499: 弥次郎 :2020/06/06(土) 17:13:42 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
憂鬱SRW IF 融合惑星編SS リンクスたちの日常とお仕事4「有澤隆文の場合」
有澤重工は大日本企業連合でも上位に食い込む、押すに押されぬ大企業である。
重工業を中心とした事業を展開し、自動車、鉄鋼、化学、金属加工業などの分野において大きなシェアを持つ。
その企業活動は大洋連合や地球連合全体にも及んでおり、一般市民の生活から国防を担う軍まで幅広い。
殊更に、その軍需面でのシェアは大きい。軍用車両からAFや艦艇の装甲、人が用いるものからAFクラスまで大小様々な火器の設計・開発・製造。
そしてその流通と販売、その後のアフターサービスなど多岐にわたっている。
さて、この融合惑星β世界大日本帝国に有澤重工のトップたる有澤隆文が足をわざわざ運んだ理由は、新たに完成した工場の落成式に出席するためであった。戦術機関連だけでなく、通常兵器も含んだ複数のラインを抱えるそれは、大洋連合とその傘下にある企業から技術供与や資本提供を受けた複合工場だ。特に有澤が絡んでいるのは00式戦術支援砲撃車 日向見の製造ラインだ。
戦術機としては初のタンク脚部を採用し、機動力と引き換えに高い砲撃能力と高いペイロード能力を有するそれは、新型戦術機の配備に伴い旧式化していく古い戦術機たちの受け皿ともなり、尚且つ今後の大日本帝国のドクトリンの要ともなる戦術機だ。
既にガンタンクなどの戦闘データや富士教導隊などに先行納入・配備された日向見の運用試験データはかなりそろいつつあり、あとはユーコン基地でのデータとあわせることで制式生産型へとシフトする予定となっている。
有澤重工が提供できる戦術機としては、まだまだ日向見は駆け出しというか、タンク型戦術機の先駆けに過ぎないものととらえている。
タンク脚部がいまだにACや一部兵器の脚部として採用され続けているのも、相応の理由と納得できるだけの性能を持っているがためだ。
戦術機に限ったことではないが、この融合惑星への進出はまだまだ始まったばかり。有澤重工も、その波に乗ろうと策動している最中だ。
式典そのものは極めてスムーズに進んだ。協賛した企業や軍関係者が挨拶を行い、自分もまた有澤重工を代表してあいさつを行う。
そしてその後は、軽い立食パーティーに移行する。ここからが、ある意味本番だ。帝国の重工業を担う各企業や財閥の関係者が挨拶に来るのである。
そうして始まるのは、晴れやかな場とは少々似合わない、激しい商戦だ。隆文自身が応対することもあれば、連れてきている人員が対処することもある。既にこういった外回りを社長自らやることは既に社風としてしみ込んでいるもの。
だからこそ、彼らは異なる惑星の、異なる歴史をたどった「他国」日本でも超然とした態度を崩さずにおれるのだ。
式典が終われば、次の仕事が隆文ら経営陣を待ち受けている。前後を固める警護の車と共に隆文らは車で移動していく。
融合惑星への出張をしている間にも、本星たるC.E.世界地球では着々と情勢が動いているので、移動している間でさえもそれを受け取る必要がある。
無論有澤重工は隆文のワンマン経営というわけではなく、副社長や社長夫人である薫、その他重役らが控えているので安心できる。
500: 弥次郎 :2020/06/06(土) 17:14:25 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
かといって、隆文がいきなり欠落して大丈夫かと言われたらそれはNOである。最高責任者という地位は決して軽いわけではない。
寧ろ、重たいのだ。人一人が背負うにはあまりにも重すぎるほどに。彼の長男である義文とその許嫁であり養子でもある鴨川桜子、この二人がいずれ結婚することを認めたのも、個人の情だけでなく、有澤の長としての判断も交えてのことだ。
義文ただ一人では難しくとも、桜子との二人三脚ならば有澤を背負っていける。そう判断したのだ。
有澤という企業は、その企業規模から、社員や取引先の企業、あるいは取引を行う軍や国家などにまで多大な影響を与えうるのだ。
「……無粋な者がいるな」
そのつぶやきは、唐突で、低く、重低音。
隆文は移動する車につかず離れずでついてくる無粋な連中がいることを悟っていた。彼は経営者であると同時にリンクス。
戦場で一騎当千の働きをする山猫だ。そんな彼が、そういった意思を感じ取れないはずもない。
無論、大日本帝国側が好意で派遣している護衛と考えるのもおかしくはない話だが、生憎と有澤重工は自前の要人警護部門を持つ。
というか、有澤重工は軍事企業でもあるので、そういった自分達が使うものは自前で開発し、用意できるほどの規模とノウハウを持っている。
例えば、隆文らが乗る車は外見こそ一般的な高級車だが、下手な装甲車を凌ぐ耐久性を誇る要人専用車で、戦車砲の直撃にも耐えると自負している。
また、一見高級な車の内部各所には武装が収納されており、いざとならば正規軍相手でも時間稼ぎをすることができる。
そう言ったこともあって大日本帝国側の護衛はよほどのことが無い限り断っているし、もし警護が自分達に張り付くならば、専用のチャンネルを介して一声連絡を入れてほしいと伝えてある。だが、今日は特に連絡はなかった。
そして、今日はその「よほどのこと」ではない、ただの工場の落成式への出席に過ぎない。つまり。
「社長…」
「うむ、対処は任せる…」
車内で短い会話がなされ、静かに前後の車両の中で準備が整えられ始める。
要人警護とは、単に不審者を守るだけが仕事ではない。時として攻勢的になり、襲撃者を払いのけねばならないのだ。
だから、例えば警護の車のトランクルームに戦闘用アンドロイドが控えていたとしてもおかしくないのである。
車は準備を整えながらも、急に進路を変更しながら増速した。それに慌てたのか、追跡者達も追跡を速めてきた。
だが、それはあまりにも露骨すぎて、分かりやすすぎる行為だった。まるで、疑ってくださいと言わんばかりの行為の選択。
せめて、もっと人員を配置するとか、あるいは襲撃を感づかれないようにすべきだったのだろう。ともあれ、である。
「慶事に水を差す輩に慈悲などいらないだろう……」
その言葉が、鎮圧の始まりとなった。
そして10分と経たず、無粋な連中は全員お縄頂戴となったのであった。
501: 弥次郎 :2020/06/06(土) 17:15:40 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はご自由に。
社長もお仕事が忙しいのです…
次はタケミーか流星君か、あるいはほかの企業のトップランカーとかですかねぇ…
502: 名無しさん :2020/06/06(土) 18:01:44 HOST:ntfkok060208.fkok.nt.ngn.ppp.infoweb.ne.jp
乙です。>>499の
戦術機に限ったことではないが、この融合惑星への進出はまだまだ始まったばかり。有澤重工も、
この後に続く文が消えてると思うのですが…。
503: 弥次郎 :2020/06/06(土) 18:05:38 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
502
これは失礼を…転載時修正をお願いします
×戦術機に限ったことではないが、この融合惑星への進出はまだまだ始まったばかり。有澤重工も、
〇戦術機に限ったことではないが、この融合惑星への進出はまだまだ始まったばかり。有澤重工も、その波に乗ろうと策動している最中だ。
最終更新:2020年06月07日 16:27