428: 加賀 :2020/10/31(土) 18:47:10 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
「三艦隊の母艦飛行隊は壊滅状態だな」
「暫くは無理ですね」
「ところで第38師団をガダルカナルに送るとか……」
「まだやるのか? 杉山さんの説得も無駄に終わったのか……」
「陸軍にも面子が!?って阿保が叫んでますからね……」
「面子で戦争が出来るものか。それで再び飛行場砲撃だが……」
「今度は『大和』も投入します。ただ挺身隊との距離があるんですよね……」
『またGF司令部かよ』
南太平洋海戦で第三艦隊は『エンタープライズ』の撃沈に成功した。これにより米海軍は残っていた最後の正規空母を喪失してしまったのである。このため年末に就役予定の『エセックス』以外は護衛空母のみで運用する羽目になるのであった。それを好機と捉えたのは日本陸軍だった。
「中止していた第38師団の揚陸は予定通り行いガダルカナル島を奪還する」
第17軍司令官の百武中将はブイン基地でそう発言する程だった。三川中将らは中止を求めたが陸軍は耳を貸そうとせず逆に護衛を依頼する程であった。陸軍が強きになったのはニューギニア戦線に隼三型が投入された事で制空権が一時的にであるが日本側の物になったので此処で一気に打開しようとしていたのだ。
だが海軍(大本営)は消極的だった。何せ二師団を支援するために三艦隊を筆頭に多数派遣し三艦隊はその航空戦力を米正規空母を沈める代償としていたのだ。それでも陸軍は「この38師団で最後にする。これが失敗すればガダルカナルはおろかニューギニアからも撤退する」と発言までして海軍は首を縦に振ったのである。
GF司令部は先の戦訓もあるので第十一戦隊(『比叡』『霧島』)を先遣隊として組み込み、本隊(『大和』『武蔵』)でトドメを刺そうとしていた。その航空支援として三艦隊の『瑞鶴』『隼鷹』が後方から参戦するのである。そのため第十一戦隊を一時的に外南洋部隊(第八艦隊)に配備させていたが司令長官の三川中将は消極的だった。
「今更だろ……我々の落ち度とは言え、ガ島は最早『餓島』なんだ。此処は撤退して守勢しつつ侵攻に備えるべきだ」
海上護衛総隊の輸送は順調なのを耳に挟んでいた三川中将は橋本らとの会議でさえそう発言していた。
「まぁまぁ……此処は無事に第38師団を揚陸させる事に専念しましょう」
トラック諸島での修理(工作艦『明石』)を終えた五戦隊を再び率いてラバウルに来た橋本少将は三川中将をそう諫める。
「だが気に入らないのは本隊だ。先遣隊より200キロも離れている。これではいざ戦闘が始まれば間に合わないぞ」
「ミッドウェーでの戦訓とは言ってますが果たして……ね」
そして第三次ソロモン海戦は勃発する。なお、編成は五戦隊以外は史実と同じ編成である。
11月13日2240(日本時間)、挺身隊は途中で発生したスコールからの回避で予定より40分遅れてのガダルカナル島海域に突入した。
先に突入したのは橋本少将の五戦隊(『妙高』『羽黒』)と四水戦の第二駆逐隊(『村雨』『五月雨』『春雨』『夕立』)とである。
2318、『妙高』『羽黒』が搭載する試製22号改四(史実22号水上電探改四)が敵艦隊を探知した。
「距離は!?」
「凡そ5000!! 至近です!!」
「……砲雷撃戦、用意!!」
敵艦隊に備えて砲弾は徹甲弾を装填していた『妙高』『羽黒』は早かった。素早く砲身は敵艦隊ーー旗艦『ソルトレイクシティー』に向けた。そして橋本は此処で自身が後に猛将と呼ばれる戦いをする。
「探照灯照射!! 主砲は浮かび上がった敵艦を同時に撃て!!」
『ソルトレイクシティー』でも新しく搭載したSGレーダーで敵艦隊が接近していたのは知っていた。だが探照灯まで照射されるとは思ってもいなかったのだ。
「狙いは俺達か……」
その言葉が第67任務部隊第4群司令官として最期の言葉になるキャラハン少将だった。『羽黒』が放った20.3サンチ砲弾が『ソルトレイクシティー』の艦橋に飛び込んできて爆発、艦橋にいた全員が戦死するのである。だがそれでも『ソルトレイクシティー』は戦場からの離脱に成功する。
429: 加賀 :2020/10/31(土) 18:48:08 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
「先に敵艦隊を撃破する」
三川中将は直ぐに敵艦隊排除に移行、飛行場に向いていた『比叡』『霧島』の35.6サンチ砲は第67任務部隊第4群に向けて咆哮する。
『ポートランド』は回避運動をするも突撃してきた『夕立』『春雨』の酸素魚雷が五本突き刺さって轟沈する。『ジュノー』は『比叡』に向けて突撃を開始するも側面かは探照灯を浴びせられた。
探照灯を照射したのは第6駆逐隊の駆逐艦『暁』だった。『暁』は『ジュノー』に68発の砲弾と三本の酸素魚雷を叩き込み『ジュノー』を撃沈させる事に成功するも自身も探照灯を照射していたので他の駆逐艦からの砲撃をモロに食らい海戦後、『雷』に介錯である雷撃処分を行ってもらうのである。
