263: 加賀 :2020/10/11(日) 21:17:17 HOST:om126237012250.9.openmobile.ne.jp
「正規空母は『瑞鶴』のみか……」
「当方に迎撃の用意有り」
「前衛隊に四航戦(『伊勢』『日向』)はいますけど……」
「五藤さんの代わりに橋本君がいるから問題無いだろう」
「ところで松田さんは?」
「空技廠に異動して瑞雲改を試作中だよ」
「何をしているんですか……」




 三艦隊は8月27日に進出先のトラック泊地を出撃し一路ガダルカナル島を目指して南下していた。

「敵は正規空母二隻……」
「対して此方は『瑞鶴』のみ。他にも改装空母だけです」

 南雲中将の呟きに市丸少将はそう返した。

「潜水艦隊の情報では護衛空母も確認されている。奴等の底力を侮るわけにはいかん」

 ウォッチタワー作戦で米軍は空母『エンタープライズ』『ホーネット』の他にも護衛空母である『ボーグ』『コパヒー』『ナッソー』『オルタマハ』の四隻を投入しており航空戦力も四隻合わせて96機と厄介だった。単純計算で米軍は約300機、三艦隊は瑞雲と合わせて漸く約310機と兵力はほぼ均衡していたが、ラバウル航空隊を入れたら400機近くになるのである。
 だが運命の女神は三艦隊にはキツかった。採用されたばかりの二式艦偵が米機動部隊ーー第61任務部隊を発見したがラバウルからは遠かった。いや、届く事は届くがパイロットの疲労を考えれば遠すぎた。

「やむを得ない。我々でやろう」

 南雲は即断した。確かに米機動部隊を引き付けるためにラバウルに向かう選択も出来たが米機動部隊が乗るわけはない。ならば、三艦隊だけでやるしかなかった。
 9月1日0400、三艦隊は再度二式艦偵隊を偵察に投入し0623に二式艦偵5号機が三艦隊方面に向かう米機動部隊を発見したのである。

「第一次攻撃隊、発艦始めェ!!」

 0705、第一次攻撃隊は零戦27機と艦爆隊36機のみの戦爆連合だった。指揮官は『隼鷹』隊飛行隊長の関衛少佐である。先に敵空母の飛行甲板を叩く、速度が速い戦爆連合で有利に動こうとしたのである。そして第二次攻撃隊の準備中、見張り員が叫んだ。

「六時方向に敵機!! 『祥鳳』と『瑞鳳』直上ォ!!」
「何!?」

 南雲が叫んだ時、敵機は投弾していた。『祥鳳』は中部飛行甲板、『瑞鳳』は後部飛行甲板に450キロ爆弾が命中した。二隻を襲った下手人は『エンタープライズ』の第10偵察隊のSBD2機だった。

「二隻の状況を知らせ!!」

 程なく発光信号が『瑞鶴』の元に届けられた。

「二隻とも機関は無事。されど着艦はほぼ不能との事です」
「発艦は可能だな?」
「そのようです」
「なら攻撃隊は出せるな。二隻は攻撃隊を発艦後に後方へ退避せよ」
「補助推進ロケットが採用されてなかったら危ういところでしたな」

 市丸の言葉に南雲は無言で頷く。RATOの開発は開戦時にはほぼ完了しており今海戦には全空母に搭載されていた。そのため『祥鳳』『瑞鳳』の二空母は全機を発艦させる事が出来、その後の航空戦に支障を来す事はなかったのだ。
 また前衛隊では瑞雲隊の発艦をしていた。

「瑞雲隊18機、発艦完了!!」
「ん。敵空母の飛行甲板を思う存分に叩いてくれ」

 三水戦旗艦『川内』の艦橋で橋本少将は頷く。

「しかし、二空母がやられたのは痛いですな。電探はそこまで機能しなかったのでしょうか?」
「いや、恐らくは雲量で見逃してしまったのだろう」

 艦長の指摘に橋本少将は空を見る。空は曇天ではないがそれでも雲量は6はあった。

「無電を発しろ。意味は不明でいい、敵攻撃隊を此方に吸収させる」

264: 加賀 :2020/10/11(日) 21:18:42 HOST:om126237012250.9.openmobile.ne.jp
 0843、第一次攻撃隊は米機動部隊を発見した。

