900: 弥次郎 :2020/10/28(水) 18:31:39 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp

日本大陸SS 漆黒アメリカルート 「大戦前のから騒ぎ」Case.3 日英同盟の場合



 夢幻会の共通認識として、WW1への参戦は不可避であるというものがあった。
 というのも、史実と比較して利害関係も含めて極めて固い絆で結ばれた同盟であり、事実上世界の二大巨頭となっている日英間の同盟からして、
欧州間での戦争が勃発した時の自動的な参戦は文言にこそ入っていないが確定事項であった。しかして、全面的に戦争を肯定していたとは言えない。
戦争に参戦することによる技術の発展や戦訓の回収というのはあるが、あくまでもそれは副次的なモノ。
結局は戦争行為というのは国費の消耗であり、人的資源を含む資源の浪費であり、かなり痛いものである。
無論、外交の一手段であり、国家がとるべきオプションであることは当然で考慮に入れるべきであるが、そこまで戦争がしたいかと言われればノーである。
 とはいえ、夢幻会も徒に軍備制限や軍縮を行うことはなく、むしろ世界の二大巨頭の片割れとしてふさわしいものを追求していた。
できるだけ避けるべきであるが、戦争というカードを切るからには必ず勝つ、という気概であった。

 さて、ここまでが前提条件となる。
 史実においてWW1が発生する年が近づいた時点で夢幻会は陰に日向にと準備を重ねていた。
 史実通りバルカン半島は火薬庫の様相を見せ始めており、各国は同盟関係を結んで、その利害の激突はいきつくべき戦争に向かっていた。
 特に、米合がドイツに対して接近し、それをヴィルヘルム二世が許容しているというのは日英同盟にとっては最大限の警戒を払うものだった。米合の合理主義・戦争経済のことについては日英は嫌と言うほど理解している。
 また、ドイツの近年の動向についても観察を続けていたので余慶に警戒していた。英国に劣るとはいえ帝国主義らしく植民地を拡大。
また、汎スラヴ主義と激突する汎ゲルマン主義の台頭しつつあり、イデオロギーとしてもロシアなどと対立状態にあった。
そんな状況にあるドイツが米合の手を受け入れるということは、戦争が近いことに他ならなかった。
戦争を売り込むからには、遠からず激突が発生するとあの米合が判断したからこそ、だ。敵の判断であるがゆえに、ある意味信用があった。

 少なくとも英国に関しては抜かりなく準備を進めていた。世界二大海軍の片割れである英国の艦隊は弩級戦艦や超弩級戦艦を多数そろえた堂々たる陣容。
さらに陸軍も日英の共同開発の戦車や装甲車などを配備し、歩兵も充実し、後方支援体制も充実した海軍国家にあるまじきスケール。
平時の段階でさえそれなのだから、戦時に突入するとなればどれほどの動因が可能かはいうまでもなかった。

 だが、日英間で共通していた懸念事項はむしろ他国にあったのだ。
 膨張するドイツおよびその同盟国は後発の帝国主義国家などが多い。それはまあ、通常ならば有利な点であろう。
 しかして、それと相対する大陸の国々、欧州各国の実情は実際のところ不安が残る状態であった。
 フランスについてはすでに述べたとおりである。そして、ロシア帝国。かの国は日露戦争においてきわめて大きな打撃を受けていた。
太平洋方面への進出をあきらめたとはいっても、現在も西への拡張主義を進めている。だが、内実としては余裕があるとは言えなかった。
兵力は何とかなるにしても、有力な将校や指揮官と言う簡単には代替できない人材の欠落があまりにも大きい。
 もしこれで欧州を二分するような戦いになれば、イギリスは頼りない味方をフォローしながら戦う必要に迫られる。
さしもの大英帝国であっても、不可能なことは不可能であるとしか言えないのだ。

901: 弥次郎 :2020/10/28(水) 18:32:49 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp

 翻って、大日本帝国。欧州情勢がきな臭いことは素人目にも明らかであり、それに応じた動きが求められた。
 しかし、その準備は順調に進んだとは言いがたいものがあった。
 先の日清戦争も含め、日露戦争という列強との間に勃発した対外戦争を続けざまに経験している。
そしてそれら勝利を勝ち取ることが出来たからこそ、今度は内政面に力を注がざるを得なかった状況だったのだ。
戦争はあくまでも手段であり、外交の手法の一つに過ぎない。だからこそ、戦時につぎ込んだ予算を取り返さなければならないのだ。

