377: 加賀 :2020/10/24(土) 21:56:26 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp



「南雲さんの三艦隊が米機動部隊と激突か」
「南雲さんなら大丈夫です」
「だがあれ程対策をしていた筈の『飛鷹』は機関故障が発生して後退中だからなぁ……」
「村田機から『ト連送』を発信したのを受信しました!!」
「……始まったか」






 先に見つけたのは三艦隊から発艦した二式艦偵だった。

「見つけました!! 米機動部隊です!!」
「各空母に発光信号。第一次攻撃隊、全機発艦!! 始めェ!!」
「第一次攻撃隊全機発艦始めェ!!」

 飛行甲板で用意していた『瑞鶴』『飛龍』『龍鳳』の三空母から第一次攻撃隊が発艦する。(零戦30機 彗星16機 九九式艦爆18機 九七式艦攻36機 指揮官村田少佐)

「しかし、二艦隊の『飛鷹』の離脱は痛いですな」
「む……(史実と同じくの機関故障か……)」

 ガダルカナル島の航空戦力を牽制するために『龍驤』『飛鷹』『隼鷹』の三空母が二艦隊に臨時編成をされていたが此処に来て『飛鷹』が機関故障で離脱したのである。
 やむを得ず二艦隊は零戦隊12機の増強を『飛鷹』から借りたのである。
 そして米機動部隊もただでやられるわけではなかった。

「米潜水艦らしき電文が発信されています」

 たまたま哨戒に出ていた『S-43』が南雲第三艦隊を発見、直ちに通報された。対潜戦闘で『S-43』は撃沈されたがキンケイド中将は敵艦隊発見の通報に飛行甲板で待機していた攻撃隊を発艦させたのである。
 この時、米第61任務部隊は『エンタープライズ』を主力としつつ護衛空母『オルタマハ』『サンガモン』『スワニー』『シェナンゴ』『サンティー』の五隻を率いれていた。更に護衛艦艇には戦艦『ノースカロライナ』『インディアナ』を主力としつつ甲巡4、乙巡6、駆逐艦38という大艦隊で迎え討とうとしていたのだ。
 第61任務部隊はほぼ同時期に攻撃隊120機の発艦に成功、互いに擦れ違うが両者とも分厚い雲に阻まれて両攻撃隊は発見する事が出来なかったのである。

「見つけた、『エンタープライズ』だ!?」

 二式艦偵の誘導の元、村田少佐率いる第一次攻撃隊は第61任務部隊を発見した。直ちに村田機から『トツレ』が発信される。

「後方から敵グラマン!?」

 偵察席に座る斉藤二飛曹が叫ぶ。後方から10数機のF4Fが接近してきた。機銃手が7.7ミリ旋回銃をぶっぱなしてF4Fを追い散らそうとするが多数の12.7を搭載するF4Fはものともせずたちまち数機の九七式艦攻が撃墜された。更に九九式艦爆も5機撃墜されるが態勢を立て直した零戦隊がF4F隊をあっという間に蹴散らす事に成功する。

「全軍突撃せよ!!」

 村田機から『ト連送』が発信される。先に動いたのは『瑞鶴』隊の江間大尉率いる彗星隊16機だった。制式採用されたばかりの彗星は今回が初陣であり本来は18機出撃予定だったが慣れない液冷発動機のため2機が故障で発艦不能というオチだった。それでも16機の彗星は対空砲火を撃ちあげる第61任務部隊に真っ向から編隊爆撃を敢行した。

「やった、命中だ!!」

 『エンタープライズ』は四発の500キロ爆弾が命中した。特に前部飛行甲板のエレベーターに飛び込んだ500キロ爆弾はエレベーターを吹き飛ばし瞬く間に発艦不能にさせたのである。次いで『オルタマハ』『スワニー』にも九九式艦爆の250キロ爆弾が命中して炎上させた。
 だが艦爆隊は11機を対空砲火と敵戦闘機の交戦で喪失してしまう。そして第一次攻撃隊のメインイベントでもある艦攻隊の突撃が開始される。

「米空母、速度22ノット。火災を起こしています!!」
「沈めるぞ」

 最初に突撃したのは田中正臣大尉の『飛龍』隊18機である。だが『飛龍』隊は突撃した位置が『ワシントン』がいる左舷であった。真っ先に突撃した田中大尉機を含む10機が瞬く間に撃墜され残った8機は『ワシントン』に魚雷を投下するも投下位置が遠すぎた事で回避されてしまった。だがその隙を突いて村田少佐隊18機が突撃した。

「距離700!!」
「撃ェ!!」

378: 加賀 :2020/10/24(土) 21:57:13 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
村田隊も11機に減らされながらも魚雷を投下、『エンタープライズ』の左舷に三本の魚雷を命中させたのである。

