58: 弥次郎 :2021/05/17(月) 21:33:07 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
憂鬱SRW 未来編鉄血世界SS「鉄の華が咲いた日」4(改訂版)
三番組の面子を集めての話し合いを終え、オルガは一人深く息を吐きだしていた。
依頼を受け続ける、と啖呵を切ったはいいが、今一度確認と話し合いの場を持った方がいいとクロードからは言われたのだ。
一番組への対処やその他治療などを行うことでどうせ時間はかかるのだ、と言われ、しっかり話し合うように言われた。
「どこまで信頼できるかだな……」
正直なところ、三番組の中での話し合いでもそこが意見が割れたところだった。
果たして、提携先であるアルゼブラは自分たちにとって信用できるのかという点。
一番組とは違うかもしれないという派と大人は信用ならないという派、あるいは興味が無い派と割れているので、何とも意思統一が出来ない。
クーデリアの護衛を続けるということに関しては意見が一致した、というかそれを決めた自分の意見が支持された。それはよかった。
問題なのはやはり大人への対応だ。オルガ自身は比較的アルゼブラやセントエルモスの大人たちと顔を合わせ、話し合ったので信用が置けるかもしれないと思っている。
同時に、アルゼブラを信用できないという隊員の意見にも賛同できるところがある。少なくともCGSの大人たちは、一番組は屑ばかりだった。
それを踏まえれば、大人は簡単に信用できないという意見が上がるのも無理はないし、しょうがないと思ってしまう。
(だけど、それじゃあまずいんだよな…)
まだ話は保留段階だ。
だが、このままなし崩しでいっても三番組内部で意見の対立が深刻化してしまうのも目に見えている。
何とか説得したいところだ。仲間割れなど勘弁してほしいし、アルゼブラに、大人たちに意思統一もできないと侮られるのも嫌だった。
かと言って、オルガに反対派を説得できるだけの材料があるわけではないのも確かだった。地球まで行くならば自分たちだけでもできるかもしれない。
CGSが保有している艦艇「ウィル・オー・ザ・ウィスプ」があるし、そこにMSとMWを積んでいけば自分達だけで行けなくもない。
また、ギャラルホルンのMSに関しても三日月のバルバトスでなんとかなる、かもしれない。
だがそれでは危険が付きまとう、とオルガは判断していた。三日月ならば相手がギャラルホルンのMSだろうが問題なく戦うだろう。
しかし、数としてはたかだかMS1機しかいないのだ。その事については指摘はしているのだが、反対派はそれでも、と反対している。
正直なところを言えば、八方塞がりだ。あちらを立てればこちらが立たず。相反する意見が、感情と理屈がぶつかり合っている。
59: 弥次郎 :2021/05/17(月) 21:33:55 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
「あー、クソ」
猶予は設けてくれてはいる。
だが、速めに返事を出したいところだ。うかうかしているのもアルゼブラや依頼主のクーデリアに対して不義理となる。
とんでもない案件を背負い込んだ、と改めてオルガは思うしかなかった。考えてみると、うまくトドは立ち回っていたように見えてくるから困る。
アルゼブラからCGSが請け負ったのは、このクリュセとその周辺の治安維持や犯罪者摘発だ。その程度ならトドでもできる。
だが、そんな楽な仕事だけに甘えているわけにもいかない。
(考えていた以上にデカい仕事になっちまったな……)
少なくとも、昼間に考えていた以上の仕事で、大きな組織が関わってくるのだ。
つらつらと考えていると、見慣れた人物が歩いて来た。
「オルガ」
「おう、ビスケット…」
「大丈夫?顔色悪いよ?」
顔に出るほどか、とオルガはビスケットの指摘にため息をつくしかない。
「まあな、ちょっと考え込んじまって……」
「クーデリアさんの護衛の事?それとも、意見が割れたこと?」
「あー、そうだな。アルゼブラ社との話も含めてな」
先程の三番組内での話し合いでは出せなかった、オルガの弱気な態度。
人気の少ない場所で、気心の知れたビスケットの前だからこそ、オルガはようやく吐き出すことが出来た。
とてもじゃないが、自分だけで三番組全体を含めて背負える話ではない。それに、三番組内部で意見が割れているのも、リーダーとしてどうにかしなくてはならない。