「トツレを放て!!」

 関少佐はトツレを発信、36機の艦爆隊は新戦法で編隊爆撃に移行する。

「突撃!!」

 関機はト連送を発信、目標に定めていた『ホーネット』に一個中隊の列機8機を率いて編隊での急降下爆撃を敢行する。だが対空砲火はミッドウェー海戦から更に激しくなっており急降下中でも4機が撃墜されるも二発の命中弾を叩き出した。
 『エンタープライズ』にも9機が襲い掛かり三発が命中、『エンタープライズ』は炎上して手が付けられない状態になる。それを見た一個中隊9機が更に攻撃を行うも対空砲火で退けられ運が悪い事に投弾して至近弾で吹き上がった水柱が『エンタープライズ』の飛行甲板に降りかかって火災を消火してしまう要因を作ってしまうのである。
 残りの一個中隊は護衛空母『コパヒー』を攻撃し『コパヒー』は爆弾五発が致命傷となり攻撃隊が引き上げる頃には波間に没するのである。
 第一次攻撃隊と入れ替わりに襲い掛かったのが村田少佐率いる第二次攻撃隊である。(零戦36機 九九式艦爆18機 九七式艦攻60機)

(久しぶりだな『ホーネット』……)

 炎上する『ホーネット』を見た村田少佐はニヤリと笑う。

「『ホーネット』に止めを刺す。全軍突撃せよ!!」

 『エンタープライズ』は護衛艦艇共に離脱しようとしていたので村田は敢えてまだ残っていた『ホーネット』だけに攻撃を集中させた。

「米空母18ノット、火災を起こしています!!」
「沈めるぞ」

 偵察席の平山一飛曹の報告に村田はそれだけを告げ『ホーネット』の右舷から列機の18機を率いて突撃を開始する。反対側からは『隼鷹』隊18機も突撃しておりこの中には雨宮達のペアもいた。

「突っ込め雨宮ァ!!」
「任せろ!!」

 左右36機から攻められる『ホーネット』は懸命に回避しようとしたが逃れる事は出来なかった。

「撃ェ!!」
「用意……テェ!!」

 『ホーネット』は左舷に五発、右舷に三発が命中しこれが致命傷となった。更に他の艦攻隊は護衛空母『ガード』を攻撃し魚雷七発を命中させて轟沈させたのである。なお、瑞雲隊もちゃっかり攻撃して『ナッソー』を大破させている。
 ワンサイドゲーム……とはいかず、米機動部隊は第一次攻撃隊が来る前に攻撃隊を放っていた。
 だが米攻撃隊が三艦隊上空で見たのは30機以上の零戦隊である。

「そんな馬鹿な!? 奴等、どれだけのジークを積んでいるんだ!!」

 三艦隊上空にいたのは被弾後退した『祥鳳』『瑞鳳』の零戦隊39機である。彼等は米攻撃隊に二隻の仇とばかりに迎撃戦を開始、米攻撃隊はむしろ攻撃する事が出来ず逃げるしか出来なかったのであった。
 斯くして、後に第二次ソロモン海戦と呼ばれるこの戦いで三艦隊は『ホーネット』『ガード』『コパヒー』を撃沈させ一時的にガダルカナル島上空の制空権を日本側の物とさせて陸軍の上陸部隊(川口旅団と残存一木支隊)の揚陸を成功させるのであった。
 しかし、この戦いで三艦隊は航空機を約50機ばかりを喪失してしまうのである。

265: 加賀 :2020/10/11(日) 21:23:44 HOST:om126237012250.9.openmobile.ne.jp
  • 半裸と食べりゅ?被弾
  • 村田と秋沢、生還(見えるか秋沢?母艦だぞ……)
  • ごめん『ホーネット』好きなんやけど、今回も沈んでくれ……
  • まな板もちゃっかり生還(誰がまな板や!?)


てなわけで第二次ソロモン海戦でした。川口旅団達は物資弾薬は全て揚陸出来たので士気高揚していますがジャングルはそんなの関係なく包み込んでしまいます。

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最終更新:2020年10月26日 23:02