 また、日清日露戦争の勝利は、見方を変更すれば日本の周辺、つまり本国たる日本大陸周辺の仮想敵国がほぼいなくなる状態を生み出してしまった。
厳密に言えば、中華にはまだ軍閥が点在しているわけであるし、ロシア帝国も太平洋への進出をあきらめたわけではない。
戦争と言う手段で屈服が迫れず、また被害が大きかったからこそ手を引っ込めているだけに過ぎないのだ。
もし何らかの理由で大日本帝国が隙を見せればすかさずくらい付いてくるであろうことは想像しやすい。
 とはいえ、当面の間は敵対しない。その事実は何よりも大きい。故にこそ、これまでどおり軍備に潤沢な予算を使えるわけではなかった。
 夢幻会の涙ぐましい努力も有り、一先ず装備の更新や新型兵器の開発などは進められることは確定した。
その一方で、再編と言う名の兵力の削減は避けえず、軍という組織のスマート化が求められ、平時に合わせた動きを要求されたのだ。
 そんな状態からいきなり欧州情勢に合わせて軍備を整えろといわれたところで、一朝一夕に終わることではない。
まして、日本大陸と言う巨大大陸の軍ともなれば巨大な組織であり、動きはどうしても緩慢にならざるを得ないところがある。

 また、艦隊決戦や野戦軍撃滅による華々しい勝利というのは、当然の反動としてその手の主義者を生み出すにいたっていた。
 英国にせよ大日本帝国にせよ、シーパワーの大国はいかに自らの命綱たるシーレーンや制海権を守り、維持するかにかかっている。
決戦などはその為の手段に過ぎないわけで、決してそれを目的にし、そのほかをおろそかにしてはならないのだ。
だが、そんなことを華々しいフィリピン沖海戦の戦果に目がくらんだ人間が気にするかと言えば、Noである。
 陸軍にしてもそうだった。陸軍は外敵から身を守る為のもので、平和を維持し、治安を保つという目的がある。
領土の奪い合いにおいては確かに大規模会戦は避け得ないが、だからといってそれだけに固執していれば言い訳ではないのだ。
 そんなわけで、夢幻会は決して休めるわけではなく、勝利のもたらす負の面と戦うことを余儀なくされた。
 猶予は短く、しかして課題は多く、敵対する者も多い。
 超大国であるが故の苦労を味わいながらも、大日本帝国と大英帝国は来るべき戦争に備えていたのであった。

902: 弥次郎 :2020/10/28(水) 18:37:14 HOST:p1537109-ipngn14201hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp

以上、wikiへの転載はご自由に。

ようやく漆黒世界の続きを…
WW1こと欧州大戦の動きは議論が大体進んでいるので、この後は戦後のあれこれを書き綴ろうなと思います。
パリの荒廃とか、伍長閣下の描いたパリの光景とかについてのネタも形としたいですしね。
そしたら、ようやく戦間期の観測に移れそうです。
では次回をお楽しみに。




900 一部修正を

×

 少なくとも英国に関しては抜かりなく準備を進めていた。世界二大海軍の片割れである英国の艦隊は弩級戦艦や超弩級戦艦を多数そろえた堂々たる陣容。
さらに陸軍も日英の共同開発の戦車や装甲車などを配備し、歩も充実し、後方支援体制も充実した海軍国家にあるまじきスケール。平時の段階でさえそれなのだから、戦時に突入するとなればどれほどの動因が可能かはいうまでもなかった。

 だが、日英間で共通していた懸念事項はむしろ他国にあったのだ。
 膨張するドイツおよびその同盟国は後発の帝国主義国家などが多い。それはまあ、通常ならば有利な点であろう。
 しかして、それと相対する大陸の国々、欧州各国の実情は実際のところ不安が残る状態であった。
兵力は何とかなるにしても、有力な将校や指揮官と言う簡単には代替できない人材の欠落があまりにも大きい。
もしこれで欧州を二分するような戦いになれば、イギリスは頼りない味方をフォローしながら戦う比津町に迫られる



 少なくとも英国に関しては抜かりなく準備を進めていた。世界二大海軍の片割れである英国の艦隊は弩級戦艦や超弩級戦艦を多数そろえた堂々たる陣容。
さらに陸軍も日英の共同開発の戦車や装甲車などを配備し、歩兵も充実し、後方支援体制も充実した海軍国家にあるまじきスケール。
平時の段階でさえそれなのだから、戦時に突入するとなればどれほどの動因が可能かはいうまでもなかった。

 だが、日英間で共通していた懸念事項はむしろ他国にあったのだ。
 膨張するドイツおよびその同盟国は後発の帝国主義国家などが多い。それはまあ、通常ならば有利な点であろう。
 しかして、それと相対する大陸の国々、欧州各国の実情は実際のところ不安が残る状態であった。
 フランスについてはすでに述べたとおりである。そして、ロシア帝国。かの国は日露戦争においてきわめて大きな打撃を受けていた。
太平洋方面への進出をあきらめたとはいっても、現在も西への拡張主義を進めている。だが、内実としては余裕があるとは言えなかった。
兵力は何とかなるにしても、有力な将校や指揮官と言う簡単には代替できない人材の欠落があまりにも大きい。
 もしこれで欧州を二分するような戦いになれば、イギリスは頼りない味方をフォローしながら戦う必要に迫られる。
さしもの大英帝国であっても、不可能なことは不可能であるとしか言えないのだ。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2020年11月01日 10:54