378: モントゴメリー :2020/10/21(水) 00:15:47 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
「信仰、または狂気、あるいは恐怖」

フランス連邦共和国 首都パリ エリゼ宮

この日、会議室には大統領以下FFRの政治・経済・軍事・学問、各分野の最高峰が集まっていた。
しかし、彼ら彼女らは一言も発せず、ただ一枚の報告書に目を奪われている。

「……これは、事実なのか」

ようやく、『大統領の双璧』と呼ばれる補佐官の一人が口を開いた。

「複数の情報源から同様の報告を受けています。情報の信頼度は高いかと…」
「しかし信じられない。OCUはここまでやるつもりなのか」

報告書には、ある情報が記載されていた。

———OCUはリシュリュー撃沈のために『黄泉国型水爆』の使用を検討中

「戦艦を沈めるために『終末兵器』を使うと言うのか!あり得ん!?」
「だがわからんぞ。やつらの『火力主義』は嫌と言うほど知っているだろう!!」

会議室に怒号が満ちる。
その中から、もう一人の双璧たる補佐官の声が響く。

「博士、黄泉国型水爆を受けた場合、リシュリューは耐えられるか?」

『博士』と呼ばれた男性に全員の視線が注がれた。

「…………不可能です」

彼は力なく答えた。

「おそらく、残骸どころか欠片も残らないかと」
「何とかならないか。戦術核にも中性子爆弾にも耐えられるようになったんだ! 黄泉国型にだって…!!」
「黄泉国型水爆の威力は戦術核とは桁違いです。それも、1つや2つではない!!」

会議室は静まり返った。言葉を発する者は誰もいない。

「…打つ手はないのか?」
「残念ながら……」
「ならばどうすればいい?リシュリューがこの世から消えるということは、フランスが、FFRが滅びるということだぞ……」

その言葉に反論する者は絶無だった。
リシュリューはFFR国民統合の象徴であり、FFRそのものなのだ。
リシュリュー無しではフランスは維持できない。少なくともFFRは崩壊する。
最低でも欧州とアフリカとエストシナで分裂するだろう。
その先にあるのは欧州の片田舎にある三流国家として歴史に埋没していく未来のみだ。
ろくでもない未来だ。
男は勲を立てる事も出来ず、女は人生を謳歌する暇さえなく痩せ衰えるまで働きづめ。
子供らは将来の希望を持つことすら許されず、OCUやBCどもの奴隷に成り下がる。

……そんな未来なんてごめんだ!!!

「大統領閣下。OCUに対して先制攻撃を仕掛けましょう」
「そうです、やられる前にやりましょう!」
「そうだ!我々フランス人の意地を、誇りを、全てを奴らに叩きつけてやりましょう!!」

皆が口々に開戦論を叫ぶ。『博士』でさえ例外ではなかった。

「我々学問の徒も全力を尽くします。ご命令とあらば銃を取り戦場に立ちましょう」

という程である。
皆の目には狂気が宿っていた。地獄のような未来で悲惨に生きるくらいなら、同じ地獄でも戦場で派手に散ろうというのである。
…いや、あるいはその感情は「恐怖」であるかもしれない。
リシュリューという『女神』の守護が受けられないという恐怖に押しつぶされそうになっているのだ。

そこで、大統領が初めて声を発した。

「みんな、何を怯えているの?」
「マリー様?」
「みんなが心配するような未来がやってくることはありえないわ」
「「?」」

誰もが大統領の意図を測りかねている。

「黄泉国型水爆は『終末兵器』。それが地中海やビスケー湾で使用された場合、FFRは全土が『死の世界』になる」
「「!!」」

その言葉の意味を理解した時、室内の人間に浮かんだ感情は驚きと「安堵」であった。リシュリューのいない世界で生きなくてもいいのだと。
そんな世界では生きられない。そんな世界では生きたくない!!

「それに、その時はイタリアも、イギリスも、オランダ本土でさえも道連れよ。そう考えれば悪いものではないわ」
「それもそうですな」
「敵国3つを道連れですか。天上の『元帥』に胸を張って会うことができますね」

会場の空気は和やかなものとなった。そうだ、リシュリューが沈むのだ。敵国を3つ道連れにするくらいでないと釣り合わない。

こうして第三次世界大戦は回避されたのである。


「それはそれとして、博士」
「はい?」

大統領は博士を呼び、次の様に命じた。
「100年かかっても構わない。リシュリューを黄泉国型水爆に耐えられるようにしなさい。
国土が死の灰に沈み、国民が死に絶えたとしても、リシュリューがあるかぎりFFRは滅びないわ」
「…御意」

残念ながら、この命令は100年後になっても果たされることはなかった。これが達成されるには
機関をタキオン式波動機関に換装し、「波動防壁』を実装した『第X時美魔女化改装』が行われる2190年代まで待たねばならなかった。

379: モントゴメリー :2020/10/21(水) 00:19:59 HOST:116-64-111-22.rev.home.ne.jp
以上です。ウィキ掲載は自由です。

331の700氏に対する返答ですね。
「戦艦1隻沈めるために『終末兵器』を使うな!?」と一言で終わらせるつもりでしたが
今一つフランス的エスプリが足りなかったのでどうしようかと思っていたら
FFRの皆さんの魂の叫びが届いたので急遽でっち上げました。

今夜はもう寝ますので感想返しは明日の夜に。
…今夜も彼らが夢枕に立つのだろうな。
(リシュリュー第二次美魔女化の催促に)

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最終更新:2020年10月21日 18:56