その事を、思わずオルガはぶちまけてしまった。一度言い出したら、もう止まらなかった。
「そっか……」
聞き終えたビスケットは、何も言わなかった。慰めたところでオルガは楽にならない。
ビスケット自身はアルゼブラとの共同での仕事に前向きだった。
自分達だけでは荷が重い仕事になりそうで、そして頼れる大人たちが手を差し伸べてくれるのだから、それを頼った方が楽になるならばそうすべきと考えていたのだ。
けれども、感情だけはどうにもならなかった。大人への不信感は一番組を見てきたビスケットだって抱えていることだ。
オルガが気丈にも護衛を続ける、といったのも、一度受けた仕事だからというほかに、アルゼブラの大人たちの前で弱いところを見せられなかったためもある。
「仲間割れしたくねぇが、無理強いもしたくねぇ。けど、一番組の屑どもみたいに殴って脅すなんざもってのほかだ」
「なら、なんとか説得して理解してもらわないといけないね」
「説得……そのためにどうすればいいのか、わかんねぇんだ」
穏便に済ませる、というのが難しい感情の問題。三番組の隊員たちは、皆大人に良いように使われてきた。
だから、大人に対する不信感は全員抱えているし、今更大人から手を差し伸べられたところで手を取れるわけではない。
そして、自分達の力があるのだと、そう振る舞いたくもなる。オルガ自身もそうだから、反対派の意見も痛いほどにわかる。
60: 弥次郎 :2021/05/17(月) 21:35:10 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
「……どうすっかな」
こういう時、最も意見を求められるオルガだからこそ、誰にも相談できない。
オルガの意見ならば、という仲間がいるほどだし、三日月などはオルガの意見だから、というタイプだ。
というか、賛成でも反対でもない中立派は実際のところ三日月くらいしかいなかった。
「どうしようもないのかな?」
「納得して、みんな揃って仕事に当たりたい。そうじゃなきゃ、筋を通すと幼い以前の問題だ」
しばらく沈黙が満ちる。
考えを巡らせるオルガだが、具体案が浮かばない。
ただ、こうしなくては、という縛りだけが増えていくような感覚だ。
「もう、打ち明けるしかないんじゃないかな?」
ビスケットの提案は、何もかもを打ち明けることにあった。
賛成派にも反対派にも、現状を伝え、話を聞き、実際にやってみようじゃないか、と提案する。その上で、了承を得ようというもの。
「……それでいいと思うか?」
「しょうがないよ。僕たち、とても大きなことに巻き込まれているんだから。
オルガだって困っていて、どうにか納得してほしいんだって、そう打ち明けるしかないよ」
「……」
だが、それは意見を集め、目標を決め、引っ張ってきたオルガには不慣れなものだった。
ひっくるめて背負い、引っ張る。それとは真逆の姿勢だ。下手をすればふがいない、と謗られるかもしれない。
大人に言いくるめられた、騙されているんじゃないかと反発されるかもしれない。それが決定的な亀裂にならないか、オルガは恐れていた。
そんなオルガを、ビスケットは励ました。
「大丈夫だよ。オルガに助けてくれって言われたら、僕たちだって必死になるし」
「……そうだな」
オルガは、決心した。
あれこれ考えすぎていてもしょうがないのだ。もう、隠したりごまかしたりせずに、打ち明けるしかない。
自分のことを信じてくれているなら、同じように仲間を信じてやるしかない。
「よし、ビスケット。みんなを集めてくれ。俺からみんなに話す、そんで、頼んでみるぜ」
「わかった」
力を取り戻したオルガの声に、ビスケットはほっとした。
いつものオルガが戻ってきたのを強く感じた。これなら大丈夫と、信じられた。
「ふむ……彼らも彼らで、しっかりしているのだな」
そんなオルガ達の様子を物陰から密かに窺っていたセントールは、笑みを浮かべ、静かに立ち去った。
61: 弥次郎 :2021/05/17(月) 21:36:22 HOST:softbank126066071234.bbtec.net
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続々改訂していきますよー
最終更新:2023年06月07日 19:27