745: 弥次郎 :2020/10/31(土) 19:44:36 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp

憂鬱SRW 未来編鉄血世界 演説ログ「クーデリア・藍那・バーンスタイン火星連合代表 ドルト・コロニーにて」



「ごきげんよう、この放送を見ているすべての皆さん。
 私は火星連合代表、そして火星連合暫定政府首相のクーデリア・藍那・バーンスタインです。
 私は今、世界の歪みの一つと対峙するべく、ドルト・コロニーにいます」



「私の声が、届いていますか?
 ここにいる人々の声が、聞こえていますか?
 地球に、圏外圏に、月に、コロニー群にいる人々に、声は届いていますか?」




「私はこれまで、私の生まれ育った惑星である火星を救いたいと考え、行動してきました。
 火星の独立運動に加わり、学問を学び、多くの人とかかわりを持ったのもそのためです。
 私自身は恵まれた環境にありました。そう、恵まれていたのです。それだからこそ、他の人々の境遇を変えられると思っていたのです」




「けれど、それは無知でした。あまりにも、傲慢で無知だったのです。視野狭窄といってもいいでしょう。
 火星のように、ギャラルホルンの支配に、そして経済圏の搾取に苦しむ人々は宇宙各地にいたのです」



「私はこのドルト・コロニーを訪れ、私たち火星連合と同じように、自分たちの現状を変えようと立ち向かう人々と会いました。
 安い賃金、劣悪な職場環境、快適とはいえない生活、階級ごとに完全に隔離されたコロニーの有様。
 それは、この世界にある歪みに必死に立ち向かう人々のけなげな姿でもありました」




「彼らはデモや抗議活動を行い、労使交渉という手段を用いて境遇を変えようとしました。
 ですが、長く続けても、ドルト・カンパニー経営陣はそれに応じても、具体的な改善をなそうとはしませんでした。
 何度も何度も訴えようとも、具体的な行動は起こされず、労働者たちを取り巻く環境は悪化の一途をたどるばかり」




「そして、彼らは武器を手に取りました。それは咎められるべきでしょう。武器があれば、意思が一つあるだけで人を傷つけてしまうのですから。
 ですが、それすらも、経営陣の掌の上だったのです」



「武器を持った労働者たちは、いうなればテロリストに近いものです。まして、行動に移せば実行犯となります。
 経営陣はこの状況を意図的に引き起こし、ギャラルホルンに鎮圧させ、見せしめとしていたのです。
 そうすれば、待遇を改善しなくともよいばかりか、自然と従順な労働者だけが生き残るのですから」





「関与していたのはドルト・カンパニー経営陣とギャラルホルンだけではありません。
 公営企業ということは持ち主である経済圏、すなわちアフリカユニオンの意思が絡んでいることも考えられます。
 さらには、労働者たちに密かに武器を渡し、その情報をリークしていた人物がいたのです」




「恥を承知で申し上げましょう。その人物は、私のパトロンでもあった、ノブリス・ゴルドンだったのです」




「私がドルト・コロニーを訪れたのは、信頼するパトロンであった彼の噂を聞きつけたことに端を発します。
 すでにご存じかもしれませんが、私は火星連合の立ち上げの前に、二度のギャラルホルンからの襲撃を受けています。
 一度目は、私が地球までの護衛を依頼したPMCのCGSの拠点を。二度目は、カラール自治区を。
 一度目に関しては私の父、ノーマン・バーンスタインがギャラルホルンに通じていたことがわかりました。
 二度目の襲撃に関しては不明でした。ですが、この時捕縛されたギャラルホルン火星支部司令の供述により、ノブリス・ゴルドンに疑惑が持ち上がりました」


747: 弥次郎 :2020/10/31(土) 19:45:14 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp


「そして、彼の所業はその後の調査で明らかになって行きました。私への裏切り行為がかわいらしく見えるほどに」



「ドルトだけに限りません。すでに各コロニーで起こっていたいくつかの暴動にかかわっていました。
 さらに、この私に対しても、私の情報をギャラルホルンへと売り渡し、また、ギャラルホルンと結託し、カラール自治区を襲撃したのです。
 自らの利益のため、発生するであろう大混乱に乗じて利益をむさぼるため……そんな身勝手な理屈で、多くの人々が殺されたのです」



「私が知らぬ間のこと、というのは簡単でしょう。しかし、すでに私も巻き込まれていたのです。
 ドルト・コロニーの労働者たちは、私の名前で支援を受けており、私が決起に協力してくれるのだと思っていたのです。
 ですが、私にとって重要なのは火星に住む人々であり、火星連合と友誼を結ぶことになる経済圏のことでした」



「私は本来ならば彼らの誤解を解くためにこのドルト・コロニーを訪れました。なにしろ、今の私は火星連合の代表という身。
 私の行動一つ、言動一つが大きな影響を持ちます。火星連合が暴動に手を貸した、あるいは幇助したとなれば、そしりは免れません。
 私も、火星連合も、そして火星連合に属するすべての人々も。だからこそ、支援はできないと宣告するつもりでした」



「ですが、これを座して見逃すことが、果たして正しいことなのでしょうか?
 無力な、力なき人々が踊らされ、その命を落としてしまうのを見過ごすのが良いことなのでしょうか?
 私が行動を始めた切欠は、そんな理不尽を正したいという考えから始まったからだというのに」


