64: 加賀 :2020/09/30(水) 17:36:28 HOST:om126179120227.19.openmobile.ne.jp



「やはり『カワ・カワ・カワ』か……」
「五航戦は悪くないですよ」
「それは分かっているがね」
「兎も角は敵空母攻撃をしませんと……」
「松田は?」
「瑞雲隊の発艦を踊りながら見ています」
「器用な事をするな……」
「大変です!! 『飛龍』より電文、【『赤城』『蒼龍』『翔鶴』被弾炎上中。『飛龍』以下空母ハ敵空母攻撃ニ向カウ】以上です」
『………嘘だと言ってよバーニィ……』





 南雲中将の第一航空艦隊は史実と同じ航路を航行していた。

「『大和』からの通信は無いか?」
「未だにありません」

 空母『飛龍』では山口少将が『大和』からの通信を確認していた。敵の電波を捉えたら直ちに艦隊に送ってくれと参謀長の宇垣少将に予めお願いをしていたからである。

「やはり来ると思いますか?」
「匂うぞ……空母の匂いだ」

 首席参謀の伊藤中佐の言葉に山口はそう答える。

「勝っている我々が油断しているからこそ、奴等は側面から叩いてくる筈だ」
「成る程」
(だからこそ……角田さんの四航戦の合流は是が非でもやり遂げねばならない……)

 アリューシャン列島のダッチハーバーを空襲をした四航戦を主力とした第二機動部隊は攻撃隊収容後に南下してミッドウェー方面に急行していた。予定では第一航空艦隊から発艦した攻撃隊がミッドウェー島を攻撃する時に合流する予定ではある。
 だがその肝心の空母情報で後方にいる『大和』では一悶着が起きていた。

「直ちに『赤城』へ打電すべきだ!! 打電せねば一航艦は手探りで当たる羽目になるぞ!!」
「いえ、無線封止を破るわけにはいきません。それに『赤城』の通信班もこの『大和』に劣らぬ力量を持っています。『赤城』でも受信しているでしょう」

 6月3日午後、南雲機動部隊に追従する主力部隊旗艦『大和』に乗り込んだ連合艦隊司令部敵信班はミッドウェー島付近で敵空母らしい呼び出し符号を傍受したのだ。山口から予めお願いをされていた宇垣は直ちに一航艦へ打電すべきだと主張したが黒島参謀らは『大和』の位置がバレる恐れ、無線封止を破るわけにはいかないと一歩も引かない状況だったのだ。
 結局、黒島の意見が尊重され南雲機動部隊に電文が届く事はなかったのである。そして運命の日、日の出は日本時間6月5日午前2時、日没は午後4時頃、南雲機動部隊上空の天候は曇り、雲量8、雲高500から1000であった。
 日本時間6月5日午前1時30分(4:30)、南雲機動部隊はミッドウェー空襲隊を発艦させた。その主力は『翔鶴』『瑞鶴』の第五航空戦隊からであり零戦36機 九九式艦爆54機 九七式艦攻54機である。なお、五航戦は零戦54機以外を発艦させる全力発艦でもある。
 斯くして日本軍は「敵空母を基幹とする有力部隊附近海面に大挙行動と推定せず」という方針の元に攻撃を開始する。また近藤中将の攻略部隊(第二艦隊)がミッドウェー島に上陸する日は6月7日と決定されており、南雲機動部隊はそれまでにミッドウェー基地の戦闘力を奪わなければならなかったのが南雲機動部隊司令部の中では最大限に占めていた。奇襲の成立が前提にあり、空襲の攻撃主目標は地上・上空の飛行機、副目標が滑走路、航空施設、防空陣地であった。なお、滑走路が副目標であるのは支那事変の戦訓から長期間使用不能にすることが困難であるから、また艦爆が対空砲火による被害が大きいことも支那事変でわかっていたが命中率の良さから採用し、800キロ爆弾は開戦後の経験から陸上攻撃に大きな効果があることが分かっていたため採用したという事でもある。
 そして六空母に残ったのは零戦90機 九九式艦爆60機 九七式艦攻69機である。
 それはさておき、ミッドウェー島へ向かった日本軍攻撃隊は午前3時30分(06:30)から午前4時10分(07:10)にかけて空襲を実施した。

「隊長!! 滑走路に敵機がいません!?」
「読まれたか……」

 部下からの報告に攻撃隊隊長の友永大尉はそう呟きつつ旗艦『赤城』に打電をした。

「友永大尉機より電文!! 『カワ・カワ・カワ』以上です」
「やはり五航戦主力では駄目だったか。だが第二次攻撃の瑞雲隊がいる。彼等の攻撃を待ってからでも遅くはない」
「たかが下駄履き(水上機)ですよ。そんな戦果は期待出来ません」

