804: モントゴメリー :2020/10/11(日) 16:14:46 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
続いちゃったw

ネタSS——「女神降臨」

某日 地中海洋上 戦艦「リシュリュー」艦内

その時、マリー一行は「極秘ミーティング」と言う名のお茶会の真最中であった。快晴の地中海を眺めながら彼女たちは話を進めていく。

「『国土正常化作戦』は順調です。既に予定の80%は消化しております」
「後はパリなど大都市の掃討戦のみです。間もなく、あの害虫どもを国内から一掃できます」

「当然よ。我が偉大なるフランスが『セクト』如きに遅れをとるものですか。…イザベル、ケーキと紅茶のおかわりを」

補佐官たちの報告を聞きながら、マリーは本日通算8個目のケーキを所望する。

「……マリー様。そろそろお控えになられては?」
「そうですよ。もう若くないんですよ」

「何よ。この前は『そんな歳じゃない』とか言ったくせに。こんどは老人扱い?」

補佐官たちの諫言にマリーはほほを膨らませる。

「これくらいなんでもないわ。10代のころはこの5人で60個のケーキ機甲部隊を殲滅したことだってあるじゃない」

それも過半数はマリー様が単独撃破されましたよね、という言葉が4人の脳裏に去来する。
が、誰もそれを口にすることはなかった。

「……まあいいわ。ソフィー、あれを」

ちなみに、イザベルもソフィーもマリーの秘書官、というより従卒である。
そのソフィーよりマリーはスティック状の袋を受け取り、中の粉末をイザベルが淹れた紅茶に注ぎ入れる。

「『炭水化物分解酵素』は乙女の必需品ね。これも祖国の偉業の一つだわ」

紅茶を口に含みつつマリーは語る。
それに対し補佐官&秘書官たちは苦笑で返すという実に心温まる空間に、それは起こった。

突如、部屋の一角が光りだしたのである。それは不思議な光だった。強烈であるのは間違いないが、「閃光手榴弾」のような痛みはない。
まるで陽光のような「優しさ」を持つ光だった。

「「⁉」」

勿論、そんなことに関わらず室内の人間は大混乱である。皆、何が起こっているか分からずに舌を動かすこともできない。

「流石は地中海、日差しも強烈ね。ソフィー、スクリーンの光量を調節してくれるかしら?」

ただ一人を除いて。マリーは扇子で目を守りつつも、一片の動揺すら見せてはいなかった。
ちなみに、ここは艦中央部の重防御区画。窓などは存在しない。窓の様に見えているのはスクリーンである。
彼女の言葉を聞き、他の者たちも我に返る。そして己の為すべきことを為そうと動き出した。

「マリー様隠れて!!」

秘書官たちはマリー押し倒す。そしてテーブルを倒し(マリーもろとも)部屋の隅まで押し出した。
そして、自らの体も盾にせんとテーブルの前に立ち両手を広げる。
金髪と黒髪の補佐官たちは一歩前へ踏み出し武器を構える。
金髪の補佐官はフルオート可能な自動拳銃を腰のホルスターから取り出し、黒髪の補佐官はアタッシュケースから短機関銃を引き出した。
共に2人が「現役」時代から愛用している一品である。

やがて光は収まり、室内は静寂に包まれた。

「……」

1秒が1時間に感じられる状況でマリーはただ息を潜めていた。おかしい、静かすぎる。銃声も、補佐官たちの声すら聞こえない。
そこに、「ガチャリ」という鈍い音がした。しかし声を発する者は無く、再び静寂が部屋を支配する。

805: モントゴメリー :2020/10/11(日) 16:16:00 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
意を決し、マリーはテーブルから頭を出すことにした。太ももにホールドしている拳銃に手を伸ばすことはしない。
あの2人が倒せない相手ならば、「淑女の身だしなみ」として身に着けている『レ・マットリボルバー』など物の役に立たないだろう。
マリーの目に映った光景は、予想外であり信じ難いものであった。

金髪と黒髪の補佐官たちが床にへたり込んでいる。
死んではいない。床は赤黒く塗装されてはいないし、彼女らの胸は呼吸により上下している。
だが、彼女らの銃は手から離れ床に転がっていた。先ほどの鈍い音の正体はこれだったのである。

———ありえない。

2人の勇敢さはマリーが一番よく知っている。共にエストシナやアフリカの戦場を駆け抜けた仲である。
現役を退いた現在でも心身を鍛錬は怠ってはいない。
仮に今2人に装備一式を渡し「ビヨット」主力戦車の指揮を取れと言ったら何の問題もなく中隊を率いて戦場を疾駆するだろう。
そんな2人が『敵』を目前にして武器を手放すことなどありえない。
しかし、現に2人の手には銃は無く、膝は力無く崩れ落ち、目からは少女の様に涙があふれ出ている。
さらに解せないのは2人の表情だ。そこに「恐怖」や「絶望」は見られない。あるのは「安堵」だ。
まるで、迷子の幼子が母親と再会した時の様な……。

「Je suis désolée(ごめんなさい)。驚かせてしまったわね」

そこに、どんな教師よりも正確で、どんなオペラ歌手よりも美しい発音のフランス語がマリーの耳朶を打った。
瞬時に立ち上がり声のする方を見たマリーは、呼吸を忘れるほどの衝撃を受ける。

そこに居たのは妙齢の女性。膝くらいまであるプラチナブロンドの髪の毛、どんな宝石よりも美しい金眼。
まさに「玲瓏」という表現が当てはまる美女である。

しかし「そんなこと」は些細な事だ。美女なんて毎日鏡の前で会っている。
マリーの体を射抜いたのは彼女の全身から放たれる空気、「オーラ」と呼んでもいい。
彼女を見ていると、心から不安や焦燥と言った感情は消え去り「護られている」という安心感が満ちていく。
体からは緊張が溶け去り、力が抜けていく。自然に膝を折り、祈りを捧げるような体勢になってしまう。

———いけない!!!