「そして、すべてを説明されたうえで、労働組合の代表であるナボナ・ミンゴ氏は私に依頼をしました。
 どうか助けてほしいと。この苦境を、風前の灯火となっている労働者たちをどうか救ってほしいのだと」


「故に、故にこそ、私は彼らの境遇を、仕組まれた絵図を知って、見過ごすことはできなかったのです」



「だからこそ、私はここに告発します。経済圏とギャラルホルンと武器商人による、人を人とも思わない蛮行を、非道を」



「無論、私の言葉だけでは証拠とならないでしょう。ここでいくつか証拠をお見せします」





(中略)




「……以上のように、癒着し、意図的な暴動を起こさせていることは明らかです。
 これ以外にもいくつか証拠がありますが、ここでは語り切れません」


「ギャラルホルンの皆さんと、経済圏の方々に問いたいのです。
 無力な人々を罠にはめ、虐殺することがあなた方ギャラルホルンにとっての正義なのかと。
 圏外圏の、経済圏にいる自分の知らぬところにいる人間を、人とも思わず扱うのが果たして正しいのかを」



「経済圏の今を作るのは、多くの努力や貢献によるものと理解しています。私が知る以上の多くの積み重ねがあってのことでしょう。
 ですが、その尊い積み重ねに積み重ねるものとして胸を張って誇れるでしょうか?」



「弱者を食いつぶし、強者のみが安寧を得る。そんなことが許されていいのでしょうか?
 自分とは関係のない、圏外圏や地球外でのことであるならばよいのでしょうか?
 強い者がすべてを支配し、弱者を虐げる。今の世界のように特権を持つ者だけが幸福を得られる世界が正しいといえるのでしょうか?」




「もし、それが世界の正しいルールなのだとすれば、私はそんな世界を認めはしない!」

748: 弥次郎 :2020/10/31(土) 19:48:52 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp


「世界は、変えていけるはずなのです。
 たとえ未曽有の被害をもたらした厄祭戦の後であろうとも、一歩、また一歩と良い方向へと進んでいけるはず。
 苦しみがあったとしても、苦難があったとしても、昨日よりよい今日を、今日よりも良い明日を。
 その希望があるからこそ、人は歩みを止めることなく進んでいけるのです」



「そして、この太陽系に暮らす我々は、一つの転機を迎えていました。
 太陽系丸ごと別な宇宙への転移。そして、経済圏の一部の方々のみが知るであろう、地球連合との接触を。
 その接触において、経済圏と地球連合はエドモントン条約を結んだのです」


「地球連合とは、我々の生きる地球ではなく、別な世界の地球を中心とした巨大な連合国家群のことをさします」


「彼らとの間で結ばれたその条約に基づき、宇宙海賊の取り締まり、ヒューマンデブリの増加の防止などを行う義務がありました。
 地球連合がこの太陽系内への干渉を行わず、我々が自主自律を維持するために、圧倒的な強国である彼らの思惑に左右されず生きるための選択のはずでした。
 ですが、経済圏もギャラルホルンがそれを履行したかは現在の実情を知れば判断できるでしょう。
 ほかならぬ彼らの意思が、怠慢が、無関心が、その現実を作り上げ、安穏としていたのです。
 そして、そんな経済圏を作り出したのも、経済圏に暮らす人々の意思なのです」



「火星に暮らす一般市井の人々はそんな条約のこと自体知りもしませんでした。悔しいことに、私も同じでした。
 そして、意思が世界をゆがめているのだという考えには、火星圏に進出してきた地球連合と交流を持ち、彼らから見たこの世界を知るまでは至らなかったのです。
 世界の歪みの一つと申し上げましたが、それを生み出し、変えようとする意志を踏みつぶし、新たな負の連鎖を生むのは人の意思なのです。
 私はこれを変えねばと誓い、動きました。そして、成し遂げるのだと」



「私の道を阻むのが人の意思であるならば、私は私自身の意思を以て打倒します」



「千の言葉で止めようとするならば、それを超える言葉をぶつけましょう。
 万の武力で潰そうとするならば、それを超える武力で迎え撃ちましょう。
 億の悪意を振りまくならば、それを超える意思で跳ねのけましょう」



「そして、虐げられている人々にも申し上げておきたいことがあります」



「理不尽に対し、理不尽な暴力を使おうとしていませんか?それは同じところまで落ちることになります。
 私が簡単に力を貸してくれると、傲慢にも思っていませんか?私は便利な道具ではありません。
 考えの押し付けや、短絡的な感情だけで動いていませんか?その行き着く先は破滅です」



「最後に、この放送を聞いているすべての人に。お願いしたいと思います。私は、そして火星連合は、敵対ではなく融和を望みます。
 この救いがたい、歪みに満ちた世界の中でも、希望を持って誰もが生きていける世界を作っていきたい。
 気に食わないと、身の程知らずだと、世界の和を乱すのだと、そう思われるかもしれません。ですが、今ある世界は本当に誇れる世界でしょうか?」



「融和か、敵対か、無関心か。それのどれを選ぶかは自由です。
 ですが、我々は次世代のために選ばなくてはならないのです。選んでください、未来に、次の世代に誇れる選択肢を!」

749: 弥次郎 :2020/10/31(土) 19:49:28 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp
以上、wiki転載はご自由に。
あれこれ迷いましたが、別個の話として切り離しました。
次回から、コロニー激闘編に本格突入となります。

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最終更新:2020年11月01日 09:47