471: 弥次郎 :2020/06/24(水) 23:00:46 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
大陸SRW IF GATE 自衛隊(ry編SS「おやすみなさい、良い夢を」
推定犠牲者数およそ50万人以上。「帝国」帝都の霊的汚染度特AA級(一定ランク以上のサマナー以外立ち入り禁止)。
帝都宮殿及び家屋等の被害状況、ほぼ壊滅。ヴォルクルス及びその眷属の破壊活動による地盤沈下などの可能性大。
帝都中心から半径100kmは封鎖領域に指定。なお、ヴォルクルスと眷属の動きは未だに継続中。現在の状況は……。
「……」
重苦しい空気が、日本国自衛隊の機動兵器試験中隊の面々が詰めている部屋に満ちていた。
帝都からの帝国住民の避難と、それに伴う遅滞戦闘のための防衛ラインの展開。その防衛ラインの後方で自衛隊も戦闘を行っていた。
最前線ではないとはいっても、防衛線を突破して来たり、あるいは前線の余波で発生したデモンゴーレムなどが押し寄せてくる場所であり、決して気が抜ける場所ではなかった。そして彼らは比較的早くに離脱を行ったグループで、最終的に帝都防衛戦を放棄し、展開していた全軍が離脱して戦闘が終結してから既に14時間余りが経過していた。連合が用意した仮拠点まで輸送機で撤退し、そこの一角を借り受けて自衛隊の機動兵器試験中隊は休息をとっていた。
連合の基地なだけあって、様々な情報が特地各地から集められてきていて、自衛隊や米軍にもそれは伝えられていた。
しかして、その情報は残酷だった。ことさら、帝都の状況については。彼らとて力ある限り戦っていたし、連合もそうであった。
それでもなお、ヴォルクルスの進撃を止めることは叶わず、また帝都から民間人を逃がしきることはできず、結果が生まれた。
「……」
誰が漏らした吐息か、音が室内に満ちる。
誰も、何もやる気にはなれなかった。
激しい戦闘ならばこの特地において既に経験済みであった。だが、今回はそんなものではなかった。
「あんな怪物……どうしろってんだよ……」
誰かがポツリと漏らした。
これまで、戦争というのは、戦いというのは人と人、あるいは人が作った物同士の戦いであった。
だが「アレ」はなんだ?遠くに見えた、圧倒的なスケールと暴虐の塊はなんだというのか?
遠くにいる「アレ」と対峙しただけで怖気が立ち、今もなおそれの記憶が自分蝕んでいるような、そんな錯覚すら覚える。
連合が戦術核攻撃に匹敵する重砲撃も集中爆撃も浴びせられたというが、つゆほども堪えた様子は見受けられない。
もはや避難誘導の意味もないと帝都ごと焼き払わんとしたのは説明を受けたが、周辺の眷属を吹き飛ばしただけに終わった。
単なる巨大生物ではない。あれがただの生物であるものか。連合の呼称は「邪神ヴォルクルス」。嗚呼、なんて的確な名前か。
あれほどの大災害、単なる生物などではない。人がどうしても敵わない、暴虐の塊。絶対の力。即ち、神。
「連合はどうするつもりなんだろうな…」
「あんな怪物にどう戦えって…」
「でも連合の人員は諦めていないぞ」
そんなうわさをする声が徐々に徐々にと起こり始める。沈黙していた分、一度堰を切ってしまえば止まることはなかった。
喧々諤々の議論や話声が飛び交い始め、静かだった部屋は賑やかになり始めた。そう、それは少し、尋常ではない、どこか枷の外れた、あるいは正気ではないような、奇妙なハイテンションであった。
472: 弥次郎 :2020/06/24(水) 23:01:49 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
「まあ、そうなるよな」
自衛官たちのいる部屋の外から中を窺う虎鶫は、自衛官たちの様子を見て吐息を吐き出した。
戦闘後のメンタルケアの必要があると踏んでいて、その説明に来たのであるが、案の定自衛官たちは「躁」状態にはまり込んでいる。
戦闘終了直後ではなく、戦闘終了からしばらくたってから、というのがミソだ。脳が情報の処理を順に進めていく中でオーバーヒートし、混乱し、半ば興奮が収まらなくなってしまう状態が、今の彼らだ。本来ならば戦闘後のメンタルケアやクールタイムを挟むことで解消できるのだが、思ったより早くにショック症状が出てきてしまった。連れてきている専門医の方を見やれば、あきらめたように首を振っている。
ヴォルクルスとかいう劇物と間接的にながらも戦った彼らのことを思って行動したのだが、どうにも遅かったらしい。
まあ、想定の範囲内にあることは確かだが。
「さて、ではお静かにしてもらいますか…」
ドア横にあるコンソールを操作。室内を気密モードに切り替え、エアコンなどによる外部からの空気流入を止める。
