32 :YVH:2012/01/22(日) 21:47:17
前スレ→265でレムシャイド伯から木っ端役人呼ばわりされていた
男の話です。尚、日本側艦艇は、自分の妄想の産物なのでご容赦を・・・

 その男は有頂天だった。
同盟が接触した初の「他国」大日本帝国要人の出迎え、及び銀河帝国との交渉におけるオブザーバー役を、
最高評議会から仰せ付かったからである。

彼が選ばれたのは、経歴もさる事ながら(生家が長征一万光年参加以来の「名家」であり
国立中央自治大学を優秀な成績で卒業)
E式の姓名を持つ「日系」だったからである。

彼「キタザト・ナオト」にとっては、自分の経歴に華を添えるであろう今回の任務で、
まさか初歩的なミスで汚点を点ける事になるとは、この時は想像だにしなかった。


-自由惑星同盟領・エア回廊、同盟側出入口-

今、この宙域には、日本の使節団を出迎える為に第十艦隊から分派された特別派遣部隊が遊弋していた。
編成は、アキレウス級戦艦一隻、標準戦艦三隻、巡航艦六隻、駆逐艦十隻の計二十隻である。
補給艦は随伴せず、その都度フェザーンまでの航路上の補給基地から、物資を受け取る段取りである。

 -特別派遣艦隊旗艦・盤古、艦橋-

司令官以下、艦隊幕僚達の居る上階部分では、日本使節団の護衛任務を受けたウランフ中将が幕僚達と会話を交わしていた。

「少しばかり、早かったかな?」

司令官から話を振られた参謀長・チェン少将は、極無難に答えた。

「宜しいのではありませんか、閣下。遅刻するよりマシでしょう?」

彼のそんな返答に、騎馬民族末裔の提督は、何かを思い出したのか、笑いながら答えた。

「っははは。そうだな、遅刻はいかんな、遅刻は。きか・・」

過去に何かあったのか、遅刻という言葉に妙に拘りながら、
続けて少将に話を振ろうとした時、オペレーター席から報告が上がってきた。

「報告!エア回廊付近の空間に異常が発生っ!!」

続けて、別のオペレーターが報告の声を上げた。

「何かが、通常空間に出てきます・・」

階下のオペレータたちの報告に耳を澄ませながら、ウランフ中将は、お客さんの到着か、と胸中で呟いた。
そうこうしている内に、回廊出口付近に十数隻の艦艇が出現した。

 ーー大日本帝国サイドーー

 ー特別派遣艦隊・旗艦。試製長門級戦艦「ナガト」ー
 -艦橋-

「跳躍終了。前方の宙域に自由惑星同盟軍の物と思われる艦艇群を確認
 数、二十隻」

電探担当のオペレーターの報告に、この艦隊の指揮をとる
大日本帝国軍・中将、東郷忠勝「侯爵」は、ホッと胸を撫で下ろした。

「やれやれ、新型の跳躍機関の試験も無事に済んだな。
 まったく、技術廠の連中も無理を言ってくれる」

そんな司令官のぼやきに、傍らに控えている参謀の一人が、労わる様に言った。

「宜しいではありませんか、提督。
 この実験の成功で我が軍は回廊を[跳び越える]技術が
 確立出来たのですから。後は・・・」

最後の方は言葉にせず、この参謀はニヤリとすると悪戯を企む様な表情で上官に向き直った。
それを見て、東郷提督もニヤリとした。

「・・そうだったな。通信参謀、同盟軍に打電。
 〔間もなく、交渉団の座上するお召し艦がここに現れる。
 現宙域では大変危険なので、我々と共に至急退去されたし〕」

その命令を受けた件の参謀は、ハッと短く答えると儀体に備わった
電脳ネットワークを介して、通信手に提督の命令を伝えた。

日本艦隊から発せられた突然の退避勧告に、ウランフ以下の幕僚達は
一瞬疑問を抱いたが、勧告に従って艦隊を急速に後退させた。
それを確認した日本艦隊も「彼らにとっての」出来るだけの速度で同盟軍を追い始めた。
その加速性に、同盟側は度肝を抜かれていたのであるが、それは彼らのあずかり知らぬ事である。
日本・同盟両艦隊が安全圏であると思われる宙域に到達した数分後・・
先程、日本艦隊が出現した宙域に、最初の時とは比べ物にならない規模の
空間異常が発生し、巨大な「ナニカ」が通常空間に出現した・・・・。

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最終更新:2012年01月30日 19:18