393: 加賀 :2020/10/25(日) 21:58:28 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
 何時からかは覚えてない。気が付いた時、私ことーー『瑞鶴』は開戦直後の真珠湾沖を航行する『瑞鶴』の艦橋にいた。

【此処は……】

「淵田機から『トラ連送』を受信!!」
「よし。奇襲成功だ!?」
『万歳!!』

 艦娘だからなのか見えない私を置き去りに艦長さん達は万歳三唱をしている。

【また……あの日に戻ったのかな……】

 また史実を繰り返すのか、そう思っていたけどウェーク島の戦果を聞いてーー『あの世界』だと確信した。

【ウェーク島攻略が成功したの翔鶴姉!?】
【えぇそうよ瑞鶴】

 間違いない、此処は二度目を経験したあの世界だ。そう思った私、呉に帰還すればあの戦争でいなくなった皆が私達ーー1航艦を迎えてくれる。もしかしたら私と同じく記憶を持つ者がいるかもしれないと思った。

【『宜野湾』って分かる?】

 誰も沖縄県の湾しか知らなかった。あぁ……私しかいないのかな。皆が普通に話している中、孤独感を感じてしまい気付けば戦後から吸い出したタバコと飲み出したお酒に手を出していた。勿論翔鶴姉に見つかれば怒られるのでコッソリと吸ったりした。
 他の人の話を聞いているとあの世界でも『歴史』を変えようとした提督さん達も暗躍しているみたい。ならミッドウェーも……。

 そう思っていた。ミッドウェーは私も翔鶴姉も参加していた。けど、歴史は変えれなかった。

「『赤城』上空に急降下!?」
【『赤城』さん!?】

 あっという間だった。『赤城』さん『蒼龍』さんは艦載機が誘爆してもう無理だった。幸いだったのは格納庫が空だった『翔鶴』姉くらいだろう。
 『飛龍』さん達と二波の攻撃隊を送ったけど仕止めれたのは一隻で『サラトガ』と『アトランタ』を捕獲出来たくらいかな。
 一航艦が解体された後、私は三艦隊旗艦の任についた。『長門』からタバコと酒は止めろと言われた。長門にはバレてたみたいだけど、私は止める理由はなかった。

【瑞鶴さん、その姿……】

 私は髪を下ろし『青い鉢巻』を巻き、衣装の上から陣羽織を着込んだ。陣羽織はレイテ沖と沖縄沖の時に着込んだけど私はこの日から羽織る事にした。だって私が日本を救うんだもの。
 第二次ソロモン海戦で『ホーネット』を仕留めた。護衛空母とかはどうでもいい。狙うは正規空母のみ、後は『エンタープライズ』……。

【『瑞鶴』、変な背負い込みはやめて】

 復帰した『飛龍』さんにそう言われたけど私はやめるつもりはない。あの『出来事』を話しても誰も信じないし妄想と思われるかな。でも私は誓った、今度こそ宜野湾で皆と最期を迎えようと……。
 南太平洋海戦、残った『エンタープライズ』を仕留めるべく三艦隊は攻撃隊を送り出す。

【『エンタープライズ』の首を取るのよ】

 そして私は振り返る。

【聞けェ!! 敵の攻撃は全てこの『瑞鶴』が引き受ける!!】

 三宅島のあの時、『長門』と同じ行動をしたけど笑って許してくれるよね……?
 実際、敵の攻撃隊の大半は私を狙ってきたけど全て回避をしたわ。(艦長の私物本に松田大佐の教範があったのは海戦後だった)それでも『飛龍』さん、『龍鳳』『龍驤』が被弾してしまった。

【皆は……皆は私が守る……】

 後退していく『飛龍』さん達を見つつ私は血涙を流す。そうだ、私がやるしかないんだ。

【そうでしょ……『加賀』さん……】

 無意識に『青い鉢巻』に触れる。青い色はあの人と同じ色、そしてあの人から一航戦の誇りを託された。
 だから私は戦い続ける。全ては『あの宜野湾』に眠る皆に会うために……。

394: 加賀 :2020/10/25(日) 22:00:15 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
ふと、『時空のたもと』を聞いていたら受信して執筆していた……。
陣羽織はレイテ決戦で着ていたあれです。ただ頭に巻いていた白い鉢巻ではなく青い鉢巻に変えています。

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最終更新:2020年11月01日 10:26