しかし、マリーの「責任感」はそれを拒絶した。
私はFFR大統領。私が膝を屈するということは、フランスが、4億を超えるフランス国民が膝を屈するのと同義。
それだけはいけない。私が、FFR大統領が跪くは、天上に御座す『主』か『元帥』か『提督』の御前のみ‼
あるいは、『彼女』の……

806: モントゴメリー :2020/10/11(日) 16:16:35 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
マリーは脚に満身の気力を込めて、テーブルの陰から歩みだした。
テーブルの表側では秘書官たちが気を失って…否、「眠っていた」がそちらに思考を振り向ける余裕はなかった。
2、3歩前に踏み出してレ・マットリボルバーを件の女性に向けて構える。こうでもしないと正気を保てそうにない。
……この銃は、こんなに重かっただろうか?
マリーの「本能」が狂ったように喚きたてる。『この御方』に逆らってはならない、銃を捨て身をゆだねよ、と。

———黙れ!!

マリーはその本能を鋼の精神力で抑え込む。生半可なメンタルでは大統領職なんて務まらないんだよこん畜生!!!

「Bonjour madame.(こんにちは ご婦人) 貴方は何者?何をしに来たのかしら?」

精一杯の虚勢で平静を装いながらマリーは問いかける。

「まずは、突然の訪問を謝罪いたしますわ。大統領閣下」

件の女性はそう述べ、一礼した。その口から発せられる言葉を聞くたびに、マリーの心の砦は歓喜で溶けていく。
まずい、脚に力が入らない———!

「私はフランスの剣。祖国に仇なす全てのものに滅びをもたらすのが我が務め」
「私はフランスの盾。祖国に降りかかる災厄から民を護るのが我が使命」

『彼女』は宣言し、マリーの方へと歩み出した。

「!! こ、来ないで……」

もはや虚勢を張る気力も残っていないマリーの声は震える。否、声だけでなく銃を持つ手も同様だった。
ダメだ、体が動かない。引き金を引くことすらできない……。

『彼女』が近づくほどに、そのオーラも強くなるようだ。実際、辛うじて意識はあった補佐官たちは眠ってしまい床に倒れ伏せた。

『彼女』はマリーの直前まで来ると立ち止まる。そしてマリーの手を握り、名を名乗った。

「我が名は『リシュリュー』。微力ながらご助力に参りました、大統領。いえ、マリー」

その名を聞いた刹那、マリーは糸が切れた人形のように崩れ落ちた。それを『彼女』、リシュリューが優しく抱き止める。

…もう、意地を張る必要は無い。
『彼女』の前でなら膝をついても誰も非難はしない。今はただ、この安堵と幸福感に身を委ねよう———

不安でたまらなかった!
恐怖で胸が張り裂けそうだった!!
神はフランスを見捨てたもうたか、と絶望もした。
しかし神は、「女神」は祖国を見捨ててはいなかった。それどころか、こうして下界に降り立ち我らを導かんとしている。
もう大丈夫だ。『彼女』がいれば、そこが異世界だろうが地獄だろうがフランスは倒れない。

「女神」よ、フランスを、FFRを守り給え……。

807: モントゴメリー :2020/10/11(日) 16:17:14 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
以上です。
リシュリューが発しているオーラは「女神オーラ」です。
類似品には、鳳翔さんや夕雲が発している「お艦オーラ」、陸奥や妙高姉さんが発している「お姉さんオーラ」があります。

この「女神オーラ」は生粋のFFR国民に対して特効を持っており、その倍率は10倍や20倍ではききません。
その効能は本分の通りです。

861: モントゴメリー :2020/10/12(月) 20:14:53 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
あ、>>82-83と、>>804-807に投稿した
拙作のウィキ掲載保留を解除&依頼します。


……お許しください、ひゅうが氏!!!
改めて思い返すと、これ私の「初SS」と呼んでいい作品なんです……。

「スペイン応援キャンペーン」とか「美魔女化リシュリュー」シリーズは『設定集』なんで。
(少なくともセリフは入ってない)

問題があれば、ひゅうが氏の「正気の歌」と同一世界っていう設定外して構いません。
直接194氏の超大陸世界や、銀連×神崎島世界と接続してください。

862: ひゅうが :2020/10/12(月) 20:50:15 HOST:p277027-ipngn200204kouchi.kochi.ocn.ne.jp
861
私は許そう
だがこのIS-7が(以下略)

とりあえず正気の歌は題名通り悪乗りの産物ですのでちょっとそのままとしときますw

863: モントゴメリー :2020/10/12(月) 21:42:26 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
862
わーい、許された―!!
(IS-7から全力で逃げつつ)

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最終更新:2020年10月16日 22:25