728: 加賀 :2020/05/10(日) 20:52:13 HOST:om126161007221.8.openmobile.ne.jp
マリアナ沖海戦後、山口中将の第一機動艦隊は消耗した航空隊の再編成をする事になる。だがその再編成は苦難の道なのは間違いなかった。何せ戦闘機隊はほぼ消耗していないので容易ではあったが艦爆隊は半壊、艦攻隊は壊滅状態という中であった。
「よく生きて帰れましたね……」
「奇跡としか言えんよなぁ……」
再編成の場所となった岩国飛行場に一機の天山が着陸した。三人はそのまま司令へと報告した。
「『隼鷹』艦攻隊第二分隊長森本大尉!!」
「同じく雨宮飛曹長!!」
「同じく木場一飛曹!!」
「本日付を以て第601航空隊に着任しました!!」
「ん。艦攻隊は壊滅状態だ、1日でも早くの再建を頼む」
司令の入佐中佐はそう伝えて解散となる。
「これからが大変だな……」
「岡田達がいればもう少し楽になったんですけどねぇ……」
「そうぼやくな雨宮」
「ですが次の作戦に艦攻隊は必要無いらしいじゃないですか」
「それ、何処からの情報だ木場?」
「『隼鷹』から降りる前に整備員から聞きましたよ。どうも次の作戦で空母は囮になるらしいです」
「おいおい……とすると俺達は地べたでしか行動しないのか?」
木場の言葉に雨宮は溜め息を吐いた。そして601空は内地で錬成に励みながらもレイテ沖海戦には参加しなかった。
「出番無し……か」
「腐るな雨宮。次は攻撃に参加すると思うぞ」
「本当ですか森本さん?」
雨宮の言葉に森本は深く頷いた。
「レイテで敵輸送船団は撃滅したが奴さんら、まだ諦めてはいないようだ。マリアナが再び陥落して硫黄島が連日爆撃を受けている」
「とすると……噂であった小笠原決戦ですか?」
「可能性はな」
だが601空の艦攻隊はまだ半分程しか錬成を終わらしていない。それでも彼等は準備に余念がなかった。しかし、事態は動く。
「敵艦隊が沖縄に!?」
「そうだ、そこで我々も移動だ」
「空母にですか?」
「いや、奄美大島だ。彼処に新設していた滑走路が出来たからそこに向かい、沖縄に向かう艦隊を支援する」
森本が雨宮と木場に説明する。そして601空も順次奄美大島へ向かうのであった。
奄美大島、此処に沖縄決戦に備えて航空基地が新設されていた。しかも陸海共同で使用出来る事としており4月1日の時点では飛行第5戦隊が駐屯していた。
「戸野本さん、いよいよ決戦ですか」
「あぁ……だが俺はまだ死ねんよ」
雲野曹長と戸野本中尉は新しく配備されたキ102乙を見つつそう話していた。
「海軍さんも精鋭部隊を此処に送るらしい。粗相が無いようにな」
「ひでぇや戸野本さん……」
そして沖縄決戦前に601空の進出は完了したのである。なお雲野曹長もハルマハラで御世話になった山田飛曹長と再会したりしていたりする。
739: 加賀 :2020/05/17(日) 22:13:03 HOST:om126208168164.22.openmobile.ne.jp
「大和の第二艦隊が沖縄に突っ込む。我々は全力でこれを支援する」
奄美大島の航空基地で入佐司令はそう訓示する。601空は定数は揃えてはいたがその練度は史実マリアナ沖並の腕だった。
「森本さん、今度は……」
「あぁ。また米空母に雷撃が出来るぞ」
嬉しそうな表情をする雨宮に森本はニヤリと笑う。
「でも森本さん、またマラリアに掛からないでくださいね」
「言ったな木場!?」
雨宮達はそう笑いながら用意された天山に乗り込む。601空の紫電改二81機、彗星54機、天山81機は奄美大島の航空基地から離陸する。その後を飛行第5戦隊のキ102や二式複戦の戦爆連合が続く。
「折坂、今日は帰れないと思うぞ」
「いえ、自分は雲野曹長の同乗者です。命は預けていますよ」
「……馬鹿野郎……」
折坂伍長の言葉に雲野はそう言うのである。陸海の攻撃隊は沖縄近海まで飛行すると分散をする。601空は彩雲から放たれる電波を元にマケイン機動部隊へ向かうのだ。飛行第5戦隊はそのまま宜野湾沖に停泊する敵上陸船団攻撃に向かう。
「森本さん、電波は!?」
「彩雲は中波を出している。まだ生きている」
