427: フィー :2020/10/02(金) 23:16:21 HOST:KD106158246105.ppp-bb.dion.ne.jp
萌えと燃えのミーム。何時もの憂鬱ムーブでとても安心。
でもここは漆黒世界。
そして相対しているのは漆黒の合衆国なんだよね。
「この報告書は本当の事なのですか?」
俄かには信じられないと、何かの間違いであって欲しいと思いながらも壮年の男は報告者に確認する。
「残念ですが、全て確認が取れています」
それに答える報告者は沈痛な表情のままさらに続けた。
「資料にもあるように米合の上流・中流階級の初等教育に絵や漫画を多用した教科書が確認されています。楽しく学べて、覚えやすい。学習速度が上がったと評判も良いようです」
ここまでなら日本でも少なからず行われている。合衆国のように全面的に使用するような状態にはなっていないが有用性は分かっていることだ。
「米合はこちらの同人誌や商業誌から得た知見をフルに用い、自分の利益ではなく公共の利益を優先するよう、合理的に判断し最大利益を得るにはどうするか、諸外国の体制に比べいかに米合の体制が効率的かをあらゆる場所に仕込んでいます」
「娯楽用の書籍にもその形跡が見られます。例えば、こちらはよくある大切な人とその他大勢を天秤にかけてどちらを取るかという選択を突きつけるものですが、大切な人を選んだ結果大規模な被害を出した上げく選んだ相手も死んでしまう展開となっています。さらに、こちらも、こちらも、こちらも!多かれ少なかれ同様の思想誘導が見られるのです!」
報告を受けていた壮年の男は興奮する報告者を宥めるように問いかけた。
「いや、しかしそれは話の展開として我が国の書籍にも同様な物はいくつも有るでしょう?確かに影響は有るかもしれませんがこの手の思想教育はあの国の国是とも言える物。今更気にしすぎても仕方ないと思いますが」
「いえ、これだけでしたらおっしゃる通り少なからず今までの延長です。逆行者が書いた物から未来の知見を透かして学ばれたとしても許容範囲ですがもう一つの方、我が国のSFや戦記物、挙句にファンタジー作品に登場する技術や発想を流用された技術開発が進んでいることの方が大問題なのです」
これには報告を受けていた男も痛む頭に手を当て同意せざるを得なかった。
「まさか娯楽作品をまともに正面から解析するとは。たしかに、考えてみれば我々の作った書籍には多分に未来の発想が含まれています。大半はモノに成らないでしょうが一部は実用化されてしまうのでしょうね…」
報告者は頷きながら続ける。
「これの性質の悪い所は対策が打てない事です。国内の創作活動を制限するなど完全に自分の首を絞めることになりますからできませんし、流出を制限しようにも物が一般流通品では絶対にどこかから漏れます」
深くため息をつきながら壮年の男は窓の外を遠い目で見る。
「我々はただ、自分たちが楽しむために、そして多くの人が楽しめる様に娯楽分野の発展を願っただけなのに、どうして…」
合衆国はいつもあなたを見ています。
全てを学習し力を蓄えいつか北米大陸を統一することを目指して。
429: フィー :2020/10/02(金) 23:19:26 HOST:KD106158246105.ppp-bb.dion.ne.jp
久しぶりに書いたのがコレなのもどうかと思いますが、
前の議論にも出てましたがこんな感じですよね。
タイトルとしては「漆黒世界の娯楽業界」で。
では、また名無しに戻ります。
最終更新:2020年10月06日 09:54