敵艦隊を敗走させたと判断した三川中将は一旦は艦隊に戦場離脱を指示しサボ島北海域で陣形を再編してから0300に再度突入を企図した。しかし水上機からの報告に愕然とする。
「戦艦四隻を含む艦隊が泊地にいるだと!?」
水上機が視認したのは『ノースカロライナ』『ワシントン』『サウスダコタ』『インディアナ』の四隻と駆逐艦8隻であった。三川中将は直ちに本隊へ合流すべしの電文を送り北上したが本隊からの電文に絶句した。
「何!? 先に突入すべしだと!!」
勿論、これにはGF司令部側にも理由はあった。
「輸送船団用の護衛艦艇が足りない。一艦隊と直率で動員しているんだ。やむを得んだろう」
GF参謀長草鹿少将はそう苦言を呈した。というのもこの時期、大本営からの指導で輸送任務に艦艇を出せとの指令が出ており五、六水戦の他にも旧式の艦艇の大半は護衛任務に付いていた。そのため一水戦や一水戦が護衛する対象の戦艦でさえ陸軍の船団護衛に駆り出す羽目になったのだ。なお、護衛される陸軍将兵は「海軍さんの戦艦は凄いものだなぁ」と感心していたりする。
431: 加賀 :2020/10/31(土) 18:48:46 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
そのための電文だった。GF司令部は文面を各艦隊に出していたので認識していると思っていたが外南洋部隊も激戦続きのため認識していなかったのだ。
「クソッタレ」
同じく電文を受け取った二艦隊司令長官の近藤中将は命令通り実行する事にした。その代わり戦艦四隻が出てきたら直ぐに逃げる算段をした。
そして14日2200、二艦隊と外南洋部隊は再びガダルカナルへ突入を開始した。最初に突入したのは橋本少将の五戦隊と四水戦の第二駆逐隊と第十九駆逐隊であった。そして2300、エスペランス岬沖を航行中に『妙高』の試製22号改四が反応した。
「来たか」
その言葉と共に五戦隊の周囲に砲弾が落下してきた。
「探照灯照射!! 敵の攻撃は全てこの『妙高』が引き受ける!!」
『妙高』から映し出されるはリー少将が座乗する戦艦『ワシントン』であった。この時、橋本は砲弾を徹甲弾ではなく三式弾を装填させていた。構造物を破壊して人的損害を与えようとしたのだ。
「撃って撃って撃ちまくれェ!! 兎に角撃ちまくれェ!!」
『妙高』『羽黒』は死に物狂いで砲撃しまくった。至近だったので砲弾は面白いように命中した。特に『ワシントン』には三式弾が命中しまくり甲板は火の海となり乗員や両用砲弾が誘爆して炎上する羽目になる。また、指揮官のリー少将も重傷を負って『インディアナ』に移譲する事になる。炎上する『ワシントン』を確認した三川中将は突撃を命令した。
「撃ェ!!」
距離7500からの砲撃で『比叡』『霧島』は『ワシントン』に砲撃を集中、『ワシントン』は35.6サンチ砲弾19発が命中して大破。最後は突撃してきた駆逐艦『敷波』『浦波』の酸素魚雷六本が命中したのがトドメだった。『ワシントン』を撃沈した三川中将は直ぐに撤退する事にした。近藤中将もそう判断するだろうと思っていた。だが次の瞬間、『比叡』は揺れて三川中将は床に叩きつけられた。
「敵艦隊後方から新たな戦艦二隻!!」
出現したのは『インディアナ』『ノースカロライナ』だった。二隻は船団の退避が完了すると満を持して戦場に現れたのである。二隻と『サウスダコタ』は『比叡』に砲撃を集中し『比叡』は瞬く間に40サンチ砲弾15発を受けて行動を停止した。それでも『比叡』は爆沈すらせずまだ浮いていたのだ。
「『比叡』の仇だ!!」
忍び寄っていた近藤中将の四戦隊と橋本少将の五戦隊は距離1800から三隻に砲撃を集中、更に酸素魚雷を放ち『インディアナ』が三本命中して大破退避する羽目になった。
「……済まない『比叡』……」
重傷を負って退艦をする三川中将は朽ち果てた『比叡』の艦橋を見つつそう呟いた。『比叡』は0136、戦死者達を乗せたままサボ島沖に没したのである。
近藤中将は作戦中止を発令、0300までに全艦艇はガダルカナル島から撤退するのである。艦隊が撤退した事で輸送船団も退避しようとしたが第17軍は突入を命令、船団はタサファロング泊地に強行突入したが結果は史実と同じ通りになったのである。
「『大和』と『武蔵』を投入するのがそんなに嫌か? 貴様らは何しに来たんだ?」
重傷の三川中将はわざわざ『大和』のGF司令部に乗艦してそう苦言を呈してから軍病院に収容されたのである。
432: 加賀 :2020/10/31(土) 18:54:24 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
- アイアンボトムサウンド(シズメシズメ……)
- 『暁』は長女なんだからね!(命を燃やす探照灯照射)
- 橋本少将、猛将の評価
- 『比叡』を見捨てないで……
ミスの重なりがこうなった結果である。次回はケ号作戦と運命の4月18日……
最終更新:2020年11月01日 10:27