過ぎた。明らかにあれはそんなチャチなものなどではない。
そして、何よりも違うことがあった。マクロス・クォーター、4分の1サイズのマクロス。マクロス・クォーター級可変攻撃宇宙空母。
そう、クォーターは空母でありながらもマクロスであり、即ち可変機構を有しているということであった。
「な、なんだよあれ!」
「空中で…動いている…!?」
「嘘だろ嘘だろ…!?」
クォーターはその機構を存分に発揮していく。艦艇に見えなくもない艦影からガヴォーク形態を経て、降下速度を緩める噴射を掛けながらも人型に近い強攻型へ。ARMD-RとARMD-Lが固定された状態から巨大な腕部に支えられ花開く。
そして、センター・ハルが人らしい形へと変形していき、ついには。
「人型になったぁ!?」
その可変機構の完成系、VFのバトロイドの様な、人をそのままスケールアップしたかのような姿に落ち着いた。
そして、その巨体は、別世界の地球において、西暦1999年7月にアタリア諸島に落着したSDF-1マクロスの如く、緩やかに着陸する。
慣性制御技術と操舵を握るボビーの技術、そして、十二分に着陸に備えて速度を殺しながらも失速しない程度に制御されていたこともあり、クォーターは見事に多少の振動こそ与えこそすれ、400mもの巨体を着陸させたとは思えないような静かなランディングを決めた。
「おいユウヤ、アタシ、夢見ているみたいだ…」
「俺もだ…」
「なんだよ、これ…」
「信じられねぇ…」
そして、ARMD-Lの上部、艦載機の飛行甲板となっているそこには、人影があった。
その人影が一体だれであるかなど、想像に難くない。観客席を囲むように設置されたモニターには、可憐な衣装を身にまとい、インプラントなど人の手を入れることなく磨かれ、維持されている美貌をこれでもかと見せつけるように映し出していた。
小型のカメラに囲まれ、モニターに映るその人影に、一気に声が沸き上がった。
「シェリルだ!」
「俺達の歌姫だ!」
「銀河の妖精!」
野郎どもの声が中心になり、歓声があがる。
それに手を振ってこたえるシェリルの姿は堂が入ったものだ。
それは偶像。それは銀河の星。あるいは、イーカロスに憧れた太陽そのものか。
手をのばせども届かず、懸想すれども及ばず、不可侵の領域で輝く不屈の歌姫。
そして、シェリルはマイクを手に、始まりを告げる声を高らかに叫ぶ。
「あたしの歌を聞けぇ!」
応じる観客の声が、大地を割らんばかりに響いた。
35: 弥次郎 :2020/05/09(土) 23:07:06 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はご自由に。
ようやくかけた…(息も絶え絶え
すいません、これが限界…無力な私を赦して…
続き?某権利団体がうるさいのでTV版マクロスF本編第7話あたりを見てください!
最終更新:2020年05月10日 15:50