904: 名無しさん :2020/07/23(木) 15:41:26 HOST:KD106154129117.au-net.ne.jp
それでは投下します。

【偉大なる幼稚さ】

「…つまり、合衆国はドイツに宣戦布告するつもりかね?」

その言葉をヒットラーが口にした瞬間、執務室の空気は間違いなく冷え込んだ。
その状況でも笑みを浮かべている米合の外交官を不快に思いつつ、ヒットラーはなおも言葉を続ける。

「それとも合衆国は、我がドイツが内政干渉を跳ね除けれない程に弱体化したと考えているのかね?」
「言い方が少々悪かったのは謝ります総統閣下。しかしこれはあくまでビジネス。大不況で困窮するドイツを救うお得なビジネスなのですよ閣下。」

党員であれば誰もが顔を青くするヒットラーの怒気を受けながらも、笑みを浮かべ続ける外交官を心の底から侮蔑しながら、ヒットラーは鼻息でだけで言葉を続けるように急かす。だがその次に彼から漏れたのはなるほど、まさにヒットラーにとってお得な「ビジネス」であった。

「ですから、我々が買いたいのはユダヤ人ですよ閣下。もちろん買うのはそちらの【作業】が済んだユダヤ人だけです。今なら送料もこちらが負担します。代償はそうですな、新式の戦車など如何ですか?」
「ユダヤ…なるほど、貴様らの狂った勤勉さは大戦前と変わらぬようだな」

そう外交官を皮肉りながらも、ヒットラーは外交官の言葉を反芻する。なるほど確かに連中を売って新式の戦車を得られるなら、最高のビズネスだろう。ユダヤは(ヒットラーにとって)我らアーリア人を滅ぼそうとする邪悪な者達だ。連中を隔離する事に無駄な金を使うぐらいなら彼らに「活用」してもらい、その見返りにすっかり脆弱になった祖国の防衛力を上げれるなら願ってもない話だ。
 合衆国の外交官は考え込むヒットラーを見て、笑みを深める。多くの合衆国上層部がそうであるように彼もまた理知的で狡猾であり、このビジネスはまさにヒットラーのもっとも欲する「急所」のはずであった…しかし

905: 名無しさん :2020/07/23(木) 15:42:17 HOST:KD106154129117.au-net.ne.jp
「だが…それは出来ぬビジネスだな」
「な!?」

そうであるがゆえに彼は本当の意味でアドルフ・ヒットラーという人物を理解していなかった。

「な、なぜでしょうか閣下?ああ、日本やイギリスについて心配しておいでなら問題ありません、両国にはこちらで欺瞞工作を…」

それまでの張り付いた笑顔を捨て、汗を浮かべながら囀る外交官を睨みつけヒットラーは続ける、彼にとって譲れぬ「幼稚な理由」を。

「日本・イギリスそれもある。だがそこではない。余は気に入らんのだ貴様達が
なるほど、確かにユダヤ共は恐るべき疫病神だ。貴様らに売り払うのは賢いやり方だろう…だが、余は大ドイツを復活するためにここにいる!ドイツの人民が、ドイツを心より誇れる国にするためにここにいるのだ!たとえ疫病神であろうと、貴様達人肉食いに売り渡した事がわかれば、必ずや我がドイツの消せぬ汚点となり、ドイツ人民は心よりドイツを誇れなくなるだろう!故にこのビジネスは出来ぬのだ、わかったか!わかったら帰りたまえ人肉食い!」

そうヒットラーが啖呵を切ると外交官は目を見開き、理解できないという表情で無言で執務室を後にした。ヒットラーはその外交官を睨みつけてから、側近を呼び日本とイギリスの外交官を執務室に呼び寄せるのだった。

ドイツとソ連。戦間期において米合と近い距離にいながら大戦で別の陣営に入った双方の差異について、後世の歴史家は記述は概ね「両国の指導者の差異が大きい」としている。
 すなわち国家のためなら合理的で冷酷な判断を下せるスターリンは合理性の塊のような米合と相性がよく、根底に幼稚性を持つヒットラーは相性が悪かったと
その上でその幼稚性こそがドイツと一つの民族を救ったとして、ある歴史家はヒットラーのこの決断をこう讃えている

すなわち 「ドイツ人民にとってもっとも偉大で敬愛すべき幼稚さ」 と

906: 名無しさん :2020/07/23(木) 15:43:06 HOST:KD106154129117.au-net.ne.jp
以上です。転載等はご自由にどうぞ。あと二重投稿すみません

ちなみにこれ曲がりなりにも関係がある国に「お前の国とビジネスしたらドイツ人が笑われるだろ!誰がやるかバーカ!!」って言っちゃったわけでそりゃ米合の外交官を理解できないって顔になります。

そしてこの総統の幼稚さのせいでドイツは元より周辺国と日本の外交官はこの後みんな死にかけたもようw

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最終更新:2020年07月28日 10:13