「後方から敵機!?」
不意に機銃手の木場が旋回機銃を放つ。後方の雲から数機のF6Fが飛び出してきたのだ。攻撃隊は散開するも天山数機が落とされてしまうが被害はそこまでだった。
「紫電改二です!!」
「悪いな、攻撃隊には近づけさせるわけにはいかんのでな」
紫電改二の一個区隊を率いて山田飛曹長が乱入し慌てて逃げようとする6Fに機銃弾を叩き込んで撃墜する。
「さて、何とか生き延びないとな。雲野曹長から見合いの事も頼まれたしなぁ……」
山田飛曹長はそうぼやきながらも空戦を展開するのである。助けられた攻撃隊は更に前進すると雲の隙間から航跡を発見した。
「分隊長!?」
「慌てるな、『トツレ』だ」
指揮官機から『トツレ』が発信され天山隊が高度を下げる。眼下のマケイン機動部隊は激しい対空砲火を撃ち上げるも601空に同行していた彩雲6機からの電波妨害紙である銀紙を投下して対空砲火を分散させていた。それを確認した指揮官機が『ト連送』を発信した。
「雨宮!!『突・撃・セ・ヨ』だ!!」
「行きます!!」
雨宮は速度を上げて高度3メートルを飛行する。高度5メートルでは以前のペアである秋沢が戦死したのだ。雨宮はそれを戦訓として新たに3メートルの超低空飛行で突撃をしたのである。
現に高度5メートルを維持していた指揮官機等も高角砲弾や40ミリ機銃弾に貫かれて撃墜されていた。
「隊長!?」
「構うな雨宮!! ドンドン突っ込めェ!!」
森本が叫ぶ。その直後、『アトランタ』級防巡の警戒艦を通過した。
740: 加賀 :2020/05/17(日) 22:13:37 HOST:om126208168164.22.openmobile.ne.jp
「警戒艦通過!!」
「目標空母!!」
「空母ヨーソロー!!」
雨宮機は敵空母ーー『ランドルフ』を捉えた。だが敵空母は右舷へ舵を切った。それを確認した雨宮は舌打ちをする。
「畜生、奴め回頭しやがった!? 発射点に入れない!!」
「雨宮、右だ右旋回だ!!」
偵察員席に座る森本は右を確認しつつ叫ぶ。
「敵の右舷に回り込め!!」
「了解!!」
森本の指示の元、雨宮は機を右に滑らしつつ回頭した敵空母の右舷に回り込んだ。
「距離1000!!」
「まだまだ……」
「距離800!!」
「ヨーイ……」
「700!!」
「撃ェ!!」
雨宮が投下索を引く。雨宮や他の九七式艦攻に搭載された九一式航空魚雷は炸裂火薬が420kgもある改5の魚雷である。約1080kgの重量が切り離され雨宮の機は徐々にゆっくりと上昇するが急激に上昇すれば対空機銃にねらい撃ちをされるので敵空母の飛行甲板ギリギリのところを飛行して通過した。だが通過直後も対空機銃は執拗に雨宮機を銃撃する。
「皆大丈夫か!?」
「大丈夫だ!! 急速避退!! 高度を上げるな!!」
「木場!! 雷跡は……」
雨宮は木場に叫ぶ。その時、『ランドルフ』に水柱が吹き上がった。
「め、命中!! やった、当たったー!?」
機がゆっくりと旋回をすると敵空母から吹き上がった水柱が収まろうとしていた。
「秋沢……福島……見えたか……?」
波間に消えようとしていた『ランドルフ』に雨宮は一筋の涙を流すのである。彼等は列機を率いて帰還するが宜野湾では飛行第5戦隊の宜野湾への攻撃はまだ続いていたのである。
「食らいやがれ!!」
キ102乙に乗る雲野曹長は輸送船に57ミリ砲弾を叩き込む。輸送船程度なら57ミリでも十分だった。その時、雲野機の後方にいた田中曹長のキ102乙が右発動機から炎上した。
「田中!?」
『雲野さん、御世話になりました!!』
田中は機体を何とか操りながらも炎上していた輸送船に体当たりして爆発する。
「……クソッ!!」
『雲野、帰還するぞ』
そこへ長機の戸野本機が告げる。飛行第5戦隊も半数は落とされるも攻撃には成功する。
「後は頼むぞ……」
輸送船団を見つつ雲野はそう呟くのである。
741: 加賀 :2020/05/17(日) 22:20:19 HOST:om126208168164.22.openmobile.ne.jp
あまり良いのが浮かばないですが何とか……
とりあえずはこれで前後編で完結ですかね
最終更新:2020年05月24日 13:04