718: 弥次郎 :2020/07/21(火) 20:33:03 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
日本大陸SS 漆黒
アメリカルート 「大戦前のから騒ぎ」Case.1 アメリカ合衆国の場合
アメリカ合衆国は戦争経済の国である。
つまり、自分が行うにせよ、他人が行うにせよ、戦争というものは歓迎するものであった。
眠れる獅子がハリボテと判明した日清戦争、WW0と称された日露戦争の二つの戦争で更なる飛躍を遂げた戦争技術は、米合の経済活動を活発化させ、技術の進化を促すものとなっていた。他の列強がそうであったように、戦車や飛行船、飛行機、装甲車、ガス兵器などなど新時代の兵器開発を強烈なほどに、あるいは平時とは思えない勢いで推し進めていた。
だがしかし、米合は一つ飢えているものがあった。実戦経験、である。これまで、最後のフロンティアである中華に「戦争の輸出」を行い、そのリターンとして人的資源や戦訓、あるいは技術的なフィードバックを獲得していた。だが、それはあくまで小競り合いレベル。
本格的に国家同士が激突する様な、そんな大規模な戦争による特需や技術の検証というものが行うことが出来ずにいたのである。
無論、米合は周辺国との関係から仮想敵には困らず、実際に戦争までは至らずとも国境沿いでの紛争あるいは戦闘には事欠いていないが、あくまでそれはそのレベルで収まっているからこそ長く続けられている。積極的に全面戦争をしたいかといえばノーであった。
米合は確かに外道に手を染めてはいるが、彼我の戦力差を見極めるくらいの分別というものは持ち合わせていた。
そして、そんな中で目を付けたのがドイツ帝国であった。何故ドイツなのかと言われれば、それは最も戦争に近いと判断した故だった。
ヴィルヘルム2世。フリードリヒ・ヴィルヘルム・ヴィクトル・アルベルト・フォン・プロイセン。その最近の治世の傾向は、時分に遅れることなく、帝国主義的であり、拡張主義であり、争いを望むものだった。殊更、ドイツの遅れを認識していた彼の行動は傍からわかるほど性急だった。
アメリカ合衆国がそれに目を付けたのも、ある種の必然と言えたのかもしれない。事実、列強間ではヴィルヘルム2世の地位を、「世界で最も権力のある玉座」と評する一方で「次なる大規模戦争の幕開けを飾る王座」とも評していたのだから。
加えて、大日本帝国の拡張を黄禍論を唱え最も警戒していた人物でもあった。それは自他ともに認めることであり、端的に言えば日本脅威論の源流の一人ともいえる人物だった。故にこそ、アメリカ合衆国にとっては近づきやすい人間でもあったのだ。
719: 弥次郎 :2020/07/21(火) 20:34:52 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
当然ではあるが、ヴィルヘルム2世は、そしてドイツ帝国はアメリカ合衆国のことを知っていた。それこそ、悪名高い国内政策、その経済の実態、そして表向きにはなっていない所まで。だがそれを差し引いてなお、ドイツは力を欲していた。
ドイツに限ったことではないが、戦争の急激な進歩に追いつかんとするのは列強にとって死活事項だった。
米合が戦争に力を注いでおり、それが列強トップを走る日英に追いすがれるものだということは、故に魅力的だった。
結論から言うならば、ヴィルヘルム2世はアメリカ合衆国との技術交流を決定。
英国を仮想敵第一位とした海軍の拡張と同時並行で、陸軍の増強に奔走した。ドイツは、力を得るために悪魔と手を結んだのであった。
ある種、戦争を望む者同士、引かれ合うところがあったのだろう。戦争や闘争を望む意識は、感染する。
そこからアメリカ合衆国の動きは速かった。元々、次なる戦争が近い、殊更、旧大陸において緊張が高まっているとの情報は、文字通り対岸の火事であり、同時に商機であったのだ。準備は進められていたし、そのように動きは作られていた。
戦争になればいくらでも物は売れる。アメリカ合衆国の無意識はそれを望んでいたのだ。流血を、容赦のない戦争を。
実際、アメリカ合衆国は日英米連をよく研究していた。
戦車や装甲車といった新兵器、兵站を担う軍用車両、既存の概念を飛び越えた新種の銃(マシンガンなど)を完成させていたのだ。
後々の時代に通じるものから、完全な駄作、迷作あるいは実験兵器まで、あらゆるものがドイツへとなだれ込むようにして輸出された。
無論、完成させはしたが荒が残っていたことも確かである。だが、重要なのは形を成しているかどうか、だ。
日英の様な完成度の高さはいきなり実現できるものではない。時間をかけて磨き上げるものだ。それを分かっていたから、アメリカ合衆国は他国を巻き込んでまで開発を進めたのだ。
世界大戦前の緊迫した空気の中でも、米合は己の持つ本能のままに、しかし、極めてしたたかに動いていたのであった。
720: 弥次郎 :2020/07/21(火) 20:35:42 HOST:p2580066-ipngn200609tokaisakaetozai.aichi.ocn.ne.jp
以上wiki転載はご自由に。
とりあえず各国のWW1前の情勢でも…どこまで続くか不明ですが。
ではでは、次をお待ちいただければ。
最終更新:2020年07月23日 11:32