716: 第三帝国 :2020/11/08(日) 23:08:15 HOST:58x4x169x209.ap58.ftth.ucom.ne.jp
銀河連合日本×神崎島ネタSS――——――「終幕、戦略機動演習」


天気晴朗なれど、波高し。
冬の日本海のごとく荒い波で艦が規則的だが時折不規則に大きく動揺する。

しかし、そんな中でも香裕三等海佐の気分は明るかった。
これまで散々忍耐を試される対潜水艦戦に空襲、止めは『大和』も含めた水上艦隊による無茶苦茶な夜戦。
などなどを経過して疲労と睡眠不足のダブルパンチを受けても浮足立つほど心は軽く、露天艦橋の空気は陽性を帯びていた。

「艦長、間もなく竜宮島が視認できます」
「Thank you!香坂少佐」

竜宮島の視認。
それは戦略機動演習が間もなく終了するサインであり、誰もが露天艦橋で塩水を浴びるの流石に飽きてきたのでその後の半舷上陸に期待を含まらせていた。

「さーて、色々報告とかあるけど、今晩は馴染みの店でボトルキープしてある命の水を胃に補給するわよ!」

「お供します、艦長」

どう言いつくろってもロリ!ロリ!ロリ!
なJervisの口からウィスキーを飲むことを高らかに宣言される。
対して香坂は自衛官として色々良心とか倫理感が揺れ動くが、同行を申し出る。

少し前なら遠回しに窘める程度の発言はしていたであろうが、
艦娘相手に常識は通じないし人間ではないのがこの演習で嫌という程理解後は割り切るようになった。

「左舷に艦影。
 英国海軍所属のデアリング級と思われます!」

717: 第三帝国 :2020/11/08(日) 23:10:07 HOST:58x4x169x209.ap58.ftth.ucom.ne.jp
見張りの声に露天艦橋の全員が左舷に注目する。戦略機動演習は規模だけにとどまらず、様々な意味で世界各国の軍事関係者から注目を浴びており、この英国艦のように演習海域付近で情報収集に従事する艦がよく見られた。

「何か聞こえたような・・・?」

演習海域に入ったら撃沈するなどと、どこぞの赤い大陸の海軍のように意味不明な事を言っていないので、気の利いた発光信号でも送ろうかと考えていた時、真っ先に違和感を覚えたのは香坂であった。


その音は海風に遮られてあまりよく聞こえない。
しかし近づくにつれてよく響き、魂を揺さぶられる強い音色が耳に入る。

「Scotland the Brave・・・」

Jervisがその音のを正体に気づいて呟く。
かつての故郷の歌、栄光ある故郷の歌、懐かしの歌。
Jervis以外の艦娘達も突然現れた英国艦が奏でる音楽に気づいて誰もが注目し、どよめく。

『ypaaaaa!!!女王陛下万歳!』

駆逐艦「Ташкент」から潮風を押し返すほど野太い絶叫が響く。
艦橋ではТашкентが普段の砕けた態度から想像できないほど凛々しい敬礼を送っていた。

そして、これを切っ掛けに各艦からそれぞれの流儀でこの「恰好つけた」英国艦へ返礼する。
唸る波の音、軍艦の軋む音、目を傷めつけ喉を乾かす海風の最中奏でられるバクパイプの調べと様々な叫び声。

性別、人種、種族が違えど共に海を戦場と知り、海に生き、海で死ぬことを覚悟する海軍軍人たちのある種、見栄。
伊達と酔狂が今まさにここにあり、香坂はその光景を生涯忘れることはないだろうと確信する。

「海軍っていいわね!」
「イエサー・サー、先輩の言うとおりであります」

香坂はJervisに対して心より敬意を込めて敬礼した。


おわり

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最終更新:2020年11月10日 10:10