「『エンタープライズ』大破!!」

 電文は直ちに旗艦『瑞鶴』に送信された。しかし、受信した『瑞鶴』も対空戦闘中だった。

「左舷から雷撃機!!」
「とぉーりかぁーじ!!」

 『瑞鶴』は34ノットの高速を活かして回避運動を行い、群がってきた敵攻撃機を撃破する。しかし、僚艦『飛龍』と『龍鳳』はそこまで運がなかった。

「敵機直上ォ!! 急降下ァ!!」
「しまった!?」

 『飛龍』の艦体が揺れる。飛行甲板に爆弾が命中した証拠である。

「『飛龍』に爆弾三発命中!! 『龍鳳』にも爆弾二発命中!!」
「長官」
「……二空母は敵攻撃隊を退けた後、護衛艦艇と共に退避せよ。角田少将の二航戦はどうした?」
「第一次攻撃隊を発艦させた以降の連絡はまだありません」
「む(近藤さんなら大丈夫か……)」

 そして第一次攻撃隊が引き上げると入れ替わりに『隼鷹』から発艦した関少佐率いる第一次攻撃隊(零戦20機 九九式艦爆18機)が第61任務部隊の上空に到着した。

「全軍突撃せよ!!」

 関少佐は間髪入れずに『ト連送』を発信、関少佐機は急降下を開始するもその途中で対空砲火を浴び機体は炎上した。

「此処まで来てェ!!」

 それでも関少佐は機体に最期の鞭を入れて敵空母ーー『エンタープライズ』の飛行甲板へ体当たりを敢行したのである。

「隊長!?」

 指揮を受け継いだ坂本大尉も爆弾を『エンタープライズ』に叩きつける事に成功するも再度上昇中に対空射撃を浴びて機体が炎上。最寄りの護衛空母『サンガモン』に体当たりをするのであった。

「二式艦偵からの報告では『エンタープライズ』はまだ動いているとの事です」
「……奴は化け物か」

 市丸参謀長の報告に南雲中将は顔を歪める。『瑞鶴』では第二次攻撃隊を編成中だったが機体は損傷が激しくそれでも南雲は出す事を決断をする。

「奴に止めを刺すのは自分の役目です」

379: 加賀 :2020/10/24(土) 21:58:01 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
再度指揮官に選ばれた村田少佐はニッコリと笑って出撃したのである。(零戦24機 彗星14機 九七式艦攻12機)
 一方で角田少将も第二次攻撃隊を出していたが『隼鷹』の対空電探にエスピリサント島方面から接近する編隊を探知したのである。

「その手があったか!!」

 角田少将は舌打ちをするも対空戦闘用意を発令した。接近してきたのはエスピリサント島から発進したB-17の編隊28機である。護衛戦闘機はいないが角田少将の機動部隊も零戦隊はおらず(全て攻撃隊に出していた)機動部隊は対空砲火で片付けるしかなかったのだ。

「対空戦闘ォ!!」

 角田機動部隊は対空射撃を開始、B-17隊は高高度からの爆撃を敢行していたが数機が低空からの爆撃を敢行した。

「爆弾、来ます!!」
「とぉーりかぁーじ!!」
「駄目です!!」

 狙われたのは『龍驤』だった。『龍驤』は1000ポンド爆弾四発が命中、沈む気配は無かったが完全に現段階では空母としての機能は喪失した。
 そして第61任務部隊もその航空戦力を喪失しようとしていた。

「行くぞ秋沢!! 木場!!」
『おぅ!!』

 『隼鷹』から発艦した第二次攻撃隊(零戦18機 九七式艦攻11機)が行き脚を停止していた『エンタープライズ』を発見、突撃を開始した。しかし、『エンタープライズ』を護衛していた艦艇からの対空射撃は相変わらず激しかった。それでも艦攻隊ーー雨宮機は距離700で魚雷を投下した。その離脱中に機体に衝撃が走る。

「大丈夫か!?」
『大丈夫だ!!』
「木場、魚雷はーー」

 雨宮が『エンタープライズ』を見た時、二本の水柱が吹き上がっていた。

『やった!? 命中です雨宮さん!!』
「今度もやったぞ秋沢!!」
『………』
「秋沢……?」
『雨宮さん、秋沢一飛曹は……』
「………」

 木場の言葉に雨宮は全てを察し一筋の涙を流した。そして母艦である『隼鷹』が見えた時、雨宮はポツリと呟いた。

「見えるか秋沢? 母艦だぞ、帰ってきたぞ……」

 『エンタープライズ』は『隼鷹』の第二次攻撃隊の攻撃が致命傷となり史実と異なり南太平洋にその身を没するのであった。
 他にも護衛空母『サンガモン』『オルタマハ』を撃沈する事に成功した第三艦隊であったがその代償として航空機125機を喪失、母艦飛行隊は壊滅的打撃を受ける羽目になり後に復帰した『加賀』『翔鶴』『蓬莱』(元『サラトガ』)は養成部隊である第50航空戦隊に鞍替えして飛行隊の育成を務めるのである。そしてその間、『瑞鶴』は第三艦隊に残った正規空母として獅子奮迅の戦いをするのである。

380: 加賀 :2020/10/24(土) 22:01:56 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
  • 42年最後の航空決戦
  • 『飛鷹』、やっぱり機関故障で離脱
  • 『エンタープライズ』撃沈
  • 見えるか秋沢?母艦だぞ……
  • 帰って来ないパイロット



全ての正規空母を撃沈する事には成功した三艦隊及び日本海軍だがその代償は熟練パイロット達の命である。

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最終更新:2020年10月26日 23:04