ついでに窓やドアもロックしてしまい、がっちりと鍵をかける。
「ここの窓、強化ガラスでしたよね?」
「確か。ただの人が思いっきり殴っても割れません」
よろしい、と頷いた虎鶫は手にしたケースから本来ならば使う予定はなかったモノを二つ三つと取り出す。
手慣れた動作でピンを抜き、おもむろに放り込んだ。
「うわぁ!?」
「伏せろ!」
流石訓練を受けているだけあって、咄嗟に身を守れるように机や椅子を盾にする動きは良かった。
だが、生憎と放り込んだのは催眠ガスをばら撒く特殊なグレネード。殺傷性はないが、大人数をまとめて静かにさせるにはちょうど良い。
まして、部屋はもうすでに密閉状態だ。迅速に噴き出したガスを吸ってしまった自衛隊員たちはやがて床に倒れ伏していく。
5分と経たず、中にいた自衛官パイロット達は全員が無力化された状態になったのであった。
473: 弥次郎 :2020/06/24(水) 23:02:23 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
「こんな方法でやるのですか…」
「言葉で説得するよりもはるかに楽ですからね。それに」
傍らの間宮に虎鶫はケースに残っている予備のグレネードを取り出して見せながら言う。
「それにこの催眠グレネード、1個で……そちらの感覚で言えば1000円くらいです。一人一人説明するよりも安いものです。
彼らはモニタリングした時点で高いレベルの躁状態にあり、下手をすれば興奮して暴れ出しかねませんから」
「安い……しかし、そこまで精神に影響を与えますか」
「実戦経験の少ない自衛隊ではやむを得ないことですが…」
虎鶫は部屋に残っている催眠ガスを空調を使って換気しながらも説明する。
「戦闘が極度に複雑化していくにつれ、人がコクピット内で受けるストレスは馬鹿にならないものとなっています。
実戦経験のある米軍兵ですらカウンセリングを必要としたほどですし、まして、訓練を経ているとはいえ慣れない兵器で戦った彼らは、相当堪えたはずです」
「……」
「戦闘直後のカウンセリングもやれましたが、何分撤退戦をしながらでしたし…こればかりはこちらの落ち度であります」
やがて、識別しやすいように色付けされたガスが消えさり、倒れた隊員たちの姿がはっきりと見えるようになった。
「ともあれ、3日ほど休養とカウンセリングをさせていただきます。よろしいでしょうか?」
「ああ、任せるしかない。部下たちを頼みます」
「よしてください、二佐…少佐階級の私に頭を下げなくとも…」
そういいつつも、原作では登場しなかったこの間宮という佐官が悪い人間ではないと理解できた虎鶫だった。
傭兵で、虎鶫の階級が自由に動けるようにと与えられたものと知っても、偏見や奇異の目で見ることもなかった上に、あちらこちらから招集されたパイロット達を慣れないなりに責任もってカバーしようとする姿は評価できた。
間違いなく、反戦自衛官や理想家気取りの人間よりかはよほど好感触を抱けるというもの。
少し、前の人生と比較して嫉妬してしまう程度には良い上司だ。
(いや、比較するだけ無駄だな…)
今は今だ、と思考を切り替える。何時までも過去のことを、今となっては知っている人間が限られていることを振り返っても意味はない。
「とりあえず、間宮二佐。パイロット達には精神的な意味での休養を十分に取らせてください。
その間くらいは、我々連合や企業の方で対処をしますから」
「対処……あの、ヴォルクルスに、ですか?」
「ひとまず、被害が拡大しないよう間引きと定期的な攻撃を仕掛けます。詳しいところは、上を通じて通達されるかと」
「……はい」
言いたげなことはたくさんあるのだろうが、虎鶫はそれをあえて無視した。
気持ちも分からなくもないが、全体としては、この特地、ひいてはGATE平成世界とC.E.世界の危機においては些事に過ぎない。
より大局を見た上で判断し、決断し、実行に移していかなければならない。相手がヴォルクルスともなれば、こちらも手を抜かずに立ち向かう必要があるのだ。
「また守るものが増えたな」
平成世界の人類60億強を新たに背負っている。その事を今一度自分に言い聞かせ、虎鶫は動き出した。
474: 弥次郎 :2020/06/24(水) 23:03:17 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はご自由に。
アフターケアのお時間だぁ!カウンセリングとか受けないと多分ハイになったり落ち込んだりで大変かと思われるので。
こういうネタばっかりな私を赦しておくれ…
最終更新:2023年10月10日 23:13