65: 加賀 :2020/09/30(水) 17:38:16 HOST:om126179120227.19.openmobile.ne.jp
第一航空艦隊司令部では源田がそう瑞雲を主力とする航空戦艦を貶していた。そして草鹿は南雲に視線を向ける。

「長官、敵空母がいない以上はミッドウェー島への第二次攻撃を出すしかありません」
「………」

 南雲は源田にも視線を向けるが源田も頷いていた。そのため南雲は決断をする。

「第二次攻撃隊……爆弾に転装する」

 斯くして第一航空艦隊は敵空母用に備えていた攻撃隊をミッドウェー島への第二次攻撃隊として転用するのである。その頃には角田少将の第二機動部隊とも合流を0400には完了するが0415頃からミッドウェー島から発進した攻撃隊による空襲を断続的に受けるのである。

「むぅ……なら此方から電波を出して敵攻撃隊を引き付けるか」

 前衛の第七艦隊は無電を発信し敵攻撃隊の誘発を行うのである。無論、その発信元を特定した米機動部隊は直ちに攻撃隊を発艦させた。だがその攻撃隊は『ワスプ』『レンジャー』で編成された攻撃隊であった。史実三空母を炎上させたのは先の珊瑚海で戦没した『ヨークタウン』と生き残っている『エンタープライズ』『ホーネット』であり『ヨークタウン』こそいないもののまだ二空母は健在であった。それを含めると五藤少将の敵攻撃隊を引き付ける任務は半分成功し半分失敗するのである。その証拠として第一航空艦隊上空にも敵攻撃隊が頻繁に襲来して攻撃を受けるのである。
 午前5時30分(08:30)、敵艦隊と接触していた利根四号機から「敵はその後方に空母らしきもの一隻を伴う。ミッドウェー島より方位8度、250浬(発午前5時20分)」との打電が入った。

(イカン……)

 山口は即座に発光信号を司令部に送る。

『直チニ攻撃隊発進ノ要アリト認ム』

 山口からの意見具申に南雲中将は頭を抱えた。

「上空には敵機動部隊からの攻撃隊とミッドウェー島攻撃から帰還してくる攻撃隊がいるんだ。その最中に第二次攻撃隊なんぞ出してみろ、友永隊は燃料切れで不時着するぞ」
「それに爆弾は良いが魚雷は必要だ」
「転装する必要があります」
「長官」
「……第二次攻撃隊……魚雷に転装!!」



「クソッタレ!!」

 『赤城』からの発光信号に山口は思わず制帽を床に叩きつける。これでは歴史を繰り返すだけではないか。

「……どうする……『飛龍』……?」

 山口の問いかけに『飛龍』は何も答えなかった。一方で第七艦隊は動いた。

「ミッドウェー島攻撃に向かった瑞雲隊を呼び戻せ。補給後に一航艦上空の援護に向かわせる。その第一陣として残った瑞雲を全て出せ」
「宜しいのですか?」
「構わん(やはり歴史の修正力か……)」

 五藤少将は悔しそうに顔を歪める。俺達は何のために此処までしてきたのか? それを果たすためには無理矢理でもやるしか得ない。
 0630、残っていた瑞雲5機は直ちに発艦して南雲機動部隊に向かうのである。
 そして『エンタープライズ』の艦爆隊は、先に発見した眼下の日本軍駆逐艦(爆撃機隊は巡洋艦と判断)は空母部隊へ向かっているものと判断して北東進路上を索敵した結果、午前7時24分(10:24)頃、南雲機動部隊を発見した。

「何という奇跡だ。上空にジークが一機もいないぞ!?」

 マクラスキー少佐は思わず口笛を吹いた。しかもレスリー少佐の『サラトガ』艦爆隊16機(元『ヨークタウン』隊で編成されている)も0722に南雲機動部隊上空に到着していた。

「全機突入!!」

 彼等は即座に突入態勢を整えて一斉に急降下を開始したのである。

「敵ィィィィィ急降下ァァァァァァァァ!! 直上ォォォォォォォ!!」

 見張り員が叫んだ時、それは全てが遅かったのであった。

66: 加賀 :2020/09/30(水) 17:40:17 HOST:om126179120227.19.openmobile.ne.jp
  • 六空母参戦
  • 第二機動部隊とも合流
  • 敵機直上急降下
  • 源田、瑞雲を馬鹿にする(夜道には気を付けるのだよ……)

さて、次回は炎上する空母部隊……

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最終更新:2020年10月01日 16:37